フリーターのための 個人型確定拠出年金
目 次
1.はじめに
2.では、なぜ個人型確定拠出年金なのか
3.個人型確定拠出年金の運営管理機関について
4.制度上の注意
5.年金資産の運用について
1.はじめに
現在の年金制度はややこしい。とりあえず整理してみると、
| 国民年金加入者区分 |
主な対象 |
1階相当部分 |
2階相当部分 |
3階相当部分 |
| 国民年金第1号被保険者 |
自営業者 |
国民年金 |
国民年金基金 |
| 個人型確定拠出年金 |
| 国民年金第2号被保険者 |
会社員 |
厚生年金 |
厚生年金基金 |
| 適格退職年金 |
| 確定給付企業年金 |
| 企業型確定拠出年金 |
| 個人型確定拠出年金 |
| 公務員 |
共済年金 |
共済年金(職域年金) |
| 国民年金第3号被保険者 |
第2号の配偶者 |
(不可) |
てな感じみたい。ここでフリーターとは、第1号被保険者の「自営業など」に該当する。要は、「会社員」や「公務員」や、「会社員や公務員の配偶者」でない20歳以上60歳未満の人間は学生でも無職でも全部第1号被保険者なのだが、どうも年金勘定の上ではフリーターや学生なんかも全部「自営業者」として通っているようである。実際、様々な行政や金融機関のサイトを見ても、フリーターのことを自営業者と同一視している向きがある。
そもそも「フリーター」を定義したのは厚生労働省であったのに、その厚生労働省の管轄する年金において「フリーター」の名前が登場せずに「自営業者」と呼ばれている事は異様とも感じられる。しかしその経緯を考えてみると、「フリーター」を定義したのはあくまで旧労働省であり、年金を管轄していたのは旧厚生省であって両者は今も赤の他人同士なのであるから、このような齟齬が生じているのは当然である。以下、この頁でフリーターと言ったらそれは年金表記における自営業者のことを指すことにする。
それで何故年金の話なのかというと、たとえば会社員とかなら厚生年金である程度払い込んでいるし、専業主婦とかなら払ってもいないのに年金だけもらえるという恵まれた立場なのだが、国民年金第1号保険者であるフリーターの場合はデフォルトで国民年金にしか加入していないため、放っといたら年金額がとても少なくなってしまうのである。まあ、国民生活白書とかによれば最近はそれすら払っていないという人もいるらしいがそういうのは論外として、この頁では無視する。
そのための上乗せの制度として国民年金付加保険料という付加年金をもらえる裏技も若干あるのだが、これでは焼け石に水なので、この頁では無視する。農業者年金基金というのもあるが、これは年間60日以上農業をやってないといけないので、これも無視する。また国民年金基金という制度に加入すれば厚生年金+企業年金の会社員と同じ年金身分を獲得する事は可能であるが、それもこの頁では無視する。なぜかというと、これは預けた本人は資金運用できないのである。はっきりいって、同様に自分では運用をすることのできない厚生年金とか共済年金とかは嫌々でも職業によって強制的に加入させられるものであり、フリーターの年金にはせっかく年金選択の自由があるのだから、そこで自分の意思で運用のできる日本版401kの個人型確定拠出年金にフリーター年金として白羽の矢が立てられたのである。これは、フリーターではなく学生あるいは自営業者の配偶者あるいは最近流行りのパラサイト・シングル、フリーターに似ているフリーランスと自称する人々いずれであっても、最低課税額を超えてしまって所得税をとられてしまっている全ての人にお勧めの制度である。
2.では、なぜ個人型確定拠出年金なのか
会社員とか公務員とかの国民年金第2号被保険者は本人が好むと好まざると厚生年金や共済年金などの2階建て部分に強制的に入らされ、それに応じて受け取る年金額も増えるのだが、フリーターなどの国民年金第1号被保険者はそのような義務が無い。そのせいで確かに同じくらいの年のサラリーマンより毎月の手取りが多いというのはあるであろうが、これは放っといたら将来の年金額が少なくなってしまう原因にもなってしまう。しかも、給与天引きで引かれる人はとても嫌がっているらしい年金だが、実のところは支払い金額は全額所得控除になっており、払っておけばその分の給与所得はなかったことにしてもらえるので、確定申告(いわゆる還付申告)すれば節税できた分ががっぽりもどってくることになる。しかも、年金運用の際に出た利益は全額非課税になっており、将来の受け取りの際も退職所得とみなしてもらって給与所得よりはるかに税率が低くなる。確定拠出年金資産に課税する特別法人税という魔法も一応存在はするのだが、これは現在凍結中であり、将来的にはおそらく廃止されるという説が有力である。すなわち、どちらかというと加入しないと損なシステムである。
個人型確定拠出年金の場合、実施主体となっているのは国民年金基金連合会であって、国民年金基金を管轄するのと同じ機関である。しかし国民年金基金とは違って明確に個人の資産として自分で運用ができる点がメリットである。また掛け金は社会保険料控除ではなく、小規模企業共済等掛金控除という控除が適用してもらえて、全額所得から控除される(ちなみに類似制度で誰でも加入できる変額年金保険で使える生命保険料控除は最高でも5万円が限度)。最高で月68,000円まで拠出できるから、そうすれば
12×68,000=816,000 (円)
も、「もらわなかった」ことにできる。その結果、最低税率の1割しか納めていない人でも、所得税でおよそ
816,000×0.1=81,600 (円)
も節税ができる。しかも所得税だけではなく住民税もおよそ
816,000×0.05=40,800 (円)
安くなるし、住民税に比例してかかるボッタクリの国民健康保険までもが、およそ
40,800×1.82≒74,000 (円)
ほども安くなってしまう、まさに一石三鳥なのだ。なお、国民健康保険税の課税ルールは自治体によって少しずつ違っていて、上の計算は、東京都特別区などでの「住民税額の1.82倍」という条件で行った。住民税額の何倍なのかは全国の自治体でかなり異なりがある。一般に、都会っぽいところの方が安くなっているようだが、それでもボッタクリには変わりが無い。本当は個人的には国民健康保険など払いたくないし、むしろ医療費は全額自己負担するからバックレて加入しないでいたいのだが、あとで加入するときに遡及的に2年分の保険料請求されるとかいうのも嫌だし、保険料は全額所得控除で所得税が安くしてもらえるので、泣く泣く払っている。しかし、住民税に比例してかかるというのは許せない。同じような健康状態で、同じ年齢なら同額にするべきだと思う。世の中理不尽なものだ。こんな理不尽な国保の制度は一刻も早く廃止して欲しい。
