■日本春蘭栽培法(関東地方基準)■ Written by Onizawa, renewal on Nov./06/2005   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ●鉢   ・材質     (1)素焼鉢は通気性良好。     (2)プラスティック鉢は軽く丈夫で安価。     (3)陶器製薄肉の春蘭専用鉢は見栄え良く、多用され、高価。     見栄えよりも栽培面重視では、(1)が最善。(2)、(3)は次善。   ・サイズ     (1)蘭鉢(又は深鉢、長鉢など)の4号鉢(容積約0.7L)が通例。     (2)多株植えで4.5号鉢。     (3)例外的に多株向きに高々5号鉢(容積約1.3L)まで。     形状は、口径サイズを0.5刻みで号数(寸=3cm)で表わしており、蘭には背丈    高いラッパ(トランペット)状の蘭鉢、深鉢、長鉢などが適する。     蘭栽培においては、鉢サイズの大は小を兼ねない。株・根と必要最少限の用    土とが収容可能な範囲内で、できるだけ小サイズが良い。     理由は、春蘭など蘭の根は太く根内部は海綿状で水分の保持貯蔵性が良く乾    燥に強く、新鮮な外気を好む反面、長時間継続的な湿潤による閉鎖状態では活    性度が低下し、根腐れなど起す。     小サイズ鉢では詰込んである用土量が少ないので乾燥速く、根が外気と触れ    る機会が多く、根活動が旺盛で多量の水やりや施肥でも根腐れ起きなく、成長    良好。     大サイズでは用土量多く、少量の水やりでも容易に乾燥せず、窒息気味で根    腐れ起し易く、成長悪い。 ●用土    春蘭など蘭の根は太く、根内部は海綿状で水分の貯蔵性が良く、乾燥に強い。    反面、長時間の多湿に弱く、常時通気性を好む。    また、弱酸性土を好み、酸性により増殖できない有害な雑菌から避けられる。    用土の条件は、水を掛けても崩壊し難く、粉末化しない。排水が良い。塩分を   含まない。    ある程度のミネラル微量要素の Ca,Mg,Zn,Mo,B,Fe,Cu等を含む。その他の肥料   分を含まないこと。肥料含有では病原菌などの雑菌類も生存、繁殖している心配   がある。    春蘭は弱酸性土を好み、鹿沼土は弱酸性の淡い黄色の粒子径数ミリ前後の火山   灰土であり、通気性及び保水性(多孔質)が良く、肥料分を含まない。鉢栽培の用   土質に適する。微粉末化により通気性及び水捌(は)けが悪化して根腐れを引き起   こすので、崩壊せず、かつ、多湿化しないように焼いて硬質化した焼鹿沼土と、   焼いて硬質化した焼赤玉土(焼鹿沼土の1/3〜1/4程度量)とを混合した培養土が適   する。これらを混合調合してある土が春蘭専用用土として市販もされている。    これらの用土が確保できない場合は、洋蘭用のコンポスト材(椰子殻チップ、   クリプトモス=杉、桧の樹皮、その他)を転用、又はこれらと他の用土材とを適   当に混用等も可。    各種「用土材類」については下記参照。 ▼用土 例1 (通例)ここに例示したのと同様混合用土は、春蘭用、東洋蘭用として          市販もされている。栽培成功には、この入手を推奨する。  ・底用土;全量の約10%     発泡スチロール片約1cm角、その他(クレイボール大粒など)を混合又は単用。  ・中層用土;全量の約80〜90% ( )は中層用土だけでの内訳比(大略値)     焼赤玉土(20%),焼鹿沼土(70%)の混合用土か、     又は、焼赤玉土(20%),焼鹿沼土(40%),クレイボール中粒(20%),木炭約0.5〜1    cm片(10%)の混合用土、     これら前者、後者の混合済み用土は、東洋蘭用、又は春蘭用土として市販さ    れている。     焼赤玉土,焼鹿沼土は通気性確保のためフルイにより直径2mm余以下の微粒子    を排除しておく。  ・上層用土(化粧用上砂等);全量の約10〜0%     用土全体が動かぬようにクレイボール数個を、中層用土上面との境界位置で、    鉢の内側面に接する周辺へ押込むように均等配置する。