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のんちゃん 便り

157号  2012年
大学で講師をしました

またまた、のんちゃん便りの発行が遅くなってしまいました。まずは、この4カ月間の報告です。お正月、望は私とのんびり過ごし、進学の決まった幼なじみの友達と初詣に行きました。蛇足ですが、望父は正月ずっと仕事でした。近い将来に備えて、冬休みに、一人暮らしをしている先輩障害者のお宅やグループホームを訪問して、いろんな住まいを見てきました。お宅訪問をした若い女性のマンションで、同行した私の方が、「いいな〜。かわいい部屋だね〜」と羨ましがったら、「隣、空いてますよ!」と自立生活のお誘いを受けてしまいました。望も私も、今年の目標は、「自立に向けて!」にします。

2月には、態変公演の「ゴドーを待ちながら〜一世一代福森慶之介〜」を観に行き、マンドリンコンサートや吹奏楽コンサートにも行きました。また、神戸大学に遊びに行き、学内の交流ルーム、カフェ「あごら」にお邪魔し、子育て支援をきっかけにした共生のまちづくりをめざしている、大学のサテライト施設「あーち」にも寄って陶芸をしてきました。

3月には、自立生活をしている先輩のりょうさんのお宅を訪問し、その後、あやさんのお宅にヘルパーさんとお泊まりをしました。昨年のお泊まりの時はなかなか寝なかったようですが、今回はしっかりと眠れたようです。また、先天性四肢障害児父母の会で志賀高原にスキーにも行きました。昨年は震災のため中止だったので久しぶりの友達に会い、幼なじみの友達も一緒に行ってくれて、楽しいスキーキャンプになりました。

1月の初旬、望はこれまた小学校の時からの幼なじみ2人と一緒に、大学の社会福祉の授業で講師をしてきました。写真を交えながらともに育ちあったようすを話し、学生からの質問を受けました。教室の中を3人がマイクをもって回り、強制的に()学生にマイクを向けて質問をしてもらいました。「ともに育って良かったことは、どんなことですか?」という質問があり、望の友達は答えに困り悩んだ末に、「駅のエレベーターの位置が気になるとか、階段しかなくてのんちゃんが困るなとか思うことがあります」と答えていました。

「障害もつ友達と一緒に育つことで優しさや思いやりが…」、なんて答えを期待する人もいるのかもしれませんが、ともに育ちあっている子どもたちは、自分たちに「思いやりの気持ちがうまれた」なんて思っていないでしょう。なぜなら、障害をもつ友達が傍にいることが良くも悪くも選択することなくあたりまえのこととして育ってきているので、「何が良かったか?」と聞かれても答えに困るわけです。周りから見ている私達だから、子ども達のさまざまな言動に気づかされたり学ばされたり、時には驚かされたり感動させられたりしているのです。一緒にやってきた友達にとっては、普通のことなのです。

今、大阪では学校選択制の議論が行われています。学校に通うのが辛くて不登校になっている児童生徒が他学区に通うことができるような配慮ならば良いと思います。しかし、原則校区の学校に通うことになっているために、望は近隣の子どもたちとともに育ち、町の方々に顔を知られてあちこちで声をかけられるようになったのです。多様な子どもがともに育ちあってきた大阪の教育は胸を張れるものだと思います。学力云々以上に大切なことがあります。「子どものために」とか「子どもの最善の利益」とか、大人の都合で言われることが多いと感じます。子どもの思いや子どもに寄りそう教師の声を受けとめることなく、政治主導で教育が方向づけられることを危惧しています。

別れと出会いと

春は出会いと別れの季節ですが、この春は、本当に悲しい別れもありました。3月、劇団態変の役者の福森慶之介さんとの別れがありました。望は、5歳の時からのお付き合いで、昨年は韓国にも一緒に行き、1月の「喰う」の公演でもご一緒しました。2月の福森さんの公演を観に行って、一緒に写真を撮ってきたばかりでした。福森さんはとっても魅力的な役者さんで穏やかで優しくて、私は最も大好きな役者さんでした。昨年、韓国公演からの帰りの飛行機が隣の席で、ずっと話をしていました。私は、昨年の夏、手根管症候群という症状で右手の手術をし、抜糸の翌日に渡韓したので、過酷な(苦笑)韓国の旅の帰り、私の手を気遣ってくださいました。自分も手がしびれると言われ、私の手術の話を聞いて、帰国したら病院に行ってみようとおっしゃっていたのですが、それが大変な病気の症状だったとは…。あまりにも早い訃報でした。望とお通夜に行きました。望は、福森さんの顔を覗き込んだ時、大きな声で「ありがとう」と言って頭を下げたのです。解っているのかどうか、確認することはできませんが、はっきりと「ありがとう」でした。もう、会えないことが解っているのでしょうか。

そして、3月は、卒業式での別れもありました。仲よくしてくれていた生徒がたくさん卒業しました。卒業式の日、高校に迎えに行くと、「のんちゃん、一緒に写真撮ろう」と、次から次と私の見知らぬ生徒が声をかけてきて、写真撮影をしていました。「勉強、頑張ってな」と励まされていました。さまざまな課題を抱えた子どもたちが多くいる定時制の高校です。望のように、この高校だから入学でき、卒業できた生徒もいます。仕事をしながら通った生徒もいます。中学まで不登校だった生徒もいます。何年もかかって卒業を迎えた生徒もいます。希望いっぱいの未来でありますように!心から願っています。

4月、望は高校4年生になりました。夜間定時制単位制の高校で、望は4年間で卒業する予定で単位履修をしているので、高校最終学年になります。仲の良かった友達が高校にいなくなって、望はサヨナラしたことが解ると思います。でも、まだ多くの友達が残っていますから、相変わらず、「おう!」と右手を挙げて、あちこちで友達に挨拶をして登校しています。新一年生も入学してきました。下校の時、早速、「のんちゃん」と声をかけてきた新入生もいました。望は先輩なんだけどなぁ。親しみをこめて呼んでくれてるから、まぁいいか。授業を受ける生徒の顔ぶれも変わり、先生や介助員も一部変わりました。でも、望は、保育所から小学校、中学校、そして、高校と、場所が変わり、周りの人も変わっていくことを解っているようで、飄々とその環境を受け入れていきます。このたくましさが地域で生きていくということでもあると感じます。高校生活最後の1年、どんな出会いやハプニングが待ち受けているか楽しみです。

NHKカーネーション舞台(岸和田市)花粉症の望です。

泥んこ遊びは苦手だったはず。なのに、なぜか、陶芸に熱中。

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