マン盆栽とは?

このページでは、僕が新潟日報の夕刊に連載していたマン盆栽関係の記事の中から、
入門講座と題したコラム? を掲載します。
当時の記事の監修は家元のパラダイス山元氏にお願いしています。
入門講座(1) マン盆栽とは?
1回目の講座にして、いきなり究極のテーマ。マン盆栽とは何か?ひとことで言うと、盆栽とフィギュア(人形)を組み合わせて、独自の世界を創造するもの、ということになります。
つくりかたには、フツーの盆栽のように難しい流儀や決まりごとなどはありません。つくり手自身の自然観や、社会への視点、人間のとらえ方などが、ひとつの鉢の中に表現されたマン盆栽は、つくる人、それを見る人、両方を笑顔にさせてしまうパワーを持ちあわせています。
権威や形式や伝統を突き破った潔さもさることながら、自分でやってみてわかる奥の深さ。鉢の上に繰り広げられる小宇宙。それが、マン盆栽の魅力です。
偉そうなことを書いてしまいましたが、ベテラン盆栽家も、鼻で笑っているアナタも、先入観を捨てて、マン盆栽の世界へぜひどうぞ。
入門講座(2) まず鉢を用意。
鉢です、鉢。マン盆栽でも、やはり鉢は一般的な盆栽用の鉢を使います。家元以外はまだ流派も流儀も存在しないマン盆栽ですが、粋でなければいけない、という決まりごとがあります。非常にあいまいですが…。間違ってもガーデニングブームに乗って買ってしまった素焼きの鉢や、いかにも洋風という鉢は使わない方がいいと思います。そんなものを使うくらいなら、カップラーメンの容器のほうが、ポップでましです。
盆栽用の鉢は、ホームセンターや園芸店で数百円で入手できます。偶然、どこかで安くそそられる鉢を見つけた場合は、迷わず買っておきましょう。気に入る鉢はなかなか見つからないものです。
使わずにとっておく鉢は、屋外で風雨にさらしておくと、味が出て、高そうな雰囲気を醸し出してきます。マン盆栽はお金をあまりかけずに、知恵を使ってつくりましょう。
入門講座(3) 苗木を入手する。
鉢が決まったら、苗木、土などを用意します。もし庭があれば、そこに植えてある木の枝を切って、挿し木してもいいでしょう。その場合、切り口を鋭角にした上、水に30分ほどつけてから、土に挿してください。そんな面倒なことはしたくない、という人は、園芸店で手ごろな苗木を入手します。僕の場合は、新津の大型園芸店をはしごして物色しています。じっくり探せば、安くていいものが見つかるはずです。
マン盆栽を始めたばかりの頃は、つい、盆栽としての見た目のよさで買ってしまいそうになりましたが、盆栽として素晴らしいものが、素晴らしいマン盆栽に仕立てられるとは限りません。
あまり熱くならず、高いものには手を出さないようにしましょう。ちなみに僕が育てている苗木のうち、一番高いもので4000円、安いものは500円程度です。そのあたりで充分でしょう。
入門講座(4) マン苔を調達しよう。
マン盆栽で使う苔は、マン苔と呼ばれています。園芸店でも売られていますが、苔にお金をかけるようでは、マン盆栽とは認知しがたくなります。では、どうするか。簡単なことです。家の近所や会社、学校のまわり、つまり、日常の生活範囲を注意して歩けば、道端に必ず苔は生えています。他人の庭や神社仏閣などの苔は、無断で採取しないように。
また山などにある苔は、下界、街に持ってきただけで枯れてしまうのでは、やはり育てる場所と同じような環境で育っている苔を採集するのがベストです。
マン盆栽を育てる上で、、一番頭を悩ますのが、苔の管理。ビロードのように美しい苔の状態を保つのは、非常に難しいことですが、頑張ってください。自宅の環境に適合する苔を入手できたら、大きな鉢で増殖するのも、いい方法です。
入門講座(5) そして、いよいよフィギュア。
鉢、苗木、苔がそろったら、あとはフィギュアを配置するだけです。これがなければ、フツーの盆栽のままです。マン盆栽家が一般的に使うフィギュアは、ドイツのプライザー社の鉄道模型用87分の1スケールのもの。新潟ではなかなか手に入りませんが、東京の鉄道模型屋さんなどで入手しましょう。
