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アイヌ人最後の熊撃ち狩人・姉崎さんの書いた本。狩猟のことのみならず、「山」のことが沢山書いてあってとても面白かった。
姉崎さんは、自分の師匠は熊であり、山のことは熊に学んだと言っている。熊のあとをついて行けば、自然と熊が好む地形、移動しやすい地形、などが分かるようになり、山のことをを覚えて行ったそうだ。熊が通れる場所は自分も通れる、熊が食べるものは人間も食べることが出来る、という持論で山での生活や掟を覚えて行ったそうだ。
姉崎さんは25年間のマタギ生活において、単独で40頭、グループ活動を含めて60頭の熊を狩っているそうなのだが、なんとその間一度も熊に襲われたことは無いとのこと。熊と1m2mの至近距離まで近づくことは何度もあったそうだが、それですぐに熊が襲ってくることは無かったそうだ。
姉崎さんが言うには、熊は好んで人を襲うような動物ではなく、むしろ人を怖がって逃げているんだそうな。その証拠に、姉崎さんは熊が沢山いる山の中を、夜でも一人で何度も歩いているそうなのだが、暗がりからいきなし熊に襲われたことは一度もないそうで、もし熊が本当に獰猛な動物だったら、自分はとっくに熊に襲われて死んでいただろうと言っている。夜の山の中では熊から自分はハッキリ見えて、尚且つ至近距離まで遭遇するようなシチュエーションが多々あったはずなのに、それでも熊は襲って来なかったと言うのだから、確かにそうなのだろう。
でもそんなおとなしい熊も、ふいうちにいきなし正面からバッタリ向き合うことになってしまったら、話はそう簡単ではないそうだ。そもそも熊は、人間は自分より強い存在だと思っているんで、バッタリでくわしたとしても、いきなしガオーって来ることは無いそうなのだが、背中を見せて逃げ出したら話は別で、ああコイツは自分より弱いんだなと思って追ってくるのだそうだ。また、死んだふりをしても、熊は好奇心でべたべた触ってくる確率が高いらしい。ならどうすればイイかと言うと、とにかく熊から目をそらさずに、不動のままで睨み付けるのがイイそうだ。そうすることにより熊に対して、「オレはお前にはビビっちゃいねえ。でもお前を襲おうなんて気もサラサラねえ。だからあっちへ行くな!」ってアピールになり、やがて熊もそのことを理解して去って行くそうな。この熊に会ったらガンつけるのが一番イイって話は以前にも何処かで聞いたことがあったが、この姉崎さんの山での体験談と熊との遭遇記を読んだ後だと、凄く説得力があるし、なぜゆえそうするのが一番イイのかの理由もハッキリ分かる。
アタシは本書を読んで、熊と言う動物が凄く好きになったし、山というものにもこれまで以上の憧れを持つことになった。また、何故熊が人を襲うことがあるのか?どうすればそういう不幸な事故が亡くなるのか?熊や自然と人が共存するにはどうすればイイのか?そう言ったことに対する答えは本書にハッキリ書いてある。それはたんなる綺麗ごとの理想論ではなく、熊という動物の習性、裏打ちのある山の生態系理論に基づいて書かれているものだから、とても読み応えがあり、尚且つ、これが本物の環境保護でありエコロジーなんだなあと目から鱗が落ちそうになった。
他にも熊の類まれなる知恵や面白い習性、熊以外の動物たち、猟犬などに関する面白いエピソードも満載で、正に面白くてためになる、読み応えのある一冊だった。
評価/★★★★★
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