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趣旨・目的

 

「外国人学校卒業者の名古屋大学への入学資格を求める会」

会結成の趣旨と要望事項

1999年4月26日

呼びかけ人代表:理学研究科 池内 了

 

 日本に在住する外国人学校(朝鮮高級学校、朝鮮大学校、韓国学園、中華学校、他のインターナショナルスクールおよびカレッジ)卒業者は、学校教育法第1条で認められている学校とほぼ同等な教科内容と水準の教育を受けたにもかかわらず、国立大学(および大学院)の受験(入学)資格が認められていません。外国人学校では、外国人が自分たちの言語によって各科目や自らの国や民族の歴史を学んでいますが、文部省はこのような民族教育を行う学校を、同法第1条に規定する学校と認めておらず「各種学校」扱いしています。その結果、外国人学校卒業者は、高等学校(および大学校)の卒業生としての資格が認められず、国立大学(および大学院)の受験そのものから排除されているのです。私たちは、この措置は重大な人権侵害・教育差別と考えています。

  能力に応じて等しく高等教育を受ける権利は、すべての人に認められるべき基本的権利です。1948年の国連総会で採択された「世界人権宣言」は、個人の尊厳と平等をうたい、いかなる差別も禁止することを原則としたうえで、その第26条で「すべての者は、教育についての権利を有する。・・・高等教育は、能力に応じて、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」としています。日本政府による外国人学校卒業者への措置は、この宣言の精神と明らかに矛盾し、彼/彼女らの教育の機会均等の権利を実質的に阻害しています。さらに日本政府は、1979年にこの世界人権宣言を条約化した「国際人権規約」を批准しており、締約国として教育の機会均等を推進する義務があります。日本国憲法においても、第98条で条約の遵守義務を定めているのにもかかわらず、その義務を怠っている状況が続いているのです。

 外国人学校卒業者への人権侵害・教育差別には、歴代の日本政府が採ってきた日本に在住する外国人への「同化政策」が背景にあり、外国人に日本の学校への就学・進学を強要してきたことに根源があります。そのため、外国人が自分たちの文化や言語を維持・継承・発展させるための教育を実施しようとすれば、自らの負担において自らの学校を設立しなければなりませんでした。しかしながらその卒業者には国立大学(または大学院)への受験(入学)資格が与えられませんでした。日本が1994年に批准した「子どもの権利条約」は、第29条(教育の目的)で、締約国が「児童の父母、児童の文化的同一性、言語および価値観、児童の居住国および出身国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成すること」を指向すべきとしています。しかしながら、まさにこの目的をもって設立されている外国人学校に対し、日本政府・文部省は正当な位置づけを行なっていません。

 特に問題とすべきなのは、韓国学園・朝鮮学校(朝鮮大学校)・中華学校への日本政府の対応です。例えば、日本に在住する約65万人の韓国・朝鮮人のほとんどは、日本の朝鮮植民地統治時代に渡日を余儀なくされ、あるいは強制連行され、1945年の祖国解放後も引き続き日本に住むようになった人たちか、その子孫として日本で生まれ育った人たちです。このような歴史的事情を有する在日韓国・朝鮮人が、植民地統治時代に奪われた自分たち自身の言語や文化を回復し、さらに維持・継承・発展させることを目的として韓国学園や朝鮮学校を設立し、子どもたちに民族教育を行ってきたことは歴史的経過から当然のことでした。在日韓国・朝鮮人たちの運動や教育界を始めとする世論におされて、都道府県知事が韓国・朝鮮人学校を各種学校として法人認可をしたのですが、日本政府(文部省)は「各種学校としてさえ認可すべきでない」という公式見解をいまだ撤回していません。まして、民族教育を実施している民族学校を学校教育法第1条に規定する学校として認可することを頑なに拒み続けているのです。

 しかし、多くの公私立大学は、これらの外国人学校が日本の学校(第1条に規定する学校)とほぼ同じ水準の教育を行っていることを認め、学校教育法施行規則第69条第6号の規定「大学において、相当の年齢に達し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」を適用して受験(入学)資格を認めています。日本の大学への進学希望者が最も多いとされる朝鮮学校卒業者については、既に公立大学の30校(全体の57%、愛知県下では名古屋市立大学や愛知県立大学など4大学)、私立大学の220校(全体の51%、愛知県下では南山大学や愛知大学など14大学)が、受験(入学)資格を認めており、入学を許可しているのです。(公私立大学が大学入試センター試験に参加するようになり、その受験案内には上記の規定が明記されています。)