この上へ山盛りに桐生    砂,日向砂,春蘭用配合砂などを敷く。これら上層用土は特段必要ない用土。   * 中層用土に元肥としてマグアンプKの大粒又は中粒を4号鉢〜5号鉢で茶さじ0.5   〜1杯程度を混合する。植替3〜4ヵ月後に元肥の約半分相当量の小粒を追肥、置   肥する。  ▽マグアンプK(商品名)とは;    穏やかに効く緩行性混合成化学肥料で、成分重量比%はN-P-K-Mg=6-40-6-15で   ある。合計が100に達しないのは無効成分材料もあるため。長期に亘って徐々に   効き、有効期間は、大粒(直径約3mm)が2年、中粒(直径約2mm)が1年、小粒(直径   約1mm)が2ヵ月程度。即効性でないので枯らす心配が少なく、草花、野菜、山野   草、樹木等多くの植物栽培に多用される。    大粒(あるいは中粒)は植付時、植替時に元肥として用土に混合使用する。    小粒は追肥として時々補給的に置き肥する。 ▼用土 例2 (ひ弱な苗、又は弱って枯れ掛かった株の回復)    土を用いない。鉢底に通気を良くするため炭を井形に組んで敷き、水苔(乾燥   したのが市販されているが、緑色に近いのが良く、茶色はまずい)を水で柔らか   になるまで湿らせてから根と根の間、その周りに巻き締め、更に表面まで山盛り   にする。事前に、腐っている根は元を押さえて指で引くと、根の中心にある針金   状の細い繊維が残り、これは切断せず残してから水苔処理に取り掛かる。その後、   底から流れ出るまで十分に注水する。    あまりにも衰弱している場合は、更に、鉢にビニールの小袋をかぶせて鉢に密   着させ湿気を保ち、鉢底まではかぶせない。息抜きのため袋の頂上中心点に小孔   を開けておく。袋により根腐れを起すので新芽が出たらば袋を早急に除去する。    肥料としてハイポネックスを2000倍程度に薄めた液肥を与える。元気に回復し   たらば「●植替え」項に示す時期に、「▼用土例1、●潅水」項等に従う。  _________   用 土 材 類   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ▽クレイボール(発泡煉石) ハイドロボール(商品名)   用途;東洋らんの鉢栽培用土、水耕栽培(ハイドロカルチャー)用   pH;ほぼ中性  (注)pH=7が中性,7未満が酸性,7超過がアルカリ(塩基)性   特徴;粘土玉を高温で焼いて発泡させて粒状に処理した用土。保水性、排水性に    富む。   用法;使用前に良く洗う。水洗済み品も市販されているが、安価品では当初茶色    等を呈しており、これを澄んだ排水となるまで十分に水洗する。灰色が正常色。    再使用では、事前に水で十分洗浄後、日干し乾燥する。  ▽発泡スチロール(小間切れ片)   用途;蘭等の鉢栽培の植込み底敷用材、根腐れ防止混合用材   pH;中性(pH=7)   特徴;保温性があり、通気性も確保でき、発根成長に馴染み、根腐れ防止効果も    ある。保水性、保肥力は無い。廃材利用で無料入手できる。   用法;蘭等の鉢栽培における底敷物材として、1cm角程度に小間切れに裁断し    て使用し、発根・伸張の促進、根腐れ防止用に最適。軽石や日向石等の固い材    料では根は、これを逃避し、根の発達成長が抑制される傾向が大きい。軽石等    に代わって多用傾向。     また、根腐れ防止のために0.3〜0.5cm片程度に小間切れにして中層用土と混    合してもよい。  ▽鹿沼土   用途;東洋らん、挿し木用、さつき、石楠花(しゃくなげ)   pH;5.0〜6.0の弱酸性   特徴;栃木県鹿沼地方で産出する軽石灰質の火山性砂礫が風化した淡黄色の粒状    土。通気性、保水性が良い。有機物、肥料分の含有ないので雑菌が少ない。   用法;山苔、山砂などと混ぜて使用することが多い。酸性に弱い植物には適さな    い。     春蘭用には崩壊して粉末化しないように焼加工した硬質鹿沼土を使用する。  ▽赤玉土(赤土)   用途;一般鉢植え、挿し木用、盆栽用   pH;4.0〜6.0程度の弱酸性   特徴;関東ローム層の下の層から掘り出される黄褐色で粘土質の火山灰土。赤土    を大,中,小の粒状に分別。通気性、保水性が良く、有機肥料分を含まないので    雑菌が少ない。   用法;弱酸性でリン酸肥料の吸収効果が悪い。鹿沼土、腐葉土など他の土と混合    して鉢植え用として使う。     春蘭用には崩壊して粉末化しないように焼加工した硬質赤玉土を使用する。  ▽水苔   用途;洋らん、観葉植物   pH;ほぼ中性(pH=7)   特徴;湿地帯に生える苔。保水性、通気性に優れ、淡黄緑色で繊維の長いのが良    質。   用法;乾燥状態(緑色が良質、茶色は粗悪)で市販されている。使用時にはそのま    までなく、注水して十分柔らかくして絞った後から作業する。保水力が優れて    いるので留意する。  ▽山苔   用途;盆栽、サツキ、山野草   pH;ほぼ中性(pH=7)   特徴;山地に自生する苔。水苔に比べ、保水性は劣るが、通気性がある。   用法;細かくして川砂や鹿沼土と混ぜてサツキ、山野草の栽培用。  ▽クリプトモス   用途;洋らん、シクラメン、草花類、観葉植物、吊鉢、敷きワラの代用   pH;   特徴;スギ、ヒノキの樹皮を粉砕して柔らかい繊維(モス)状に加工し、根酸調整    剤、湿潤剤を添加した暗茶色系の植込み材。原料が廃材利用なので割合安価。    保水性、通気性があり、根腐れは起し難い。保肥性が弱く、施肥は多目にする。    軽量なので吊鉢にも向く。   用法;そのまま使用するか、又は他の用土材と混用。  ▽椰子殻チップ(ベラボン)   用途;洋らん、観葉植物   pH;   特徴;椰子の実の外皮で、繊維層で構成される固めのスポンジ状厚皮をチップ状    に裁断した物で通気性、排水性、吸水性に富む。     塩類を含んでいることがあり、多量の水に浸しては水を毎日取替えることを    10日間程度繰返してアク(塩類)抜きしてから使う。     多くはアク抜き済み市販品が販売されている。   用法;洋らんなどの植込み用。     アク抜きしたものでも、使用直前にきれいな水に2時間ほど漬けて後にザル    等に上げ入れ、チップを圧縮しないように、そのまま1時間ほど水切りする。    水分を含んだ状態で鉢へ詰込む。植込み終了時に水やりしない。  ▽軽石   用途;東洋らん、洋らん、万年青(おもと)、山野草、棕櫚(しゅろ)、竹類   pH;ほぼ中性(pH=7)   特徴;日向石(ヒュウガ石)の大粒,中粒,小粒等。多孔質で通気性良い。保水性に    劣る。発根、根張り生育は発泡スチロール小片よりも劣る。   用法;主に蘭の植込み混用材料。固いためこれを逃避して根を張り、発根を鈍ら    せると主張する人もいる。     無料入手できる上、旺盛、活発に根張りする発泡スチロール片へ代わる傾向。  ▽川砂   用途;東洋らん、挿し木用、サボテン、盆栽、花木、球根   pH;ほぼ中性(pH=7)、産地により差異あり   特徴;産地別に矢作川砂、天神川砂、白川砂がある。粘土や有機物を混入しない    川の上流での採取物が良質。   用法;挿し木にはそのまま使用。又は用土と混用。  ▽山砂   用途;東洋らん、山野草、万年青(おもと)   pH;産地により差異   特徴;山で採取される砂で排水性、保水性、通気性に優れる。    浅間砂(浅間山の火山砂礫)。    桐生砂(キリュウ砂、鹿沼土の下層から採取される砂で、鉄分の含有が多い)。    日向土(ヒュウガ土、宮崎県台地の下層土で軽石よりも細粒)。    富士砂(富士山地域の黒色火山砂礫)。    真砂土(花崗岩地帯の風化した山砂土)。   用法;用土と混用。  ▽ピートモス(泥炭)    寒冷地帯において、苔類が寒冷のため十分に腐敗、腐蝕進行せずに太古から堆   積したもので、酸性度が強く蘭栽培に向かない。ブルーベリー用土の酸性化に最   適だが、間違って入手しないように参考掲載した。 ●置き場所(鉢植え、地植え)    自然界では落葉樹の下など冬は直射日光が当り、冬以外は日陰か、又は木漏日   程度が差込み、水はけの良い場所に多く自生している。    日光が、長時間に亘り強くなく、微弱ながら当たる場所や短時間当る場所を好   む。だから、冬以外の季節は強い直射日光をヨシズ、ダイオネット、寒冷紗で半   分程度遮光(減光)するのが良い。    根が白く太いのが蘭類の特徴の一つで、太いとは、ここに水分を十分に貯えて   おけるし、空気に接触することによって根が萎れずに生育に役立てており、一般   の植物よりも乾燥に一時的に耐え得る能力が備わっている反面、逆に、一般植物   同様な水環境や水補給では根腐れを起こし易い。根が通気性を好む。    長雨や用土によっては単なる雨でも悪いので、雨避けのビニール等を掛けられ   ること。    冬は凍結を避ける。厳寒期でも2〜3度C(灌水時は10度C以上が望ましい)潅水後   凍らせなければ一応可。  【注】冬季、地植では地熱により凍死の心配は薄い。     鉢植で、特にスタンド等に地面から浮かして置く場合は地熱が得られなく、    屋外では容易に氷点下になり凍死する。この症状は、葉全体は緑だが、株元の    葉縁の部分が丸まり、薄茶色になる。回復の見込みない。特に降雪時の残雪に    よる翌朝冷え込みに注意。事前対策は屋内に取り込んで置くなど。    夏は高温湿潤により蒸れないように風通しを良くしたり、風通しの良い場所に   置く。    ナメクジからの被害を避けるため、鉢の置き場所を棚・床上げ(遮光を忘れず   に)するのも一方法。    地植えするのであれば、水はけの良い土地であることが絶対条件。粘土質、田   んぼ地、湧水地と標高が同程度以下程度の地はダメだが、傾斜地上方なら一応可。   直射日光の当らない明るく通風の良い場所=広葉大樹や柘(つげ)の木の下など。   木漏日が差込んだり、冬季は短時間日光が差込むのが良く、広葉落葉樹下が適所。   高温日照り気象が異常継続しない限り、散水不要。雑草除去に除草剤使用は絶対   禁止。鉢栽培よりも地植えは失敗が少ないので長期不在者、多忙者、横着・無精   者、初心者等向きである。 ●潅水    この作業が最も難しい。水やり回数は、鉢の大きさ(収容用土量)、用土、置き   場所、活性季節、休眠季節、陽気等条件により一律ではない。やり過ぎにより根   腐れ等失敗多い。乾燥気味が失敗少ない。    「鉢の表土が乾いた」としても失敗する。用土表面が乾燥していても大サイズ   鉢は用土量多く、内部は濡れていることがある。大サイズ鉢を止めて小サイズ鉢   へ転換すると失敗少ない。    表面に化粧砂を敷くのは、乾き具合による色変化の判別困難で、感心しない。    鉢の表土が乾いたら、その日でなく、2〜4日経過後(迷ったら、必ず2日間以上   放置)に鉢底から流れ出るまで、たっぷり注水する。ただし、液肥を与えた時は   次の乾燥まで灌水しない。  ▼乾湿判定法   (1) 用土(表土)変色による法     用土表面が土本来の色を呈している = 乾燥していない。     用土表面のほんどが白色で、粒子1,2個が有色 = 内部は乾燥していない。     用土表面全体が白色に変化 = 変化して2日前後経てば、乾燥気味。   (2) 用土・鉢総重量変化による法     鉢、用土とも軽量材質であれば、鉢全体を手に持って、用土乾湿状態を重量    比較感により容易に判定できる。   (3) 灌水日間隔法     頻度回数は3〜10[回/月]程度で、季節により異なる。  ▼水やり実施      冬季は少な目。開花時も少な目。(少な目とは灌水の日間隔が長いことで     あり、1回当りの水量が少ないことでない)      1〜3月:表土の一部でも白く乾いていない場合は灌水しない。全面白くな     っている場合は翌日に、ツボミ、花ある株では、ツボミ、花、葉を避けて表     土へ底から流れ出るまで灌水する。ツボミ等無い株でも日が差した時に水滴     が葉に残っていないように早い時刻に灌水する。      梅雨の前頃はやや多目。      