my「短歌」平成12年版


2000年12月25日
胸の差に一位逃ししランナーの悔しさ深更までわれは想いき
二位に終わりはげしく哭ける若者の気概 羨(とも)しみてしばしをすごす


12月9日
民主主義の手本ならずや数うれば結果かわりゆくアメリカ選挙
描けとて子が持ちくれし一枝のトベラの玉実あかく弾けぬ
市井われら準備しきたるオーナメント 着けたる聖樹 宵を灯れる
聖樹 聖歌 響ける薄暮 燭の火をかかげもつわれら 清らにあらむ


12月4日

日曜の朝より一人クリスチャンきて 冊子おきゆくまずしき吾に

キリスト者の置きし冊子を読まずして旬日過ぎぬ 師走にはいる


12月1日
 歳晩の軒に並べるプランターパンジーが笑う そは冬の花

飼い犬に牽かるるごとく移りゆく 男の足の草紅葉踏む


藤もみじからめて山の北陰の宮木の繁みいよよ小暗き

結社脱けてひとり歩まむこころねを降霜まえの夜寒に曝す

ブルドーザーの爪振り上ぐる横ぬけて 走りきし疲れゆうべ抱けり


工事現場に誘導なせる偉丈夫の直きししむらを羨むこころ

雑木もみじ枯れ色になる直前か 師走ついたちの峡走り来つ


10月10日
講座の最中に襲い来し地震(ない)に身を伏せぬ机下に皆より後に

木犀の咲きはじめしか店の扉を 開けば風の匂い入り来ぬ

待ちていし礼服生地の朝を来ぬ 黒猫の繪のトラック便に

おのがじしつくりし今をやや恨み 老いも諾わずこのはかなごと

ひねもすを鳴るかみなりを懼れつつパソコンもラジカセもなべてを切れり


9月15日
コリアとう名のもとひとつ塊にあゆむ選手団拍手して観つ

金メダルと言いはばからぬ選手もプレスも世界識る謙虚ややも持つべし

昨年の不成績思いかえしつつ初秋このときを売り出しもくろむ
柔道の古賀氏が唱なう「一生懸命」吾は実践をつねなしていむ

8月14日

戒名の彫りを湿らす盆の水 捧げて吾娘の結婚を告ぐ

義弟の建てし墓石の彫りに棲む蛙 彼の魂か今日盂蘭盆会


8月7日

摩天楼の隙に緑樹の見えにつつ水輝きてゆくハイヌーン

ベコニアに水やるを数日 忘れいつ火事・葬儀・事故と町に続きて

いざ寝に就かむ夜半を守宮のペア窓に虫追う灯は消すよ今


8月6日

新姓に澱みなく言う娘の声を嫁しし翌朝の受話器に聴けり(山桃忌短歌祭入選歌)

