カルピス世界名作劇場編(その1)
子供の頃、日曜日の夜といえば7時からは「マジンガーZ」とか「アーサー王子」などの男の子向けアニメ、7時半からは「カルピス世界名作劇場」を見るのが楽しみだった。時には笑い、時には涙し、幼き日に感動した作品の数々をここで挙げてみたい。
例によって記憶の彼方のことなので順不同であることはお許し願いたい。
アルプスの少女ハイジ
記憶に残っているアニメの中でも最も爽やかで、はつらつとした主人公ハイジの日常が、美しいアルムの自然を背景にペーター・クララとの友情を軸に描かれている。
山の牧場でお昼寝をしたり、お花畑で花に埋もれて遊んだり、黒パンに暖炉で溶かしたチーズをのせてヤギのお乳と一緒に食べた後は干し草のベットで満天の星を見ながら眠りにつく……そんな毎日に憧れていたのは私だけではないはず。
何よりも素晴らしいのは、ハイジが人を思いやる心に溢れていると言うことだ。フランクフルトに連れて行かれたときも、ペーターのおばあさんのお土産に白パンをタンスにぎっしりと隠していたり、「山へ帰りたい」というとクララが悲しむのが辛くて夢遊病になるほどに我慢したり、時には「もう歩けなくてもいい」と弱音を吐くクララを泣きながら叱り……どんな時も自分のこと以上に相手のことを真剣に思っている。アルプスの大自然の中で培われたハイジの自然体の愛情表現は、幼心にも「思いやり」や「友情」がいかに大切かを感じたものである。
最終回でクララの歩く姿を見たゼーゼマン(クララの父)とおばあさまはハイジのおじいさんに感謝するが、おじいさんは「このアルムと子供たちの力ですよ」と言う。「大自然」と「子供たちの無垢な友情と限りない生命力」が何ものにも勝るということだろうか。
フランダースの犬
子供心に理不尽さを最も感じたのがこの作品である。(もちろんこの作品を見ていた頃の私は「理不尽」という言葉は知らなかったが…。)
幼い頃の私は、正直に生きている者は必ず幸せになれるのだと信じていたが、この作品を見て以来そのことに疑問を感じるようになってしまった。
正直で働き者のおじいさんは、ネロが助けたパトラッシュを強欲な元の飼い主から買い取るために無理に働いて死んでしまった。ひとりぼっちになったネロは、火事を起こしたぬれぎぬを着せられたうえ、交際を許してくれないアロアの父の財布を正直に届けたあと、パトラッシュと共に寒さと飢えで死んでしまう。死の直前に教会で見たがっていた「ルーベンスの絵」を見ることが出来、その魂は天使によって天国へ召される。その死後にネロの書いた絵の才能が認められ、アロアの父も反省し後悔する。
この最終回では、ネロとパトラッシュの魂は神によって祝福され、死後ではあるが人々に理解される。非常にキリスト教的な考え方のラストではないか。ネロとパトラッシュは本当にそれで幸せになれたのか?子供用のアニメがこんなに悲劇的なラストでいいのか。私は最終回を見た日、涙が止まらなくて大変だった。そして、このアニメの再放送だけは悲しいので絶対に見ない。そんな強烈なインパクトのある作品である。
母をたずねて三千里
遠く海を渡ってアルゼンチンに出稼ぎに行ってしまった母に会うために、イタリアのジェノバからたった一人で旅に出たマルコの成長とそれを助ける人々の温かさを描いた秀作。マルコは行く先々で母に会えずにくじけそうになるが、その度に様々な人々が励まし支えてくれる。特にペッピーノ一座の次女フィオリーナはマルコのよき理解者として何回も登場し、精神的な支えとなる。
そして、旅のはじめから終わりまでマルコの心の支えとなったのはアメデオではないだろうか。一人旅の淋しさも、外国での心細さもアメデオがいなければ更に身にしみたであろう。その上、ペッピーノ一座に同行するに当たってのアメデオの働きは大きく、少しうさん臭い感のある座長にもいたく気に入られていたし、客の受けも良く、マルコを金銭的に支える一助となったことはいうまでもない。
主題歌がより一層涙を誘うので、その冒頭部分のみ思い出しながら書いてみた
「遙か草原を一掴みの雲が あてもなくさまよい飛んでゆく。 山もなく 谷もなく 何も見えはしない。
けれど マルコ おまえは来たんだ。アンデスに続くこの道を………」
マルコは一体何時になったら母に会えるのか? これが私達を必然的にテレビの前に座らせることとなり、涙を流しながらかじりついて見たものである。
あらいぐまラスカル
この作品ではじめて「アライグマ」という動物を見た日本人が多かったため、その後「ラスカル」はアライグマの代名詞のようになってしまったほど有名な動物キャラクターである。何でも洗って食べるラスカルのかわいい仕草は人々の心に残っているのに、この物語そのもののストーリーというのを覚えている人が少ないのはなぜだろう。
大まかなストーリーとしては、母熊が殺されてしまったラスカルをスターリング少年が助けて育てるが、成長して野生の習性が出始めたラスカルはやがてスターリングの手によって再び森へ帰され、2人(?)は名残を惜しみながら別れる。その間にスターリングの母が亡くなったり、友達との新しい出会いや別れがあったりとラスカルの成長と共にスターリング少年も精神的に成長していくのだ。
ところが、思い出すのは赤ちゃんだったラスカルにストローでミルクを飲ましているシーンとか、角砂糖をはじめてもらったラスカルが他のモノ同様に洗ってなくなってしまったシーンとか…。うーん物語の大筋にあまり関係のないシーンが多い。最後の別れのシーンは悲しくて泣きながら見たのだが、その他はあまり覚えていない。毎週欠かさず見ていたはずなのに……。ラスカルのかわいさにストーリーもかすんでしまったのか?