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のんちゃん 便り

第26号 1998年 WP:向井 裕子

まねっこごっこシアター

2月6日、保育所で「まねっこごっこシアター」がありました。一般にいう生活発表会です。0才児から5才児まで全員で、音楽や踊りや劇(これがまねっこごっこなのです)をして、家族の人達に見せるのです。

さあ、「まねっこごっこシアター」のはじまりー。まずは、オープニングです。0、1、2才児は皆で一緒に、鍋やおでんの具になってグツグツと踊りました。3、4、5才児は、たてわりの3グループに別れて、歌や踊りや観客とのクイズ等をして楽しませてくれました。望のグループは、2番目に登場しました。望は、座位保持椅子に座って保母さんと一緒に観客の前に出たのですが、泣いているお友達がいたので保母さんは望から離れその子どもの所に行かれました。保母さんに代わって年長児のRくんが、望の座位保持椅子を押して右に行ったり左に行ったりと踊りながら歌ってくれました。偶然にできた望の回りのその子どもだけの世界を、私はとても素敵だと感じました。

望が次に登場したのは、3才児のまねっこごっこ「チューチューGOGO」です。クラスの皆でそれぞれ、ねずみやねずみのお母さん、熊や蜂になったつもりでまねっこをします。望はねずみのお母さん役でした。お母さん役も一人ではなくて数人います。まねっこのはじまりです。朝、ねずみのお母さんは早起き。カーテンを開けて「おはよう。」と望が登場しました。右手でカーテンを開けて、うれしそうな顔をしていました。頭には、ねずみの帽子をかぶっていました。他のねずみのお母さん達もおはようと出てきました。お寝坊の子ねずみ達を起こします。「早く起きなさーい。」と口々にお母さん達が叫びます。望も負けじと「アーアー」と大きな声で起こしているつもり。よく声が出ていました。知らない人の前では、全く声を出さなかった望が、たくさんの観客の前で大きな声を出すなんて、それも台詞の場面でと驚き、この一年の成長を思いました。望にすれば、観客に見せているというつもりはなく、いつもの友達といつも通りに遊んでいるだけだったのだと思います。でも、知らない人がたくさんいても、いつも通りでいられるというのは、大きな成長だと思いました。ねずみのお母さん達に起こされたねずみ達は、ようやく起きて来て、皆で出発です。森の中を通って…熊と出会い、蜂に会って追いかけられ、もう大騒ぎ。観客に台詞を聞かせるなんて二の次です。役になりきってしっかり自分たちが楽しんでいます。望も、本当に楽しそうで、日頃の練習の様子が見えるようでした。最後に「出発進行、ポッポー。」と録音されたビッグマック(録音のできる大きなスイッチ)を望が押して、それを合図に一列になって行進して退場して行きました。望は、ボタンスイッチは、使い慣れているのですが、人前で押して見せるのはイヤ〜という時がよくあります。でもこの日は、ビッグマックを先生が取り出した時から、「私が押すのよ。」とばかりに右手をのばしていました。望は、自分の役がしっかりできた「まねっこ」でした。

望のクラスの次のだし物は、リズム遊びと歌でした。リズム遊びは、「きつねとたぬきのばけくらべ」の歌にあわせて銭太鼓をします。筒を振るとじゃらじゃら音がして、筒の先にふさふさがついていて、その筒を2本持ち、振ったり打ち合わせたりしてリズムを取ります。望は、腕の長さに合わせて短いのを一つ作ってもらい、それをベルトで手につけて、保母さんが持っているもう一本の銭太鼓に打ちつけて、うまくリズムを取るはずでした。観客の前に一列に並んで、トントンじゃらじゃらと、皆はリズムを取ったのですが、望は全くしようとしませんでした。自分がしたくてするのは良いけれど、させられるのは嫌な望です。1年前の望がそこにいました。いつもと違うぞとばかりに右手の袖を噛んでいました。後で保母さんが、「練習の時はいつも私の『上、下』の声に合わせて上手に、リズムを取って銭太鼓を鳴らしてくれるのですが。」と残念そうにおっしゃいました。私は、「今までは、あれが望の普通でしたから。」と笑って答えました。本番では、緊張してできなかったけど、練習では楽しく上手にしていたんだろうね、母さんはちゃんとわかってるよ、望。リズム遊びの後の「ブタくん街道を行く」を歌いながらの行進は、友達に椅子を押してもらいながら、右手を元気に振ってしっかり望も行進しているつもりでした。それから「ありさんのおはなし」をクラスの皆が大きな声で歌って終わりました。プログラムの最後のエンディングは「世界中の子どもたちが」の歌を手話をしながら全員で歌いました。