しかし、これ以外のフィギュアでも、全く問題ありません。百円のガチャガチャや、お菓子のおまけ、手作りものなどなど。大事なことは、毎日の水やりでフィギュアが流されてしまわないよう、接着剤で虫ピンにつけ、鉢に挿すこと。しつこいようですが、マン盆栽はお金をかけずに楽しむことが極意。自分で仕立てた盆栽をじーっと見て、その風景がどんなフィギュアを欲しがっているのか、感じてください。気分はもう、映画監督か、舞台演出家といったところです。
入門講座(6) テーマは必ず決める。
人がつくるマン盆栽を見ていると、感じるマン盆栽とそうでないものがあります。その違いはどこからくるのか? 僕はその作品のテーマがしっかりしているかどうかで、差が生まれると思います。確かに、盆栽にフィギュアを一体置いただけで、マン盆栽と呼べるかもしれません。しかし、意味もなく置くようでは、マン盆栽家とは呼べません。必ず作品のテーマを決めましょう。タイトルをつける、と言い換えてもいいかも知れません。
日常的なテーマから、社会を鋭く風刺するテーマ、宇宙ものまで。ばかばかしいものから、ちょっと考えさせられるものまで。テーマは自由です。自分の想像力をフルに発揮してテーマを考え、そして、その世界を鉢の上に創出してください。難しく考える必要はありません。自分のつくりたいものをつくるだけでいいのですから。
入門講座(7) 毎日の手入れ。
マン盆栽が、ジオラマと決定的に違うこと。それは生きているということです。つくればそれでオシマイではないのです。植物ですから、毎日の手入れは欠かせません。水やりは毎日行ってください。用土の乾き具合を見て、暑い日には2度3度やらなくてはならない場合もあります。日中は屋外でも屋内でも、4時間以上は太陽の光にあててあげましょう。しかし、苔は直射日光が苦手ですので、何かで日陰をつくってやるようにします。害虫は取り除き、害虫以外の虫は可愛がりましょう。
肥料としては、あまり強いものは与えず、米のとぎ汁程度でいいと思います。樹木ごとに育て方が微妙に違うので、一般的な盆栽の本を参考にするか、近所の盆栽愛好家と仲良くなって教えてもらいましょう。最後にひとつ、やはりマン盆栽には、情熱のマンボを聞かせてあげてください。育ち方が違うはずです。アーッ、ウッ!
入門講座(8) たまには気分を変えて。
マン盆栽は、あまり数を増やさない方がいいと思います。なぜかというと鉢が増えるとそれだけ手間もかかりますし、枯らしてしまう可能性も増えてしまいます。観葉植物などと違って、盆栽には違いないですから、剪定など、細かな世話が必要です。少数の鉢をじっくり育ててあげてください。
マン盆栽はフィギュアを変えてやることによって、全く違った作品に仕立てることができるので、少数の鉢でも、だいぶ楽しめます。季節や個人的なイベントごとに、フィギュアを入れ替えて楽しむ。これこそマン盆栽の醍醐味。同じ樹木なのに、鉢やフィギュアを変えただけで、世界が変わる。新緑の季節と落ち葉の季節では、フィギュアを変えない方が不自然です。マン盆栽好きの友人と交換するというのもアリでしょう。ひとつのマン盆栽には無限の楽しみ方が埋まっているのです。
入門講座(9) 家元・パラダイス山元という人。
マン盆栽の創始者はパラダイス山元氏です。たいへんマニアックな人物です。本業はカリスマ的人気のラテンミュージシャンです。1962年生まれで、日本大学芸術学部美術学科卒業。ちなみに僕も同じ年に生まれ、日本大学法学部新聞学科卒業。不思議な縁を感じてしまいます。
家元はマン盆栽の他にも、たこ焼きや餃子、入浴剤にも造詣が深く、会員制餃子の店も開店させてしまいました。また、グリーンランド国際サンタクロース協会から正式に認定された、アジアで唯一の公認サンタクロースと、その活動は多彩かつ混迷を極めているといっても過言ではないでしょう。とにかくユニークで何事にもこだわりを持つ人、というのが僕の印象です。マン盆栽は1990年頃から精力的につくり始め、数十回にもおよぶマン盆栽展を開催しています。なんだかギスギスしたこの時代、家元の存在自体がマン盆栽的なのではないか、と、僕はこのごろ思っています。
入門講座(10) 日本マン盆栽協会新潟支部とは?
