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アクセスのめざすもの

このページでは、アクセスの考え方をまとめた文書を掲載しています。


「目的と道」

  2002年時点での当会の組織としての方向性や考え方をまとめたものです。


「私たちのめざすもの」

  アクセスが貧困問題に取り組む上で、どのような考え方に立って活動しているかをまとめた文書です。

  (年次報告書より抜粋/PDFファイルが開きます)


「私たちの活動の柱」

  アクセスが活動する上で大切にしている、「エンパワメント」と「地球市民」という2つの

  考え方についてまとめた文書です。(PDFファイルが開きます。)


「エンパワメントと組織化」

  アクセスがめざす「エンパワメント」について、具体的に事例をあげつつ説明している文書です。

  (PDFファイルが開きます。)





「目的と道」


T アクセスの目的


1) 世界は、一握りの豊かな「北」の国との大多数の貧しい「南」の国とからなっている。世界の人口の6%に相当する国が全世界の富の59%を所有する一方、80%の人々は劣悪な居住環境に住み、70%の人は文字が読めず、50%の人は栄養失調に苦しんでいる。
2) 「南」の貧しい国の大半は、かつて「北」の諸国の植民地支配を受け、産業と社会の仕組みを「北」の諸国の都合の良いように作り替えられ、富を奪われ、労働を搾取された。そして植民地支配が無くなった現在でも、この構造は変わっていない。「南」の国々が貧しいのは、その結果であり、「北」の国々が豊かなのはその結果である。
3) 日本もかつて朝鮮・台湾・中国北部を植民地とし、さらなる植民地・支配地を求めてアジア諸国を侵略した歴史を持っている。そして現在も、「北」の国々の一つとして、多数の企業が安価な労働力と資源・市場を求めてアジア諸国に進出し経済活動を行なっている。(その逆、つまり「南」の国の企業が大挙して「北」の諸国の市場に進出している例は、NIES(新興工業地域)の数ヶ国・地域のほかにはない。)
4) 他方、アクセスが支援対象としているフィリピンは、アジアの中で、苦悩する貧しい人々の数の最も大きい社会の一つである。フィリピンもまた、300年におよぶスペインの植民地支配、半世紀にわたる米国の植民地支配を受け、日本に侵略された歴史を持つ。そしてその中で、大土地所有制、モノカルチャーによる大規模プランテーション農業など今なおフィリピン社会の歪みの原因としてフィリピンの大多数の貧しい人々を苦しめ続けている仕組みが作り出され、維持されてきた。
5) フィリピンの70%の人が貧困線以下の生活を余儀なくされている。彼ら・彼女らは日々の食料を十分口にすることができない。健康な人生を過ごすに足る清潔な住居や衣服を持たず、必要な医薬品も最低限の医療施設を利用することもできず、貧困と疾病の中で短い人生を終えざるを得ない。彼ら・彼女らはまた、労働する意欲と労働する能力を持ちながら働く機会を与えられず、田畑や漁具などの労働する手段を持たない。多くは、最低限の教育を受けることもできず、自らの基本的人権を行使し、生活を改善し、社会を変革していくための力を身に付ける機会を奪われている。
6) アクセスは、フィリピンのこの最も貧しい人々、すなわち、

  都市貧困地区に住む住民

  田畑を所有せず小作人あるいは農業労働者として生きなければならない貧農民

  漁具を所有しない貧漁民

の三つの層の人々を対象とし、彼ら・彼女らおよびその家族への支援と協力を行なうことをその主要な目的の一つとする。貧しい農民・漁民は都市貧困層の母体であり、貧農民・貧漁民の生活苦・社会的位置が都市貧困層を日々生み出す原因を作っている。

7)

アクセスは、たとえ微力であっても、この三つの層の人々に対して、彼ら・彼女らの、

  貧困による生活苦との闘いを支援し、

  人権を獲得しようとする努力を支援し、

  疾病と闘い、子どもたちに教育を与えようとする努力を支援し、

  平和を求める努力を支援し、

  これらの問題を解決し、社会を変革して行く為の力を身につけることを支援する。

8)

日本は、フィリピンから見ると「金持ち」の国である。日本政府はODAを通じて大量の「円」を提供し、港湾や鉄道の建設やダム建設・河川の拡張などが行なわれる。だがその結果、多数の都市スラムの住民が立ち退きを強制され、先住民が先祖代代の居住地を追われ、農民が農地と生活の糧を奪われてきたり、あるいは現在も奪われようとしている。そして提供された「円」は、建設や拡張を請け負った日本企業に還流して行き、後には膨大な債務が残る。