私は、運動会の時には、望はどんな表情をしているのだろうか、望はちゃんと参加できるだろうか等と、望の様子が気になっていたのですが、今回は、他の子どもの様子も見る余裕ができて、まねっこごっこシアターを楽しみました。腕白だけど人前でお遊戯するのが苦手だった子が、元気に歌ったり踊っていたり、いつもはおとなしくて目立たない子が上手に踊ったり演奏していたりしていて、うれしい発見がたくさんありました。4才児や5才児になるとだんだんと保母さんが入る場面も少なくなって、うまくできない子を他の子が助ける様子も見られて、子ども自身の力でやり遂げることができるように成長しているようでした。本当に、1人1人が主役の「まねっこごっこシアター」でした。そして望も、銭太鼓の時以外は、どの場面でも生き生きとして、とっても楽しそうな表情をしていました。私は、その表情を見て何度も涙がこぼれそうになりました。(「おはよう」とねずみのお母さん)

インフルエンザ

まねっこごっこシアターの前から少し風邪気味だった望は、まねっこごっこシアターの終わった夜から咳がひどくなり、その2日後には熱を出しました。望なりにまねっこごっこシアターの責任を感じていて、終わってほっとしたのかもしれません。大阪では、ひどいインフルエンザが流行っていて、あちこちで学級閉鎖から学校閉鎖まで行われていました。もしやインフルエンザと思ったら、予感的中。10日間ほど熱が上がったり下がったりを繰り返し、熱が下がった後も、咳がおさまらず、結局丸2週間も保育所を休みました。いつもは、高熱の時でも食欲旺盛の望が、今回ばかりは食欲がありません。食事時間に起こしても、いやいやをして布団を手差しして寝ると訴えます。1週間あまりだらだらと寝ていた望でしたが、やがて食欲が出てきて、そして、いつもの外行くコールの「アーアー」と玄関への手差しが始まりました。

こうなればもう大丈夫とほっとしましたが、外に連れ出すわけにはいきません。そして、私は、望が寝込んでからずっとの看病や通院で疲れ、腰も痛み始めていました。なるべく望を抱くまいと、畳の六畳間で望を這わせていました。夫が去年のクリスマスに買ってきた、お尻をタッチするとハイハイをするミッキーのお人形を追いかけて、望は、ずりばいをしているうちに目的物に向ってはいずっていくことができるようになりました。真っ直ぐは進みませんが、右手で、右方向へ少し進み、今度は左方向と、ジグザグに右斜め前進で進んで行きます。望は下細りの体なので、寝返りやずりばいでオムツがすっぽり抜けることがたまにあります。私が目を離した隙に、ずりばいで紙オムツが外れ、その紙オムツを手で打っては追いかけて遊んでいて、発見した私は、思わず手で顔を覆って苦笑してしまいました。押し入れに突っ込んでいったり、畳の間から板の間に落ちかけていたりと大変です。でも、望は、何か言いながら熱中して遊んでいます。いつも誰かに相手をしてもらわなければ遊ぼうとしなかった望が、一人でも楽しそうにズリズリと這いながら遊んでいます。インフルエンザは大変だったけれど、その後に大きなごほうびをもらったような望でした。

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