劇団制作 さだ(コードネーム)による
第9回公演 春にして君の瞳に’01 ほんばんにっき

3月24日(土)

午前7時00分 序章

 さてさて遂に当日を迎えてしまったらしい。と、いうのも前日、初めて迎える公演の為に全然寝むれなかったため、会場に到着した時点でテンションはMAX状態で、頭の中もMAX状態。しかも何を隠そう、この私がプロデューサーだ。偉いのだ。しかも舞台監督だから、もー「舞台のことは俺に任せろっ!!」と豪語するぐらいドえりゃーのだ。服装もばっちり。赤いベストにジーパン、黒の長袖ティーシャツ、それに帽子にスニーカー。もう誰が見てもまさに舞台監督(決して釣り人ではない)。
 そのために誰よりも早く会場に着いて、準備をしなくてはいけない。同行してくれたケソさん(成田健二)と共に、ひたすら仲間達を待つ。多くの道具の搬入を待つ。もう春だと言っても冷たい風の中を、ひたすら待つ。あーっ落ち着かない!!そんな訳で劇団員がくるまであっちウロチョロこっちウロチョロと動き回って、挙動不審な男をやっていました。
 30分後、新人俳優の唯(斎藤唯)が車に全荷物を積んで登場。だがなぜか運転は座長(佐藤武)だった。何でも唯には車庫入れが出来なかったようで、運転を変わっていてもらったらしいとか。ついでに小森さん(小森里志)も登場。いつもどおり片手に缶コーヒー(カイロ代わりらしい)を持っていた。
 ホーリーには車が置けないため、唯が一旦車を戻しに行く間、時間がもったいないので荷物の仕分け。そして小森・ケソ両先輩にはポスター張りに行って貰う事に。そんな感じでワサワサと動き回っているうちに、当日スタッフを含む総勢11人の人たちが会場前に集合。……って紫紀さん(猪股紫紀)と美鈴さん(松尾美鈴)がいない。イキナリこれかいっ!と舞台監督は失意のうちにへこんでしまうのだった……。


午前9時00分 会場入り

 「よろしくお願いしまーす!」との声とともに、全員で仕込み(舞台組み立て作業)開始。舞台作りと照明吊りと楽屋作りを平行して行う、怒涛の忙しさ。飛び交う大声、鳴り響く物音、舞い散るホコリ!そんななか舞台監督の僕は、ただ一人砂漠で立ち尽くす旅人状態だった。「あっあの、どこに行けばいいの?」<お前は指示出しっ!


正午 舞台現る!

 当日スタッフが大勢来てくれたお陰か、順調に仕込みが進んでいるようで、何人かは順調に昼食を取れたようだった。何もない空間からあっという間に現れた舞台。ここで役者達は所狭しと動き回るんだなぁと感動。ちょっと涙ぐむ。いや、別に僕の測量間違いで舞台を作り直す羽目になって、座長様にえりゃー怒られた訳じゃないぞっ?! 
「おーい、サダ(愛称?)。これどうするんだ?」
「えっあ、だっ誰かに聞いてー!!」<だからお前が指示出すんだってば。


午後3時30分 仕込み終了!!

 何とか無事に仕込みが終了。何よりもけが人がなかったのが嬉しい。あとはキッカケ合わせ(照明や音響と舞台で合わせる練習)をするだけだ。
「おい、サダ!キッカケ合わせは何時からだ?」
「えっあ、3時30分を目処に……。ってもう30分だ。んじゃ、えーと……。」
皆様、本当にお疲れ様でした。そしてごめんなさい……。