何はともあれ、このようなボッタクリに少しでも歯止めをかけられるのがこの、個人型確定拠出年金という制度に加入することである。今までの控除分を考慮すると、年間におよそ
816,000−81,600−40,800−74,000≒620,000 (円)
ほどの支払いで、816,000円から年間手数料6,000円ほどを差し引いたおよそ810,000円もの年金資産が作れるというのがこの制度のお得な点である。所得税・住民税の定率減税が廃止され、住民税の上昇により国民健康保険のボッタクリにも磨きがかかるような現状においては、ますますお得度は増している。(なお、自治体によっては、住民税額ではなく、住民税の課税総所得の方を基準に国民健康保険を賦課するところもあり、そういった自治体では課税所得から基礎控除のみを差し引いた額に国民健康保険の料率が決定されてしまうので、個人型確定拠出年金の加入によっての控除が使えず、国民健康保険に関しては全く安くならないところもあります。あるいはそうでなくても、もともと国民健康保険で上限の530,000円を盗られているような人の場合も、全く安くならない可能性があります)
上で例に挙げた月額68,000円というのは上限であって、実際には月額5,000円以上1,000円単位で加入できる。名目所得を課税最低限にまで引き下げれば十分な場合は、前もって支払額を調整しておいて良いのだが、一月あたりの支払い金額は年度ごとに自分で決めることになるため、変更したければ次年度の4月まで待たなければならない。そういう不自由さはある。だが、少なくとも老後のために貯金とかするぐらいなら、免税メリットのある確定拠出型年金に一定額でも加入しておく方がお得であるというのは言える。個人型確定拠出年金では加入者の過半数が支払月額を14,000円以下に設定しているらしいが、この年金は通常の年金の2階・3階部分を兼ねており、さらに後述する手数料の問題も考えると、できるなら支払月額は多めにしたほうが良いと思う。また、個人で投資信託を買う場合は通常、購入手数料というのがかかるが、確定拠出年金制度で販売されるものはそういった販売手数料が免除されていることが多く、そういう点でも魅力である。
以上、良い点ばかり書いてきたが、当然コストもかかる。まず、管理運営機関によって異なるのだが、手数料が年間に大体6,000円〜7,000円ほどかかる。さらに、運用資産には定期預金など元本保証の商品も選ぶことができるが、そうでないいわゆるリスク商品を選んだ場合は元本割れするリスクもあるということである。また、元本保証のある商品とは言っても、現在の金利水準では100万円程度ではとても年間5,000円〜6,000円ほどの手数料は出てこないので、自動的に資産金額が減っていくという逆のリスクも考慮すべきである。ただ、(実際には確定拠出年金加入者の多くが元本保証商品に資産を集中させている現状ではあるが)このような元本保証商品は個人的にはお勧めしない。基本的に長期にわたって運用するものであるから、元本割れリスクがあっても、いわゆるリスク商品の方が長い年月をかけた場合については期待値的にはリターンが大きくなるのである。なおそういう場合、一つの商品に集中すると変動のリスクが大きくなるので、複数の商品に分散するのが得策であるとは言える。むしろ何も考えず10個ぐらいのリスク商品に分割して積み立てる、という方法も(何も考えないでできる方法の中では)最強を誇っていて、下手にいろいろ考えて小細工した物知りよりも運用成績で上回ることもしばしばというのが投資の世界です。結果として、時間ごとに一定額を積み立てるドルコスト分散投資法になる、というのもメリットの一つ。
3.個人型確定拠出年金の運営管理機関について
個人型に加入する際には、自分で運営管理機関を選ぶことになる。現在は164の運営管理機関があり、中心の母体会社は大雑把に以下のタイプに分けられる。
シェアでいうと、損害保険ジャパンと東京海上日動火災保険がダントツのワンツーになっており、次は信用金庫の手続きを一手に引き受ける信金中央金庫の信金グループで、それに続くのは東邦銀行や栃木銀行や北國銀行など、個人型に力を入れている一部の地方銀行である。会社別の特徴などを見て行きたい。
@ 損害保険会社
これは東京海上と損保ジャパンの2社であったが、あいおい損保も開始して3社になった。シェアは一般的な損害保険と異なり、損保ジャパンが圧倒的トップをとっている。個人型確定拠出年金の加入者の5人に1人は損保ジャパンである。これは、損保ジャパングループが、東京海上のミレアグループとは異なり、損保ジャパンDC証券という専門の証券会社まで抱えているなど個人型顧客獲得に意欲を見せている姿勢のたまものだと思われる。とはいえ、他業種に比べれば東京海上も加入者をよく伸ばしている。なお、他の損保では三井住友海上が三井住友銀行、住友生命保険と協力してジャパン・ペンション・ナビゲーターという運営管理機関を作って確定拠出年金業務を請け負っているが、シェアはあまりない。
そもそも、個人型の確定拠出年金において損保ジャパンと東京海上の損害保険2社が強いのはどういう理由だろうか。これは、個人型確定拠出年金の最も主要な加入者と思われる自営業者という業種がそもそも損害保険にお世話になるケースが多いから、その縁ではないかと思われる。やはり、確定拠出年金というような導入されたばかりの得体の知れない商品を、得体の知れない金融機関で加入したいとはあまり考えないであろう。ところでこの2社の個人型確定拠出年金であるが、個人的にはあまり勧めない。まあ、間違いなく良いところはあって、それは年間の手数料が2社とも安いところである。特に損保ジャパンは年間手数料5,700円程度と、条件を満たせば無料のSBIイー・トレード証券を除けば業界最安値レベルとなっている。ただ、2社とも選択できる運用商品が疑問符?と感じる。
損保ジャパンの場合は、ハッピーエイジング・アニーという元本確保型の確定拠出年金傷害保険と、ハッピーエイジング20・30・40・50・60といった各年代向けの異なるバランス型投資信託5商品となっているのだが、いかんせんすべてが損保ジャパン系列会社の提供という点がきつ過ぎる。できればリスク分散のためにも外資・内資取り揃えた様々な商品提供会社が欲しいものである。
東京海上の方は、ねんきん博士という利率保証型積立傷害保険が異なる満期の2商品、他にはダイワMMFがあり、あとは東京海上セレクションとして日本債券・外国債券・日本株TOPIX・日本株式・外国株式・バランス30・バランス50・バランス70といった8種類の投資信託が用意されているのでバラエティとしては十分ではあるのだが、これまたやはりほとんど自社商品というすごいラインナップである。まあ一生東京海上におんぶにだっこに肩車したいなら、うってつけの運営管理機関である。なお、投資信託の後ろに数字が付いている場合、通常は株式組み入れ比率を示す。数字が大きいほどリスクが高い商品という意味なのだが、損保ジャパンの数字の使い方は数字の小さい方がリスクが高いという、個性的なタイプである。
