Pro/DESKTOPは設計に使えるか?

評価バージョン:Pro/DESKTOP version 4
使用ハード:PC-9821 RV 226N20 Windows NT4.0 SP3 160MB RAM
CAD&CGマガジン1999年09月号に掲載

カジュアル・ユーザにも学びやすく
使いやすい3次元CAD

 

日本パラメトリック・テクノロジー株式会社から、Pro/DESKTOP日本語版の出荷が開始された。

同社の主力製品であるPro/ENGINEERを補完する概念設計用のツールとして、学びやすさと使いやすさに重点が置かれているということなので、3次元設計の考え方なども併せ、Pro/DESKTOPの概要を紹介してみよう。これから、3次元CADの導入を考えておら れる皆さん、あるいは「3次元CADを導入 してはみたけれど」と悩んでいるユーザの参考になれば幸いである。

早速、評価版(Pro/DESKTOP 4 SP2)をインストールしてみたが、通常のWindowsアプリケーションと同様にあっけなく終了 し、途中で面倒な設定に悩まされることも なかった。評価版CDは、100ページ足らずの小冊子「Getting Started with Pro/DESKTOP」に同梱されている。この小冊子は英文のままであるが、基本的な操作はヘルプに付属する日本語のオンラインチュートリアルで自習することができる。


基本的な操作は
オンラインチュートリアルで学習

 

Pro/DESKTOPのモデリングはフィーチャと呼ばれる単純な形状特徴を利用しながら複雑な形状を作成していく「フィーチャベースモデリング」手法を採用している。同社の Pro/ENGINEER を始め、ソリッド系3次元CADの多くがこの方法を採用しているので、何らかの3次元CADを使用した経験があれば、マニュアルなしでも一通りのことはできるだろう。

フィーチャの種類は 押し出し 投影 回転 スイープ ロフト といった基本的な要素に加えて 角Rエッジ エッジの面取り ドラフト面 変形 ソリッドのスケール シェル  コンポーネント使用 が提供されている。フィーチャの作成に必要なオプションは各メニューのダイアログウィンドウでまと めて設定できるので、Pro/ENGINEER の深い階層メニューに比べれば、初めての人にとっても馴染み易くなっている。

オンラインチュートリアルに従って、基本的なモデリングの手順を追ってみよう。

ファイル メニューから 新規作成 で Design モードを選択すると、新規デ ザインウィンドウが開く。デフォルトで座標系とワークプレーン(ベース、正面、側 面)が準備されており、「ベースワークプ レーン」と「初期スケッチ」がアクティブ になっている。ちなみに、Pro/DESKTOP のワークプレ ーンは Pro/ENGINEER におけるデータ ム平面に相当する。

簡単なプーリを作成するために、側面ワ ークプレーン上で 新規スケッチ を選択 して、円形のプロファイル(外形線)をス ケッチする。拘束が強い Pro/ENGINEER などの3次元CADでは、スケッチの時点で全ての寸法を過不足なく定義しなければならな いが、Pro/DESKTOP ではプロファイルに拘束を付加しなくてもスケッチを終了することができる。(もちろん、全ての拘束を定義することも可能である)

フィーチャ 押し出し で、押し出 す距離、方向などのオプションをダイアロ グウィンドウ内で設定し、スケッチしたプ ロファイルをワークプレーンの両側に押し出せば、円柱形のソリッドが作成される。


Pro/DESKTOPのヘルプに付属しているオンラインチュートリアルに従って、基 本的なモデリング手順を自習できる。

メインウィンドウの中に新規デザインウィンドウが開かれ、ベースワークプレーンがアクティブになっている。

  こちらはPro/ENGINEERの新規部品ウィンドウ。

Pro/DESKTOPの「ワークプレ ーン」に相当する「データム平面」はユー ザが作成しなければならない。


側面ワークプレーンを選択して、円形のプロファイル(外形線)をスケッチする。この時点では寸法拘束を付加しなくて もよい。 ダイアログウィンドウで押し出す距離、方向などのオプションを設定する。こ こではワークプレーンの両側に押し出して いる。 円柱形のソリッドが作成された。
何 らかの 3次元CAD を使った経験があれば、 マニュアルがなくても一通りのことはできるだろう。

部品とアセンブリに区別を設けない
単一のモデリング環境

 

Pro/DESKTOPでは 部品 と アセンブ リ は区別されず、全て Design モードで作業を行う。

Design モードは実質的にアセンブリ環境であり、部品1個だけなのか複数個存在するのかといった違いだけと考えれば良いだろう。

このため、モデリング中に他の部品をアセンブルする事や、アセンブルされた部品を コンポーネント使用 でフィーチャと して扱うこともできる。但し、実際のアセンブリ運用では、空のファイルにコンポーネント部品を組み込むなどの意識的な区別が必要であろう。


Pro/DESKTOPは概念設計用のツール、
Pro/ENGINEERを補完?