 しかるに、国立大学においては、まだ1校も大学への受験を認めていません。たとえ受験希望者があっても、いわゆる門前払いで、入学資格がないとして願書を受け付けず事務的に返送しているのです。大学院への受験は、ようやく昨年、京都大学や九州大学の一部の研究科が認めたたばかりです。民族学校出身者への閉鎖的対応は国際的にも非難されており、国連人権規約委員会は、国際人権規約にある「教育を受ける権利」の侵害ではないかと聴聞会を開き、1998年11月に「韓国・朝鮮学校への差別事例について懸念を表明する」という見解を採択しています。大学で教育・研究に携わる私たちの原点が、「国籍や民族の違いを超えて、次代を担う若者の学習への希望をかなえさせること」であるとするなら、現在の国立大学の外国人学校卒業者の受け入れ実態は、余りに情けない状況と言わざるを得ません。また、私たちは、国立大学にいて、事情を知りつつ放置してきたことを恥ずかしく思っています。

 そこで、私たちは、「外国人学校卒業者の名古屋大学への入学資格を求める会(略称、求める会)」を結成し、現状を改善するための取り組みを開始することにしました。私たち「求める会」の、名古屋大学総長、評議会、各学部・研究科教授会等への要望事項は、次の4点であります。名古屋大学の構成員の多数の方々の支援をお願いしたいと思っています。

 

呼びかけ人(4月26日現在)

池内 了 (理学研究科 教授)

馬越 徹 (教育学部 教授)

大塚 豊 (国際開発研究科 教授)

大橋厚子 (国際開発研究科 助教授)

大平 剛 (国際開発研究科 助手)

木村宏恒(国際開発研究科 教授)

黒田光太郎(工学研究科 教授)

神山 勉 (理学研究科 教授)

今野卓美(国際開発研究科 大学院生)

佐分晴夫(法学部 教授)

三田一郎(理学研究科 教授)

高橋公明(国際開発研究科 教授)

田中英式(国際開発研究科 大学院生)

棚橋一雄(言語文化部 名誉教授)

中井俊樹 (高等教育研究センター 助手)

原科 浩(理学研究科 助手)東村岳史(国際開発研究科 講師)

福井康雄(理学研究科 教授)

洪 順姫 (工学研究科 大学院生)

松村保寿(国際開発研究科 教授)

森 英樹 (法学部 教授)

安田信之(国際開発研究科 教授)

山脇幸一(理学研究科 教授) 

以上23名


《要 望 事 項》

1.外国人学校卒業者が名古屋大学の受験を可能とするために、「名古屋大学学生募集要項」の出願資格に、学校教育法施行規則第69条第6号の規定「大学において、相当の年齢に達し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」を加えること。この規定は、名古屋大学通則第11条第7号にも同文で記載されており、その実行には何らの支障はないと思われる。この規定に則って受験を希望する学生の申し出があった場合、名古屋大学総長が入学資格認定書等の証明書を発行すること。

 

2.この措置が実現される以前であっても、受験希望者があった場合、事務的に門前払いとせず、評議会、学部・研究科教授会、入試制度検討委員会、入試委員会等で然るべき議論をし、受験の可否を決定すること。受験を拒否する場合、その理由を受験希望者に文書で誠意を持って回答すること。

 

3.朝鮮大学校および在日外国大学の卒業者が名古屋大学大学院への受験を可能とするために、各研究科の「大学院研究科学生募集要項」の出願資格に、学校教育法施行規則第70条第5号の規定「大学院において、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」を加えること。この規定は、名古屋大学大学院通則第11条第6号にも同文で記載されており、その実行には何らの支障はないと思われる。この規定に則って受験を希望する学生の申し出があった場合、しかるべき審査をして出願資格を与えること。

 

4.上記の措置が実現される以前であっても、受験希望者があった場合、事務的に門前払いとせず、学部・研究科教授会でそのつど議論し、受験の可否を決定すること。受験を拒否する場合、その理由を受験希望者に文書で誠意を持って回答すること。

 

名古屋大学総長 松尾 稔 殿

 同担当副総長 辻 敬一郎殿

     各学部・研究科長殿

         評議員各位

  入学試験制度検討委員各位

      入学試験委員各位

 

外国人学校卒業者の名古屋大学への入学資格を求める会


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