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のんちゃん 便り

112  2005年 9月

夏の終わりに

夏休みが終わり、新学期が始まりました。真っ黒になった望は、「やったー、学校だ〜」と、うれしそうに登校していきました。この夏休み、夫の仕事が忙しくて、家族で出かけたのは、前号に書いた先天性四肢障害児父母の会総会を兼ねた青森旅行と、6年生の宿題の歴史新聞を作るために滋賀県の安土城に車で行っただけでした。8月末、愛知県蒲郡市竹島海岸へのバス旅行に望と2人で参加しました。あとは、私が仕事のため、望は放課後事業のいきいき教室に毎日のようにお弁当持ちで通い、お盆休みは、私とバスに乗って出かけた程度でした。ヨットレースを最後にヨットにも行けず、電動車椅子サッカーにも行けませんでした。小学校最後の夏休み、望は楽しかったのかどうか。親の都合を優先して申し訳ない思いですが、何でも楽しんでしまう望に救われているような私達です。

望の夏休みの宿題は、みんなと同じ算数や漢字はできないので、望なりの数や文字の勉強をしました。図工は、私の活動するNPO法人で行った夏のイベント「お絵かきしよう」で作ったマーブリング。書道が1枚。7月に青森県三沢市で購入した小さなプロペラ機。組み立てて遊びました。安土城に行って取材した歴史新聞。7月末の青森三沢旅行と8月末の竹島海岸旅行を記事にした新聞2枚。以上でした。

8月末の竹島海岸旅行は、昨年も参加した障害児者関係の団体が主催しているバス旅行です。今年も、お父さんを残し、望と母だけの参加です。今年は、望のヘルパーさんがボランティアで参加してくれ、知り合いの学生さんも同行してくれ、一緒にプールや温泉に入ったり、水族館に行ったりしてくれました。昨年も書きましたが、この旅行は、それぞれの障害児者にサポーターがつきます。知的な障害をもつ子ども、自閉傾向の子ども、車椅子に乗っている人、ストレッチャーに寝ている子どもとさまざまな参加者がいます。サポーターも、ヘルパーさん、学生さん、学校の先生といろんな方がいます。このごちゃごちゃとした、いろんな人がいる感じがいいなあと思います。

ホテルでの夕食時、きょろきょろ辺りを見回しながら、しばらくはおとなしく食事をしていた望でしたが、何人かの人たちが歩き回り始めると、電動車椅子のスイッチを入れろと言い出しました。それなりの量を食べたので、電動車椅子のスイッチをオンにしてやると、テーブルの間を走り回り、いろんな人に遊ぼうと誘いかけていました。しばらくして、以前に遊んだことのあるTお兄さんを見つけてテーブルに行きましたが、マイペースのTさんは、すっと立ってどこかに行ってしまいました。すると、望はTさんのサポーターの男子学生さんにお茶を要求していました。誰のサポーターであろうが使うというこのたくましさも感心します。学生さんが私のところに「ストローありますか」と聞きに来られました。どうやってお茶を飲ませようかと考えられたのでしょう。望は、口に少し麻痺があり、吸うのは苦手なのに、ストローが好きです。時間がかかってもいい場面でしたので、ストローを渡しました。そして、望のご飯を持って行き、その学生さんに食べさせてくださいとお願いをしました。少しすると、デザートも食べさせてくれていました。望はそこから全く動こうとしません。口の悪いお母さん達が「のんちゃんがナンパしてる」と笑っていました。望は、そのやさしい学生さんが気に入ったようでした。そういう年頃だなあと思い、「これが初恋かも」と友人と笑いあい、なんだかくすぐったい気分でした。旅行の解散時、学生さんは望と握手してくれました。

旅行中、「本当にのんちゃんは面白い」とたくさんの方々に言われました。望の周りはいろんなできごとに満ち溢れていて、保育士さんも、学校の先生も、放課後事業の指導員さんも、ヘルパーさんも、面白がりながら関わってくれました。望の「楽しむ力」に引っ張られていくようです。望と関わると面白いことにたくさん出会えてラッキーです。困ったことも、見方を変えれば面白いことになるのです。これってステキなことです。おかげで、私たちは今まで、大変なことも面白がってやってくることができました。

望がサポーターさんと遊んだり、食事をしたりしている間、私はいろんな方とお話をしました。このバス旅行には、主催団体の地域の小中学校の先生方が、サポーターとして何人か参加されており、教育と連携した活動の歴史を感じました。「障害児もあたりまえに地域の学校の普通のクラスで」という、旅行での中学の先生のお話に、地域による取り組みの違いを感じました。世界的な流れになっている、個々を大切にして統合をするインクルーシブ教育は、「特別支援教育」を始めた段階の日本では、まだ難しいことかもしれません。すべての学校それぞれにおいて、すべての生徒一人ひとりを学校全体でみていく体制をとっていって欲しいと思います。

望も来年は中学生です。「友達と一緒に学校に行きたい。手足も言葉もない望が、クラスの友達の中で授業を受けるために必要な支援を。望がやりたいことを手助けして欲しい」、私たちが希望することは、ただそれだけのことです。「特別な支援」を望んでいるわけではないのです。夏の初めに「高校も大学も友達と一緒に行けばいい」とある大学の先生に言われ、「えーダイガク?」と思いましたが、まずは高校入学も視野に入れながら、中学への準備をしていこうと思います。中学校と話し合いを重ね、先生方との信頼関係も築いていきたいと思います。夏の終わりに、次のステップに踏み出そうとしています。

ひとこと

登校時、近所の同級生が迎えに来てくれています。子どもの方から「朝、誘いに行こうか?」と言ってくれました。毎朝、望は玄関のチャイムが鳴るのを楽しみにしています。友達と張り切って登校していきます。親は少し離れて後ろから見守りです。

2学期は、運動会、修学旅行、作品展、遠足など、学校行事が盛りだくさんです。気力が体力を引っ張ってしまう望をセーブしつつ、体調を整えて、楽しい時を過ごすようにしていきたいと思います。

さあ、水族館へ!

でも、魚、怖いんだよネ、ほんとは。

Rくんの後ろから、のぞかせてね。(恐る恐る)

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