 

米Parametoric Technology社(PTC)は Pro/DESKTOP を概念設計段階でのアイデアキャプチャやデザイン検討に使用、ある程度発想が固まった段階で、ATB 技術を用いてPro/DESKTOPのデータをPro/ENGINEERに渡し、詳細設計を行うという連携を提案している。つまり、Pro/DESKTOP は概念設計に適したツールであり、Pro/ENGINEER を補完する製品という位置づけである。

さて、ここで設計プロセスにおける概念設計と詳細設計について考えてみよう。

概念設計と詳細設計を含めて、広い意味の設計と呼んでもいいが、付加価値を生むのは「概念設計」だけである。

概念設計(あるいは構想設計)とは非常に創造的な着想の段階で、何をするのか、どういう方法でやるのか、などといった基本的なアイデアの構想設計を行うことである。例えば、機械設計の概念設計では対象となるワークを「搬送」するのか「整列」するのか、またそれらの動作はX軸、Y軸、Z軸、及び回転のどの方法が最も良いのかといった基本的なワークに対する一連の動作やアイデアを抽出し、構想を練る作業に 相当する。

詳細設計(基本設計や部品設計も含む) とは、矛盾を取り除きながら全体をまとめ ていく段階で、細部形状をつめる、機構を考える、などといった具体的な工夫を大量 に伴う作業である。前述の機械設計で言えば、ワークを動かす具体的な機構(つめ、吸着など)や動力 (エア、モータなど)、伝達方法(ギア、カムなど)などの選定と技術計算などを行 ないながら、全体の矛盾をつぶしていく作 業となる。

これらを踏まえて、オンラインチュート リアルの中にある「ホイールの作成」を見 てみよう。

ホイールの断面プロファイルを フィー チャ 回転 によってソリッド化してい るのだが、これは「モデリングの手順」を 説明しているのであって、「設計の手順」 ではないことに注意する必要がある。例えば、概念設計の段階で「回転」運動というアイデアを抽出し、プーリの構想を練っている時点では中心軸の存在が確定しているだけで、プーリの断面形状などは決定していないはずである。


オンラインチュートリアルの中にある「ホイールの作成」手順では、ホイールの断面プロファイルを回転させてソリッド化している。概念設計の段階で、このような断面形状などを決定できないはず。
断面形状をスケッチできるということは、詳細設計が終了している(3次元を設計に利用していない)ということなのだけれども、このようなモデリングをしている人も多い。

 

実際、ここで必要な形状は回転軸とその動作エリアを確保してお くための単純な「円柱」で充分だろう。シャフト孔の寸法・形状、ホイールの直径・巾などに関しては、詳細設計の段階でモータの選定や技術計算が行われた後に決定される。

最後に、補強リブやフランジなどの詳細形状をモデリングして、プーリという部品を完成させるのである。

以上の事を理解し、Pro/ENGINEERなどの3次元CADを概念設計や構想設計の段階から使いこなしている「設計者」にとっては「概念設計用のツール」などと振 りかぶられても、という感覚であろう。

もし、あなたが「概念設計」の段階で自分の仕事を完結できる「設計者」であり、今後、3次元CADの使用を検討しているのならば、Pro/DESKTOPを選択肢の一つに加えても良いと思う。但し、Pro/ENGINEERなどの3次元CADを難しい(概念設計には使えない)と考えている「設計者」がPro/DESKTOPを使用しても本来の「概念設計」ができるとは限ら ないだろう。

このように考えると、難しい立場の製品と言えるかも知れない。それだけに、オンライン・チュートリアルに記載する内容については概念設計用のツールとして位置づけるだけの配慮がほしいものである。


実際的なプーリの「設計」手順。
概念設計の段階で必要な形状は、ポンチ絵で描くような回転軸とその動作エリアを確保するための「円柱」である。
詳細設計でシャフトの径や取付方法などが決定された時点で、関連する形状をモデリングしていく。
ここでは、シャフト孔に拘束寸法を追加している。
最後にフランジなどの詳細形状をモ デリングして、プーリを完成させる。
詳細設計の中でも「部品設計」と言われる段階である。

