見出しへ戻る

のんちゃん 便り

第162号  2013年6月

新生活スタート!

4月から望の生活は大きく変わりました。科目等履修生として、大学生活が始まりました。大学に行かない日は、障害者自立生活センターの「生活介護」(障害者総合支援法のサービス)に通っています。そして、引越しをして、世帯主になりました。

まず、大学のことからご報告します。科目等履修生ですから、入学式の参加は無理だろうなと思っていました。周囲の知人友人たちは、「紛れ込んでも分からへんから、出たら〜」などと言っていましたが、こんなに目立つ子が分からないわけはないと、私は尻込みしていました。ところが、望の思いを大学の事務の方がキャッチしてくださって、入学式に参加できるよう配慮してくださいました。感謝の気持ちでいっぱいでした。おかげで、高校卒業式があり、大学入学式があって、望の中で区切りがついた感じです。入学式当日は、台風のような暴風雨で、式は早々に切り上げられましたが、参加できてうれしそうでした。

入学生対象の(と言わなくても、たいていそうですが)オリエンテーションがあり、これも職員さんに声をかけていただいたので、参加しました。オリエンテーションの内容が、科目等履修生である望には関係ないことは承知の上です。目的は、入学生と場を共有し出会うことです。予想通り、望は、静かに集中して受けていました。分からない内容だろうが、自分に関係のない内容だろうが、ココで一緒に居ることが大切だと、彼女は分かっているようです。教員の紹介もあり、楽しそうでした。オリエンテーションは3日間の予定でした。でも、1日目の後、責任者の先生から電話があり、参加を断られました。対象者ではないけれど、静かにしているし邪魔しているわけではないのだから、居させてくれても…と思いましたが、科目等履修生は参加できないと言われたので仕方なく了承しました。

1日だけ参加したオリエンテーションの中で紹介された、新入生歓迎会には出ようと思っていましたが、これまた、歓迎会2日前に先生から電話があり、参加を断られてしまいました。歓迎会運営の中心となる2回生の学生とも仲良くなったのに、残念でした。自由参加の歓迎会なのに、申し込み制でもないのに、望が参加することを知って電話をしてこられたことにも驚きました。今後、科目等履修生に対する扱いについて会議で前向きに検討するので待って欲しい、とのことでした。歓迎してくださる先生もあれば、そうでない先生もあり。いろんな人がいる、それが地域で生きていくということ。さて、会議でどういう話しをされたのでしょう。

電話をしてこられた先生方は、障害児だからではなく、科目等履修生だからという理由で、科目等履修生全員に周知しているわけではないから、平等性に欠けるので遠慮してもらうだけと思われたのでしょうが、私は排除された気分でした。講義受講だけが目的ではなく、いろんな部分で参加して、自分に向き合ってくれる学生と出会うために科目等履修生になったのです。本当は入学したかったけど、知的障害者や重度障害者にはそういう選択しかないのが現状です。教育の平等性という言葉にも疑問を感じています。高校受検、そして、大学受験の時も、知的障害者に対し、学力審査で優劣をつけて判定することに平等性を言われ続け、傷つけられてきた言葉です。

「あら、科目等履修生が来ちゃったわ」「障害児が同じ場にいたら学生にとっても良いこと」くらいに受け入れてくだされば良いのに。懐の深さやキャパシティの広さがいろんな人を受け入れていく社会につながると思います。「支援する・支援される」という関係性の中でしか、障害児者と出会うことなく育てられた学生が、どんな専門職になっていくのか、危惧します。

授業だけで関係を作っていくのはなかなか難しいです。顔見知りのお友達くらいならできるでしょうが、求めているのはソコではありません。学生をたくさん巻き込むという状態はほど遠いです。それでも、やっていくしかありません。金曜は、小中学校の同級生と一緒の授業なので、友だちと一緒に受講しています。火曜も、他学部の3回生の男子学生が、時々、ボランティアに入ってくれたりしています。男子学生ですから、身体介助はできませんが、授業介助や食事介助ならOKです。望の大学生活は始まったばかりです。どう学生を巻き込んでいくか、望の応援団で作戦会議を開こうと思っています。

次に、「生活介護」の場での様子です。スタッフの方々が春休みから導尿の練習をしてくださり、4月にスムーズにスタートできました。高校の頃から参加させていただいていたので、スタッフの方々とはコミュニケーションも取れているようです。メンバーの方々とも関係が深まるようにいろんな工夫をしてくださり、毎回、テーマが設定されて活動に取り組んでいるようで、楽しそうです。

最後に、望の新居のことです。前号で書いたように、2DK+ロフトの長屋です。駅から近くて便利です。近隣は高齢者の方が多く、町会の組織率が高くて、昔ながらのご近所付き合いのある地域です。望を保育所の頃からご存知のボランティアさんや民生委員さんもご近所です。時々、晩ご飯の差し入れもいただきます。町内会長さんが、町会の決まりごとを教えてくださり、郵便受けに貼る「向井」のシールまで作ってくださいました。4月中旬に、新居お披露目パーティ−をしました。いろんな方が来てくださり、満員状態でした。小中学校の同級生の懐かしい顔もあって、望はうれしそうでした。長屋なので、ご近所への騒音が気になったのですが、「気にしなくていいですよ。たくさん来てくれて良かったわね」と言ってくださいました。

望は、家が変わっても、マイペースです。新しいヘルパーさんが増えて、コミュニケーションがうまくいかず、イライラすることはあっても、いろんな人が来る生活を楽しんでいるようです。気温が上がってきて苦手な季節になりましたが、体調を崩すことはなく、元気に過ごしています。外出の準備やご飯支度はお母さんがするものという意識も少しずつ変わり、やる気になっているようです。時々、調理もしています。家事を「させる」「教える」のではなく、いろんな体験をする中で、本人がしたいことを介助者が手伝い、できないことをカバーして、暮らしを作っていくことができればと思います。今の一番の課題は、介助者不足です。特に休日と夜の介助者がいなくて、私は望の家に居候です。ボランティア、ヘルパー、大募集中です。ちょっとでも「行くよ〜」という方、メールで連絡くださ〜い。

入学式 授業風景大学生に見えるかな?

161号 見出しへ戻る 163号