あいおい損保は新規参入組だが、DCトヨタグループ株式ファンドというのがあったり物価連動国債ファンドがあったりJ−REITがあったりと、商品にバラエティがある。
A 地方銀行
地方銀行は全国にたくさんあるが、これらを全部合わせると、個人型加入者の半数近くのシェアをとっている。地方に行けば金融の中心は地方銀行なのであるから、地域密着で根付いているだけはあるのだが、結構銀行ごとに地域住民に対するシェアは差異が見られる。どちらかというと、このサービスにかける意気込みの差、ということに思われる。たとえば石川県の北國銀行の場合、北國個人型年金<はじめる年金>といった、個人型確定拠出年金自体への愛称を設定している。そもそも、会社員や公務員が加入できない制度なので、対象顧客は限られているはずなのだが、その上でこれだけの営業努力をしているなら加入者も伸びて当然である。
地方銀行の特徴としては、先の損害保険二社のいずれかと提携しているところがあったり、独自に商品選択をしているところがあったり、選べる運用商品数が5、6商品といった少なめなところがあったり、香川県の百十四銀行のように20商品以上から選べるところもあったりする。ドイチェやモルガンやゴールドマンなど、外資の会社の運用商品を取り揃えていたりするところも多いので、商品のラインナップとしては銀行それぞれと評価すべきであろう。ただ、地方銀行がそれぞれに個性があっていろいろあるとは言っても、実際には自分の住んでいる地域か、一つ隣の県の支店にお世話になっているのであろうから、それほど選択の幅はないのが普通と思われる。二つ隣の県の銀行とお付き合いするために一つ隣の県に出かけていくとか、遠くの県の銀行とお付き合いするために郵送だけで手続きをする道を探るなんてのは少数派であろう。まあ、このページの執筆者はその程度のことは平気でこなすタイプのお客様なのだが。
自分の手近にあるところをいくつか検討してみて、それで使いやすいところがあったらお世話になるのもいいかもしれない。地方銀行ならではの地域密着型の変わり種商品としては、静岡県の静岡銀行で大和投資信託が提供しているDC静岡ベンチマーク・ファンドや、岐阜県の十六銀行と三重県の百五銀行で東京海上アセットマネジメント投信が提供している東海3県ファンド(確定拠出年金)がある。後者は特に、対象が東海地方だからといって馬鹿にしてはいけない。このご当地ファンドは、個人型で加入できる全確定拠出年金向け投資信託の中でも、設定来では現在のところ他を寄せ付けないほどの高パフォーマンスを記録している。まあ、その一番大きな要因は、ファンドの設定時期が日経平均最悪の時期だったということによるものなのですが。なお、御当地ファンドとはいえ、結局組み入れているのは株式である。一般の投資信託でも、某県のご当地ファンドである『彩の国応援ファンド』は、大量に組み入れていた西武鉄道鰍フ暴落のために大幅に価格低下したりしている。親しみの持てそうな商品でありながら、実は一人前以上のリスクを持っている。気を付けて欲しい。
また、広島県の広島銀行では、SG中国株ファンド(悟空)という、国際株式型では珍しい中国株特化型がある。よくわからないが、ここでの中国とはたぶん国の名前だと思う。
B 信用金庫
信用金庫も全国にたくさんあるが、これらはすべて同一の内容である。信金中金がまとめて管理しているのだが、選べる運用商品はどの信用金庫を運営管理機関に選んでも全く同じになっている。80機関と数は多いが、このうちの加入者数ゼロのところも結構ある。しかし、全て合わせればある程度の加入者数を確保している。その商品性を見てみると、元本確保型だけで、信金中央金庫401K定期預金が満期1年、3年、5年のもの及び変動金利型で満期3年、5年と多彩なものが用意されており、投資信託は国内債券型、外国債券型、外国株式型でダイワ投信倶楽部、国内株式型ではしんきんインデックスファンド225、しんきんトピックスオープンが提供されており、さらにバランス型として日興アセットマネジメントの年金積立アセットナビゲーションファンド(株式20、40、60、80)がある。元本確保型の充実及び、商品の提供会社が3社あるなど、派手な外資の商品は無いが、必要最小限の商品性を確保していると言えるだろう。
C 郵便局
ここは企業型は扱わず、個人型専門機関となっている。当初は郵政事業庁が運営管理機関であったが、現在は日本郵政公社になっている。個人型確定拠出年金の扱いは全国全ての郵便局でされているのではなく、スタッフの充実した限られた局でのみ行われている。というのは、制度の内容説明などにかなりの時間を要するかららしい。一時期は銀行で解禁されている投資信託の窓口販売を郵便局でも認めるか認めないかが議論になって、結局のところ郵便局ではやっとこさ解禁される方向で決着が着いたわけだが、この個人型確定拠出年金の制度の導入において、郵便局でも間接的にではあるが投資信託の購入が解禁されていたことになる。いわば、郵便局が民間でも行われている事業に“公平な競争条件で”参入したら民業圧迫になるのではないかとの心配の中、それが具体的に実現してしまった例なのであるが、その経過はというと、……とても芳しくない。
まあ、いかに個人顧客がどうでもいいかということを思いっきり露呈してしまったメガバンクや証券会社や生命保険会社よりははるかにマシなのであるが、もともと個人客が主な営業相手であり、全国あらゆるところに営業拠点のある一大組織としては、パワー不足の感は否めない。はっきり言って、その図体のでかさで民業を圧迫するどころか、民業に思いっきり圧迫されている現状である。民間と公平な条件で競争したらまあこんなもんかといった結果になった。
ところでその郵便局の提供している確定拠出年金の商品性はというと、別にそんなに悪くない。他の運営管理機関と異なるのは、ゆうせいAプランとゆうせいBプランというのがあり、2つから選べることである。しかしこの2つ、提供されている投資信託が全く同じで元本確保型の各銀行提供預金の種類が違うだけ、と内容は大差ないのに手数料が微妙に違ったりしていて意味不明である。Aプランは住友信託銀行が金利固定型と変動型の定期預金を、三菱信託銀行が不定期の期日指定定期預金と10年の定期預金を提供しており、Bプランは中央三井信託銀行が金利固定型と変動型の定期預金を、りそな銀行が不定期の据置定期預金を提供しているのだが、元本確保の預金の提供会社という、本当にどうでもいい違いしかない。他にも記録関連運営管理機関が異なり、Aプランは日本レコード・キーピング・ネットワーク株式会社(NRK)という会社で、Bプランは日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社(JIS&T)という会社になっている。これは加入者には全く関係ないといって良いほどの違いである。なぜこんなことになったかというと、つまらない政治的綱引きの結果である。一つに絞ればいいのに、関係各団体との調和を考えていくつも採用して、しょうがないからプランを2分割しているのである。