娘が嫁して翌朝を撒く水のなか黐の秘め花の無数に咲ける


8月5日
サマーフェスタの開幕告げるサイレンの鳴る昼下がり暑熱の街は

手形書きて渡す問屋の主いう炎熱の街を走り来しこと

氷片を浮かべし麦茶勧めつつ怠惰省みる明るき午後を

コットンスーツの受注の電話置きにつつ明日への気力やや兆したり

盆踊りの花火続きて揚がりたりはかなきもののはた美しき

朝刊の入る気配を識りにつつ熱き暁闇を横臥なしいつ


8月1日

「食べ助け」してくれという勿体なき言葉マクワウリ・ナンキン・ピーマンを賜ぶ

ピーマンの照りかえる光みつめつつ夏の恵みの沁みておもへり


7月30日
雲足の速きを道の影で識る九州南方に台風はいて

稲の緑 左右に分けて渡り来る風の濃淡をまなかいに視つ

神戸まつりを知らずにい出て道の規制に信号を4度替わるを待てり

夏祭りの街をのがれて走りゆく山峡は南風の吹き抜ける道


7月22日
沖縄の若きと握手交わしゆくプレジデントの汗の額はも


7月17日

皆既月食のもどりつつある地の影にわれの命も含まれいるや

皆既月食済みたる夜半を佇ちおれば観察の帰りか若き人群


6月24日

ズボン2本売りたる今日の結果持ち梅雨霧のちまた横切りゆけり

梅雨霧の里へ降りゆく車にて仮縫いのつぶさ反芻しいつ

先刻の即席麺のおくび出ず梅雨霧にブレーキ踏み込む折を

梅雨霧を照らすライトの範疇に木菟か猫か眼が光りたり


6月23日

友傷め母殺めたる魂の羊歯生う深処ゆきゆくがみゆ

天鵞絨深紅にダリヤ咲きたる夕まぐれ誘惑事件起きむとするや

蛍観の女庇いて佇つ男 影みゆもしや美形かしれぬ

夏至の夜のみじかき闇を愉しむや守宮のつがい睦みしやまず

欧人のつねに接吻なすさまのかたち美わしとまこと思へり

花菖蒲まなかいにいま開きゆく描かむ間もなくかわるかたちは

マスネーの嫋々と夜を奏されて煩悩はつか兆して過ぎし


6月12日

娘の盛儀無事に済みしかと長男の出張の北京より電話かけくる


姉の姿みられぬ次第くやしみて弟祥行の北京に働く

婚も披露も無事おわりたるこの朝 西日本一斉に梅雨に入りたる

梅雨晴れ間山懐の池にありて人群に湿地植物説けり

紅濃ゆきハッチョウトンボの雄あまた少なき雌にこもごも翔べる

婚の娘の髪飾りたる花の如トキソウはいまし沢に咲きいる


6月10日

新郎と娘の晴れ着縫い納む この業四十八年のひとつ節目か

山に採りし雄羊歯の若芽あしらいてローズブーケをわが造りゆく

朝より電話しき鳴る今日なりき娘の披露宴の午後にはじまる

娘の姓の変わる今日とてしまらくをパソコンに短歌書かむとしいつ


6月6日

花のレース裁ち進めゆく六月のひと日娘の嫁くは九日ののち

イヤリング付けたる妻のひさびさに美しとおもう娘の嫁ぐ日に

家族(うから)して志戸坂峠こえむとす因幡にて挙式する長女の為に

鯉とともに武者繪幟を掲げたる新緑の智頭の町は床しき

 教会のそびらの家の庭木々にトネリコもありて濃く匂う風

日本キリスト教湖山教会と表示あるここ娘が挙ぐる結婚の庭

 挙式待つしばしをかこむ回転寿司 白きケーキの皿も滑り来

アイライン入れたる吾娘の光りつつジューンブライドに今しなりたり

時よとまれベールの陰に透けるがに花嫁となりし吾娘を観るかな

バージンロード短く長く白く淡くマーチ奏楽のなかを踏みゆく

ベール持つ幼なふたりのはしやぎも進むにしのに緊りゆく

フラワーシャワーもくろむ友を娘はもちて我ら匂いバラ二人に撒けり

吾が縫いしモーニング着たる新郎に添いて佇ちいる娘は裳裾ひく

 胸覆う白きサテンの融通をやや締めて着よ吾娘よ未来へ

 初孫をいつい抱けるやししむらのいまだも薄き娘は嫁かむとす

三枚とカメラスナップを加えつつ写真屋は我らにシャッターなせり

「同じ空気の二人」と言いて祝辞述ぶる牧師の妻の観や嬉しき