梅雨期中は多湿なので少な目。      梅雨開け後は多目。      花芽を持たせるため,7月中・下旬2,3週間程度一時的に乾燥気味に少な目。      その他は乾き具合による。    冬は温暖日の午前中(10℃以上時)に行う。あまり遅くても、やり過ぎても悪い。   夜間凍結の心配がある。    注水温は用土と同温の水のこと。冬は僅かに高くても良いが、お湯はダメ。    夏でも冷水は与えない。昼間や高温時に行うと蒸れて根腐れ等を起こす。気温   下降した夕方頃に行う。遅いのも悪く、水玉が葉・茎の表面に翌日照時まで残っ   ていると、これがレンズ作用して葉(特に若芽)等に日焼け障害等を起こす。 ●肥料    春蘭施肥量の適値は一般草花の半分量が目安。過多量に注意。少量は繁茂少な   いが、丈夫に育つ。過多量は、枯死したり、繁茂過多になったところで病弱で、   その上、花芽の出付きが悪い。    窒素成分は葉がよく茂る反面、花芽が期待できないし、病気に脆弱となる。    カリ成分(硫酸加里、灰汁等)は根を発達充実させ、病気に強くする。    リン成分(骨粉、鶏糞等)は花芽・蕾・実を促進させる。   ・置き肥用の固形肥料:油粕60%、米糠30%、骨粉5%、川魚の乾燥粉末5%。   ・置き肥代用の化学肥料:マグアンプK(「用土」の項参照)。   ・液肥ではハイポネックス(即効性肥料)を水で1000〜2000倍に薄めたものなど。   ・簡易液肥(窒素成分)の作り方:1升瓶又は2リットル・ペットボトル等に水と油     粕とを入れ、虫か入らぬように布で蓋をしておく。しばらくすると発酵が進     み液肥が出来上がる。これをハイポネックス同様に薄めて与える。これは窒     素成分だけ。    液肥した時は灌水不要。   ・灰汁肥料の作り方:籾殻(もみがら)を焼いた炭10gを木綿袋に入れ、これに対     し、水1リットルを混合して、1升瓶又は2リットル・ペットボトル等に3日間     程度浸し、この上澄み液を5000倍程度に薄めてから施肥する。  ▼施肥    春分頃〜:ツボミや花の持ち株以外は施肥開始。ツボミや花の持ち株には施肥      禁止。肥料は液肥ハイポネックス2000倍希釈液10日毎に、置き肥を1回/月。      灰汁肥は施肥せず。    4月:置き肥と灰汁肥とを根張り十分な成株に1回/月、液肥を10日毎。ただし、      植替えて1ヵ月未満株には置き肥及び灰汁肥禁止。小苗、幼株は施肥禁止。    5月:液肥2000倍希釈を15日毎に用土面に、また、液肥3000倍希釈を7日毎に葉      面に。置き肥を下旬に1回。       着花を期待する株には第一リン酸カリ(粉剤だが、水溶させて液肥として      500〜1000倍に薄めて)を与える。       着花見込める株には花の発色に悪影響しないように、全ての施肥を5月末      〜開花後まで中止する。精力旺盛な株なので中止しても翌年の出芽に支障      ない。    6〜7月:梅雨期の施肥は少なく控え目に。罹病のおそれ。       着花見込める株には施肥しない。       着花見込めない株や小苗には液肥2000倍希釈を10日毎に風ある涼しい日      に施肥する。暑い日が続く時は施肥しない。    8〜9月中旬:施肥禁止。    秋分頃〜:着花見込める株には施肥しない。ただし、しっかりした成株に灰汁       肥を10日毎に施肥する。        着花見込めない株や小苗には液肥2000倍希釈を10日毎に施肥する。暑       い日が続く時は施肥しない。    10月:ツボミある株には灰汁肥を15日毎に。       小苗には液肥2000倍希釈を15日毎に、置き肥を1回/月、灰汁肥を15日毎      に。    11月:全ての株に厳寒期は極めて薄い肥料や木炭等の灰汁を薄めて少量与える。       ツボミの無い株には液肥2000倍希釈を温暖な時刻に15日毎に、置き肥を      1回/月。    12〜翌3月中旬:施肥不要 ●植替え    1〜2年に1回、3月中旬〜4月中・下旬、又は9月中旬〜10月中旬頃(加温栽培で   はこれよりも遅くても可)に植替える。