それで、その悪くない商品性の話だが、どちらのプランでも残りは同じで、元本確保型として確定拠出年金用の通常郵便貯金と定額郵便貯金、定期郵便貯金および簡易保険として据置確定拠出終身年金保険がある。ただしこれは、一般の郵貯や簡保と合計で法律の定める限度額を超えられないので注意しなければならない。むしろ、そういう理由によって信託銀行などの提供する定期預金も設置してあるのだろう。あとは投資信託としてニッセイ、野村、日興、大和、富士投信、ゴールドマンサックス、フィデリティ、メリルリンチ、ステート・ストリートといったそうそうたる顔ぶれの提供会社が並んでおり、これは商品選択に困ることはない。
まあ、郵便局で個人型確定拠出年金を扱うにあたって、関係各業界からヒアリングしてどのような商品を置いたら良いかという意見を募っていたぐらいだから、その政治力を生かして内資・外資様々の商品を揃えているのだろう。ちなみにそういう関係各業界の機関も、郵便局の置くべき商品について「国民にとって身近な郵便局はこういう商品を扱うべきである」「逆に、郵便局はこういう商品を扱うべきでない」という意見を出していたと思ったら、いざ確定拠出年金制度が始まってみると自分達もまるっきりその通りに運営していたりするから結構笑える。
D 都市銀行・信託銀行
ここらへんのグループから、加入者数がガクッと下がる。都市銀行ではみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が、信託銀行ではりそな信託銀行がある。この他に三井住友銀行がジャパン・ペンション・ナビゲーターという運営機関を作っている。日本を代表する金融機関の群れだが、あんまり加入者数は伸びていない。伸ばしていない、といった方が適切か。どこの銀行も、儲かる企業型確定拠出年金のほうに主眼が向いているようだ。どちらかというと専門外だが、窓口があるので一応受付しています、といった感じ。規制緩和で銀行で何でも売るようになったのだが、はっきり言ってこういう専門外の商品を銀行に求めに行くと、窓口のお姉ちゃんが全然使えなくて、説明といってもただひたすらマニュアルを見ながらそれに書いてあることをその通りに教えてくれるだけ。そのマニュアル自体は良くできているみたいなのだが、はっきり言ってこっちに小一時間でも貸してもらって一人で読ましてもらったほうが銀行も余計な対応に時間や人員をとられず効率的なのではないかと思う。
この個人型確定拠出年金についても各銀行別に見ていくと、みずほ銀行は「みずほなら、人生まるごと、優遇します」というキャッチフレーズのくせに一生お世話になる年金については運用商品も積極的に公開していない有り様。昨年〜今年の株価上昇もあって(旅行備忘録カムイジなんて、それで行ったようなもんだし)、みずほ銀行にはとてもじゃないが足を向けて寝ることができないのだが、それでもちょっと加入する気にはなれなかった。三井住友のジャパン・ペンション・ナビゲーターも運用商品の公開には消極的。確定拠出年金制度の説明ばかりに重点を置いていて、他機関との比較に有用な情報はあまり公開していない。そもそも、三井住友銀行は、いかなる状況でも(同一支店宛てや、ネット振り込みでも)振り込み手数料が無料にはならないと言うとんでもない銀行である。こっちが「口座開いてやるから、手数料無料にして欲しい」とえさをぶら下げていっても、期間限定でも振り込み手数料無料の扱いはないらしい。振り込みなんて、無料が当たり前のサービスなのに、金を取る。これはひどい殿様商売だ。と言うより商売以前のモラルの問題だ。これが改善しない限り、僕は三井住友銀行になど口座を開いてあげることが出来ない。
三菱東京UFJ銀行は運用商品をはっきり公開しており、AプランとBプランの2種類がある。東京銀行と三菱銀行とUFJ銀行という3つの都市銀行が結果的に一緒になった銀行なのだが、名称もそれまでの東京三菱銀行から三菱東京UFJ銀行と、どさくさに紛れて三菱の名が先頭に踊り出ている。こういうことならいっそのこと三菱銀行とやってしまうのが最善であろうと思うのだが、日本人は回りくどいのが好きらしい。略称はミットンUFJとでも呼ぶのだろうか。それで、Aプランの方はターゲットイヤーファンドという特徴的な商品があったり、適度に外資の商品も取り入れていたりしていて商品選択のバランスは良い感じだ。Bプランはすべて自社グループ商品という面白い構成で、三菱におんぶに抱っこしたいならこれでもいい。
りそなは信託銀行の方が運営管理機関になっているが、りそな銀行でも委託申し込みを行っている。他の信託銀行はどちらかと言うと企業型にのみ力を入れているらしい。まあここは信託銀行なりに商品は充実していて、ソシエテジェネラル、プルデンシャル、シュローダー、ステート・ストリート、クレディ・スイス、フィデリティ、と充実はしているが良く見たら外資ばかりで逆に不安になるかも。そりゃ優秀な人も多いんでしょうけど、日本株とか日本債券の運用を外資onlyの投資信託から選ぶというのもねえ…。まあソシエテジェネラルは外資系とはいえ、旧山一系なので日本の会社と言っても良いかな。
E 証券会社
証券会社は、野村・日興・大和の三大証券の他に岡三証券とSBIイー・トレード証券がやっている。ただし野村は野村年金サポート&サービス、日興は日興年金コンサルティング、大和は大和ペンション・コンサルティングといった別会社を設立して運営管理にあたっている。しかし、これらの会社も主眼は企業型加入者であり、個人型のほうは、ついでに引き受けているような感じで全然力を入れていない。
野村證券は、いわゆるファンド・オブ・ファンズと言われる色々な投資信託に投資するタイプのバランス型投資信託マイストーリーが株25、株50、株75、株100および日本株100の5商品あり、それ以外に国内株式型が野村日本株戦略ファンドやシュローダー日本ファンドなど5商品、国内債券型が1商品、外国株式型はフィデリティ、外国債券型はゴールドマンサックスでそれぞれ為替ヘッジありとなしの2商品ずつ、それに野村MMFと元本確保型でみずほ・UFJ・三井住友の定期預金がある。為替ヘッジなしで外国債券型を選べば、円安期待の純粋外貨投資にもなる。それにしてもバランス型投資信託で100という数字(株式組み入れ比率100%、債券その他0%という意味)が見られるのはこの会社くらいである。証券会社にとって投資信託売ったりとかは専門中の専門なので、力を入れていないなりにガリバー健在でそれなりのサービスにはなっている。腐っても鯛と言うところか。
