モデリングの操作は出来るが、設計のやり方がわからない、というのも3次元CADを難しく思わせている要因だ。
冷静に考えれば、「3次元CADだから難しい」という話でもないのだが、2次元CADのカットアンドペーストに慣れてしまった「ペーパーエンジニア」には、設計が難しいと感じるようだ。
今回は、身近にある「ホッチキス」を題材にして、設計の進め方を説明していこうと思う。
ホッチキスの目的
設計というのは、「ある目的を実現するための具体的な手段を考えること」である。
ホッチキスは、あまりにも身近にありすぎて、完成した製品の状態にばかり気になるかもしれない。しかし、あくまでも設計の結果(成果物)なので、白紙の状態から設計する場合は、結果であるホッチキスからではなく、ホッチキスの目的までさかのぼる必要がある。
このように考えると、ホッチキスの目的は「紙を綴じる」ことだけである(Fig.7)。綴じる手段に「針」を使うのが一般的だが、これは「手段」であって「目的」ではないことに注意してほしい。
「紙を綴じる」、という目的だけを考えれば、糊付けであってもいいわけだ。事実、針を使わない(紙で綴じる)ホッチキスも市販されている。
日々の業務で、完全に白紙の状態から設計する、という場面は少ないかもしれない。しかし、自分が設計している製品の目的は何であるのか、ということだけは意識しておこう。 |
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ホッチキスの仕様
目的を明確にしたら、ホッチキスの基本的な仕様を決めていこう。
仕様とは、「紙を綴じる」という「目的」を達成するために、指標として用いる具体的な「目標」のことである。目的は「紙」を「綴じる」ことだから、これらをキーワードにして、仕様書を作成していけば良い。
まず、「紙」というキーワードについて、仕様を考えてみよう。消費者の要望や使い勝手などから判断して、コピー紙を20枚程度は綴じられるようにしておきたいものだ。けっして、技術的な理由から20枚が限度だ、などと考えないようにする。
仕様書に記載するには、あとで検証可能できるように、具体的な数値も決めておくことが重要だ。例えば、「PPC用紙(64g/u)」を「20枚」重ねて、「綴じ厚2mm以内」で綴じテストを実施する、といったように表現にしておくと良い。
もうひとつのキーワード、「綴じる」仕様も、技術的な方法を限定しないで、決めていこう。使う側から見れば、方式はどうであれ、綴じた跡がかさばってしまうのは困ったものだ。この場合も、綴じる方法を限定するのではなく、「綴じ用紙+0.8mm」以内に収める、というような仕様にする。
その他、使い勝手、外観や意匠、納期、価格などの仕様も記載して、仕様書を完成させる。技術的に出来る、出来ない、ということではなく、製品が売れるか、売れないか、という判断で仕様を決めるのがポイントだ。
ホッチキスは紙から設計する
仕様が決まれば、構想設計を進めていこう。構想設計とは、目的に近い重要な部分から順番に、技術的なアイデアを抽出しながら構想を練っていく作業だ。ホッチキスで最も重要な「紙」と「針」から構想設計を進めていけば良い。
仕様書によれば、コピー紙20枚を確実に綴じる、ということが目標だ。想定されるPPC用紙(64g/u)を20枚重ねてみると、2mm程度になる。確実に綴じるとすれば、「針」を使わざるを得ない。針を使わない方式では数枚が限界だ。 |