午後4時00分 キッカケ合わせ

 さて無事仕込みが終わり、本番前最大のイベントキッカケ合わせに入ることが出来た。何を隠そう僕は照明でもあるわけで、この時間が唯一の練習時間でもある。ホーリーの照明は当日にならなければ、芝居中にどのスイッチを使うか分からないために、事前に練習するのは難しい。しかも場合によっては離れたスイッチを同時に点けたりするため、両手をめい一杯広げたり、下手をすればもう一個スイッチを追加する羽目になり、アゴを使うという荒業が必要になる。こんなこともあろうかと思って、僕は万策を巡らせて「Q出し(芝居中に照明をつける時に合図を出す係)」というポジションにいた。「タイミングよく、手を下ろせばいい」と考えていたのだが、実際照明を配置すると、人手が足りない……。世の中はそんなに甘くないのね。
 音響の方は、無事にキッカケと合わせることが出来た。しかし照明はというと、前途多難。
「おい、飯田(飯田淳一)!そっち持て。」
「石岡(僕の本名)、ボーっとしてるんじゃない。」
「塚ちゃん(塚越隆)、それじゃない。」
「せーのっ!」
パチッ!パチパチッ!!<同時につかなくてはいけないのだが……。という感じでした。さて初日に見に来てくれた皆さんはどう思われただろうか。


午後6時00分 開場

 色々とすったもんだがあったが、無事時間どおりに開場することに。うちの劇団では開演までの間に劇団員がステージにあがって、お客さんをおもてなしをすることが決まっていた。そして今回も例外ではないようだ。この日、舞台に上がったのはおそろいのシャツがポイントの謎のユニット「.Com(ドットコム)」。メンバーは小森さんにケソさん、それに森下さん(森下総一郎:当日いきなり参加)の三名。開場では(内輪?)大笑いだった。


午後6時30分 開演

 5分前の「天国への階段」を合図に役者とスタッフ、全員に緊張が走る。僕は開演にあたっての注意を任されており、てくてくと照明ブースからステージの方へ歩いてお客さんの前へ向かう。キョロキョロとあたりを見回す。ひっ人が沢山いるよー!!(当たり前だ)イキナリ緊張してしまい、手が震える震える。
 何とか終えて、一回ブースに戻る。人前に出た緊張とこれから照明をおこなう緊張とが、同時に来てしまい、もう私はだぁれ状態。取り敢えずギクシャクしながら所定位置に向かい、開演時間を待つ。……この5分は今まででもっとも長い5分だったと思う。そして6:30になり、直ぐに音響に合図を出し「春よ来い」のイントロが流れてくる。それに合わせ、舞台にいる桜子役の紫紀さんがゆっくりとしゃべり始める。開演だ。
 芝居は順調に進み……いや、トラブルもあった。開始15分後、劇団を抜けた武(佐藤武)に客演を依頼しに行く隅代(小森里志)のシーン。ここでは二人の近況を簡単に話し合って、隅代が「客演の依頼に来た」と言ってフリーズ(停止)するはずだった。しかし、なぜか隅代の手には台本がっ!!しかも武に渡してるしっ!!!役者は一瞬凍りついたが、武のナイスフォローで持ちこたえる。「えっこっこの台本はっ!?」……これって本音かな。団内ではこれを「小森キラーパス事件」と呼んでいる。


午後8時30分 終演

 大音量の「春よ来い」が流れる中、眩しそうに目を細める舞台の役者達。無事1回目の公演を終えることが出来た。嬉しそうに会場を出て行く人、考えながら出て行く人。様々だった。
 お客さんが出て行ったあとの会場は、恐ろしく静かになってしまう。何だか空間ごと捨てられたような、まさに抜け殻という言葉が似合うな、なんてちょっと浸ってみたり。役者もお客さんを見送りに行っているため、残されたのは僕を含むスタッフだけ。そこでちょっと役者のまねをしてステージに立ってみる。ま、バチはあたらないよな。



3月25日(日)


午前8時30分 起床

 ちなみに集合時間は8時45分。前日に舞台監督の仕事の事で主宰様から絞られておきながら遅刻??それはマズい、どーしよどーしよ!!ってな感じで寝坊をしてしまったのですが、高速で着替えて頭ぬらしてハブラシガムを噛んで出発。ごめんなさい、歯を磨く時間ありませんでした。そして猛スピードで自転車をこいで会場へ向かう。道路を斜行して、信号を無視して、乾いた空気に目を潤ませながらゼイゼイ息を切らして!