大和証券は株式が国内と外国でそれぞれパッシブとアクティブの2商品ずつ、債券が国内と外国で1商品ずつ、およびダイワMMFと三井住友の定期預金がある。しかし、定期預金以外はすべて大和グループの商品。上の方で東京海上や三菱東京が自社グループ商品ばかりであることを叩きまくっていたが、あれは超一流の三菱グループだからまだ許される。はっきり言って、三菱グループに三菱自動車と三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)以外の汚点などない。しかし、同じことを何のとりえもない平凡な会社がやったら論外である。この大和証券はフジテレビによるニッポン放送株のTOBの主幹事だったのだが、ライブドアにスキを突かれてしまうという大失態を演じている。どちらかというと堀江氏の機転による奇策というよりも、ただ大和証券SMBCが間抜けだったという事件である。
岡三証券はバランス型がすみしんDCマイセレクション25、50、75の3商品で、他に国内株式はアクティブタイプとしてフィデリティがあり、パッシブ型として2商品、国内債券、外国株式、外国債券は1商品ずつ、他に定期預金が3商品ある。ここの投資信託も野村、ニッセイ、モルガン・スタンレー、プルデンシャル、フィデリティ、住友信託と役者の揃った商品群である。てゆーか、同じ国内証券の野村の商品扱うかねえ。
日興証券は運用商品の公開に消極的なので、評価のしようがないが、せっかく加入してやろうかと個人が調べてみても情報が出てこない程度では、個人型にあまり力を入れてないことがモロバレだ。SBIイー・トレード証券は新規参入組だが、預かり資産が50万円以上であれば一部の手数料が無料になって年間の費用が他の機関の半額以下になることや、2大連合による寡占状態であったレコードキーピング業務を自前の関連会社で行なっていたり、J-REITの投資信託やグロ・ソブを入れていたりするなど、目新しい点がいくつかある。
F 農協
町村部では金融機関として、郵便局とデッドヒートを繰り広げている農協であるが、確定拠出年金のほうは大差をつけられている。理由は明らかで、農家の人はこれに加入せず、農業者年金という確定拠出型の年金制度があって、そっちは国からの補助も出るのでそっちに加入するらしい。で、そっちに加入したらこっちに加入できない仕組み。そりゃー、国からの補助が出るんならそっちに行くのでしょう。最近、フリーター問題や年金問題が話題になっているが、問題を解決したいならフリーターへの補助を国がするべきである。だって、問題が解決しなかったら困るのはフリーターじゃなくて国のほうだかんね。農業だって狭い国土でやるのは本来は非効率なのに、食糧自給率アップのために国策で補助出してんだし。厚生年金とかだったら企業からの補助があるのに、この確定拠出年金にはそういった制度が無いのもいただけない。まあ、国民年金は国からも出てるし、そもそも所得控除で十分すぎるといったらそうなのだが、所得控除程度だったら会社員にもある。特に、フリーターの場合は国民健康保険に入らざるを得ないのだが、株の売却益にまでかかってくる国民健康保険のひどいボッタクリはどうにかして欲しい。
で、農協の確定拠出年金なのだが、これは農林中金全共連アセットマネジメントが運営管理を行っていて、取り次ぎも全農協で取り扱っているわけではないらしい。農家が主体の地域社会において、農家が加入しないような制度なのだから加入者数も低迷しているわけだが、ここは運用商品としては確定拠出年金共済という珍しい共済商品を持っている。元本確保型では農中確定拠出年金1年定期と農中確定拠出年金5年ワイドがあるが、後者は普通の農林債券の新規売出しが停止されるといっているにもかかわらず、確定拠出年金用の商品としてはずっと続けていくらしい。これは、制度上運営管理機関はやすやすと商品を廃止できないことになっているためであると思われる。たとえば以前、新光証券が確定拠出年金の運営管理機関をやめたときも、個人型加入者全員から了解を取り付けたりしたらしい。ここらへん、一生にわたって運用する確定拠出年金制度ならではの配慮だ。
あとは、投資信託としてJAのMMF、JA日本債券ファンド、JA日本株式ファンド、JA海外債券ファンド、JA海外株式ファンド、JA資産設計ファンド【安定型】【成長型】【積極型】8商品がある。全部JAグループ商品です。もう何も言いません。JAとのお付き合いのある人はJAにおんぶに抱っこに肩透かしで良いのでしょう。
G 生命保険会社
日本生命、第一生命、明治安田生命、富国生命、ソニー生命の5社がやっているが、この類の会社の規模や顧客数から考えると信じられないほど、加入者数は低迷している。冷静に考えれば、生命保険なんて職場に勧誘に来るお姉ちゃんのおかげで契約者数が伸びているだけであって、一旦契約したら放ったらかしというタイプの業界だから、なかなかこういった新サービス導入時に改めて動く事は難しいのだろう。やっぱりここも、企業型確定拠出年金のほうにだけ主眼がいっていて、個人型についてはほんの申し訳程度にやっているだけだ。むしろ、誰でも加入できる類似商品である変額個人年金保険の方が明らかに販売に力が入っている(なお、変額年金保険は、生命保険料控除で雀の涙ほどの控除ができるものの、保険関係費としてやたらと費用をボラれます。現状のものは、若い人間には勧められない商品)。
商品性については、企業型のために力を入れて作った商品がそのまま個人型にも流用されているわけなので、各社ともそれなりにきちんとできている。日本生命が自社商品ばかりであるが、バランス型でグローバルタイプやヨーロッパタイプがあったり、外国株式でもコア型(大型株)とグロース型(成長株)が選べたりと、他には無いバラエティもあるし、そんなに悪くはない。まあこれは生命保険業界を圧倒的シェアで牛耳っている会社だから構わないということにして、富国生命も自社商品ばかりなのはいただけない。それ以外の会社は内資・外資取り揃えてバラエティあふれた商品性になっている。特に明治安田生命は、その名の通り明治生命と安田生命の合併でできた会社なので、両方の商品がまるまる合体して選べる商品の数はかなり多くなっている。ここも外国株ではアメリカ株型と欧州株型の2商品がある。
H 労働金庫
ここは労働金庫12庫が運営管理機関となっているが、この数字を若干上回った個人加入者数しかいない。まあここは、従来の年金制度から年金資金をそのまま移管して、新たな拠出はしていないという人(こういう人を運用指図者と言います)のための機関という色彩が強く、そういった運用指図者としての顧客は多く抱えているのだが、そういう事情でなければあまり個人としてここに加入しにいくというのはどちらかというと風変わりな選択であるらしい。
