You Can't Start A Fire
Without A Spark



 あなたのロックン・ロールには、どこか人間を向上させるような所があるとは思いませんか?あなたのやっている事全体の背後に、道徳的教訓のようなものがあるような気がしてならないんですが。
「あぁ、多分ね。『BORN TO RUN』の頃すごく気になったのは、最初あのレコードが逃避的って言い方で批判された事だった。俺にとっては、確かにそういう面もあったけど、それ以上に何か答えを探しているようなレコードだと感じていた。以来、『DARKNESS ON THE EDGE OF TOWN』でも、『THE RIVER』でも、『NEBRASKA』でも、やった事は同じさ。『人々の毎日の生活の中にある色んな事は、一体どれくらい本当なんだろうか?どれほどの意味を持つんだろうか?』って問いなんだ。どう言えばいいのか分らないけど、自分の『BORN TO RUN』以降のアルバムはどれも『BORN TO RUN』に対応してつくられた作品だって気がするんだ。自分にとって、あのレコードを作った事は人生でも、最も特別な出来事だった。今、『Born To Run』って曲は、当時以上に俺にとって意味があるんだ。今夜だってあの曲を歌えるし、その中に年月の重みが更に加わっているのを感じるよ。そうだな、もう10年も前に書いたんだな。それでもまったく同じようにリアルに感じられる。物凄くリアルなんだ、俺にとっては。一晩のステージの中でも一番エモーショナルな瞬間なんだ。歌に出てくる人達一人一人が浮かんできて、だから、あの歌はあの人達にとって−−−あの歌は、彼等の歌なんだ。俺の歌であるのと同じくらい、オーディエンスの歌でもあるんだ。会場で、客席までライトがつく時が好きなんだ、みんなの顔が見える。結局はそれさ。とにかく、今は昔の曲をやるのも楽しい、過ぎた時間が全部流れ込んでくるような気がして、少しも古臭く感じない。例えば、『Born To Run』の中に『NEBRASKA』の一部が聞こえたりしてね。」

 『BORN IN THE USA』は基本的に、ブルーカラーの愛国者的な価値観と、ロックン・ロールのリアリズムを歌ったアルバムと理解していいんでしょうか?
「うん、そういう方向性を定めて作った。でも、簡単な事じゃなかったよ、ある種の詳細な描写がいかに大切か、やっと分り始めた頃だったから。『Darkness On The Edge Of Town』なんかでやり始めたスタイルなんだ。『Wreck On The Highway』とか『Stolen Car』とかね。この2曲は割りとカントリーっぽいけど。俺はね、自分のレコードを聴いた人が、俺が人生について感じているのと同じよう感じを抱いてくれたら、と思ったんだ。ほら、特にロマンチックでもないし、凄くヒロイックなものでもなくね。ただ毎日そのままの、『Darlington County』さながらの感覚でね。『Glory Days』なんか、ただ誰かと話してるみたいだろう?そういう調子でやりたかったのさ。ただ誰かに会ってるみたいな感じで。『NBRASKA』の曲がそうだった。誰かに会って、少し一緒にいて、そいつはどんな生き方をしているのかなって考えたりする。じゃぁ、そういう事は自分にとってどういう意味を持ってるんだろう?それが、曲を作るにあたって俺の定めた方向だった。全体的にとても満足出来るものが出来上がったよ。一人の男が言わずにいれなかった事を言い、それを特に大袈裟でもなんでもなく扱う事だね。」

