主宰ご挨拶
 プライベート・ソングと呼ばれる音楽があります。虎舞竜の「ロード」(人はベタな曲といいますが、結構僕はこの曲が好きなんですけど。特に2番目の方が)なんかはもろにそうなんだと思うんですけど。自分から特定の人物にメッセージを送っている曲に対してそんな言い方をします。

 伝えたいのだけど、うまく伝えることができない。相手に対して話すよ、結構巷にはプライベート・ソングがあふれているような気がします。つまりそれは、誰かから誰かへのメッセージがそれだけ送られているということです。

 それが、結構芝居の世界なんかではなかなかありません。せりふのひとつに意味深な文章を使うくらいのレベルではあるにせよ、なかなか1本の芝居全てがプライベートレベルものはないものです。もちろん芝居の場合は何人もの人間がキャスト・スタッフなんかで関係してくるので、1人でしこしこと曲を作るのとは訳が違うとは思うんですけど。

 だけど、芝居の世界にも同じようにプライベート・プレイという言葉があってもいいかなとも僕は思います。たとえばヒロインに思いっきり作者の好きな女性を投影してみるとか、自分の大好きな世界(=音楽、小説なんか)を思いっきり盛りこんでみるとか、昔の恋愛を思い出しつつ、思い出物語を仕立ててみるとか。

 僕自身、高校時代に別れてしまった女の子を思いながら、1つの戯曲を作り上演した記憶があります。そのときは非常に審査員には嫌われましたが、他の学校の高校生なんかには評判のいい芝居になりました。

 もちろん、芝居はエンタテイメントですから、自分の一人よがりばっかりでも見る側はうんざりして、くたびれてしまうので「見せる」意識は必ず必要なんですが、0の状態から「嘘」を作っていくよりも、はるかに奥の深い、情にあふれた面白い作品が仕上がるような気がするのです。

 そんなわけで、今回の芝居は僕にとっての「プライベート・プレイ」です。どこがそうなのか、僕のメッセージは何なのか?そんなことを考えながらごらんいただければ光栄です。ぜひ最後まで、ごゆっくりお楽しみください。では、
劇団CHAN'T 佐藤 武