花物は花後に植替える。5月頃以降では新   根が出だし、根が柔らかく、傷付き、衰弱したり、枯死のおそれ大きいので、9月   中旬頃まで待つ。植替え後1週間は毎日水やりし、施肥もせず、その後通常栽培と   する。    バイラスとは限らず、多くのウィルス病もあるようで、多く栽培している者が   所有、管理している4〜5年栽培数の80%が何等かのウィルス感染との恐ろしい報   告もある。    ウィルス等罹病防止のため株分けに使うハサミ等用具類は1株毎に直火で刃が   鈍らない程度まで上昇させ、加熱消毒してから使用する。    ウィルス消毒剤としては第3燐酸ナトリウム(商品名:ビストロン-10)があり、   これにより鉢、用具等を事前消毒する。ウィルス病の治療には使用不可。    他の薬剤では、シイタケ菌糸体から抽出した「レンテミン」液剤がある。植替   時に、これにより器具、用具等を事前消毒する。ウィルス病の予防や伝染防止に   効果あって予防薬としてシンビジュウム苗や高麗芝等に薄めて撒くことも。ウィ   ルス病の治療には無効。ウィルス病に罹ったのを治療できる薬剤は未開発。 ●花茎を持たせるコツ    春蘭の花芽は7月頃に持ち始める。この時期までには、株等は充実してなけれ   ばいけない。過度の施肥に留意し、特に窒素成分肥料は控え目にする。この時期   は枯死しない程度に水やり頻度を少なくして乾燥気味状態にし、生死の危機感を   1週間程度余さ迷いさせる。その後は通常の水やりとする。花茎が目認できるよ   うに伸び出すのは秋頃である。    このような荒療法をしなくとも、窒素肥料成分を控え目にしておくと、充実し   た株ならば自然と花茎を持つ。    なお、貧弱株では花を翌年に譲り、今は株の充実に努める。 ●病気     薬剤散布上の留意点      多くの病病虫害対策のための能率作業上、複数薬剤混用した一括散布等は     それらの薬剤説明文混用適否を参照されたい。     施肥(主に窒素成分)過多により繁茂すると、病気に罹り易く、弱くもなる。     消毒時間帯は薬害回避のため日没後を選び、定期的、交互に何種類かの薬    剤種を散布する。薬剤の入手先はJA(農協)、農薬店、園芸店等が適当。ここに    記述した病害薬剤購入時に印鑑等は不要だろう。     石灰硫黄合剤(硫酸銅と石灰との混合液=ボルドー液、葡萄・ワインの本場    ボルドー地方で昔に開発、多用)は古典的薬剤で、安価の反面、効果期待薄で    ある。これはアルカリ性であるので、能率散布のために害虫殺虫薬と混用する    と薬剤によってはその薬効を阻害してしまう。     NHK等公共雑誌に未だに掲載されているのは、ここに記述した薬剤は、特定    の農薬メーカー商品の宣伝になってしまうためである。本当に良いのは「良い」    と本音でPRすべき。     バイラスとは限らず、多くのウィルス病もあるようで、多く栽培している者    が所有、管理している4〜5年栽培数の80%が何等かのウィルス感染との恐ろし    い報告もある。     ウィルスは単体で存在しているのではなく、細胞を構成する部品として正常    な細胞に結合して存在している。薬剤でこの細胞を殺すことは、正常な細胞を    も殺してしまうことになり、発症したウィルスだけを駆除できる薬がない理由    である。     これに対し、菌類は、それ単体の独特な細胞で存在しており、その細胞だけ    を狙い撃ちできる治療薬が可能。  ▽バイラス病(ウィルス病の一種)     葉に白っぽい虎縞のように見える凸凹斑点が現れ、その部分が少しへこんで    いるように見える。バイラス病はウィルス病であり、伝染する。ウィルス病の    治療に有効な薬剤は無い。健全な苗への伝染防止のため病気の苗も鉢も早急に    焼却、廃棄処分する以外に方法も手段もない。     害虫のアブラムシ(アリマキ)及びカイガラムシはウィルス病等を宿し媒介も    するので、これらいずれの害虫も退治が重要である。     