 では、今自分の歌の中に出てくるキャラクターはどれも現実に存在する、信じられる人達だと感じていらっしゃいますか?
「それは本当に難しい事なんだよね。『NEBRASKA』の為に作曲していた時、どうも自分で納得しきれない歌が幾つかあった。人間を上手く描けていないからなんだ。どんなに詳しく情景が描写出来ても、その一つ一つを結び付けるような、影の感情的なつながりが描けなければ結局なんにもならない。そうやって何も言えてない、って思ったんで『NEBRASKA』に入れるのを止めた曲が幾つもあったんだよ。気を付けないと、凄く見落としがちなポイントなんだ。自分で自分の曲を点検する時の指標もそこだけなんだ。信じられるかどうか、って。これは本当の事か?こいつをおまえは知っているか?ってね。上手い具合に、『NEBRASKA』の曲は2ヶ月もかからないで書き上がった。これは俺にしては随分速い方だよ。自分から家の中に閉じ籠ってね、普段とは大違いだった。朝から晩まで仕事ばかりしていたよ。机に向かっているか、ギターに触っているか。かなりの興奮状態だったんだ。それまでに書いたものとは違うし、一体どんなものが出来上がるのか自分でも分らなかったから。でも、『Highway Patrolman』だとか、『Nebraska』だとかは、ああいう書き方をして自分でも本当に満足出来た。これならリアルって感じた。まだその頃は、自分が何をしているのかはっきり分かってなかったんだけど、何となく一つの方向に進みつつある事は感じていた。」

 ああいう曲はどれも、当時アメリカで起こっていた事に対応していたんですか?アメリカ的な価値観を巡る状況に。
「さあ、それは分らないな。ただ俺が思うに、70年代に起こった一番大きな流れっていうのは、あらゆる不正が正当化されていったって事じゃないか。ウォーターゲートを皮切りにして。まったく狡猾で不正な事件だったよな。あれ以来ペテン師が、詐欺師が、麻薬の密売人が、全て正当化されてしまったんだ。捕まらなければ何をやったっていいんだ、っていう理屈の元にね。『お前、どんな悪い事をしたんだ?』って聴かれたら、『捕まったんだ』って答えしかあり得なくなる、ってわけさ。ちょっと変わった意味で『BORN TO RUN』は精神的なレコードだった。様々な価値観を取り扱っているという点でね。で、『NEBRASKA』では今度はそういった価値観の崩壊を扱った。一種の精神的な危機みたいなもので、その中で人間は途方に暮れている。もう、社会の中に自分が拠り所にするものがなくなってしまったような気持ちになって。政府からも切り離されている。仕事からも、家族からも。そして、『Highway Patrolman』なんかの中では、友達からすら切り離されているんだ。あのレコードの言いたかった事はそういう事なんだよ。この国じゃあ年中起こっている。ニュースにも頻繁に登場する。現代社会の不可避の一部分なのかもしれない。果して誰かが何か手を打てるのか、俺には分らないね。次から次へと起こる。何もかも意味を成さないと思えてしまう。家族との繋がりがない。友達とも本当には繋がっていないなと思う。そんな風に、孤独で、淋しくなるんだ。それが終りの始まりなんだよ、あらゆるものが外側で生きるようになって。そんな風に『BORN TO RUN』と『NEBRASKA』は両極端に位置するアルバムなんだ。で、『BORN IN THE USA』では色んなものにもっと懐疑の目を向けていると思う。もう出てくる人々も前と同じではないし、状況も違う。これは生き残った人々、最後に残ったものだと思うんだ。『Glory Days』『Darlington County』『Working On The Highway』なんかの登場人物が言ってる事は、大体そういう事だよ。もはや無垢なままではないんだ。だけど、もう10年も経ってるんだもんな。」