ギター執りて「友よ」を謳い祝ぎくるる牧師の貌の高揚 若し

挙式すみて帰る山路に観る花も空木 野茨と白きブーケや

娘のガレージに今日から吾が車置くなべてがひとつ減りたる我が家

貸しガレージ今より一つ解約せむつましきことの少しさみしき


5月19日

バージンロード歩むおのれを想いいつ娘と腕解かむ刻誤またじ

タンポポの綿毛一粒舞い来しか 紺のポーラの服地に着けり

下水道工事にさわる化粧室 張られゆくコンパネ南洋材か

去勢されし猫の夜鳴きのやみたるがなにか哀しも雨の真闇に


5月17日

愛別離苦いくつ生れにしこの五月 小渕氏逝きて吾より若し


5月13日

紫の蝦根咲きたる旬日を娘の婚の服縫はむとはげむ

北の友よりEメール来て開きたり女満別水芭蕉の美しき写真も


4月17日

グレイベスト縫いゆく春の深更をほととぎす啼くやはた幻聴や

絞り椿咲けるを剪りて濡らしたる鞍馬石花器に挿すわが豪奢

礼服の躾の白を除きつつ「黒」とう彩の意志おもいいつ

振り仰ぐ桜の万の花の眼にみつめられ薬包たもちて歩む

片栗の花の反転の底ひなる楔文様にまみゆ今年を

合服の淡きを濃ゆく濡らしつつセールスのチャイム押す浅き軒端に

退院の人迎えむと山峡を縫へば咲き燃ゆるたむしばの群れ

邑なかの一番桜散り果てて並桜観るいまを葉桜
会合の予定決まりてゆくほどに娘の婚と重なるを意識に登す

これが最後の春の灯油か思いつつ配達の容器家ぬちに入れる

土に入る桜の幹のもつ線のやや広がりてそののち泰き


3月31日

ストーブの消えかかる音か思いつつ春夜そのままに余熱に過ごす

野良の性まだ消えやらぬ縞猫の人語のごとく絶えなき夜鳴き

有珠鳴動、脳死、移植とニュース継ぐ木蓮は今し咲かむ季にて  


 3月17日

獣医にて塗られし薬舐めつくし深傷の猫の舌の黄色は

野良よ野良よもう家猫になりし汝 外を恋い啼けど出してやらぬぞ

長啼きの猫のみ起きて寝に就く我が家包みつつ降る春の雨

深更をよぎる車の擦過音 雨に湿れる響きか朧ろ   


3月16日

わが縫いし服に居ずまい糺しつつ娘が今受くる結納というを

娘の婿になる若者の服を縫うこの技を四十年続けきたりて

雌を競い負けて帰りし家猫の腿の深傷を舐めてやまずも

Eメール5通打ち出し疲れたる眼いたわりて就きゆく眠り  


2月21日

娘の婚の決まるゆくえを思いつつ脳(なずき)整える水の如くに  


2月18日

如月の凍夜 出でゆく猫の性 記帳疲れの脳に羨しむ  

刻に急かれし夢に目覚めし寒の朝 綿メリヤスの肌着付けゆく

顔見えぬ彼方よりEメール来て本音50%ほど盛られいたるか

日に一度抱けとせがめる家猫の老いたりここに来て一昔


2月16日

バスタオルに使用疲労の襤褸きてアダム胸筋の隆起老けたり  

並木道の欅肥りし気配せりこの街にわれも老いていかむか


1月4日

御手洗の銅の龍頭はセンサーに従いて口より吾に水吐く  

賀状補遺をしつつし見入るウインフィルニューイヤーコンサート遙か憧る

「酒・女・歌」奏されて納維(ウイーン)の粋なるや白き馬のギャロップ

燕尾服踊るに在るや円舞曲にまわりつつまわりつつ裳裾活づく

ムーティの指揮にすすみてフィナーレのラディスキーマーチ今年始まる

ラディスキーマーチに打てる手拍子にミレニアム元年うたがわず行く


2000年1月2日

賜はりし丹波黒豆の一袋規格外品と識りしおどろき

丸々と実の肥りたる黒豆の粒の曇りも難となるとや

規格とう関門くぐる収穫物農夫は唯に祈り籠めいむ


12月29

消費者のわれら市井がつくれるや農産品規格のアブノーマルを 

賀状あまた刷りいて発つる音程の「天城越え」一節に似るプリンター

終日を賀状刷りたるプリンターの夕べ疲れしか不調となりぬ