この病気に冒されて葉が変で変化花も咲くことがある。珍種を発見、入手等    した場合、珍種発見などと早合点や勘違いしない。疑ってみる。入念な観察と    十分な注意を怠らない。     ウィルス病治療薬は無いが、消毒薬や予防薬はある。消毒剤としては第3燐    酸ナトリウム(商品名:ビストロン-10)がある。鉢、用具等を事前消毒する。     他の薬剤ではシイタケ菌糸体から抽出した「レンテミン」液剤がある。器具、    用具等を事前消毒する。ウィルス病の予防や伝染防止にも効果あって予防薬と    してシンビジュウム苗や高麗芝等に薄めて撒く。  ▽黒点病(カビ病の一種)     葉の表面に黒い斑点が現れ、放置すると別葉、別株へ伝染する。温度、湿度    が高いと拡大する。トップジンM(粉剤で水和剤)、ダコニール(乳白泥状)、ベ    ンレート、ダイセン等を説明書に従い希釈して入念に散布する。  ▽軟腐病     苗、株全体が死滅するケースが多い。早急処置必須。高温多湿時期に発生す    る。細菌が根、茎、葉などの傷口から侵入し、バルブ(株茎)が黒く変色し、軟    化して腐ってゆく。このため、芽、葉へも水分が行き渡らず、これらが一斉に    黒焦茶色に急速に枯れ上がる。     予防や蔓延防止には、病原菌は用土に居るので、発芽時期に用土消毒する。    古い用土の再使用などを避け、新鮮な無菌用土で栽培する。蒸れないように鉢    を吊下げするなど通風を良くする。     適合薬剤は、ストレプトマイシン、バリタシン、マイシンS、アグリマイシン、    ヒトマイシン、アグレプトなど。予防的に散布したり、発病発見時に早急、か    つ、毎週散布して蔓延防止する。散布法は薬剤添付説明参照。     なお、以下のようなカビ病菌類に使う殺菌剤はこの病気に無効。だが、多病    対策のための能率作業上、複数薬剤混合しての一括散布等はそれらの薬剤説明    文混用適否を参照されたい。(マイシンS液剤は、トップジンM水和剤やサプロ    ール乳剤とは混用可だが、ベンレート水溶剤とは混用不適)     トップジンM、ダコニール、ダイセン、ダイセンステンレス、ジマンダイセ    ン、マンネブダイセンM、ベンレート、サプロール、ポリオキシン、モレスタ    ン、カラセン、プラントバックス、パンソイル、サニパー、サンヤードキャプ    タンなど。  ▽根腐れ     特定の病原菌による病気でない。用土不適切、水やり過多、長期多湿により、    主に下葉から黄変して枯れる。進行すると上の葉へも枯れが及ぶ。このケース    が非常に多い。     対策は、水やり頻度を控え目にし、より乾燥気味にする。     用土の通気性を改善する。用土中の2mm片未満の小粒子をフルイにより除去    して水捌(は)けを良好にする。鉢を小サイズへ変更する等見直しをする。  ▽葉焼け障害(病気にあらず)     病気でなく、病気と誤解し易い。葉先3cm前後〜数cmの部分に茶変枯れが多    発する。ひどい場合は葉1つ全体が枯れる。放置すれば株全体が枯死する。主    因は強烈直射日光のため。日変化で、時刻によっては被害に遭う。直射受けて    症状が出始めるのは、早くて3〜6ヵ月後である。減光・遮光や置き場所変更、    移植等をする。  ▽生理的葉枯れ(病気にあらず)、その他類似現象    新芽や新葉が出だす4月下旬〜5月下旬頃の時期に、古い下葉が原因不明で突   然枯れて離脱する。葉の世代交代であり、心配無用。    根腐れ等対策後にも、このような現象を呈する。経過観察を続行し、必要に応   じて対策を練り直す。枯れが続行せず回復基調で過去に痛んだ葉が離脱したのな   らば放置しても差し支えない。バルブ(株球)から出ていた葉全てが変色したり、   離脱したりで、このバルブ自体及び1本でも根が丈夫な様子ならば、あきらめず、   上記「▼用土例2」により回復を試みる。 ●害虫    薬剤散布上の留意点     多くの病病虫害対策のための能率作業上、複数薬剤混用した一括散布等はそ    れらの薬剤説明文混用適否を参照されたい。   ▼カイガラムシは、見つけ難い場所に発生し、茎、葉などに牡蠣(カキ)のような   姿・形で緑色や赤茶色など呈して密着しており、ゴミや傷跡などと見誤る。指先   で触ると軟らかく、茎や葉から汁を吸い、春蘭を衰弱させたり、枯らしたりする。   春蘭の生育が不調ならば、この害虫の存在を疑おう。また、ウィルス病等を宿し   媒介もする。    ランネートは卓効であり、多くの害虫に効くが高価、入手先:JA、印鑑必要。   能率散布には病害薬のトップジンMと混用できる。両者とも粉剤だが、水溶して   各1000倍程度に希釈して霧吹き等で散布する。ただし、古典的薬剤の石灰硫黄合   剤(ボルドー液)等アルカリ性剤と混用すると薬効低下する。    スミチオンも効くが、薬害でアブラナ科植物を枯らすので、ハボタン、キャベ   ツ、白菜、レタス、小松菜、菜の花、ブロッコリー、花野菜、花ダイコン、大根、   カブ、芥子菜、京菜、野沢菜、ワサビ等には掛からないように注意。    カルホス、カイガラムシ退治用油脂剤は幼虫に効くが、成虫には無効。ランネ   ートは成虫にも効く。    暇なら十分丹念に発見に努め、指先でつぶす。   ▼アブラムシ(アリマキ)、▼アリ    アブラムシは通風の悪い場所で軟らかい若葉裏や若茎などに棲息し、樹液を吸   取り、若葉等を萎縮させ、成長を妨げる。アブラムシはウィルス病等を宿し媒介   する。多くの植物で若芽が萎縮しているのは、大抵はアブラムシが樹液吸収中で   ある。天道虫(テントウムシ)やアリを見つけたら、そこにはアブラムシが棲息し   ている証拠である。天道虫及びこの幼虫はアブラムシを好んで食べる益虫である。   アリはアブラムシと共生し、他株等へ運搬し、拡散させるほか、天道虫を追出し、   駆逐し、アブラムシを助ける等駆除妨害もする悪役で、アリ退治が不可欠である。    アブラムシ駆除薬剤として、ダイシストン、エカチン、これら2者よりも効果   がはるかに強力なオンコル粒剤5(ベンフラカルブ5%剤、高価)などの顆粒剤を土   面に撒くのが最効果的である。この薬を根から吸い上げて株・樹全体に行き渡り、   この樹液を吸って死滅する。この薬剤は多くの野菜、稲、果樹などにも多用され   る。ダイシストンはJA等から入手可。ダイシストンは土壌線虫(ネマトーダ)にも   有効。    アブラムシの幼虫にしか効果ないものでは、マラソン、オルトラン水和剤等が   ある。 ●その他(種子、ラン菌、増殖、珍種確保)    花後は早めに花茎を切去り、株・葉の回復を図り、翌年に備える。花を付けた   まま放置しておくと、山ユリの実に似たロケット状の太さ約1.5cm、長さ5cm程度   の緑色実を先端が地上約20cm高に1花茎につき1つ付けることがある。    晩秋頃に茶色に熟し、縦に割れ、内部から極めて小さく軽い種子が風で飛ばさ   れ拡散して行く。小さく軽いとは種子が発芽に必要な栄養分を貯えてなく、地上   に落ちた種子へラン菌の菌糸が入り込み、栄養補給を受けて発芽へ漕ぎつける。    春ラン自生地にはラン菌が存在しているが、我々栽培地には殆ど存在し得ない   環境なので、人工的に実生苗を得るのは至難。株分け増殖法が殆ど。    ラン菌の作用は洋ランでも同様で、洋ラン増殖法は、株分け、刺芽等の他に、   実生増殖技術もある。新種作成の目的で掛合わせた種子から実生苗を得るため、   種子をフラスコ内で、ラン菌からの栄養補給の代わりにゼリー状の人工床で栄養   補給しながら発芽させて1〜2年間、それから、苗がひ弱なのでポット内に移して   集団育成を1〜2年間、その後開花へと、3〜5年を要する難行である。    春蘭珍種苗の入手先例として、春蘭の時節〜5月連休頃にかけてに水戸市北方   の桂村、御前山村辺りのR123号線沿い道端で地元の人が自生地等で採取した珍し   い苗を売っている(0292-89-2950,02955-5-3917)ことがある。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――