| 関ミラ電網分室 | ![]() |
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きよしこのよる [1][2][3][4]
朝になった。新年の最初の一日が快晴で始まったというのが、アドフィードのつぶられた目からも分かる。彼は今、夢の世界から覚醒しようとしている。 (…明るい。外は晴れてるのか……。ん、 なんだこの音は? ザッザッザッと不連続に響くこの雑音のような音は……これは…………ホウキで掃いている音?) 彼は目を覚まし、気だるく体を起こした。自分のベットから小さいテーブルをはさんで向こう側にテキパキと掃除をしている…シンシアがいた。 「あら? アドフもう起きたの? まだお昼にはだいぶ時間があるわよ。…っと、それよりも…この聖夜祭の飾りつけねぇ、年が明けたら寝る前にすぐ外しておかなきゃね。今年のツキが逃げてしまうってこと忘れたの? ねぇ…アドフ聞いてる? 起きてんの?」 (起きて草々…アイツの言葉の嵐か…ったくもぉ、どーせ起こすつもりで耳元で掃除してたんだろう〜が。…やれやれ……) 彼はシンシアの方を見た。彼女は掃くのをやめてアドフィードをまっすぐに見つめている。…してやったりとした顔…しかし、その表情には邪気など微塵もない。 そうこうしている内に、アドフィードの頭も完全に覚醒してきた。そして………昨晩のことを思い出した。 (あぁっ! マズイ!!) 彼は慌ててこの寝室を見まわした。 (…いない…いや、もっともココにシムーンがいたらアイツがこんなに呑気にしているハズはないし…あっ、ケーキ!!) 起き抜けの格好も気にせずにガバッとベットから立ち上がり、隣りのリビングへ急いだ。すれ違い様シンシアに肩が当ってしまったが気にしない。 ドアの向こうへ行く…リビングのテーブルの上には…あたかも一人が食べ散らかしたように片づいているティーカップや食器、ケーキやお菓子などがあった。 (…あれ? ……昨日の夜のことは……夢だったのか?) 「アドフ、何慌ててるの? へんな夢でも見たの?」 シンシアも一呼吸遅れてこの部屋に戻ってきた。今のアドフィードの行動には、流石の彼女も少し気おくれしている。 「ねぇ、アドフ…返事してよ!」 持っていたホウキの端でアドフードのわき腹を小突く。彼はビクッと驚いて彼女の方に向き直す。 「えっ、いや…何でもないよ…そのぉ……A Happy New Year シンシア!」 「……A Happy New Year アドフィード…」 彼女は少々面食らったように返事をした。どうやら、シムーンのことはシンシアには気付かれていないようだ。もしバレていたら最後…今度はどうなっていたか想像もつかないし…もっとも想像なんかしたくもない。 アドフィードは落ち着きを取り戻すと、寝室に戻り着替えを始めた。シンシアもなんだかんだ小声でぶつぶつ言いつつも後を付いてくる。 「シンシア……、そのぉ…昨日はゴメン」 最初に言わなければいけなかった約束の言葉を思い出し、話しかける。 「……私が、そんな言葉を聞きたいためにココへ来たと思って?」 「……」 相変わらずシンシアは、取ってつけたような言い回しで答える。 『ワザと』だと分かっていても、たまに腹が立ちケンカする。でも、そんなケンカはすぐに子供じみているのに気付くので、大体は2・3日たってから自分が謝りに行くか、彼女がそれとなしに僕の部屋に来て、何て事はない世間話を話しだしたりするかで終り。これからも、こんな関係が続いていくのかなぁ…なんて思うと、つい可笑しくなって彼女を見つめている表情が次第に柔らかくなってくる。 「あぁっ、またそんな顔するぅ〜。ふん、ど〜せ私はあなたが『いいなぁ』なんて思っているような、素直でおとなしい女の子じゃありませんよ。それに…」 「いや、なにもそんなこと思ってないよ…シンシア…。それに、君は……君はその性格のままでいいんだよ。…うん」 彼は、昨日のシムーンの言葉を思い出して、彼女の喋りをさえぎった。 「…まったくぅ〜、ソレってちっともフォローになってないじゃない!」 「シンシア……好きだよ」 「……バカネ!」 シンシアの顔が少し赤くなった。当の言った本人はその10倍も赤くなっている。彼女は照れ隠しにリビングの方へと逃げていった。そして、一人になった彼はしばらくしてから着替えを続けた。 (はぁ…、しかし…客観的に見てかなり格好悪い状態で話をしていたなぁ…) そう思いながら、置いてあったズボンを持ち上げた。そして…そのズボンの下に何か光っているものがあるのに気付いた。それは、キレイに輝く黄色い宝石で飾られた三日月型のブローチ…シムーンが付けていたものだった。一緒にメモが気があるのにも気付き、急いで見る。 <アドフィードさん、ありがとうございました。これはほんの気持ちです。これからも、シンシアさんとお幸せに> アドフィードは慌ててそれを取るとポケットの中へ隠した。 Fin |