午前8時45分 会場に到着

 が、いるのは当日スタッフの二人だけ。先に入ったのかと会場入りもするが、だーれもいない。気を取り直して、いる人に指示を出し、掃除と音のチェックをやってもらうことに。すると主宰様や劇団員から電話がくる。「寝坊しました。」とのこと。……いや、僕は舞台監督ですから、いて当然ですから。ははは……はぁはぁ。<まだ息切れしている。


午前10時00分 小返し

 しばらく(?)して全員がそろい、何とか稽古が出来るようになる。今回は小返しといって、シーンごとの役者を含む全員の確認を行う。特に殉愛のシーン(武と千里がフォーカスされるシーン。その時の音楽がアルフィーの「殉愛」)や最後の暗闇のシーンなどは以前からつまづき安かったために、何度も繰り返した。


午後1時00分 開場

 何でもインターネットだと1時開演になっていた、という噂を聞いて急いで一階の入り口に張り紙を出すことに。「本日は13時より会場です」(原文ママ)。これを書いたのは何を隠そう、この僕。……すみません。<結局お客さんが来る前に指摘されて直しました。
 さてこの日、開演まで舞台にあがるのは、紫紀さんと座長。ユニット名は「世界最低会議」。それにしてもいつも打ち合わせなしでよく30分持つよなぁ……。


午後1時30分 開演(2)

 前日と同じように、諸注意の関係で前に出る。よし、今日はあんまり緊張しないぞ!と落ち着かせてステージの方に向かった。打ち合わせでは僕が出れば、舞台の二人はフリーズ(停止)する予定だ。狙いどおり、舞台での会話が一段落した所で到着。しゃべり始めようと紙を取り出すと、「でさぁー」(by紫紀さん)とまた話し始めたのだった。うわ、どどどどどーしよ、お客さん舞台見てるよ!僕すっごい中途半端じゃん!と思いつつ、終わるのを待つことしか出来ないのだった。<結局舞台の座長がきっかけを出してくれた
 後半になり、武が刺されるシーンのちょっと前でアクシデント。奈良(成田健二)が水下(斎藤唯)に「あなたに言われたくありません。」とキツイ言葉を突き刺し稽古場から出ていった後、それでも彼らの稽古は続く……ハズだったのだけど、何か照明ブースの近くから声が聞こえてきた。変だなっと思って後ろを向くと、けっケソさんが先に喋ってる!!とブースでは大騒ぎ。「どうするんだ、石岡。ここは舞台監督の力の見せ所だ!」と頭の中で声がした。が、そこの照明ポイントのスイッチを持ったまま硬直している自分がいたのだった……。


午後3時00分 終演・休憩

 今回も無事(?)に終了。お客さんが全員出た後、大体3時間くらいの時間が空くため、しばらく休憩となった。昨日・今日とボーっとする時間がなかったので、一時間くらい照明のスタッフ達とゆっくりとしていたが、よく外を見ると雨が降っている。それに気がついた森下さんがとんでもない指令を出していた。「伊勢丹から傘袋もってこい」え?傘袋ってあの雨の日に使うビニールの?「あれ売っているんですか?」もちろん僕の質問に解答は返ってこなかった。
 ホールでは座長達が休憩時間の間、照明の調整を行っていた。ホーリーのシステム上、どうしても端の方が弱くなってしまうそうで、修正をかけたらしい。(ちなみに僕のせいもある<照明操作ミス)
 するととんでもない事が発覚。
「あ、電球切れてる。」
前回公演では、この事実が発覚後、すぐさま遠出をして購入したとのこと。今回は前もって注文していたのでセーフであったが、こういうことってあるもんだなぁっと納得。<おいおい
 そんなことをしながらも、まだ次の公演まで時間があるために、僕は舞台に座っていた。何だか木の匂いというか、作った物の上だからというか、一言「舞台の上って落ち着きますよね」と呟く。すると照明を調整していた座長からこんな一言が。
「お前、次役者でいいんだな。」
いや、やりたいですけど、そっそういう意味じゃなくて……、えー!!


