まずは、ゲルマニウム・ラジオ

 ラジオの入門といえば、基本のゲルマニウム・ラジオから入ることが多いようです。
しかし、ゲルマニウム・ラジオは、放送局からの電波の力のみを利用し、クリスタル・イヤホンを鳴らします。放送局の近くなら電波も強いですが、地方へ行けば、大変弱くなります。私が子供の頃、初めて作ったのがこのゲルマニウム・ラジオでした。このときは運良くNHKを聞くことができました。ここから一番近いのは、ラジオ関西だと思っていたのですが、NHKがダイアルの下半分ならどこでも聞くことができました。もっとも増幅回路などありませんから、蚊の泣くような音でした。今から思えば、当時近くにNHKの中継局があったのかもしれません。

 電波は、目には見えません。目に見えないものは、頭で想像するしかありません。電波は、アンテナから飛び出すまでは、電圧、電流が波のように変動しているものです。それが、アンテナによって、空中に電界と磁界が交互にしかも垂直に発生し、空中を波のように伝わっていきます。
 アンテナから遠くなれば電波は弱くなります。現在、この場所でゲルマニウム・ラジオを作っても放送が受信できるか分かりませんが、作らないことには話が進みません。

 上の図はコイルとコンデンサ(記号は、バリアブル・コンデンサ、略してバリコン)による共振回路です。コイルの容量(L)とコンデンサの容量(C)で1つの周波数(F)で共振します。Fイコール2パイ、ルートLC分の1です。パーツやさんで売っているポリバリコンは、20pFから260pFまで変化するようです。中波ラジオ用コイルは、たとえば、SL−45GTというコイルの容量は、330uFプラスマイナス20uFとなっています。これくらいの容量のコイルを作ってみます。

 ところで、共振とはどうなることでしょうか。この回路だけでは何も起こりません。回路の上と下から交流を加えてみます。そして、その交流の周波数をどんどん変えていきます。すると、ある特定の周波数の時、電流が流れなくなります。実は、コイルとコンデンサの間を行ったり来たりするように電流が流れ、外から見れば流れてないのと同じになってしまいます。
 具体的に言えば、この回路の上にアンテナを付け、下を大地にアースしたとします。アンテナからこの回路にありとあらゆる周波数の電波が入ってきます。しかし、大半は、大地に流れていきます。しかし、この回路の共振周波数と同じ電波は大地には流れず、電圧としてこの回路に残ることになります。

家に、小型扇風機の箱(一辺22.5cm)があったのでこれにエナメル線を巻きます。エナメル線は、近所のホームセンターで買いましたが、太さ28番のものが15m単位で売っていました。これでは15回くらいしか巻けませんので2本を繋いで30回巻きました。秋月電子のインダクタンス計で計ってみると、398mHとなりました。この数字もインダクタンス計を公正していませんから適当です。まあこんなところで次にいきます。

コイルに、ポリバリコンを付けてディップメーターを当ててみると、1.2MHzあたりでディップしました。

 この式のLに400uH、Cに20pFと260pFを代入してみると、

400uF=400×10−6乗
20pF=20×10−12乗
260pF=260×10−12乗
LC=400uF×20pF=8000×10−18乗  これのルートは89.442×10−9乗
F=1/2×3.14×89.442×10−9乗=1/561.69×10−9乗=1.78×10+6乗
 =1.78MHz
260pFの時は、 F=493KHzとなります。
この計算でいくと、493KHzから1.78MHzまで受信できるはずです。中波ラジオの放送は、545〜1605KHzなので一応カバーしていることになります。

 実験するゲルマニウム・ラジオの回路図は上のようになります。ダイオードは、ゲルマニウムダイオードの1N60を、イヤホンには、クリスタル・イヤホンを使います。アンテナは、屋外に20m程度しっかりしたものを立てたいのですが、今回は、電灯線アンテナ(電灯線の片側をアンテナ代わりにする。あくまで片側のみをコンデンサを介して繋ぐ。)としました。予想通り何も聞こえません。そこで、ディップメーターを1KHzの低周波で変調させ、1.6MHzと700KHz(これが私の持っているディップメーターの最低発振周波数。)で発振させてみると、クリスタルイヤホンから1KHzのプーという音がそれぞれで聞こえました。

 高周波から低周波信号を取り出すことを検波といいます。この検波回路にゲルマニウム・ダイオードを使っているので、(トランジスタも使っていない)ゲルマニウム・ラジオといいます。
 ところで、ダイオードには、ゲルマニウム・ダイオードとシリコン・ダイオードがありますが、なぜゲルマニウム・ダイオードなのでしょうか。それは、ダイオードには整流作用といって一方向にしか電気を流さないのですが、それだけではなく、何ボルトか削ったうえで流れます。その電圧が、ゲルマニウムで0.2V、シリコンで0.7Vほどになっています。つまり、シリコン・ダイオードは、0.7V以上ないと電気は流れてくれません。今回のように微弱な信号を扱うときは、ゲルマニウム・ダイオードでないとだめなわけです。ただし、シリコンタイプでも、ショットキーバリアというタイプのダイオードは、0.2Vとなっています。

低周波信号を含んだ高周波信号のイメージ。ゲルマニウム・ダイオードで検波されると、0.2Vから上がでてくる。

ダイオードからでた直後。

イヤホンに入る低周波信号。

これで受信はできることが分かりました。次に本格的なアンテナといきたいのですが、それは、またの機会にしたいと思います。ディップメーターが無ければ、全く再現性のない話になってしまいました。何でもいいから電波を受信したい人は、テレビの横へ持っていってください。ブーという音が聞こえると思います。普通のラジオでも聞こえます。普段じゃまな音ですが、これも電波です。

 これは、ダイオードを2個使った倍電圧検波のゲルマニウムラジオです。実験してみましたが、放送は入りませんでした。ディップメーターの発振音は、大きくなったように聞こえますが、ひずみが多いように思います。本当によいのなら、どのラジオの検波回路は倍電圧検波になるはずですが、そうはなっていないところを見ると、コンデンサの容量とか、ダイオードのバランスとか結構調整が難しいのではないでしょうか。

 ということで、ゲルマニウム・ラジオの実験は、結局放送は受信できませんでした。考えてみれば、軽量鉄骨のプレハブ住宅の中、シールドの中にいるようなものではないでしょうか。ちゃんとしたアンテナ、ちゃんとしたグランドアースがいるのでしょうね。

 本日(8月28日0時30分)手元に10mの電線があったので、2階のベランダからほぼ10mのところにある電柱に結びつけ、これをアンテナ代わりに実験してみました。回路は、倍電圧方式。
この回路を付けた箱をできる限り家から離すように手で持ち上げると、ダイヤルの一番上で韓国語らしき放送が入感しました。とにかく音も小さく、ひずんだような音なので正確にはどこの放送かわかりません。とにかく、ゲルマニウム・ラジオの実験には、最低でも、屋外に10mのアンテナが必要なようです。本当は、アースも大事なのです。

 

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