坪田直子さん−サラムム


異色作だが意欲空回り
 ともかく「異色の番組」であることはだれもが認めざるをえないところだろう.「南太平洋ミュージカル」と題して二時間の音楽劇.西サモア諸島を中心としたオールロケ.最近注目の東由多加(脚本・演出)率いる東京キッドブラザーズの本格的なテレビ進出.音楽に小椋桂,大野雄二と話題も少なくない.
 しかし,「異色」という意味では同時に,これほどまでに制作者の自己満足だけに終わった番組も珍しいようだ.まず第一は話がおよそわかりにくいこと.日本人の観光客らしい男女の一団が南の島に流れつく.「サラムム」はサモア語で「光」の意味.一行はそれぞれ都会で傷ついた人間で,西サモアのあまりに美しい自然と異質の文明に感動,はやり言葉でいえばカルチャー・ショックを受けて新しい生き方に目覚める,といった展開らしいが,実は,らしいとわかるだけである.途中で出演者が歌いながら泣き出すので,もう終わるのかと思ったら本当に終わってしまった.観光旅行に毛がはえた程度でいちいち泣かれていてはこっちも身が持たない.
 音楽も劇らしきものもあるが,音楽劇には遠い.東京キッドブラザーズのエネルギーも今回ばかりは南太平洋の大海原に吸い込まれたか.ひねったつもりの会話も浮き上がっただけだ.
 このところ南太平洋にご熱心の「電通」のキモいりで生まれた企画.最初に異色作とほめたが,考えてみれば南太平洋とミュージカルというのも陳腐ということに気づくべきだったか.(氷)

79/2/1 朝日新聞(東京版)朝刊 試写室の欄


bravie 98/12/5

このページに関する感想・お問い合わせは, bravie[at]sannet.ne.jp まで.(お手数ですが,[at]を半角の@に置き換えてください)