大雪渓 白馬岳 白馬大池

 白馬尻から大雪渓、ねぶかっぴらを経て、白馬山荘,白馬岳,小蓮華山,白馬大池,栂池自然園へと縦走した登山紀行を写真を交えて紹介。
大雪渓〜白馬岳への一口メモ
  1. JR大糸線、白馬駅から猿倉行きのバスが出ている。マイカーの場合は猿倉に駐車場がある。
  2. 4本爪の軽アイゼンは必携、白馬駅前の白馬山荘連絡所に貸しアイゼン、白馬尻小屋に売りアイゼンがあり、貸しアイゼンは白馬山荘で返せる。
  3. 雪渓上の石は上からの落石、立ち止まって休むときも上部には注意が必要。落石が当たって死亡した事故もある。
  4. 猿倉は標高1250m、白馬岳2932mで標高差はおよそ1700m、大雪渓の勾配は写真などで 見るより傾斜 がきつい。
  5. 白馬岳テレホンガイド Tel 0261(72)3800

猿倉〜白馬尻〜白馬岳〜白馬乗鞍〜栂池
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コマクサ 雪倉岳
雷鳥坂と白馬大池山荘 小蓮華山への尾根
はじめに
 私は96年〜97年と二度、北アルプスを登りました。 7月下旬になれば梅雨も明け、天候が安定し高山植物も一斉に短い夏を謳歌するように花を咲き競います。
ウルップソウ、クルマユリ、チングルマ、コバイケイソウや雪解けが遅れると水芭蕉なども見ることができます。
がら場の痩せ地に咲く高山植物の女王コマクサは実に美しいです。 97年は台風通過後の悪天候で雨中の登行になり、楽しみにしていた写真撮影があまりできなかった。白馬駅で山の情報を聞くと天気は芳しくないという。かまわず入山届けを済ませると猿倉行きのバスに乗り込んだ。
 白馬駅では霧のような小雨であったがバスがつづら折りの山道を登って、標高があがるにつれ雨足はしだいに強くなった。終点猿倉
では土砂降りの状態になった。下界から見た山肌に張り付く雲はこの雨雲だったのである。白馬山荘はこの悪天候でもほぼ満員の盛況であった。
山の夏は短い。花の命はもっと短い。だから花の山旅をするなら、この時期に登らなければ意味がないと思っている。
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山小屋一口メモ
予約時は直接、山小屋にお確かめください。
名   称 収   容 開設期間 電   話
村営猿倉荘 200人 6/上ー10/下 0261−72−4709
村営白馬尻荘 200人 7/上ー8/下
白馬尻小屋 200人 7/上ー10/下
白馬山荘 1500人 4/上ー10/中 0261−75−3361
村営頂上宿舎 1000人 6/上ー10/中 0261−72−3360

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白馬尻小屋
白馬岳登山紀行
 白馬駅から標高1250mの猿倉までは、つづら折りの山道をバスで登って行く。下界では一時霧のようになっていた雨も標高が上がるにつれて大粒の雨に変わっていった。それでもバスはほぼ満員の盛況である。終点、猿倉でバスからどっと吐き出された登山客は猿倉荘売店の庇(ひさし)に駆け込み、色とりどりの雨着をあたふたと羽おり、ザックカバ−を取り出して防雨装備をしている。
私たちも新調したばかりの雨着を羽織り、ザックカバ−で完全防雨装備が済むと緩やかな林道を歩き始めた。最初は幅2m程度の道幅で、ダラダラした緩やかな登りである。身体が馴れるまでのアップにちょうど良い。ゆっくりとした足取りでおよそ1時間ほど歩くと、水枯れした沢のようなゴロゴロ石の急登に変わり、やがて白馬尻荘が見えるようになった。
葱平から大雪渓をみる
白馬尻荘は夏山シーズンだけ設営され、降雪の時期を迎える前に解体される登山者の宿泊施設だ。 白馬尻荘から10分ほど歩くと白馬岳と書かれた石碑があり、ゴロゴロ石で埋め尽くされた川原のような大雪渓の付け根に出た。少し下では雪解け水が地鳴りのような轟音をとどろかせて流れ落ちている。その水量は見えなくても容易に推測することができる。 大雪渓には紅ガラでル−トが記してあり、登山者はこの紅ガラ上を列をなして登っていく。このル−トを外れると雪渓下の雪解け水に流され、滅多なことでは助かることがないらしい。あたりに手頃な岩を見つけて腰を下ろし、軽アイゼンを装着すると蟻の行列のような一行に混じり、ねぶかっ平を目指した。ねぶかっ平は大雪渓を登りきったところの名前である。
 雪渓上には数十キロから数キロの大小さまざまな石が散在する。これらは雪渓