プリンターの不調をかこち点検をすれば己の命令の過誤


12月23日
プリンターの示す「ヘルプ」をクリックし修正なしぬ自が救わるる 

「迎春用の豆の選別忙し」とのEメール読む服縫う隙(ひま)に

家あげて豆の選別なしいると識れりかくして「にいとし」は来る

「キズ」として省かるる豆を想ひいつ蛋白質は同じならむを


12月20日

歳晩の爪を剪りつつ鋭さの失せしわが体とふとも思へり  

リフォームの着物解きつつわがおゆび荒れいると気付く冬至まじかを


12月1日
命落とす運命(さだめ)識らずや落鮎の争いて産卵す清き浅瀬に  

穫りいれず霜枯れてゆく大豆畠も稔りあまねき神の摂理は

農政の如何はしらず稔りたる大豆収めずに枯らす人はも


12月11日

土が作りし大豆あまたを植え捨てて補助金の動く瑞穂の国は 


12月8日
喪中欠礼しげく届ける日々となり北山は朝を鉛色なる

プリンターのインク切れしと気付かずにトラブる朝の村の事務所は


肝炎の妻を医院に送りつつ雑木紅葉の進度に触るる

Wブレストの製図しつつを胸筋のまだ薄き若きのししむらおもう

新羅紗にチョークで写す背身頃のすでにししむらのかたち匂はす

いたずらにししむら付きしわが体とおもはずや直に生きてきたれば

到来の柿を描かむと旬日を睨みつつはては熟柿となしぬ

拝受歌集の礼もせでしてこの年の暮るるを罪とおもいつのらす

収支おもふ師走十日をすごしつつ自が不甲斐なき姿 視据える  


前栽に夏 蔓延りしさねかづら久しき撒水に紅顆みいだす

瀟瀟と桜木はもみじ散らしゆき一夏太りし樹の裸形みす


12月8日
間引き菜の青梗菜を賜れり
夜更け描きいる 瑞々と冬 

ママレード入れし紅茶のしまらくを彩やわらかに変わりゆく愛ず

レタス食む奥歯 初冬をきわやかに六十余歳の体調や良き


11月25日

新世紀の扉が近づきてなにほどにわが日常の革新はある  

赫き三日月出ずると述べしまくらにて苦言へ続く手紙書きおり

遺稿集賜びにしのちをわが裡の「風化」ししこころ模様凝視す

秋霖の沁みてウーステットチェビオットブルゾンは濃き濡れ色たもつ

ホームページに見知らぬ人の書き込みがありて深更を木枯らしは鳴る

錯綜のタイヤの間を翻り
プラタナス落葉さだめもあらず

灰ながき煙草 舗道に捨てられて
煙挙げくる吾の無念に


増水の泥川を脇に銀行へ走りいつ当座一万不足  11月17日


11月2日

コンビニにコピーしつつを新しき運歴二黒土星 立ち読む  


10月29日

パフィオペジュラム密かに蕾を挙げにけるかくことはりのつづけよながく

人を食い捨て巨化しゆく「会社」なにものぞ
銀行がまたも合併しゆく


物の秘むる神のちからを人はやや早く拓きて苦しみいるや

臨界は臨戒ならむ原子物理学かく危うきをいかに説ききし

日月の駆け行く先に人不在
空気不在の地球よ何時か


10月29日
パンドラの筺の底ひの「希望」ひとつ残るや東海村の事故の施設も 


パソコンのファイル破損をかこちつつ戸を鎖せば夜気に木犀におう

社長土下座の構図しばしば視る日ごろ
利潤追求のゆきつく果ての

異星人を核にて殺むるSFのイマジネーションのこの貧しさは      

姿みえぬ敵に攻めらるる日常の
来るや放射能の大気に満ちて

人間は過誤なせる現実(うつつ)万物を
制御しうると思へる虚構

「原子の灯」と美しき言葉に云いきし
魔物となれる事故は起これり


10月15日
コスモスが休耕田につくられて咲き沈みいるこのさみしさは・・  

客のなき展示会場ひろやかに陽光は午後へ傾きてゆく


10月10日

ダイレクトメール配れる雨のなかいささかの効果期するこころは 



河中州の草ことごとく倒れ伏し九月の出水 今日は穏しき 9月23日


出穂の田面を渡る風うけて商用の車のハンドルをきる 9月11日


