メガゾーン23 III イブの目覚め/解放の日
技術考察:
 下のCASTをごらんになれば判るとおり、私はあえて矢作省吾をCASTのトップに据えた。それはこの物語が、実は矢作省吾によって引き起こされたものだと考えるからである。

 前作でメガゾーンの住民(の一部)を地球に導いた矢作省吾は、ADAMを設計した地球管理センターが用意した都市である、エデンにその第一歩を記した。しかしそこの生活は暴走したADAMによって支配された、地獄のような世界だったのであろう。

 このとき矢作省吾にどの程度の情報が、メガゾーンのイブから渡されていたかは、判らないが、彼は順序を間違えたのであろう。エデンのシステムを設計したイブを目覚めさせてしかる後に、システム中枢に向かっていれば、何の問題もなかった。しかし彼は暴走したADAMによって変質させられたシステムを止めるために、まずシステムの中枢に向かったのであろう。では何故ADAMが暴走したのか。

 ADAMはその性格上月面(の地下)のどこかに設置されているのであろう。さらにADAMは何のメンテナンスも受けずに、人類の帰りを待ち続けた。そのため、ディスク上などに記憶された情報が宇宙線などで変質を余儀なくされたのではないだろうか。
 特に重要なのは、インターフェースではなくそれを動かすためのデータベース自体である。インターフェースや動作の中核となる部分は、チェックサムを完備して、たとえ変質していたとしても、元に戻せるように設計されていたはずである。事実その行動以外の部分は、全く問題なく働いていた。
 現在のAIプログラムの大半がそうであるように、ADAMもデータベースによってその行動を決めていると考えられる。従って、そのデータベースが正常で有れば、暴走を起こしエデンのシステムに干渉することもなかっただろう。おそらく、地球に帰ってきた全ての都市宇宙船は、ADAMの攻撃を受けたはずである。ADAMが暴走していれば、十分あり得ることである。それを防止するために、クリエイターで有るイブが人工冬眠装置で残ったのであろう。

 しかし矢作省吾は間違った。その間違えが、この物語を生んだのである。



評論のようなもの:
 私は正直言って、前作でこの物語は完結していると考えていた。

 究極の目的である地球帰還を果たした彼らに、いったいどの様な物語があるというのだろうか。少なくとも苦労話は耐えないだろうが、SFアニメにするほどの物語は果たして考えられるかどうか危ぶんでいた。
 しかし上のような、言えば裏の設定を行うことで、今回の様な物語が可能となった。
 上の技術考察は、単なる私の想像であり、何故彼らがあのような危機に直面しなければならなくなったかは、本編には何も語られていない。と言うより時代設定が地球帰還より数100年後と言うことだから、それも当然かもしれない。

 私は、2001年に発売されたDVD-BOXで初めてこの作品を見た。それは、私に上のような危惧があったからである。

前作を引き継いだだけの、意味のない物語。

 自分の中で、知らず知らずの内に上のような感情が出ていた可能性は否定できない。しかしその考えは改めなければならないようである。
 上のような裏の背景があったかどうかは、制作者に聞かなければ判らないが、少なくとも何らかの設定は存在したはずである。その上で、時代を数百年ずらすことで、物語として十分耐えうる作品に仕上がったと言えるだろう。もし前作をごらんになっていて、まだ見てない方には、是非お薦めしたい逸品である。
 


1989年作品
CAST
矢作 省吾:矢尾一樹
エイジ:草尾 毅
リョウ:笠原 弘子
シオン:山寺 宏一
イブ:高岡 早紀;宮里久美 

STAFF
原案●石黒 昇、鈴木敏充
監督●荒牧 伸志、八谷賢一
撮影監督●小西一廣(イブの目覚め)、高橋明彦(解放の日)
イブデザイン●美樹本 晴彦


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メガゾーン23Part2 秘密く・だ・さ・い


 今現在が本当に真実なのか、考えたことはありませんか?自分が真実だと信じているこの町や世界が、実は幻想にしか過ぎなかったらあなたは・・・このメガゾーン23の世界は、まさしくそんな世界なのです。 

 この町はバハムートと呼ばれる巨大なコンピュータシステムが作り出した、幻想の世界なのである。町の風景はこの作品が作られた当時の23区内、特に中野や渋谷といった繁華街が描かれている。しかし現実には、すでに地球は一度死の星になり、彼らはその死の星から脱出するために作られた、”ノアの箱舟”に乗っているのである。 

 その町の中では、なんと外国や地方に旅行や出張に行く人すらいるのである。しかしそれらはすべてバハムートが作り出す幻想なのである。そして、バハムートを管理する人たちがいる。管理といっても制御するわけではなく、保守やメンテナンスをするだけであるが、この事実を知る人は、いわゆる社会のトップといわれる人にしか、知らされていない。 