日本マン盆栽協会新潟支部は、世界に先駆けて家元が公認した唯一の地方組織。なぜ新潟に? というギモンがあると思いますが、なかば強引に家元に公認をとりつけた、というのが正直なところです。支部をつくろうと思ったきっかけは、新潟市内の某書店オープニングイベント。その名も「ザ・マン盆栽バトル」。パラダイス山元氏とサエキけんぞう氏とのトークショーでした。マン盆栽講座もあり、一気にマン盆栽のとりこに。設立時のメンバーは僕と妻とカフェ砂場の超常連客の斎藤氏。事務局はカフェ砂場におきました(カフェ砂場は諸事情のため、手放しましたので、現在は「愛着工房いしかわ」に移設しています)。
以来、マン盆栽を広めるべく店に作品を展示、質問には丁寧に答えるようにしています。家元からは「会員はあまり増やすな」と言われてますが、そんな心配もなく、少数精鋭でこっそり活動しています。
※追記/HP開設を機に家元から会員1000人枠をいただきました。どうしよう。
入門講座(11) マン盆栽家のバイブル。
マン盆栽家のバイブルとも言えるのが、パラダイス山元著「ザ・マン盆栽」と「ザ・マン盆栽2」(芸文社刊)という本です。ここには家元がつくった多くのマン盆栽が載っています。マン盆栽のつくり方、手入れの仕方についても、詳しく解説してあります。マン盆栽愛好家に限らず、この本を眺めているだけでも、なんだか癒されている気分になってきます。
最初から海外進出をもくろんでいるようで、すべての文章が英訳されていて、実際に家元のところには、海外から賞賛のメールが届いているそうです。この本を見る人の反応は実にさまざま。喜ぶ人、異常なほどウケる人、真剣に見る人、ペラペラとめくるだけで全く興味のなさそうな人。そういう姿を観察していると、マン盆栽に向く人、向かない人がわかります。これからマン盆栽を始めようとする人は、まず、この本を手にとってみてください。それが第一歩です。
※追記/「ザ・マン盆栽」は文庫版(文芸春秋社)も発売になってます。
入門講座(12) マン盆栽を自慢しよう。
マン盆栽の楽しみは、どんなものに仕立てようかと考え、そしてそれが、ほぼ予想通りに完成した時のよろこび。一人でコツコツとつくっていても、思わず笑顔になってしまいます。他人が見たら、だいぶ変だと思うだろうけど。自分で傑作と思ったものは、やはり人に見てもらいたいと思うのが人情。これを読んでいる人が、もしマン盆栽をつくったとしたら、ぜひ、人に見せびらかしてください。そんなふうにしてマン盆栽がじわじわと広がっていったら、本当に楽しいと思います。
第一回目にも書きましたが、マン盆栽は自分の気に入った鉢、苗木、苔、フィギュアをそろえて、自分なりの世界を自由に創出するもの。完成されたものを手に入れるのではなく、創造するよろこび。マン盆栽という小さな鉢に広がる世界を、自分の手で生み出し、そして人に自慢してください。楽しさは保証します。くどいようですが、マン盆栽にはマンボを聴かせてあげてくださいネ。