ハクサンフ−ロ
上を音もなく滑り落ちて来た落石だ。少々辛くても葱平までは短時間で通過しなければ落石事故に遭う危険度が大きい。
 背中のザックは14kgで少々重め、足腰のヘバリを加速する。ゴアテックスの雨着でも暑くて蒸れてしまう。写真で見る大雪渓は緩やかな勾配に見えるが、現場に立ってみると急な勾配である。やがて10mほど登るごとに足が止まるようになった。それは自分の意志で止まるのではなく、行列の誰かが止まるからである。それでも疲労困ぱいで、喘いでいる自分にとって止まられることは迷惑ではない。むしろ有り難いと思えるのである。足を止めている間、時折、雪渓を吹き上げる冷風が頬をやさしく撫でてくれる。
猿倉〜白馬尻〜白馬岳〜白馬乗鞍〜栂池
やっとの思いで大雪渓を登りきると、ザックを降ろし、休みがてらアイゼンを取り外した。登ってきたル−トを見下ろすと遙か下まで登山者の行列が見える。1500人収容の山荘でも、今夜は肩をすり合わせて寝ることになるかもな、という懸念がよぎる。
一方「喘ぎながらでも、ここまでよくがんばれたもんだ」言いようのない満足感がこみあげてくる。しばらくは妻とこれからの所要時間のこと、弁当を食べる時間のことなど話しながら休憩をした。
 雨は相変わらず降り続いている。葱平から上に目をやるとクルマユリの群生が見られたが雨と疲労で写欲が沸かなかった。
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朝の雲海を眺める
 ねぶかっ平から岩室を経て小雪渓をトラバ−スすると、キンポウゲやクルマユリなどが咲き乱れるお花畑が展開する。霧でガスっているせいか神秘的で非常にフォトジェニックである。  登山道が白馬岳の山腹に張り付くようになると、ところどころ階段状の急登になり、両脇はロ−プを張って植生が痛められないようになっている。やがて村営頂上宿舎が左手見上げる方向に見え始めると少し元気を取り戻してきた。
 白馬山荘は村営頂上宿舎からガスがなければ見えるはずだ。でも今は50m先が見えない。このあたりには紫色のウルップソウが群生していて、頂上宿舎下からこのあたりまで写欲をそそるお花畑がいっぱいに広がる。だがザックカバ−をして更にビニ−ル袋でパッキングをした機材を取り出すのは手間がかかる。それに天候が良くない。とりあえず撮影もせずに今夜の泊まりは白馬山荘と決め込んで歩き続けた。
ガスで煙る縦走路
  山荘到着は午後2時を少し過ぎた。1500人を収容できる白馬山荘はさすがに大きいがここは夏山の銀座通り、収容力はそれほど余裕がないようだ。
 山荘の受付で所定の手続きを済ませると指定されたサイトにつき、汗で濡れた衣類を着替え、雨具などと一緒に乾燥室に吊した。
  しばらく休んだあと、「折角だから外を写したら」と妻に言われ、疲れた体にムチ打って山荘周辺の撮影に出かけようとしたが雨はまだ降り続いていて数十m先がガスで見えない。結局その日は明日に期待して山荘内で体力の温存に努めることにした。
登山者の列

 山荘の混みようであるが、肩をすり合わせて寝るような心配は回避できた。翌朝同宿の登山者がなにやら歓声あげている。外は日の出前の明るさである。様子からして窓の外に昨日は見えなかった何かが見えているらしい。歓声があちらこちらにこだまして私たちも眠い目をこすりながら窓から下界を見るとご覧の雲海だった。天候は私たちに味方をしてくれなかったが視界が見渡せるひとときがあって良かった。
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白馬岳山頂の記念写真 稜線のお花畑 お花畑に雷鳥
 山小屋の朝は早い。周囲が明るくなると一斉に身支度に取りかかる。そのためにトイレや洗顔はタイミングを逸すると長蛇の列を我慢しなければならない。希望通りの時間帯に朝食を済ませられたのも前日の早着のお陰だろう。
三国境
山荘の前で名残惜しむように記念写真を撮ったあと、緩やかな登山道を山頂に向かって歩き始めた。20分ほど歩くと白馬岳頂上に着いた。先着がいて記念写真に納まっている人、携帯コンロでティ−タイムを楽しんでいる人などいろいろである。 白馬岳山頂を後にして三国境を過ぎた頃だろうか、チングルマ、シナノキンパイなどの咲き乱れるお花畑で女性登山者のグル−プが歓声を上げている。どうも様子からして雷鳥の親子づれが居るらしい。グル−プの目線の方向を凝視するとお花畑の中に雷鳥が居る。私たちとの距離は5〜6mでヒナを2羽連れているが警戒する様子はない。びっくりさせたり、追いかけたりするとヒナが親からはぐれて天敵に襲われることがあるという。私たちもそっとしておいてやろうと、むやみに近づこうとはしなかった。