午後5時30分 開場

 遂に最後の公演が始まる。生憎雨に降られてしまい、客足は芳しくない。それでも雨の中、来てくれた人がいるんだなぁとちょっと感動。舞台では引き続き「世界最低会議」が場を盛り上げていた。が、下話になったとたん、何だか人事じゃない内容になっていた。あれ、何か変だぞとしっかり話を聞いていると、僕がネタになってるしっ!!しかもこれから諸注意に行くことまで言ってるしっ!僕のぷらいばしーは??
 雨の影響で遅れてくるお客さんのことを考えて、少し開演までの時間を遅らせてみたが、やはり状況は変わらず。舞台からは何気なく伸ばせ!との指示が出ていたが、バラシ(片付け)の事を考えると、5分が限度だった。


午後6時00分 開演(3)

 少し慣れた諸注意を追え、最後の公演に臨む。泣いても笑っても、この芝居はこれで最後なんだなっと思うと、気が余計に引き締まる。今度こそは、と思いを秘めスタンバイ。音響に合図を出し、ゆっくりと客席の電気を落としていく。ゆっくりと「春にして君の瞳に」の世界が作られていく。あら、舞台に千里(熊倉訓子)がいない。取り敢えずは問題なく進んでいるようだけど、一体どうしたんだろ(後日談、袖で寝てしまったらしい)。あれ?何か舞台も暗いぞ。あ、ボーダー(一番強く中心を照らすライト)がついてない……。げげっ!!やっヤバ。
 気を取り直して、集中。奈良が登場するシーンまで、話は進む。そして奈良が登場!って何か落としたぞ。あっ!!あとで武を刺す時に使う、インチキナイフ(刃が凹むやつ)じゃないか!とっとんでもない物を。きっと誰もが見なかったことにしたと思う。もちろん僕も。これじゃぁ本当に奈良はヤバい男だよ……。


午後8時00分 終演・バラシ

 カーテンコールを終えて、誰もがホッと胸をなでおろし、無事に公演を終えた喜びに打ち震えて……いる暇などなかった。ホーリー撤収は9時00分厳守。1時間で舞台を解体して、荷物を運び出さないといけない。お客さんが全員出たのを見計らって、すぐさま椅子の片付け、楽屋片付けを行う。もちろん指示だしは僕。
「よし、君は掃除をやって!君は舞台解体。箱と平は下が13に合わせて!!」
何が何でもこの時間中に終わらせなくてはいけない。僕は必死になった。が、それは頭の中だけだった。
「おーい。サダキチ!下(ホール倉庫)は平(平台)何枚だ!」
「えーあー、聞いて参ります!!」
「何枚使ってるんだ?屋上は何枚??」
「うーおー、7枚くらい。」
「くらいってなんだよ!!くらいって!!」
「んじゃ、7枚……です。」
「そーいう問題じゃないだろっ!!!!」<まったくだ。

 こんな感じで劇団員の怒りを買いつつも、無事にバラシは進んでいた。けが人もなく、何もかも順調だった。あの一件までは……。それは最後、照明を所定の位置に戻す時に起きた。照明用のコードを下ろす時、小森さんがコードをミスキャッチしてしまい、見事に照明コードは床に叩きつけられ飛び散ったのだ。誰もが呆然と床を見た。僕は取り敢えず深呼吸をして、ホーリーの受付に行き、事情を話すことに。
「あー、いいですいいです。気にしないで下さい。電源のそばにおいといてください。」
弁償って言われたら泣き入るところだった。ありがとうございます。
 こうして無事に第9回公演「春にして君の瞳に'01」は終わった。僕は罰として小道具である、買って一年経つ「ジョージアマックス」を一気飲みし、打ち上げに出ることが出来た。そのコーヒーは今までにないほど格別で、あまりの味に涙が零れ落ちそうになった……。絶対腐ってたって、あのコーヒー。



< 総 括 >

今回公演を迎えるまでに色々ありまして、それでいて当日も色々ありまして、僕らにとって順調って事は絶対無いんだなって思いました。本当ならあるけれど、気が付いていないのかもしれない。なぜなら順調ならば、そこにとどまることは許されないからです。多くの問題、アクシデント、失敗。もちろん無いに越したことはないのですが、あるからこそ一回の公演が僕達にとっての、ドラマになるし踏み台になるのです。皆さんはいかがだったでしょうか。中には雨の中に来てくれた方もいれば、無理矢理予定を潰して来てくれた方もいたと思います。それでも来てくれた皆さんに、本当に感謝します。僕達は今回の公演を終え、もう次の公演に向かって準備を始めています。今回きてくれた皆さんのために、また今回は来られなかったけど、前に来てくれた皆さんのために、更なる作品を準備してまた劇場でお会いしたいと思います。どうかお元気で!
(文責 石岡)