 つまり、あなたとあなたのキャラクター達は今や壮年期に直面していると?
「そんな所だね。俺は自分のキャラクター達も成長させたかった。成長しなきゃ。誰でもそうさ。『BORN TO RUN』の直後から、俺はそれを考えていた。で、思った、『俺は幾つだ?俺はこれだけ歳をとっている。だから、何かの形でそれを表したい』と。ありのままを表現する事、ふと、ロックの歌詞の中じゃそういうのって余りないなと思った。俺にとっちゃ、ほら、まさに人生そのものなのにね。人生。これしかない、こいつを表現しよう。『Racing In The Street』はそういう気持ちもあって書いた。俺はビーチボーイズの曲は大好きなんだけどね、『Don't Worry,Baby』とかね。ピッタリの気分の時に聴けば最高だよ。だけど、そこで思った、『じゃあ、今はどんな感じがする?』だからこそ『Racing In The Street』を書き、とてもいい気分になった。歳をとるにつれて自分自身の事、そして自分や家族の周辺で起こる事を書くようになってきている。『BORN IN THE USA』はそういうアルバムなのさ。『BORN TO RUN』が出発点で・・・おかしな事に俺はあのアルバムが自分の誕生日だって感じがずっとしてるんだ。ある日突然に、バン!と何かが始まった、何かが結晶化した、それが何かも分らない内にね。さて、今おまえは何をするか?これは重大な質問だ。俺にはオーディエンスがいる、彼等との人間関係がある。普通の友達との関係と全く変わらない、リアルな人間関係だ、不思議だよ。俺は74年に『BORN TO RUN』を書いて、今は85年で、何かがそれだけの時間に添うみたいにして起こってきたんだ。凄くいい感じだよ。」

 あなたの持っているロック的な価値観は、オーディエンスに対してはどう適用されるんでしょう?あなたが学び取ってきた事を、どう彼等に伝えます?
「それはパフォーマ−一人一人によって違う事だと思うんだ。もう、これ一つってものはないと思う。これさえ信じればいいんだ、なんて人に教える事は出来ないよ−−−自分の物語を示すだけさ。相手が一人でも大勢でも同じ事だ。俺にとっては、ステージに出て必死でプレイする事程『これだ!』って思えるやり方がない、ってだけで−−−そうやって、人に会う。みんなの顔を見る。そして家へ帰って一日を終えるにあたって、本当にヘトヘトになっているんだけど、何かが確実に起こったんだって感じる。俺には、ロックが誰に対してどんな意味を持つかなんて問いには答えられない。どこかの時点で、個人個人が自分の答えを見つけなきゃいけない事なんだと思う。みんなが一つの同じ答えを持っているなんてあり得ないよ。」

 では、あなたの音楽は『女と車のことばかり』と言われていますが、どうですか?
「みんなそう言うけどね、俺は気に入ってるんだよね、そういう批評は。おかしいんだ、24の時俺は『もう女の子と車のことは書きたくない』って言ったんだけど、ふと考えてね、『だけど、それこそチャック・ベリーが書いて歌った事じゃないか』って。だから決して俺だけ特別と言う事じゃなかったのさ。単なるジャンル分けの問題だよ。探偵映画、っ言うような。よく、マカロニウェスタンとどっちが良いかとか比べたもんだよ。」

 あるいは道徳劇と、ですか?
「そうだね、今より前の方がそうだったと思うけどね。でも、俺は全体を通して一貫性を保つ事に凄く魅力を感じていた。一つには、ジョン・フォードの西部劇があって、どうやったら上手くいくか、随分勉強させてもらったよ。それから、ウィリアム・プリンス・フォックスって作家に夢中になって−−−”デキシアナ・ムーン”とか、色んな短編を書いている人なんだけどね。とにかく、細部の描写が見事なんだ。”オープン・オール・ナイト”の中には実に感銘を受けたやつがあったな、名前は忘れちゃったけど。とにかく、そんなふうに全体を通してリアルさを保つ事に凄く関心があったわけさ。表面のすぐ下を見れば、一貫した一本の線が通ってるんだ。だから、女の子と車って言い方も俺は良いと思うよ。」