縦走の登山路 ハクサンイチゲの群落 ハクサンコザクラの群落
 白馬岳〜小蓮華岳〜白馬大池までは緩やかなアップダウンを繰り返しながら歩きやすい縦走路がついている。しばらくは這い松とガラ場の単調な登山道が続く。縦走路に時折ガラ場の石を集めて丸く囲ってある構造物がある。中を覗くとコマクサが綺麗に咲いていた。優しい登山者が作られたのであろう。
 小蓮華岳を登りきると縦走路のガスも次第に晴れてときおり後立山連峰が見えるようになった。晴れていればこの辺りから眼下に栂池自然園が見えるはずだ。 雪倉岳とその向こうに朝日岳が見え隠れする。雲は山の中腹から一気に駆け上がり、やがて山頂を見せては隠し見せては隠しする。雪渓から沸き立つ雲は自然を一層雄大に演出して見せる。山は早立ち、早着が基本。朝6時過ぎに白馬山荘を出発したが雲上のお花畑に時間をとられ予定の時間を少しオ−バ−してしまった。尾根から眺めると白馬大池山荘はすぐそこに見えるがだらだらとしたアップダウンが続き、大池には11時過ぎの到着になった。
白馬大池山荘の前に広がる雪田 乗鞍岳から見た白馬大池 白馬大池山荘と雪倉岳、朝日岳
 7月下旬の夏山シ−ズンは山小屋の最も混む時期。白馬大池山荘の蚕棚は1区画が約四畳で25区画程ある。4畳1区画に10人が肩を寄せ合って一夜を明かす混みようだった。一晩、横になって1時間眠っただろうか?その後は目をつむってじっと夜が明けるのを待った。山小屋の朝は早い。4時になると出発の準備にかかるグル−プがある。翌朝、早めに山小屋に別れを告げ、安山岩の巨岩に張り付くようにして乗鞍岳の頂上を目指していると雲ひとつない蒼空の向こうに雪倉岳、朝日岳が見えた。赤い外壁の山荘を瞼に焼き付けながらまた来る日を誓った。
乗鞍岳から小蓮華山方向を見る 天狗原から乗鞍岳方向を見る 天狗原の湿原とワタスゲの花穂
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 白馬大池から見た乗鞍岳はすぐそこに見えた。しかし何トンもあるような安山岩を渡り歩く登山道では1時間は充分にかかった。頂上は400mのトラックが出来るほど広い平地になっている。這松帯の中にシャクナゲが咲いていて大きなロックガ−デンを思わせる風景である。ところどころ大きな岩にペンキマ−クでコ−スが記されているがガスが濃い時には広すぎるせいか方向がわからなくなることもあるらしい。ケルンの前に立って妻と交代で記念写真に納まっていると中年女性グル−プがよってきてシャッタ−を切ってほしいと使い捨てカメラを差し出した。私が凝った機材を持っているせいかこうした頼まれ事がよくある。山では装備を軽くするためか使い捨てカメラを持った登山者が多い。
  さあ、いよいよ栂池高原までの下りル−トに入る。乗鞍岳をほんの少し下った所から100m程の雪渓である。緩斜面であるが堅く踏み固められているからかなり滑りやすい。面倒くさがらずにアイゼンを付けていると先を行く中年女性がすってんころりと転んでしまった。雪渓を越すと次は何トンもあるような大きな岩を渡り歩くコ−スが200mほど続く。残雪のが多い'96年はここは雪渓になっていてアイゼンを装着すれば楽に下山できた。この年は雪渓はない。岩の透き間を覗くと2〜3mの高さがある。間違って落下するとそれこそ自力で下山できないような大怪我になるだろう。岩と岩を渡り歩く危険なコ−スだ。
栂池自然園から白馬岳方向を見る
ここを過ぎると栂池自然園までは急な勾配の登山道。危険な所はないが急いで降りようとすると膝が笑うことになる。トレッキングポ−ルがあると膝にかかる加重が随分違う。下山の途中に高層湿原である天狗原があった。ところどころ泥炭層の池塘があり木道が敷設してあって、あたりはワタスゲの白い花穂が風になびいてとても綺麗だ。しばらく休憩したあと栂池自然園まで1時間弱で無事登山を終えることが出来た。自然園のビジタ−センタ−の自動販売機で冷たい缶ビ−ルを買って飲んだ。飲み口から口が離れず、ビ−ルに溺れそうになるほど一気に飲んでしまった。下山のあと、栂池高原ホテルへ。薬草風呂で疲れをほぐしたあと、レストランで飲むビ−ルも美味しかった。唱歌「山小屋の灯火」は私の心に残る歌。この歌とともに、生涯忘れられない思い出登山となるに違いない。
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