8月28日

いにしえの文物いでて説明を聴ける夏野に黄揚羽舞えり

被葬者は子供か婦女か陶棺の小さきことにめぐる想いは

古墳よりいでし陶棺のそのあまり小さきを観る 夏陽のなかに


8月23日

マニュアルに依りて言えるや給油後のサイン乞う語のある節回し

白鷺のコロニーがある山麓を宅配トラックのゆるゆると行く
          

給油しつつ若きが窓を拭く力はつかつたうをわが覚えい


8月17日

遠花火響める宵を片づかぬ今日の仕事の残りをこなす

隣家の壊されてゆく一日を籠もりて聴きぬ土の匂いす

三十分有効なるを読みとりて地下駐車場のバーは揚がれり

カークーラーの冷え二の腕に残りいつ手形落とさむと階段を踏

青白き翅もて生れし油蝉陽昇るまでを葉裏に縋る


8月9日

メドウセイジ活けたる瓶の水替え今日も猛暑か著るく匂える

地球凍結のSFドラマ進みゆく製氷皿を元へと戻す


7月26日

早咲きののうぜんかずらまぶしみて おれば打ちくる雨に散り敷く


夜業するわが目交いの窓玻璃に守宮のつがい恋あそびなす


受注より納品までの僅日を活かし夏服をいま納めたり 7月8日


7月3日
Eメールはいりこぬかと操作なす画面しばしを緑色の闇

野良猫の風邪ひきたるやわが妻の愛撫を乞いて逃ぐるもあらず


6月20日

かの妻を露草と詠みし歌の師の回忌幾年か花の季くる

新竹の秀の開ききらぬ篁の激しく揺るる梅雨の嵐に

水鏡でありししまらく終わらむか 植田の苗のみどり肥えゆく


6月18日

枇杷熟るる季や日射しの夏めきて すこし動けば身の汗出ずる 


6月17日

栗 の花 振 り乱 しき いる六 月の山抜けつつ思う 

6月16日

描けとて賜びたる菖蒲咲き継ぎて 二の花のおわりようよう写す 


6月15日

昨夜観たる螢の群の眼交を離れず人につい話しをり


限る風物と沁みて想いいつ今年の螢 妻と愛でつつ

一期一会聖歌捧げむカップルの歩む一世をおもうたまゆら             

聖歌隊のバス務めむとはやくきて会館の隅の茶房に憩う

ブライダルてしか白きクタイの男吐きゆく巨きホテルは
梅雨晴れの午後茶房の駐車場喪服一群のうつくしくみゆ

馴染みき伐られて切り株のろじろと梅雨の空見上げをり
早苗田の補植の人の白シャツの
光るがごとき梅雨の晴れ間は


6月13日

セールスの不調を秘めて戻り行 梅雨の夜空の朧月みつ
足首と胸に冷き器具装され六十有余の体計られつ
空き腹に呑むバリュウムのやや甘くちゴンドラに身を任せいつ
検診の順待つ列に加わりて
佇てば植栽のいぼた匂へり


6月10日

郡変わる隧道こえて服ひとつ納めてきたる今日の業はも
またたびの葉の斑の白さ連なれる水嶺に近き山路は

あじさいの彩づく迅き梅雨三日降らずに晴れの夏日続けば


6月8日

白服を縫う工房に羽虫くる穢れをおそれなせる 捕殺  


6月7日

画展果てはずす額繪の玻璃曇る梅雨に入りたる気配のゆうべ            
デジカメに撮りたる画像処理しゆく 若き友がらのちから羨しむ


 6月6日

ベランダにわずか稔りし桜桃の艶実を食す鵯より先に  


 6月1日

母の日に子等が呉れたるニナリッチバッグを妻は今日も提げゆく


5月31日
バッターの振り切りしときししむらの砥ぎて充ちてる線際だてり       

「松阪」の球のスピード云々の世間「イチロー」を取り残しゆく

「振興券使えますよ」がはためきて午後は雨天となるや風吹く

 皐月さつきあまた咲きゆくこの朝を 一年の世話の褒賞とせむ       
岐阜蝶の銀の卵を観し朝に 今年のわれの五月はじまる          

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