 でも、意識して様々なイメージを描いていますよね。
「そうさ、昔から映画が大好きだからね。それに、結局、音楽っていうのはイメージを沸き上がらせるものだと思うし。音楽の一番美しい所はそこだよ。ビデオの危険性もそこにある。もちろん、道具としては凄いし、とても良いものにもなり得るけど、物や人から生き生きとした生命力を奪い去ってしまう危険性もあるからね。良い歌の条件は、どれだけイメージを沸き上がらせるか、って事だと思うんだ。聴く者の中に何を引き起こすか?『Mansion On The Hill』のような曲は、一人一人にとって違って聞こえるだろう。そういう意味で、一人一人の生活の中に入り込んでいく歌だと思う。いつも自分の歌に求めるのはそこなんだ。いい歌が出来き、しかも、映画的である事。『NEBRASKA』はそういう映画的な特質を備えていた。その中に入っていって、人々の生活を感じ取れるんだ。人生に関わる美しいものだとか、不屈の精神だとかをね。」

 ところで、ファンの期待についてはどうですか?特に、あなたこそがロックンロールの王冠を継承した、と思われてる事については。
「そんな事考えられない話だよ。俺は考えもしないね。みんなどの時代かでヒ−ロだった人達なんだ。ディランやストーンズは今も大好きだし。あのね、自分のやってる事を考える時、二つの見方ができると思うんだ。一つは、これが俺の仕事で、この仕事が好きで、全力を尽くしているんだ、という考え方。勿論みんなの期待には気付いているし、時には闘いみたいになる時もある。でも、もう一方で、こういう考え方もあるんだ−−−俺は歌を書き、バンドをやってて、これが俺だ、という考え方さ。一年中、他人の視線ばかり引きずってはいられない。自分に出来る事をやるだけさ。勿論そういった類いのプレッシャー−−−人の期待なんかを全身で受け止めて生きてるのが張り合いになってる時もあるけどね。」

 あなた方はビール会社とか化粧品の会社といったスポンサーをツアーの時に付けませんね。いつかやるかも知れませんか?
「色んな会社から言って来るけどね。でも、あんまり俺の好みじゃないんだ。独立してるって事はいいよ。その為に始めた事なんだから。俺は自分の事を話しているんだ、誰か他人の話じゃない。自分の言いたい事を言っているんだ。俺が売るのもそれだけさ。音楽をやる前に幾つか仕事にも就きはしたけど、ギターを始めて手にした時、これで自分の道を歩けるって感じたんだ。そういう感じ方が一番好きだし、とても幸運だったと思うな。だって、どれだけの人が自分の水準を定めて自分の描いた円の上を走れると思う?」

 今回もまた『永遠に続くツアー』なんですか?
「まあ、俺達はいつだってそうだからね。一つには、レコードを作るのに結構時間がかかるんで、終わる頃にはありとあらゆる土地へ行きたくなるんだ。そもそも、それが一番最初のアイデアだったんだしね『TRAVELIN' BAND』っていうのが。みんなの所へ自分の音楽を運んで行かなきゃ。みんなのそばに、出来るだけそばへね。それが俺のやりたい事なのさ。自分がやりたい事ならば、みんなのためにもやりたい。全ては繋がってるんだから。結局は同じ一つのものの一部なんだ。だからこそエルヴィスのメッセージは深遠だったんだ。どんな所にいる、どんな人間にも届いた。どんな土地か、そこの問題は何か、どんな政府か、そんな事には関係ない。そういったものを全て飛び越えていくんだ。本当に心に響くんだよ。人間的にね。だから、ツアーは不可欠だよ。誰かがやって来て、みんな興奮して、叫んで、最高の夜になる。それこそが、ロックンロールのショウだよ。それだけで充分違うよ、何か違うものが感じられるようになる。俺にとっても、ステージに上がって、その時その時に感じられる事は、その時一回限りのものなんだ。俺が彼等に会い、彼等が俺に会う、たった一晩、前にも後にも一度だけの機会なんだよ。だから、大事にしなきゃ。今夜のデトロイトのショウも、みんなの叫び声が夜通し続く。俺はその為にやって来たんだ。俺が言いたかった事もそれだけさ。」



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