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のんちゃん 便り

109  2005年5月


1人でヨットに乗ったよ

4月末、ゴールデンウイークが始まってすぐに、望はアクセスディンギーというヨットに乗りに行きました。アクセスディンギーは、スティック1本で舵と帆を操作することのできる小型のヨットで、1人または2人で乗ります。107号に書きましたが、ボランティアの方々の協力で、電動のスティックで操作できるアクセスディンギーに望の座位保持椅子を取り付け、望が1人で乗れるようにして、2月中旬にプールで試し乗りをしました。そして、いよいよ海に出る日がやってきました。プールと違い、人が水に入って望に舵の指示をすることはできず、風もあります。風で進むので当然ですが、それにどう対応するかが問題です。ドキドキしながら海に着きました。

天気は快晴。風はほどよく吹いて、絶好のヨット日和でした。アクセスディンギーに座位保持椅子を取り付け、望を座らせ救命具をつけて、さあ出発です。海に押し出すと、風に乗って進み始めました。望は、舵を右に左にして進んでいきます。もしものことを考えて、ボランティアの方がアクセスディンギーに2人で乗って、望のすぐ後を行ってくださいました。レスキュー船も出してくださいました。

望は、レスキュー船の後をついて行こうと舵を操作しています。帆の操作はまだ難しいので、帆は風を受けすぎないようにゆるめにして、左右の舵の操作だけさせることを考えました。舵をきった時、風の向きでヨットが大きく傾くことが何度かありました。岸から見ている私たちはヒヤヒヤです。でも、望は、怖くはないようで、面白がっていました。スキーの時に、ターンで身体が傾くのを体験しているため、慣れているのかもしれません。そして、電動車椅子を操作しているのと同じような感覚で舵を操作しているのだと思います。ただ、電動車椅子のように単純に左右に移動するわけではなく、風によってスピードが出たり落ちたりするので、望は舵を右、左と何度もきりながら進んでいきます。

一度、アクセスディンギーが止まって動かなくなりました。望は、舵を左右に動かしても動かないので、困っていました。並走してくださっているボランティアの方が、望のアクセスディンギーを押して帆に風が当たる方向にしてくださり、また海の上を走り始めました。しばらくして、望が前後に舵をきってしまい、帆が張ってしまいました。強い風が吹くと危ないので、岸に帰るよう指示をして帰らせました。かなり長い時間乗っていたように感じます。ディンギーから降りた望は、うきうきしているように見え、そして、まだまだ乗りたそうでした。お茶を飲もうと説得して日陰でお茶を飲ませました。飲み終わると『もう1回』と要求しました。そこで、もう1回乗りました。

最初からこんなにスムーズに操作をして、本当にすごいと思いました。実は、私はまだ1人でアクセスディンギーに乗ったことがないのです。ボランティアの方の操作で、望を抱っこして乗っただけです。今回、望と一緒にチャレンジしようと思っていたのですが、岸から望を見ているのがいっぱいの状態で、自分が乗るどころではありませんでした。望に先を越されてしまいました。ボランティアの方々も、望の最初の航海に大満足のようでした。

お昼になったので、ランチを食べて帰ることにしました。ボランティアの方々にお礼の挨拶をしてまわり、それから近くのレストランに入りました。停泊するヨットを見ながら、ゆっくりとランチを楽しみました。食後、望は、また「乗る!」と訴えました。じゃあ、あと1回だけと言い聞かせ、乗ることにしました。午後は、ディンギーに乗る人が増え、人工湾の中は込み合っていました。それでも望は、うまく操作して、湾の中を大きく1周してきました。「あがろう」と声をかけると、望は岸に近づいて来ましたが、岸壁の近くでまた舵をきり、離れていってしまいました。『まだ降りないよー』と大人をからかっている感じです。もう1回大きく湾を回り、ようやく岸に帰り着きました。気長に楽しみながら乗っていけば、だんだんと操作もうまくなって、帆の操作もできるようになるだろうと感じています。望の楽しみになること間違いなしの予感です。次回は、私も望に遅れをとらないようにチャレンジしようと思います。

コンサートに出演

5月1日に、先天性四肢障害児父母の会のコンサート&ワークショップがありました。手に障害があると楽器の演奏は難しくなります。でも、だからといって楽器を弾くことをあきらめてしまうのではなく、好きな楽器を楽しみたい、うまく演奏したいと思う子どもたちがいます。小学1年から成人してお母さんになった会員さんまで、14人が、いろんな楽器の演奏をしました。

望もピアノで出ました。曲は「上を向いて歩こう」です。私が望を抱っこして、望が右腕で旋律を弾き、Aさんに伴奏をしていただきました。Aさんは、望が保育所のころ、大学で音楽療法を専攻していた学生さんです。そのころからのお付き合いです。1ヶ月か2ヶ月に1回くらい、一緒に音楽を楽しんできました。そして、2年前くらいから月1回、望とピアノの時間を持ってもらっています。保育所のころ、ピアノに興味を持っている望に気づき、望がピアノを楽しめないかなあと思い続けてきました。その後、望が鍵盤を叩くとAさんがそれに応えて弾く、Aさんが弾けば望が弾いて応えるという、音のコミュニケーションから、望のピアノが始まりました。右腕一本で弾くので、難しい曲は無理ですが、親と違って音楽のセンスがあるのか、リズム感がいいのですぐに『それなり』に弾いてしまいます。「上を向いて歩こう」も練習初日から楽しそうでした。

コンサート本番は、私のほうが緊張してしまい、望の身体をうまく動かせず、少し間違えてしまいました。でも、望がピアノを楽しんでいるようすは、皆さんに伝わっただろうと思います。

ひとこと

社会福祉とは「出会い」だと言われた方があります。望は、たくさんの方々に出会って、彼女の世界を広げてきました。私たち家族は、いろんな出会いや人との関わりの中で、楽しみを増やしてきました。私も多くの出会いに様々なことを考えさせられ、自分自身と向き合い価値観を見つめてきました。その揺らぎや迷いの中で「のんちゃん便り」を書いて、今の自分なりの答えを見つけてきました。それが私の「根っこ」になっていると思います。

快調快調、気持ちいいよ〜。

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