首都マニラには日本製の車が溢れ、日本企業の広告塔が立ち並び、日本の商社が開発した工業団地や輸出促進地域では日本企業の工場が稼動し多くのフィリピン人労働者が働いている。だが輸入された日本製品はフィリピン製品を市場から追い出し、輸出促進地域では労働者の権利は認められず、工業団地を建設する為に買収した農地からは小作たちが追い出される。日本商社が購入するための木材が大量に伐採され、洪水を引き起こし、安価なバナナが日本に輸入されているが、バナナプランテーションでは農業労働者が低賃金で働かされている。日本からはゴミや産業廃棄物すらもフィリピンに輸出されようとしている。

 多くの日本人が観光やレジャーのためにフィリピンを訪れる。だが、少なくない日本人ツアー客は買春を目的としている。

9)

他方、多数のフィリピン人が、本国で仕事を得られないが故に働き口を求めて日本にやって来、日本で社会生活を送っている。日本で家族を作り、子どもをもうけ、学校に行かせ、生活基盤を日本においている人も数多い。

 だが、彼ら・彼女らの労働の多くは「危険な・汚い・きつい」労働であり、日本社会を支える労働に従事しているにもかかわらず、入国管理法は彼ら・彼女らの滞在資格を厳しく制限しているため大半の労働は「不法」であり、そうであるが故にその労働者としての権利はしばしば侵害される。また、住居・教育・保健など基本的人権を享受するための最低限の社会サービスを十分に受けることができていない。また、こうした状況の根底には、日本人の間の、フィリピンを始めとするアジアの人々に対する根強い差別意識と偏見が存在している。

10)

このようなフィリピン(アジアその他の第三世界)と日本との関係はまさに「南」と「北」の関係であり、フィリピン国内の南北関係と結びついて、フィリピン社会で大多数を占める貧しい人々をさらに苦しめる。また日本国内におけるフィリピン人(アジアその他の第三世界出身の人)の置かれている状況は基本的人権の侵害であり、彼ら・彼女らが「健康で文化的な」生活を営むことができない要因となっている。

アクセスは、このようなフィリピンからの視点・社会の最下層の人々からの視点から捉えた、フィリピンと日本との関係・日本社会の在り方を日本の市民に明らかにし、批判し、変革して行くことをもう一つの主要な目的とする。

   
U アクセスの道
   
1)

アクセスは、当面の支援の対象をフィリピンに集中する。アクセスは、自然災害や戦禍などによる一時的な緊急援助の必要に即応する型の活動を自らの主な任務とするのではなく、また自国政府に対する政策提言を行ない議員や官僚を相手にロビー活動を行なうことによりODA等の使途の改善を目指す型の活動を自らの主な任務とするのでもなく、貧困と無権利の中にあって日々の生活を生き抜いている住民の自主的・自立的努力を支援し、問題解決のための住民自身の力を高めていくための中・長期にわたるプログラムを実施していくこと、このプログラムを通じて日本の市民がアジアの人々と交流し、ネットワークを作り、日本とアジアとの関係そして日本社会そのものを変革して行くための力を高めて行くことを主要な任務とする。

このような方向性の活動を行なうためには、現在のアクセスの限られた力量と諸条件を考慮するとき、当面の支援対象をフィリピンに限定することが必要である。

2) こうしたアクセスの活動の主体は、フィリピンのプロジェクト現地の住民であり、アクセスの会員である。アクセスは、問題を解決し生活を変革するための現地住民の自主的・自立的・集団的努力を最も重要なものと考え、その中から住民自身のリーダーシップが生み出され、住民の自助・自立のための組識作りに発展し、問題を解決するための力を高めるよう支援し、必要であれば批判する。
3) アクセスの会員は、アクセスの「目的」の実現のため、自らの意思と能力に応じて何らかの分業任務を担う。すなわち、日本において、周囲の人々にフィリピンの大多数の貧しい人々の現状を伝え、フィリピンから見た日本や日本人の姿を伝え、働きかける。フィリピンの文化や考え方を伝える。日本在住のフィリピン人や他のアジアの人々と日本市民の交流を進め、また彼ら・彼女らの基本的人権を擁護する。これらの活動を通じて、こうした現実を変えたいと願う人々を増やし、自らの周りに組織していき、アクセスのネットワークを拡大していく。
4)

アクセスの会員は、他方、フィリピンに中長期に滞在し、アクセスマニラのスタッフとして働き、プロジェクト地のコミュニティーに入り、住民と共同でプロジェクトを進めて行くことも期待されている。