一応、商品性について見てみると、12庫どこでもほとんど同じで、元本保証の定期預金とトピックス連動型(東証時価総額に基づいて決まる東証株価指数に連動して動く投資信託)、225連動型(225社の株価、いわゆる日経平均に連動して動く投資信託)以外は、ニッセイのバランス型投資信託が3つ置いてあるだけである。選択の幅は狭い。
I 信用組合
ここは長野県信用組合と愛知県中央信用組合の2機関がやっていたが、現在は長野県信用組合のみのようである。全国信用組合連合会が中心となっているのだが、そもそも登録運営機関自体が全然増えてない現状だし、加入者についても運営機関数と比べてほんの数倍程度である。おそらく、お友達同士誘い合わせて、お近くの信用組合に依頼したら、多分運営管理機関になってくれるのではないかと思われる。
一応、商品性について見てみると、元本保証の定期預金とTOPIX、225の他に日興アセットのバランス型投資信託が4つ置いてある。
ということでいろいろ見てきたのだが、運営管理機関を選ぶポイントとして、年間手数料というのも実はある。機関ごとに違っていて、年間で1,000円以上取られる手数料が違うこともある。一般に、選べる投資信託が充実しているところほど高いのだが、一部の会社では投資信託が充実していないのに高かったりする。そして商品の充実性だが、これは普通の投資信託では購入時1.5〜3.0%ほどの手数料をとられることが多いのに対して、確定拠出年金ではそういうのは全て年間手数料にコミコミなのでとられないため、多彩な商品から選べる方がよい。日本・外国の株式・債券で4タイプは最低でも欲しいところであるが、やはりその運用会社は多数あった方が良い。同じ一つの会社と言えど運用担当者はまず異なるのではあるが、やはり損してしまった投資信託があったらそこと同じ会社は買いたくないであろう。それと、外国株式や外国債券タイプの投資信託は為替をヘッジしているのかどうかは重要である。為替ヘッジしないで外国株式や外国債券を買っていた場合、円高という本来一般の日本人には多大なメリットを及ぼす変化が起こったときに、円建てベースの資産減少で損失をこうむることになる。敢えて円安を予想して望むと言う売国奴的行為を行うのならそれでも良いんだけど。
4.制度上の注意
実際、加入する際に気をつけて置くべきことについて書きたい。まず、個人型確定拠出年金に加入できるのは、国民年金第1号被保険者と、企業年金などの制度が無い国民年金第2号被保険者であるが、このページで説明の対象にしているのは、主に国民年金第1号被保険者である。一応、この両者は拠出限度額が違う。というのは、企業年金などの制度が無い国民年金第2号被保険者の場合は2階部分として既に厚生年金に入っており、3階部分のみの扱いだからである。
また、加入資格の身分を失った場合であるが、たとえば国民年金第1号被保険者としての身分を失って、国民年金第2号被保険者になって厚生年金に加入した場合は、新たな環境で企業型ないし個人型の確定拠出年金の拠出や運用を続ける余地がある。しかし、同じ第2号被保険者でも、公務員として共済年金に入ったりすると、(職域部分があるため)新たな拠出はできず、運用だけを行う「運用指図者」という身分になってしまう。結婚などして国民年金第3号被保険者になった場合も同様に運用指図者となり、新たな拠出ができなくなってしまう。そういう運用指図者の身分になりたくない場合は、現在では加入から3年以内の場合に限っては完全脱退によって運用している資産を全額現金で返却してもらうことが可能になっている。ただし、この返却分には一時所得として(50万円控除後の金額の50%に)思いっきり所得税がかかってくるので注意。まあ、国民年金第3号被保険者というのはいわゆる専業主婦だから、性別によってはこのようなお気楽身分を手に入れてのうのうと生きていくのがなかなか非現実的だったりもするが。
この個人型確定拠出年金の制度は、国民年金第1号被保険者として国民年金保険料をきちんと払っていることがまず加入の条件である。最近は年金フリーターの未払い率が高いと言われているが、万が一バックレているような人は、これには加入できないので注意。国民健康保険とかはバックレていても大丈夫らしいが、上でも書いたように、このボッタクリの国民健康保険はいざ後でやっぱり加入しようとしたときには2年間分をボッタクラれるので注意。あと、国民年金の付加保険料(毎月400円)をもし払っていれば、確定拠出年金の方は月々の拠出限度額が67,000円に引き下げられてしまうので注意。国民年金基金に何口か加入している場合も、国民年金基金に毎月払っている額だけ、拠出限度額が68,000円から減額される。制度的には、付加保険料や国民年金基金は終身定額をもらえるというメリットはあるが、財務状況が…と個人的には感じている。
この制度は一旦加入すると、上に書いた加入資格喪失の場合を除いては原則60歳まで脱退が認められない。支払い月額も、年度ごとに自分で決定することになり、一旦決定したらその年度中は原則的には変更することができない。ただ、原則禁止とはいえ、理由を届ければ各々の月の拠出を見送ることもできるみたいであるし、そうでなくても国民年金の支払いを止めれば自動的に確定拠出年金の拠出も停止されることになる。ただ、あくまで老後になるまで手を付ける必要の無い資金の範囲内で拠出するのが原則である。無理はするべきではない。住宅やマンションのようないわゆる耐久消費財の取得予定がある人は、こんな年金に拠出している暇があったら自己資金を貯めるべきである。基本的には借金はするべきではないし、どうしてもしなければならないのなら、「借りる額を少なくする」というのが最も有利な投資行動なのである。よっぽど低利で借りられる借金があれば、のろのろと返済しながら余剰資金を投資に回して利差を取る、というのもありではあるが。
何はともあれ配偶者特別控除が縮小されたいま、税効果会計の面からはこれに満額加入しておけばたとえ独身の身分であっても、主婦・子供一匹ずつ雇っている家計を上回るだけの所得控除によって税金を安くしてもらえるのが大変魅力的である。そういった面でのメリットと、上に挙げたデメリットの比較衡量をして加入するかどうかを判断するべきである。
5.年金資産の運用について
商品別に見ていく。まず大きく分けて、元本保証商品と、そうでない商品とがあるので、その順に見ていくことにしたい。
@ 預金・貯金
