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のんちゃん 便り

第156号  2011年12月

2011年を振り返って

のんちゃん便り9月号を発行後、「韓国へ(番外編)」を出そうと思っていたのですが、全く作成できぬまま日が過ぎて、あっというまに年末です。光陰矢の如し…(溜息)。この3カ月の報告を中心に、今年の振り返りをすることにします。

望は、9月の韓国旅行から帰国してすぐ、態変10月公演の稽古に入りました。初夏から、韓国公演の作品と10月公演の作品を並行して稽古していましたが、帰国後は10月公演の稽古の追い込みでした。10月14日から3日間、伊丹のアイホールで公演がありました。この作品「喰う」で、望は役者デビューをしました。チラシに名前が載り、パンフレットに写真やプロフィール等が載りました。「喰う」は、これぞ身体表現という感じの、私の思う「もっとも態変らしい」作品でした。身体と、生のピアノ演奏と、舞台に設置された大きな鉄美術のコラボレーションでした。

そんな難しい舞台を演出通りに望が演じることができるのか、稽古にほとんど付き添わなかった私は不安でいっぱいでしたが、一方で、きっとすばらしい作品だという予感がして、期待に胸を膨らませていました。望は3日間の公演をしっかりと演じました。療育センター、保育所、小学校、中学校の先生や、高校の介助員さん、幼い頃からお世話になってきたボランティアさんたち、そして、小中の同級生2人や友人知人たちが、望に会いに来てくださいました。同級生が、望の公演を観に来てくれたのは初めてです。今までは、「態変の舞台は子どもには難しいかな、望はエキストラだしな…」などと思って誘っていなかったのです。でも、今回は、望の役者デビュー公演なので、声をかけました。同級生2人は、定期テスト中にもかかわらず、伊丹まで来てくれ、公演を観て、公演後の金満里さんと鷲田清一氏の対談を聞いて、望と一緒に記念撮影をして、「面白かった〜!」と言ってくれました。大勢の方々に来ていただき、たくさんのプレゼントや花束、ケーキやお菓子をいただきました。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。みなさん、本当にありがとうございました。

そして、10月に望は18歳になりました。大人の仲間入りです。福祉サービスも再申請をして、介助の受給時間数も増えました。もちろん、自立していくことを考えると足りません。それでも、そろそろ、自立生活への準備を始めます。望は親離れをしてたくましくなりました。自分一人ではできないことがほとんどですが、周りの人を巻き込んでいろんなことをやっていきます。言葉は無くても、たくさんの「指示」を出し、「日常」の生活を送っています。介助者と介助サービス時間数の確保は課題ですが、兎にも角にも、20歳にむけ、新しい一歩を踏み出していけるようにと思っています。

11月には、高校の文化祭がありました。今年、望は生徒会役員をしているので、生徒会の友だちと連日、放課後に準備をしていました。態変公演の疲れが残る中、毎晩10時過ぎの下校で体力を消耗していましたが、いつもながらの気力で乗り越えました。文化祭当日も楽しく過ごしたようでした。私は、研修があって見に行くことができませんでしたが、楽しそうにしている写真を見せてもらいました。生徒会に入って良かったです。体育祭も文化祭も、介助の先生には距離を置いて見守りをしていただき、友だちの中で活動することができたと思います。素敵な友だちと出会えました。望は、生徒会の活動がある日をよく覚えていて、朝のスケジュール確認で、生徒会の絵カードを指して「生徒会!」と言って、放課後になるのを楽しみにしていました。「本人は楽しいかもしれないが、生徒会の役に立っているのか」と思われる方もあるかもしれません。本人がやりたいと思っていることは言うまでもありませんし、周りにとっても本人にとっても「そこに居る」こと、受け入れあっていくことに意味があると思っています。「存在すること」の大切さを周りの方々にわかっていただければと思います。そしてまた、望は来年の生徒会に立候補しました。来年の生徒会はどんな友だちと出会えるか、とても楽しみです。

さて、今年の振り返りです。望は、本当に充実した日々を送りました。今年は、大学と中学で講師の体験をしました。態変の舞台に出ている望ですから、大勢の前に出ても怖気づくことはありませんでした。小中学校時代のスライドを見せながら説明(笑)をしていました。また、OSKの舞台も観に行きました。前のめりになって観ていました。日々の暮らしは、昼間に福祉作業所や大学や自立生活センターや身体芸術研究所などに行き、月一回の理学療法や通院に行き、夜は高校へ行って授業を受けます。カレンダーで予定を確認したり、スケジュール帳に予定を記入したり、小さなホワイトボードで本日のスケジュールや介助者を確認したりすることは、ずっと続けています。日付や曜日、曜日で決まった行き先や行き方などはよく分かっています。

今年始めたこともいくつかあります。前しか見ないで生きていく望に、日々の振り返りをさせようと、5月から、日々の記録を写真で綴り始めました。出かけた先々で、携帯で写真をとり、登校前に介助者と一緒にその写真を確認しながら、メールでパソコンに送ってきます。それを編集して印刷し、ファイルに綴じています。月に一回、望はピアカウンセラーと一緒に、そのファイルを見ながら振り返り、次はどんなことをしようかと話し合います。その中で、お小遣い帳をつけ始めました。望は、お金の計算はできませんが、買い物や食事で、自分の財布から支払いをすることはよくわかっています。介助者と一緒に電卓をたたきながら記録していっています。

また、今年は、役所や図書館や高齢者ディサービスで「しごと」の体験をしたり、障害者の方々のグループホームや一人暮らしのお宅などの「すまい」訪問をしたりしました。どんな仕事があるのか、どんな暮らし方があるのかを知って欲しいと思います。先輩のお宅にお泊まりをさせてもらう約束もしました。少しずつ自立に向かっています。

来年は、高校4年生。今年度中に希望進路を決めます。進学をするのか、就職をするのか、どちらも簡単なことではありませんが、まずは本人の想いをしっかりと受け取りながら、方向を決めていきたいと思います。

みなさん、今年も一年、本当にありがとうございました。多くの災害があり、「いのち」のことを考え続けた一年でした。どうか、来年が良い年になりますように。

劇団態変「喰う」
(撮影:福永幸治氏)
高校文化祭

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