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のんちゃん 便り

第98号 2004年5月号

5年3組

始業式の日の朝、正門近くで昨年のクラスメイト数人が望を待ち構えていました。朝食や排便に時間がかかるので、望の登校はいつも滑り込みです。望を見つけて「のんちゃんは、3組やで」「また、同じクラスー」「違う組になっちゃった」など、口々に叫びました。聖徳太子でもない私は、教室に行きながら、仲よしさん1人1人のクラスを聞きました。2階に上って5年生の教室が並ぶ廊下に来ると、他の子ども達も寄ってきて「同じクラスや」とか「隣の2組」とか声をかけてくれました。各教室の前に張られている名簿を見るまでもなく、子ども達に連れられ、5年3組の教室に行きました。

望は、久しぶりの学校で張り切っていました。5年の教室の先にある4年1組の教室を目指してまっしぐらに行こうとしました。5年3組の教室が過ぎたところで、友だちが望を止めて「のんちゃん!今日から5年生。ここの教室になるんだよ」と、早速教えてくれています。毎年クラス換えがある学校ですから、望もすぐに納得したようで、5年3組の教室の入口に電動車椅子を止めました。教室に入ると、望特製の机が、教壇の横に置かれていました。昨年同じクラスだった友だちが、「机、ここに持ってくるんだよね。この机、入れ替える?」と、望の指定席である廊下側の前から2番目を指しました。そこには普通の机が置かれていましたが、ちゃんと空席にしてありました。高学年にもなると、周りの子ども達が本当にしっかりしてきます。クラスを見渡すと、知っている顔がたくさんです。毎年、クラスが換わるのですから、5年生になると、1年から4年までに同じクラスになったことのある子どもが大勢います。仲よくやっていけるだろうかと心配することもありません。

今年度は、望が入学してから初めて養護学級の先生の異動がなく、信頼する先生方なので安心です。クラス担任は、やさしそうな女の先生です。今年の5年生の担任は全員女性教師です。望は、1年から4年までずっと男の先生が担任でした。小学校の男性教師は少ないにもかかわらず、4年間、男の先生ばかりだったということは「偶然とは思えない!」現象(友人の言葉)ですが、まあその辺は追求しないでおきましょう。

4月には、早速遠足がありました。遠足の2日前におやつを買いに行きました。遠足のしおりも渡されているし、望は、遠足の前日を遠足と勘違いしたようで、朝、弁当がないのを怒り、「赤白帽!」と訴え、リュックでないことに怒りながら登校しました。教室に着いて、クラスメイトに「今日遠足と思ったみたいでリュックじゃないと怒ってた」と私が言うと、「のんちゃん。遠足は明日。今日は、ほら、ランドセル持ってるやろ?」などと数人が一生懸命説明してくれていました。遠足当日は、暑すぎるほどの晴天で、お弁当もほとんど残して、ずいぶん疲れたようですが、いつもの気力で楽しんできました。遠足の作文をクラスメイトと一緒に書いてきました。

「えんそくはたのしかったです。りゆうはみんなといっしょにいけたからです。みんなといっしょにいってたのしかったです。みんなといっしょにグループでまわりました。グループ名はガンバ大阪です。SくんとKくんとOくんとYさんとKさんとわたしの6人のグループでした。とくてんが一番多くてうれしかったです。

くるまいすをみんなにこうたいでおしてもらいました。さかみちがおおかったからたいへんでした。

たのしかったので、またいきたいです。みんなといけてたのしかったです。」

望は、文章など書けませんから、子ども達が望の気持ちになって、一緒に鉛筆を持って書いてくれたのでしょう。遠足の日は、手押しの車椅子で行ったのですが、押している子ども達は、坂道が多くて余程しんどかったのでしょう。読みながら、思わず笑ってしまいました。「みんなと一緒で」が何度もでてきます。なるほどねと、周りの子ども達が「一緒に」を意識していることを感じながら読みました。

望は、毎朝、起きるとすぐに「がっこ」と言います。今日は学校だよと答えると、今度は、「いちに、さんし」と右腕を上げたり下ろしたり。『体育!』という表現です。そして次は「フ〜ッフ〜ッ」と息を吹いて『音楽!』。リコーダーを吹く真似です。体育はあるか、音楽はあるかと確認をします。体育や音楽があるとわかると嬉しそうにします。本当に学校大好き、友達大好きな望です。

4月には、参観日もありました。少し早く学校に行くとまだ休憩時間で、望は校庭で大縄をして遊んでいました。遊んでいる友達をよく見ると、クラスメイトではなく、4年生達でした。子ども達は、ごく自然に望を入れてくれていました。どこで覚えたのか、のんちゃんルールで大縄を回してくれていました。少し離れて見ていらした養護学級の先生が、私を見つけ、「のんちゃん、ほんとにたくましくなりましたね。学年が違っても、自分から遊びに入って行くようになりました」とおっしゃいました。人の中で育ったたくましさです。これからも「みんなと一緒に」の中で、楽しくいきいきと生きる力をつけていくことでしょう。

少し長いひとこと

この春、特定非営利活動(NPO)法人を設立しました。事業内容は、一言で表現してしまうと、地域福祉の取り組みです。地域住民全てが対象です。相談支援、サポートネットワーク作り、生活・活動支援、まちづくり、講座の企画開催など多くの内容を挙げています。

望が1歳の頃、通園施設に通う手続きのため児童相談所に行きました。帰り際、相談員が「お母さん、今は大変でしょうが、養護学校に行くようになったら楽になりますからね」とおっしゃいました。その時「なんかおかしい」と思いました。養護学校がいいとか悪いとかということではないのです。どの学校に行くのか、どんな暮らしをしていくのか、どう生きていくのかは、私たち親や、最終的には望自身が決めることだと思いました。

地域福祉も同じです。エライ人が良かれと思って決めるものではなく、力のある人だけで決めるものでもなく、住民みんなで決定して創っていくものだと思います。生活者の視点で住民の声を聴き、共に考え行動していきたいと思っています。そして、望を育てる中で教えられてきた「つながること」が活動の原点です。収益のない中でいかに活動をしていくかが大きな課題です。ボランティアの募集や養成をしていきます。皆さんのご協力をよろしくお願い申しあげます。


言葉が少なく見通しのたちにくい望に、時間割を友だちが伝えてくれる。3年から続く毎朝の習慣

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