ALS Digest #1196 (02 October 2003)

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ALS協会発のニュース:研究に関する最新情報
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日付:2003年10月02日
発信:ALS協会 webmaster@alsa.org

運動神経以外の健康な細胞が、マウスモデルの運動神経の寿命を延ばす;研究の結果から、ALS患者に対する幹細胞治療の有効性への期待が増している

2003年10月02日

[要約(速報):研究者たちの報告によると、ALSに関連する運動神経細胞は、周囲を取り囲んでいる運動神経以外の細胞によって保護され、また逆に傷つけられもする。マウスモデルにおけるこの発見は、幹細胞治療によって運動神経細胞を置換する代わりに、周囲の細胞を置換することが、ALSに対する実現可能な治療法であり、更なる究明が必要だとする考え方を支持するものである。]

ALS患者に対する幹細胞治療が有望であるとの結論をもたらした今回の研究で、研究者たちは、マウスモデルでALSと関係する細胞を取り囲んでいる運動神経以外の細胞が、変性によって運動神経が損傷する、あるいは逆に変性による損傷から運動神経を護るうえで、重要な役割を果たしていることを発見した。

ALS協会副会長でALS協会科学部門の長である Dr. Lucie Bruijn は、今回の研究が、病気の過程においては、神経細胞と神経細胞以外の細胞の両方が重要であることを明確に示しており、また神経細胞を取り囲む支持細胞を修復させることにより、運動神経の延命を推し進めることができる可能性を強調していると語っている。このことは、幹細胞を用いて運動神経細胞を置換する代わりに、神経細胞の周囲を取り囲んでいる細胞を置換することが、治療法として実現可能なアプローチであり、更なる研究が必要だとの考えを支持するものである。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)あるいはルーゲーリック病は、筋肉の収縮を制御する運動神経細胞を麻痺させ、早死にさせる。遺伝性のALSで最も典型的なタイプのものは、ある種の遺伝子(銅-亜鉛-超酸化ディスムテースあるいはSOD1)の変異で発症する。この変異した遺伝子は、遺伝性のタイプのALS患者にあっては全身の、全ての細胞に存在する。しかしながら、全ての細胞が変異したタンパク質を作り出しているにもかかわらず、殺されてしまうのは運動神経細胞だけである。

今回行われた、複数の研究機関による共同研究は、ALS協会(ALSA)が主催しているルーゲーリックの挑戦:ALS治療のためのキャンペーンが、資金の一部を補助して実施された。ルーゲーリックの挑戦は、三つの研究戦略を組み合わせて、ALSを治療し、回復させることを目標としている。すなわちALS協会が先導する研究、研究者が先導する研究、そしてALS研究者を募り、養成する事業である。ハーバード大学のTom Maniatis医科学博士が議長を勤めるALS治療諮問委員会が、補助対象となる研究を選定する。

マサチューセッツ総合病院の Robert H. Brown, Jr.医師・医科学博士と、ハーバード大学の Andrew McMahon 医科学博士の二人は、たとえ神経細胞が変異した遺伝子を持っていても、健康な細胞が運動神経細胞を取り囲んでいれば、神経細胞が損傷を受けてもALSの進行が遅くなり、保護的な効果を示すことを発見した。研究者たちはさらに、逆の現象も真実であることを発見した。遺伝的に正常な運動神経細胞が、運動神経ではない変異した細胞に取り囲まれると、損傷されてしまったのである。

今回の研究は、遺伝子モデルの活用と、個々の研究チームによる研究成果を総合することこそが、新しくかつ重要な発見をもたらすうえで有効であり、またこのことが、ALSに関する我々の知識を深めるうえで決定的に重要であること、そして究極的には治療のための戦略を練るためにも必須なことであることを示していると、McMahon は語っている。

総体的な結論として、正常な神経細胞は変異した近隣の細胞との相互作用により損傷を受けること、一方、健全な近隣の細胞は、変異した運動神経細胞を変性による細胞死から保護することが可能であることが言える。共同研究のレポートは、the journal Science 誌の2003年10月3日号に掲載される予定である。

研究者たちが今回の結論に達したのは、正常な細胞とALSの原因となる変異したSOD1遺伝子を持つ細胞を併せ持つマウスモデルを開発し使用したためである。これまでの研究では、変異したSOD1遺伝子を100%持っているマウスがALSを発症することが判っている。正常なSOD1遺伝子を持つマウスは、決してALSにはならない。今回の新しい研究では、変異した遺伝子と正常な遺伝子が混合したマウスでは、寿命が最大6ヶ月まで延長した。

原因と結果について明確な証拠はないものの、研究者たちは、健康な細胞が運動神経に栄養を与え、環境由来の毒素を取り除くという保護的な働きをしているものと信じている。運動神経細胞を取り囲むこれらの細胞が変異したSOD1により損傷されると、同じ細胞が保護的な役割を果たせなくなり、運動神経細胞の変性の原因となる。

今回の研究は、遺伝性のALSを治療するうえで、幹細胞による置換法が極めて有望であることを暗示している。しかしながら Bruijn は、運動神経以外の細胞と運動神経細胞との間の関係を理解するためには、更なる研究が必要であると付け加えている。

質問と答:

1. 現在、幹細胞治療を実施している機関はありますか?幹細胞治療の治験のために患者  の登録を受け付けている機関はありますか?

ALSに対する幹細胞治療は、まだ実験室の段階です。培養細胞と動物を使用する実験室でのALS研究は有望な結果が得られていますが、ALS患者に幹細胞治療の治験を開始する前に、必要な技術と知識を取得するためには、未解明の問題が幾つかあります。幹細胞治療の研究とALSに関するもっと詳しい情報を得るためには、ALS協会のウェブサイトのうち、以下の幹細胞に関するページを参照してください。
http://alsa.org/research/stem_cells.cfm
(訳:http://www.page.sannet.ne.jp/grand-ma/ng/alsa.htm

2. 運動神経を取り巻く他の細胞に、神経細胞に対する有益な効果があるにしても、なぜ研  究者たちは運動神経細胞を直接置換せず、周囲の細胞を置換しようとするのですか?

死につつある運動神経を幹細胞で置換するには、2つの障害があり、第一に、神経細胞には極めて長い軸索があるということです。幹細胞が筋繊維に接続する軸索を成長させるまでに、どの程度の時間を要するのかは明らかでありません;また、ALSにおいて神経細胞を損傷している同じメカニズムが、置換された幹細胞に対して、同じような影響を及ぼすのか否かも不明です。傷ついた運動神経細胞を取り囲んでいる細胞が幹細胞により置換され、これらが神経細胞に栄養を与え、修復し、保護することができるなら、神経細胞が救われる可能性があり、置換する必要がないのです。

3. 今回の研究は、全てのALS患者が希望を持つことのできるものですか、それとも、遺伝  性の、SOD1の変異を伴うALS患者だけが期待できるものですか?

ALSのモデルとしてSOD1の変異したマウスを用いた研究の結果は、家族性ALSと孤発性ALSの両方について、詳しく知るうえで重要な手がかりをもたらし、有効な治療法を発見し、開発し、試験を行う上で重要な段階となるものです。SOD1遺伝子の変異はALSの明確な原因であり、ALS研究にとっては優れたモデルなので、この病気を病む全ての人々にとって利益になるものです。

連絡先:Greg Cash gcash@alsa-national.org

ALS及びALS協会の活動について詳しくは、www.alsa.org をご覧ください。

 

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