無名草子
黄48-1 無名草子 付現代語訳
山岸徳平 訳注
発行年月日:昭和48年11月30日

(通常目録より)--------------
 小説的手法と流麗な文体とを駆使して、華やかな王朝の諸作品を多面的に解釈批評する本書は、確然たる批評精神にささえられて、王朝の美意識と根底思潮を浮彫りにする完成度の高い物語評論である。言及された散逸物語を解明するための文献的価値も高い。斯界の権威の厳密な校訂と注釈を得て、信頼できる数少ない教本を提供する。
 

内容
 この本は、以下の内容を含んでいる。
  ・無名草子 本文
  ・無名草子 現代語訳
  ・解説
  ・校異
  ・散逸物語解説
  ・重要語句索引
 底本には藤井乙男氏旧蔵天理図書館本「無名物語」が用いられ、彰考館蔵「建久物語」、群書類従本などによって校訂されている。『無名草子』という名前の由来は実際に名前がなかったからであり、建久というのはこの作品が記された時代をいっている。作者は確定していないが、藤原俊成卿女(越部禅尼)と見る説が有力。年代はちょうど西暦1200年頃。
 『大鏡』の形式に倣って数人で語り合う形で記されているが、物語論・女性論と順に語っていったところで男性論については語らずに筆を置いている。これは既存の作品と異なり、女性としての立場からの主張を大いに表現したものと見て良いであろう。
 なお、岩波文庫黄帯107-1『無名草子』は底本が同じであり、活字も大きくて手軽に読めるのだが、出た時期が古いために現在では適切でないとされる本文も含んでいるので注意が必要。こちらは初版が戦前で、平成元年3月のリクエスト復刊で戦後初の増刷がなされている。それ以来復刊されていないため、岩波文庫のカバー付き『無名草子』は現在までに存在していないのでこれも注意。
 

読んでみて
 この本は最初の頁から読み始めない方がいい。最後の女性論から読んでいくべきである。物語論は、古典に関してあまり詳しくないうちはさしずめ自分の知らないことについて周囲でオタク達にやたら熱く語られているといったような印象を覚えるであろうから、とても読めたものではない。だが、それらの物語を読破した後で該当部分を読んだりすると、やっと味わい深い思いをすることができる。そのときまでおあずけにするのが賢い。
 女性論の方はいろいろと興味深い話も出てくるのだが、ここらへんは『古本説話集』『世継物語』『宇治大納言物語』などとの影響関係が指摘されている。突飛な話に対して、作者が普通の感想を述べるという点もちょっと面白くはある。
 この本は、現存していないいわゆる「散逸物語」の題名などが記された資料としても貴重である。とはいっても、専門家以外にはほとんど関係のない事項ではあるが。
 

入手について
 この本は再版までのものしか確認していない。すべてカバー付きのはずである。なお、岩波文庫版は戦前のものと平成元年復刊ものしか無いので、角川文庫版と岩波文庫版が同時に店頭に並んだ時期は無い。
 
 

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