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のんちゃん 便り

第136号 2008年 7月

体育大会

6月初旬に体育大会がありました。予定されていた5日は、途中で雨が降り出し中断。続きは翌日となりました。早朝、陸上部やラグビー部や生徒会の生徒達が水浸しのグランドの整備をしているのが、マンションの玄関から見えました。いつもはやんちゃな生徒達のその姿を見て、一人嬉しくなりました。暑い日でしたが、望は元気に参加しました。

5日の60メートル走では、相変わらずダントツの最下位。電動車椅子のスピードが遅いので仕方ありません。小学校の頃は悔しそうでしたが、中学になると「しゃーないやん」とばかりに平然と、友達のお母さん曰く「まるで1着でゴールしたような得意そうな顔」でゴールしていました。周りのお母さん達が陸上部の子を応援するのと同じような調子で「のんちゃん、頑張れ〜!ファイト!」大声で応援してくださいました。

6日にあった部活動紹介リレーとバラエティーリレーは、手押しの車椅子を友達に押してもらって出ましたが、この時は、電動車椅子の時とは大違いで、「早く走れ〜!」と友達に訴えているのか、手も頭もブンブン振っていました。

そして、3年目(!)のムカデ競争。例年通り、早朝練習をして、練習では1等だったと自信をもって臨んだ3年1組。女子はシャッターチャンスもないくらい速いスピードで駆けていきましたが、男子がこけてしまい、残念ながら3位でした。悔し涙、やるだけやったという涙、ムカデ競走が本当に終わってしまったという涙、子どもたちの涙は何を語っていたのか・・・。子どもたちの感想を読むと、一番心に残ったのがムカデ競争のようでした。毎年、ムカデ競争でうんざりと思いきや、子どもたちにとっては「最後のムカデ競争」で、すごく気合が入っていたようです。たかがムカデ競争、されどムカデ競争。勝っても負けても、みんなで力を合わせて頑張った後の感動を味わった子どもたちでした。

今年の体育大会のテーマは、「いざ青春」。中学生にはちょっと早いようなとも思いましたが、青春の入り口にいる子どもたちを感じさせるもので、「努力」や「頑張り」というイメージがなかったのが好きでした。そして、望のいる3年1組のスローガンは「愛と勇気、そして絆」。これはいろんな受取り方があると思いますが、私はステキだなあと思いました。かつて、「愛と正義を否定する」と宣言した方々がいました。愛の形、勇気の形は様々だから。何が本物の愛で、何が偽物の愛なのか。何が本当の勇気なのか。いい絆と見せかけの絆。本物と偽物や、正しいか正しくないかがあるのかどうかも解らない。いい絆を作り出すことができるのが、本当の愛や勇気なのかもしれません。目に見えないから難しい。形がないからこそ、大切なもの。解らないから、人は迷い揺らぎ、自分と向き合い、探し続けていかなければならないのでしょう。

望の中学校最後の体育大会は、本当に満点の内容だったと思いました。お茶を飲ませたり、車椅子に乗せ換えたり、さりげない会話をしながら、友達が自然にやっているのを見て、本当にいい関係が築けてきたことを思いました。日々、積み重ねてきたその結果を目にすることの多い3年生です。残り8ヶ月あまり。3年1組の絆が深まっていくことを願っています。

受験準備その1

中学に入るとき、高等学校への進学を決めていました。知的障害のある望にとって、「学力選抜」という壁を越えることは並大抵のことではありません。私の育った町は、私学の進学校がなく、県立の高校の定員が少なかったのか、他市に比べ、中学浪人が多い地域でした。受験は学力競争で、知的障害のある人が高等学校に行くなんて、考えることもできないところでした。

でも、望が成長するにつれ、多くの子どもたちが高等学校に進む中、望も高校に行って、また多くの友達と関わって欲しいと思うようになりました。中学を出て社会人になるのは、望には早いと思いました。同年代の友達と関わることができる場所は、現実、学校しかありません。特別支援学校(養護学校)のように、特別な場所で特別なことをするのではなく、いろんな人がいる場所で様々な体験をして欲しいと思いました。望には言葉がありませんから、望自身が高校に行きたいと言ったわけではありません。でも、好奇心旺盛で、友達が大好きで、友達と同じようにやりたい気持ちの強い望はきっとそれを望んでいるだろうと考え、親の判断で進学を決めました。

中学1年生では、まず、定期テストを受けることをしてきました。解らなくても、嫌でも、望はテストを受けてきました。騒ぐと周りの友達に迷惑だと理解もしました。中学2年生では、鉛筆の持てない望の意思をどう解答に表わすかを模索してきました。選択問題の手差しによる回答や、パソコンを使って記号や文字の入力による意思表示という形を作ってきました。そして、6月12日の3年生最初の定期テストに教育委員会の方々に見学に来ていただきました。望のやり方で受験をすることを許可してもらうための事前調査です。今後、話し合いをすすめていきます。望が高等学校の門をくぐることを願って。

読売新聞「育ちささえる」 /1朝刊から

大阪市では、多くの障害をもつ子どもが保育所に通い、障害をもたない子どもたちと共に育ちあっている。重度の障害をもつ私の娘も、3歳から3年間、通った。

 内弁慶で親から離れることができなかった娘は、保育所で大勢の友だちと過ごすうちに、言葉がなくても自己主張をする積極的な子どもになった。入所する時に「楽しみながら工夫してください」と保育士さんたちに伝えた。様々な工夫がなされ、娘は運動会などの行事も日々の生活も友達と一緒に楽しくやってきた。友達の真似をして、嫌なことも頑張るようになった。

 修了近くに、保育士さんから聞いた。最初、他の子どもと違う娘と、どのように向き合えばいいのかと職員たちは悩んだ。話し合いを重ね、「障害をもつ子どもとどう向き合うか」ではなく、「違いを認め合い、一人ひとりを大切にする保育」を再確認し、「一人ひとりに向き合う保育」を目指してきたという。

 「みんな違って、みんないい」。「違って」いいで終わりではない。「違う」一人ひとりが一緒に「みんないい」にならなければ。

 娘は、他の子どもと「同じ」ようにできないことが多くある。一緒にやっていくには様々な課題がある。でも、「違う」ことで排除や特別扱いをされるのではなく、一人ひとりがしっかりと受け入れられる場所は、どの子にとっても居心地が良いに違いない。悩み考えるから、保育の質は向上する。育ちあう子どもたちに学ぶことで、大人も育っていく。


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