ほとんどの運営管理期間にあるが、保険会社など、一部置いていないところもある。定期預金は1年、3年、5年、10年などの期間で固定金利のものが多いが、新潟県の第四銀行や石川県の北國銀行や三重県の百五銀行や愛媛県の伊予銀行では2年のものも置いてあり、信用金庫や郵政公社などでは3年や5年の変動金利のものも置いてある。福岡県の福岡銀行では自由満期の固定金利のものと、3年満期の変動金利のもの、といったユニークな商品になっている。
この定期預金は、スーパー定期と言う名称のものが多いのだが、これがいまだに意味わからない。どの辺がスーパーなのか、金利を見てもその違いが全くわからないからだ。
貯金は郵政公社だけだが、通常貯金、定額貯金、定期貯金で1年、3年、4年ものがある。特徴的なのは定額貯金だろう。10年まで預けられて、半年たてば解約自由というそのまんまの商品だ。なお、通常の郵便貯金で預け入れ限度額1,000万いっぱいまで預けている人はこれらの商品は利用できない。
あとは、農協の農中確定拠出年金5年ワイドもこの預貯金に準じる。
A 保険・年金
損害保険会社が提供するのは傷害保険で、5年物や10年物がある。確定拠出年金制度では各社とも最低一つは元本確保型商品を置くことが定められているため、無理矢理に保険で元本確保の商品を新たに開発するという、多分涙ぐましい努力はしている。しかし、保険と言えど、その内容は自分が死んだ場合だけ投資額が1.1倍になって帰ってくるという大変どうでもいいものになっている。一見意味がありそうで、こういうのは全然意味が無い。そういえば以前、外資系の生命保険会社とクレジット会社が提携していたらしく、クレジットカードの付録でただで入れる生命保険というのを勧誘されて、自分が死んだ場合には30万円くれるというものがあったが、いくら保険料ただとはいえ、万が一死んだ場合にすら30万円ぽっちしかくれないようじゃ、どう考えても自分に関する個人情報の方がはるかに価値があるので、まるっきりお話にならない。当然加入しなかったが、ひたすらDMが来てうざかった。クレジットと言えば以前、ヤングゴールドカードに切り替えませんかと言うのもうざかった。初年度は会費無料ですと言いながら、翌年以降はとんでもないボッタクリの会費を取る。まあ、こういうのをボッタクリと呼んでいる僕のような貧乏人には縁の無いカードなんだろうが。当然、僕は年会費無料のカードしか持っていない。こないだも、愛用のUCハローキティカードで年会費が取られ始めそうになったので、慌てて解約をして、みずほマイレージクラブのUCカードに切り替えてきたところだ。
それで、生命保険会社などではニッセイ利率保証年金など年金商品が置いてある。利率保証契約のことをGIC型と言うらしい。どうでもいいが、定期預金とほぼ同じである。こういう保険商品は保険会社の独壇場のはずだが、UFJ銀行でも大同の積立年金や日本興亜損保の積立傷害保険があったりする。郵政公社でも、簡易保険として終身年金保険が置いてあるが、例によってこれは、普通の簡保と合計で1,000万円までしか加入できない。まあ、こういった年金商品は、いずれも運用を完全に金融機関に丸投げするようなものだから、あまり確定拠出年金加入のメリットを生かしていない商品選択であるとは言える。
B MRF・MMF
それぞれ、マネー・リザーブ・ファンドとマネー・マネージメント・ファンドの略であり、一応投資信託に分類される。期間設定の多い上の商品とは違い、入れ出し自由であることが大きな特徴である。上に書いた中でも、郵政公社の提供する通常郵便貯金だけは出し入れ自由であったが、それ以外は何らかの(大変小さなものが多いが)ペナルティがある。
一応、元本保証はしていない商品群なのであるが、事実上はまず元本を割る事は無い。逆に言えば、それだけ安全な運用をする商品なので、リターンのほうもそんなに期待できない。実際にはかつてこういった商品が元本割れを引き起こした事はあったが、それはよっぽどの大事件の場合である。それも、元本割れを恥ずかしいと思う会社が担当だった場合は、会社による損失補てんといった可能性もないではないが、別に確実にしてもらえるわけでもない。
ダイワMMFは結構置いてあるところが多い。他には東京三菱MRFや野村MMFやJAのMMFがある。
C 共済
確定拠出年金共済は、元本の80%を保証する仕組みの投資信託である。農協にしかないが、なかなか類似品もないため、これだけで1グループ作るしかなかった。元本80%保証という特殊性を除けば、以下に挙げるリスク商品としての性質を多く持っている。
D INDEX(指数)型
厳密には、ここで扱うのは日本株式型のもので日経225平均(いわゆる日経平均)や、TOPIX(東証株価指数)に連動して価格が変化する投資信託である。ETFといった名称で呼ばれているものもこういったタイプの投資信託だ。もちろん、指数と言っても債券指数や外国株指数などもあるのだが、それは後の個別の分類で触れることにして、ここでは取り扱っている運営機関が多く、商品の性質もわかりやすいこの2種類についてのみ取り上げる。
どこの会社が扱っているものでもほとんど同じなのだが、要は日経や東証が発表する指数に合わせてうまく価格が変化する投資信託を各社が提供しているのである。パッシブ型運用といわれるもので、何も特別なことをせず、ただ受動的に銘柄を選択しているので、その分運営者に対して支払ういわゆる信託報酬は少なめになっていて、その分はお得であるとも言える。また、積極的な運用の投資信託の運営成果は、高い手数料に見合うほど優秀ではないのではないかと言われることも多く、そういった面からはこのような受動的運用の投資信託のニーズが高まっているとも言える。
日経225の方は、日本経済新聞社が選んだ225社の株価の単純平均の指数であり、日本の株価の平均値の名称としてのブランドは高いが、実際には日経といえどたまにすごい不祥事も起こす一民間企業だし、朝日ほどではないにしろごく稀に偏向報道も見られるし、別に日経平均は完璧な指標でもない。日経の担当者が恣意的に225社を選んでいるので、下手な銘柄入れ替えの繰り返しによって「日経平均」は暴落したとも言われているほどである。もちろんそんなことは日経新聞には書いていない。まあ日経新聞も経済ニュースではたまにスクープも飛ばすが、それは総合誌であるほかの新聞社が経済にあんまり力を入れていないというだけであって、名前に経済と付く新聞社が経済のニュースについて深いのは当然なのだから別に威張ることではない。日本アイドル新聞という新聞があったとして、アイドルの情報が弱かったらお話にならないというのと同じことだ。で、この225社の日経平均だが、株価の単純平均のため、値嵩株の影響を受けやすいという欠点もある。それはどういうことかというと、100円台の株が20円上がっても、500円台の株が20円上がっても、日経平均は同じだけ上がるという意味である。実際の所有者からしてみれば100円台のが20円上がった方がすごい上昇なわけだから、そこらへんが株全体の実態を反映していないとは言える。(なお、無額面株や5万円額面株などは50円額面に換算します)