 このトップたちが、バハムートを制御して船を自由に操ろうと考えるのも当然の成り行きである。そしてその制御にある程度成功した時期と同じくして、同じように地球を脱出したデザルグという都市宇宙船の攻撃が始まった。 

 この攻撃と合い前後して、あるバイクメーカーのテストライダーが、テストを任された新型バイク・プロトガーランドと共に、この物語の主人公矢作省吾の元に転がり込んでくる。このバイクが、バハムートの中枢であるイブと唯一コンタクトが取れる端末であり、この物語の一つの鍵となる。そして、イブは矢作省吾をオペレーターとして認め、彼以外のコンタクトを受け付けなくなる。 

 矢作省吾にもメガゾーン23の秘密が明かされるが、彼はこれを秘密の元におくことを潔しとせず、公開を試みるが失敗に終わり、関係した少女は殺されてしまう。そしてその少女の殺人犯として、矢作省吾は、警察に狙われることになるのである。 

 以上がパート1の荒筋である。Part2では、矢作省吾は暴走族の一員となって、その仲間たちと、バハムートの制御に成功した軍・警察を向こうにまわし、プロトガーランドを取り戻し、イブの所へ行くことに成功するのである。 

 この話で重要な位置を占めるのは、敵役であるB・Dである。イブが語るところによれば、自分は2度と地球を死の星に追いやらない、人間だけを地球に送り届けるための、システムであり、一方月を中心に張り巡らされた防衛網は、ADAMと呼ばれイブからの情報により、そうした人たちのみを、地球に迎え入れるシステムである。またプロトガーランドは、イブが人間たちの情報を得るための端末だったのである。そしてそれらの事柄のかなりの部分をB・Dは知っていたようである。 

 結局デザルグと共に地球に近づいたメガゾーン23は、ADAMの攻撃にさらされることになる。そこに至って、イブはファイナルプロテクションモードに移行する。このモードは、最終的なADAMの判断の如何によらず、町の人口から言えばごく少数の人間であれば、地球へ侵入できるモードである。矢作省吾と言葉を交わしたイブは、その資格ありと認めて矢作省吾と彼の仲間たちを地球に送り届けるのであった。 

 さて先ほど敵役のB・Dが重要な位置を占めているといったが、それは彼の言動からイブやADAMのことをほぼ正確に把握していたと推定されるからである。恐らく彼が目指したのは、イブを制御し偽情報をADAMに送ることによって、メガゾーンに暮らす人たちすべてを、母なる大地に立たせることだったのではないか。 

 彼B・Dは革命によって権力を掌握したにしても軍の中枢にいるにしては、40前の言わば若造である。その彼が、なぜそれまでたいした戦乱もなかったであろう、メガゾーンでそれほど出世できたのであろうか?その理由は、もしかしたらバハムートの秘密をつかんでいたからかもしれない。だとすれば、彼もまた矢作省吾と同じ地平に立つ人間なのではあるまいか? 

 方法はともかくとして、彼の目的は純粋なものであり、一片の私心私欲も無い。彼のような人物こそ地球へとさえ思える。イブやADAMは所詮コンピュータシステムであり、0か1かでしかない。そこにこのシステムの問題点がある。このシステムを作ったのは、当時の為政者たちの音頭で作られた、地球保護法をベースにしている。 

 システムを開発した人たちは、思ったことだろう。もし町として失格でも、その中に合格に値する人がいたらどうしようか?と。そこで考え出されたのが、例外処置のしてのファイナルプロテクションモードなのであろう。そして、イブが作り出した立体映像の自分の表情からすると、そのプロテクションモードも勝手に作動させることはできず、ある条件が成立したときのみ動作可能なのだろう。
 
 それはどんな条件なのか?それは恐らく矢作省吾とイブの会話の最後のほうに出てくるいくつかの言葉が、キーワードだったのだろう。 

「いいんだ、イブ。俺たち生き残っていけるほどいい人間じゃないと思うし・・・

ただ仲間たちのおかげで、ここに来れた事を、君に会えたことを、よかったと思っている。」

 もしかしたら、この私心の無さが決め手だったのだろうか?ともかく彼・矢作省吾とその仲間たちは、地球に降り立ち新たな生活をはじめていくのであった。彼らが乗ってきた宇宙船が、古代インカの遺跡に見えるのは、私だけであろうか。もしかしたら自分たちのルーツも、彼ら同様何世代かを経て再び地球に降り立った、人類なのかもしれない。 

 そんな事を考えさせてくれた映画に乾杯!


1986年作品
CAST
矢作 省吾:矢尾一樹
高中 油唯:川村 万梨
B・D:塩沢 兼人
イブ:宮里久美
ライトニング:千葉繁 

STAFF
総監修●石黒 昇
監督●板野一郎
撮影監督●梅津 泰臣
スペシャルデザイン●美樹本 晴彦

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