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のんちゃん 便り

第140号  2008年12月

今年もお世話になり

ありがとうございました。

よいお年をお迎えください。

 

受験準備その2

慌しく年末を迎えました。夏休み中、中学の先生と一緒に、近くの高校3校へ説明を聞きに行きました。夏休みが終わると、望の受検できる学区の高校のオープンスクールが始まりました。高校によって内容は異なりますが、学校説明会、校内案内、体験授業、クラブ体験などがあります。最初は、受検しない高校のオープンスクールに行っても無駄かなあ・・・などと考えていたのですが、とりあえず動いてみようと、電車で行けば近い隣の市の府立高校に行ってみることにしました。

初めてのオープンスクールでは、学校説明会、校内案内、体験授業がありました。学校経由の一括申し込みで、障害があるかどうかといった記入欄が無いからか、受付で高校の先生方が慌てておられました。というのも、3階が学校説明会の会場になっており、エレベーターが無いからです。生徒6人を集めてきて抱え上げてくださいました。望の電動車椅子はバッテリーが重く、90キロもありますから、大人5、6人で抱えなければ持ち上がりません。説明会の後、先生1人と生徒6人が校内案内に付き添ってくださいました。各自で自由に見て回る形だったので、付き添ってくれた高校の生徒さん達が、「ここが図書室です」などと説明をしてくれたり、「このボタンは何ですか?」などと電動車椅子について尋ねてきたり、高校の生徒達と交流ができて楽しかったです。ウォークラリーのように、スタンプをもらって回りました。

体験授業は「和太鼓」を申し込んでいました。体験授業の前に、高校の先生が、「お母さんですか?体験授業中に保護者説明会がありますが、そちらに参加されますか?それとも体験授業に付かれますか?」と聞きに来られました。望1人を体験授業の教室に置いていっても、望は平気でしょう。でも、手のない望にバチをどう持たせればよいのかと、高校の先生が困られると思いましたし、バチを持たせてもらえなくては望の体験はできないで終わると思いましたので、「付き添います」と応えました。先生は「そうですか」と言いながら、ほっとした表情をされました。あまり高校の先生を困らせるのはやめておきましょう。どんなふうに一緒に参加するか見てもらうのも大切です。望に付き添って楽しく授業を受けました。他中学の生徒ばかりの中、他の生徒との交流はできませんでしたが、望はその授業の一員であることをちゃんと受けとめ、皆に合わせて太鼓を叩いていました。

授業終了後、スタンプと引き換えにクリアファイルをもらいました。引換所で、見知らぬ高校生に「のんちゃん!」と言われ、中学の先輩かなと、うれしく思いました。

このオープンスクールで、高校に足を踏み入れて行くことが大事と感じたので、その後、受検する予定は無くても、近くにある高校や興味深いカリキュラムの高校のオープンスクールや学校説明会に参加をしてきました。冬休みが始まるまでに、7校を訪問しました。また、言葉だけの説明では理解できず、高校のイメージを持ちにくい望にとっても、高校がどのような場所かを知らせる良い機会にもなると思いました。

学校説明会は多くの場合、2階や3階で、ほとんどの高校にエレベーターがありませんから、受付でいきなりの車椅子に先生方が右往左往される場面が多々ありました。体験授業では、お客さん扱いの学校がありました。でも、障害児と接したことのない先生方ですから仕方ありません。こちらから積極的に集団に入り、参加していくように努めました。英語のLL授業では私の友人が介助に入って一緒に受けたり、パソコンの授業では、トラックボールを持ち込んでスクリーンにキーボードを表示してもらったりしました。この機会に、高校の先生方が共に学ぶことに気づいてくださればいいなと思いました。

校内を回る時に高校の生徒さん達が電動車椅子を抱えてくれ、小さな段差に気づいてくれたり、望とコミュニケーションする場面があったり、クラブ体験で、中学の先輩達に「のんちゃん!」と声をかけられて、他の生徒に「妹の友達」と説明してくれたり、「ここ来るの?」と声をかけられたり(そりゃ、行ければいいのですが、倍率高いから無理だよ〜!)、いろんな出会いを楽しむことができました。

望も回を重ねる毎に、今度はどんな学校だろうと好奇心いっぱいで、説明を真剣に聞き、体験を楽しんでいました。他中学の生徒ばかりの中で1人で学校説明を受けたこともありました。前向きに楽しんでいく望を見て、「どこに行ってもやっていける」と感じました。

いろんな学校を見て回り、行きたい学校と倍率の低い学校をいくつかピックアップし、受験校を選んでいるところです。行きたい高校に行けるわけではありません。それは、どの生徒にとっても同じことかもしれませんが、どんなに頑張っても点数の取れない知的障害児にとって、学力選抜は不条理なことです。学力が無いのだから、行きたい高校に行けないのは仕方ないと片付けられても、なんだか納得はいきません。一方で、行きたい高校を受検するために「配慮」をするので、希望校を事前に知らせてくださいと言われても、「知的障害」の配慮はないので、倍率が高くて合格できない学校の受検をする「決定」など、親としてはできません。私達の力だけですぐには、この学力選抜の制度をどうすることもできません。今は、行きたい高校と入れそうな高校を考えながら、前期試験と後期試験の受験校を決めていくしかないのが現状です。

入学後の学校生活も考えなければなりませんが、望にとって最大の課題は、受検だと考えています。望は、言葉がほとんど使えませんが、人と関わる力や周りを巻き込む力を持っていて、様々な方法でコミュニケーションをとり、たくさんの友達や知り合いを作ってきました。他の生徒と違うところが多くありますが、その違いをお互いが受けとめて、ハプニングが起きた時には皆で話し合って、共に学び育ちあってきました。いろんなことを知りたい、やってみたいという気持ちの強い子です。高校でも、たくさんの友達を作り、前向きに学校生活を送ってくれると思います。

中学校の担任の先生と校長先生が次のように書いてくださいました。「彼女は、1人ではできないことがたくさんあるが、今の生徒に足りない『自分の思いをわかってくれるまで伝える力』『常に仲間を求める力』にあふれている。彼女と共に過ごす中で、周りの生徒が学び取ったことは多い。高等学校に進学できれば、彼女が持っている『生きる力』は、本当の意味で集団の意味を考える(または集団の質を変えることのできる)契機となり、個々の生徒にとって生きることの意味を考えさせる存在になるのではないかと考える」。

中学の先生方にそんなふうに言ってもらえることは本当に幸せだと、そしてまた、そう言ってもらえる状況を作ってきた望はすごいと、保育所からの12年間の道のりを振り返っています。年が明ければ、いよいよ受検が近づいてきます。気合を入れて向かいます。

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