ATB技術による
Pro/ENGINEERとの連携性

 

同社の主力製品であるPro/ENGINEERとのデータ連携性に関しては、アソシエティブ・トポロジー・バス (ATB: Associative Topology Bus) と呼ばれる技術が提供されている。これによって、Pro/DESKTOP の環境から Pro/ENGINEER Part ファイルを直接開いて、モデルデータをインポートすることが可能である。

インポートされた Pro/ENGINEER モデルは Pro/DESKTOP で 1フィーチャとして扱われるが、オリジナルのファイル名をフルパスで記憶している。Pro/ENGINEER Part ファイルが変更されると、Pro/DESKTOP 側に更新が通知され、Pro/DESKTOP モデルを更新すれば変更を反映することができる。

一方、Pro/DESKTOP で作成したデータは 「Pro/DESKTOP ATB ファイル」としてエク スポートすれば、Pro/ENGINEER 環境で読 み込む事ができる。(Pro/ENGINEER 2000i Foundation パッケージが必要)

インポートされた Pro/DESKTOP ATBファ イルは Pro/ENGINEER で 1フィーチャとして扱われる。この場合も、オリジナルのファイル名が フルパスで記憶されるため、 Pro/DESKTOP 側で行った変更は Pro/ENGINEER 側へ反映 される。また、Pro/DESKTOP では部品もアセンブリも同じデザインファイルとなるため、Pro/DESKTOP からエクスポートされた アセンブリのATBファイルを Pro/ENGINEER で読み込んだ場合も 1フィーチャーとして 扱われる。

Pro/DESKTOP と Pro/ENGINEER のデータ 連携性に関しては、(1)ATB 技術と呼ばれ る独自のトランスレータを使用すること、(2)オリジナルファイルの名前と場所をフ ルパスを含むファイル名で記憶すること、が重要であり、注意すべき点でもある。


インポートした Pro/ENGINEER Part ファイルは、Pro/DESKTOP で 1フィーチャ とみなされる。プロパティを見るとオリジ ナルのファイル名がフルパスで記憶されて いるのが確認できる。
オリジナルの Pro/ENGINEER Part ファイルが変更されたので、Pro/DESKTOP のモデルを更新する必要があるという警告メッセージが出ている。

製図機能は一般的、
3次元CADにおける図面の位置づけ

 

製図は ファイル メニューから 新規作成 で Drawing モードを選択する。

ダイアログ・ウィンドウの中で図面サイズを指定して OK すると、新規図面ウィンドウが開く。ここにビュー方向を変更したモデルを配置し、投影図や断面図を追加していく。

Pro/DESKTOPに限らず、3次元CADの製図機能は、2次元CADに比較して必ずしも十分であるとは言えない。これは、3次元CADにおける図面はモデルを表現する手段の一つに過ぎないという考え方に立っているからである。従来の2次元CADでは部品の形状、設計意図、公差、検査寸法などを一枚の図面に表現していた。

設計に3次元CADを使うと、形状はモデルデータとして表現できるため、図面の位置づけとしては設計意図、公差、検査寸法などを盛り込んだ「設計仕様書」とでもいうべきものになるだろう。

製図機能は、2次元CADに比較して必ずしも十分であるとは言えないが、3次元CADにおける図面はモデルを表現する手段の一つに過ぎないので、あまりこだわらな いほうが良いだろう。

イメージレンダリング
MS社OLE標準をサポート
VBAでカスタマイズ

 

Pro/DESKTOPには、LightWork Design社のレンダリングカーネルを使用したイメージレンダリング機能が付属する。

ファイル メニューから 新規作成 で Album モードを選択すると、新規アルバムウィンドウが開く。Design モードで作成したモデルを新規イメージとして追加する。

一般的な材質表現、ライティング、レンズなどが準備されており、これらを使用すれば単純なシェーディングよりも見栄えのよいイメージを手軽に得ることが出来、結果は、JPEG、BMP、TIFF、壁紙 としてエ クスポート可能である。

また、Pro/DESKTOP は Windowsネイティブであり、マイクロソフト社の OLE標準をサポートしている。カスタマイズは VBA (Microsoft Visual Basic for Apprication)を使用し、マクロを作成することによって行う。


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