「あの当時、これは俺にとって最もパーソナルなレコードだったんだ。俺が子供だった頃、生活がどう感じられたのか、俺が育った家がどういう家だったのか、それを思い出させてくれる作品だったんだよ。そういう物を掘り起こそうとしていたんだよね。
自分の人生においては、あの頃、俺はある種の虚無と戯れているような気になり始める、そんな局面に差し掛かっていたんだと思うよ。俺は根の深い孤独感を感じていて、それでああいうキャラクターだとか、ストーリーに向かったんだと思うんだ。生い立ちの過程で出会ってまだ覚えている人達、特に親父の側の親戚だとか、そういった人達の口調、人生へのアプローチとか、そういうもんが音楽の中で反映してたんだ。それと同時に、『いや、ちょっと待てよ、もし自分がかつて逃げようとした自分の出自にもう二度と戻れない身になっていたとしたら、俺はこの先どうなるんだ?』っていう疑問の答えを見つけたかったていうね。あの頃、俺は色んな事に頭を悩ませていたんだよ。ある程度歳を取ると、自分のエモーショナルな生い立ちを作り上げてきた問題と正面から腰を据えて向き合わずに逃げ出した事が、ある代償として浮かび上がってくるんだね。22歳の頃、自分に言い聞かせた答えや屁理屈や嘘が、26や28歳くらいになってくると、どこかぎこちなく思えてきて、歳を取れば取る程、そうした代償は高くついてくるんだよ。俺はあの頃、そうした代償の高さが分るような局面を迎えていて、あらゆるものから切り離されているように感じて、あのレコードが形を作り始めた頃、自分が少しまともじゃないように思えてたんだ。だから、このレコードはそうした問題となんらかの関係があったんだね。人には人生の意味を解き明かすものが各々にあるもんで、それが人によっては友達だったり、仕事であったり、コミュニティであったり、連れ合いとの関係性であったりするものなんだ。でも、そういったものが失われたとしたら、そこで自分に何が残されてるだろうっていうね。だから、このアルバムの政治的な側面についてはこの頃、特に意識してなくて、むしろ、こうしたエモーショナルな、あるいは心理学的な問題ですったもんだしている人々を描くっていうものだったんだ。」「『NEBRASKA』では今度はそういった価値観の崩壊を扱った。一種の精神的な危機みたいなもので、その中で人間は途方に暮れている。もう、社会の中に自分が拠り所にするものがなくなってしまったような気持ちになって。政府からも切り離されている。仕事からも、家族からも。そして、『Highway Patrolman』なんかの中では、友達からすら切り離されているんだ。」
「聴く者の中に何を引き起こすか?『Mansion On The Hill』のような曲は、一人一人にとって違って聞こえるだろう。そういう意味で、一人一人の生活の中に入り込んでいく歌だと思う。いつも自分の歌に求めるのはそこなんだ。いい歌が出来き、しかも、映画的である事。『NEBRASKA』はそういう映画的な特質を備えていた。その中に入っていって、人々の生活を感じ取れるんだ。人生に関わる美しいものだとか、不屈の精神だとかをね。」
「このアルバムでは基本的に自分の仕事や自分の友達、自分の家族、自分の父親、自分の母親などから孤立している人達、かといって世の中で起こっている事や政府などと繋がりがあるわけでもない人達について歌っている。そんな事が起こったら、全てが崩壊してしまう。コミュニティの感覚を失うと、起こるのは精神的な崩壊だ。何ものもまるで重要ではないところに追いやられてしまうんだ。」
「『NEBRASKA』はどん底だった。ツアーから帰って来て、2ヶ月の間じっとしていて、それから全部を書いた。俺のベットルームで録音し、ミックスしてテープに入れた。俺はあれはいつも自分の最もパーソナルなアルバムだと思っている。25歳の時に信じていたいろんな事が上手くいかなかったらどうなる?そういった事が全て崩壊してしまったらどうなる?友達は自分を失望させ、自分は友達を失望させる。ひとりぼっちになったら・・・、生きていけるか?ずっとやっていけるか?」
「何もかもがとても暗く見えてくる。そういう制約を失ったら、もう何でもいいんだ。動きだした力−−−それは何かはよく分らないけど−−−俺が思うに、酷い苛立ち、支えになるものが見つからない、人間との接触不足、とかね?一番危険な事だと思うんだ−−−つまり、孤独だよ。『NEBRASKA』はアメリカの孤独について歌っている。人間が友達やコミュニティや政府や仕事から疎外されたら一体何が起きるか?、という事だ。そういうものは人を正気にとどめておくし、人生に少しは意味を与えてくれる。だけど、そういったものがなくなって、社会の基本的な制約が冗談であるような、ある種の虚しさに生きるようになったら、人生はある種の冗談になってしまう。そんな事になったら、どんな事でも起こりかねないよ。」
「『Used Car』は本当の意味で自伝的と言えるものだと思うよ。おふくろはこの曲が大好きだった。両親とも、この曲が気に入っていたのは、俺達がしょっちゅう車のトラブルを起こしていたからさ。まったく信じがたいぜ。ひどい車に乗っていた時もあった。今でも覚えてるけど、ギアがバックに入らない車に乗ってた頃は、駐車場から車を出すのにいちいち後ろに押さなきゃならなかったんだ。『NEBRASKA』全体が俺にとっては、青春時代のトーンを表しているようなものなのさ。まだほんのガキの頃から10代の半ば頃までね。あの曲は自然に出てきたような曲なんだ。」
「それは同情とか哀れみといった次元の問題じゃない。むしろ、そういった事件について書くことが何を意味するのか?、といった問題だと思う。俺の場合なんか、最後の方になるとチャ−リー・スタークウェザー(この曲のモデルとなった大量殺人の犯人)が俺について書いているみたいな気分になっちまったぐらいさ。」Nebraska