アクセスは自らを日比の多国籍組識として発展させようとしている。日比の多国籍組識としてのアクセスは、内部に様々な矛盾を抱えている。日本人とフィリピン人、教育を受けたものと教育を十分に受けていないもの、アクセス本部スタッフと現地住民、これらの関係である。アクセスの会員でフィリピンのプロジェクトに参加するものは、これらの矛盾を発展させ、対立ではなく新しい関係を創造していくことが求められる。我々は、そのなかで新たに生み出されるものが、21世紀の国際社会の中で必要とされるものに応えていくことになると確信する。

a) 「先進国」日本の市民と「発展途上国」フィリピンの貧しい人々との間には対等でない客観的な力関係が存在する。それはアクセス自身も例外ではない。放置すればフィリピン人スタッフは自らの見解を明らかにしようとしなくなり、日本人スタッフの意見ばかりが通るようなことになりかねない。そうした力関係を見据え、それを固定化するのではなく、対等な方向へ変えていくよう働きかけ続ける必要がある。
b) 価値観や文化の違いも存在する。一方的にいずれかの立場を絶対化するようなことはせず、相互に尊重しあった上で、双方が粘り強く相手に働き掛けていく中で具体的に問題を解決していく。そこから新しい共通の価値観や文化が創造され、双方で共有されていくと信じる。
c) 「教育」もまた力関係の差を生み出す。教育を受けた者はこのことに自覚的でなければならない。また、教育は人権を守るための最低限の武器である。教育を享受する機会を与えられて来なかった人々に対し、公教育の機会もさることながら、識字教育・スタッフ研修といったプログラムの提供を行なうことが重要である。
d)

貧しい人々、とりわけ都市貧困地区の住民は、社会の中で差別され、蔑視されている。毎日の生活は絶望的で、しかも子や孫の代までも続くように思える。その中の意識的な人々の中には、「善意」を掲げてコミュニティーにやってくる「外」の世界の人々に対し不信感を抱く。その「善意」は本物なのか?自分たちと一緒にここで暮らすことができるのか?と。

  こうした問いかけに対する答えは、行動で示すほかはない。プログラムを実施して行く中で現地の人々との信頼関係を深めること、たとえ短期間でもコミュニティーに入りそこで生活しながら活動しようと思う人を奨励し、援助すること、等々である。
5)

アクセスの活動は、こうした一人一人の会員の日々の創造的な活動がその生命である。日常的な業務執行機関である理事会−事務局は、そうした一人一人の会員の活動を支援するために活動することを、その最重要の任務の一つとする。

現在的には、次の二点が重要である。

  a) ボランティア・スタッフ制度の確立。この<目的と道>の内容に沿った、ボランティアスタッフのための研修プログラムの作成と実施。
b) 会員の自発的な活動を保障するための、国内およびフィリピンでのプログラムの拡充。
6) アクセスは、アクセスの「目的と道」に賛同する人であれば誰でもその活動に参加でき、国籍・民族・宗教・政治的信条などによって排除されてはならない。 他方、個々の会員やスタッフは、アクセスの名において、あるいはアクセスの活動の中で、他の政治活動や宗教活動を行なってはならない。そうした活動は、アクセスの外で行なうべきである。
7) アクセスは、プロジェクトの中でつきあたる問題や「目的と道」に適っている課題で、アクセス単独ではそれらの問題の解決が困難である場合、他のNGOや市民団体、政治団体その他の諸団体と協力しあって問題の解決をめざす。
8)

アクセスは、「政策提言を行ない議員や官僚を相手にロビー活動を行なうこと」を自らの主任務とするものではないが、これは自国政府に対する働きかけの必要を否定したり、こうした活動自体の必要性を否定するものではない。

アクセスは、日本の市民とプロジェクト現地住民との具体的交流を進めるなかで、日本の市民に対し「フィリピンから見た日本」を明らかにし、変革されるべき問題点を提示するよう努める。そうした活動の延長上に政府に対して働きかけるべき課題も存在し、必要に応じて具体的な行動を行なう。

9)

上記のような「道」を取る時、その限界は自ずと明らかである。貧困と基本的人権の侵害と いう結果を生み出す原因−「南」と「北」の関係そのものの、フィリピン国内の社会構造、そして日本国内の社会システム−を直接課題とし、その変革の展望を示すことができていないからである。そのため、アクセスの活動は、原因から生み出される結果に個別に対応するという「道」を取ることになる。一見すれば、そしてアクセスの現在の限られた力量を考えればさらに、これは永遠の徒労にも思える。

だが、認識は行動とともに深まる。このアクセスの「目的と道」は、1988年来の活動のなかで見えてきたものを表現したものであり、現在の活動の具体的な課題と水準を表現したものである。その意味で、我々は原因を探求し続ける。その努力の中でつかんだものを実際の行動の指針として具体化して行く。そして実際の行動で検証されたものをこの「目的と道」の中で繰り返し書き換え、表現しつづける。その主体は、プロジェクト現地の住民であり、アクセスの会員である。この繰り返しの中で、いずれ、プロジェクト現地の住民およびアクセスの会員の総意として原因そのものを取り除くことをアクセスの課題とする時が来るものと期待する。