TOPIXの方は、東証時価総額(東証一部に上場している企業の時価総額の合計)を指数化したものである。時価総額とは、株価×発行済株数によって表される金額であり、その企業の値段と言える。ただし、実際にその企業の買収にかかろうとすると、その瞬間に株価が高騰を始めるので、理論的にはその何倍もの金額が必要になるわけではあるが。この時価総額の平均となると、単純平均の場合と違って、実際に動いている資産総額の変化を反映することができる。これも、時価総額の大きい銀行やハイテク株にひきづられやすいという特徴はあるが、一民間企業のヘマによって値やその性質が大きく変わる指数よりはマシかと思う。ただ、上場企業すべての平均なのだから、もしかしたらあなたの嫌いなあの企業も含まれているかもしれない。そこらへんは割り切るしかないが。
以上、お小言ばかりになってしまったが、そもそも万人に納得の行く株価の平均や指数なんてのは絶対に存在しないのである。その中身について自分なりに納得した上で投資するのであれば、別に構わないであろう。特に、このようなパッシブ運用は、何もわからないけど日本がこれから成長する方向に賭けてみたいという場合には最適の商品である。人口が減っていく国は衰退するに決まっているとか思っている人は避けるべきです。まあそんな人はさっさと日本から出てって、外国での生活をとっとと始めるべきだと思うんですが。
E 日本債券型
日本の債券で運用する投資信託である。いわゆる公社債を対象としている。まあ、わかりやすく言えば国債で運用するという感じだが、当然、それより利率の高い公社債はたくさんある。ただ、安全性からは国債が一番というのが、動かしようの無い事実だ。ぶっちゃけ、銀行の普通預金や定期預金、郵便局なんかもかなりの部分の資金運用は国債なので、実際には国債を買っているのと同じだ。それも、国債より一定利率引かれた(すなわち郵便局や銀行がボッた)形での運用である。だから、定期預金するくらいなら国債を直接買う方がはるかにマシなのである。また、最近は個人向け国債が流行っているが、あれは定期預金などよりはマシな商品であるものの、やはり本物の国債より常に0.5%の利子をボラれた形でお届けされるような商品となっている。もちろん、個人向け国債は、変動金利であるという特徴があるが、あれは利子が将来において上がっていくという前提において意味のある条件である。いくら、現在が低金利であるからといって、将来がそれに比べて高金利になるとは限らない。むしろ、将来が高金利であると確信するならば、景気が回復するということなので、変動金利債券よりは株式の方がよっぽどまともなリターンが得られるのである。大体が、機関投資家(いわゆる法人)には、変動金利の15年国債が全然人気がなく、固定金利の10年や20年国債が圧倒的人気を(この“低金利”下においてすら)誇ることからも、勝負は見えたという感じだろう。
で、そのような固定金利の国債を直接買えば、ボッたくられない。それが債券型投資信託である。まあ、信託報酬の分はボラれるわけだが、株式型投資信託に比べればその比率は微々たるものである。ということで、その日本債券(国内債券)で運用する投資信託なのだが、これはNOMURA-BPI総合指数に連動したパッシブファンドが最も多い。他にはダイワ・ボンド・インデックス(DBI)総合指数、シティグループ日本国債インデックス、日興債券パフォーマンスインデックス(総合)などのインデックスがあり、これらの指数に対して連動することを目指したパッシブ型と、これらの指数を上回ることを目指したアクティブ型の違いがある。シティグループというのは以前はソロモンスミスバーニーという会社だったので、シティグループのものは以前、ソロモンスミスバーニーインデックスというものだったらしい。
こういう債券の運用は、利率の高い債券を買ってきて、利率が低くなったら、高い利率のもらえる債券を売り払って利益を得る、といった感じ(あとは普通に利子をもらう)なのだが、株式と違って、利益を出すのに多くの資産が必要なので、基本的には全資産に対する利益率は低い。しかもこの現在の低金利下では、日本債券など、運用結果にそれほど差が出ようはずも無い。従って、どのファンドを選んでも基本的には大差ないだろう。このままの低金利が横ばいで続くのであれば、安全な運用としてお勧めであり、また利子率がさらに低下するようであれば、積極的な運用としても良い商品ではある。
なお、あいおい損保では物価連動国債ファンドを扱っている。
F 外国債券型
世界中の公社債などの債券に投資するタイプの投資信託である。もちろん、その中の一部には日本の債券も含まれているが、ことさらに日本の債券を除く場合も多い。わかりやすく言えば、外貨預金みたいなものだ。低金利の日本のものよりは高い利回りでの収益が期待できる可能性もある。ただし、外貨預金の場合は特定の外貨に集中したり、銀行がとんでもない手数料をボッたくったりするのに対して、債券型投資信託の場合はそれほど手数料は高くない。しかも、確定拠出年金で買うのなら手数料無料だ。扱うのは世界の資産になるので、円レートが変化したら資産価格が変化してしまうことになる。そこで、大まかに分けて円レートの変化によらずに債券価格の変化だけを受けるようにするための為替ヘッジタイプと、円レートの変化もそのまま受け入れるヘッジなしタイプの2つがある。具体的に言うとヘッジなしタイプは円安になったら大儲けできるのだが、円高になったら大損する。一方、為替ヘッジタイプは、円買いによって円高リスクをヘッジしているので、金利の高い外貨売り&金利の安い円買いの組合せということでヘッジコストと呼ばれるものが生じる。
大まかに分けて、最も多いのが円ヘッジを行わずにシティグループ世界国債インデックス(除く日本)の連動を目指したインデックスファンドだ。このベンチマークを超える運用を目指すアクティブ・タイプも多い。円ヘッジを行うものが選べる会社もあるが、数としては少な目である。特徴的なものとしては、GSのダ・ヴィンチは円ヘッジを行って日本債券も含んだ世界債券の中でMSCIワールド・インデックスやJPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックスなどをベンチマークとした運用を、コンピュータ・モデルによって行なっている。
基本的には株式が好調なら債券は不調なことが多い。株式が不調のときには債券が活躍する。また、為替の動きが円安になりそうだと思ったらヘッジなしタイプ、円高になりそうだけど外国債券が買いたいと思ったらヘッジありタイプにすると良い。
地道に書いていく予定。
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