スポ根アニメ編

アタックNo.1
 ポニーテールに黄色のリボン、キラキラ光る大きな瞳の鮎原こずえに少女漫画の原点を感じ、様々なライバルを相手に次々と編み出される魔球にスポ根アニメの神髄を見ることが出来る。主な所では落ち葉のごとくはらはらと落ちるサーブ「木の葉落とし」、打ったアタックボールがどんどん大きく見える「大ボールスパイク」、ふわふわと何時落ちてくるのかわからない「風船アタック」などなど……「どないしたらそんなボール打てるねん?」と、ついつっこみを入れたくなるような魔球が一杯。
魔球は主人公の努力によって編み出され、それによってライバルにうち勝つ。 かわいい主人公が涙をこらながら頑張る姿に、日本中の女の子が誰でも一度はバレー部を目指したはず。主題歌も「苦しくったって 悲しくったって コートの中では 平気なのボールがうなると 胸が弾むわ レシーブ トス スパイク ワン ツウ ワン ツウ アタック だって涙が出ちゃう 女の子だもん……」と視聴者の涙を誘う歌詞となっている。

侍ジャイアンツ
 数ある野球アニメの中でも、魔球のオンパレードといえばこれ。
主人公番場蛮は土佐の一本釣り漁をしていた亡父の血を受け継ぐ熱血漢で、その根性と並々ならぬ努力で「ハイジャンプ魔球」「エビ投げハイジャンプ魔球」「分身魔球」と数々の魔球を編み出し、様々な敵と戦っていく。
チームメイトに王・長島がいて、川上監督が出てくるあたり、当時の巨人軍の人気の高さを物語っている。作者は巨人ファンだったのか?
しかし、番場蛮は当初巨人軍入りを固辞している。理由は簡単「巨人軍が一番強いから」である。しかし、川上監督は「目先の敵に惑わされることなく「野球」という最大の魔物と戦ってみろ」と蛮を挑発し、巨人軍入りを決心させてしまう。うーんなんと老獪な。
さて、「数々の魔球」と「巨人軍」というキーワードから「侍ジャイアンツ」があの不朽の名作といわれる「巨人の星」の流れを汲むことは明らかであるが、星飛雄馬が「大リーグボール養成ギブス」など父親から猛烈な野球教育を受けているのに対して、番場蛮は父親の跡を継いで漁師にならずに、その才能を見いだされて野球選手になっている。そのあたりにも「巨人の星 親子の夢かなう路線」に対して「侍ジャイアンツ 道は自分で切り開く路線」という大きな差を見ることができる。
残念ながら、私の年代では「巨人の星」の記憶があまりないので、つい「侍ジャイアンツ」に偏った思い入れがあることは否めない。

ドカベン
 明訓高校に主人公の山田太郎が転校してくるところから物語は始まる。 転校早々、巨大な弁当をぺろりとたいらげた彼は「ドカベン」と呼ばれようになる。
葉っぱをくわえた岩城、小さなエース里中ちゃん、ピアニスト兼野球部員とのま君などの多くの仲間とともに甲子園優勝を目指す正統派スポ根アニメの代表作。
「巨人の星」「侍ジャイアンツ」「野球狂の詩」「タッチ」など多くの野球漫画の主人公がピッチャーなのに対して、ドカベンでは主人公山田太郎をキャッチャーとし、いわゆる縁の下の力持ち的存在にしている。これにより主人公以外のキャラクターの印象をより鮮明にし、チームプレイとしての野球漫画を描こうとしているのではないだろうか。
それではここで主題歌の一節を「とれないボールがあるものか 構えたミットが受け止める ああ青春のストライク 明るい笑顔が今日も行く がんばれ がんばれ ドカベン がんばれ がんばれ ドカベン 山田太郎」おや、チームプレイストーリーのはずなのに
山田太郎しか応援していないのは何故だ!

エースをねらえ
 どこにでもいる普通の女の子にも素晴らしい才能が秘められていることがある。
主人公 岡ひろみは宗方コーチに才能を見いだされ、厳しい練習と先輩のいじめに耐えながら憧れのお蝶婦人と競うほどのテニスプレイヤーに成長していく。
やはり、このアニメで特筆すべきはお蝶婦人(本名 竜崎麗華)をおいて他にない。お蝶婦人はなぜ高校生なのに「婦人」なのか?他の部員が学校のユニフォームを着ているのになぜ一人だけピンクのユニフォームなのか?その金髪くりくりカールは校則違反じゃないのか?……数々の謎を残したまま物語は進んでいく。恐るべしお蝶婦人!
さて、ストーリーの方はここまでの様々なスポ根アニメがバレー・野球などの団体競技であったのに対し、テニスという個人競技にしていることにより、主人公が強くなればなるほど孤独感が増すというちょっと哀愁漂うストーリー展開になっていたように思う。
これは主題歌ではなくエンディングテーマにも表れている。「夕焼けの テニスコートで折れた 可哀想なラケットを見たわ。 夜更けのテニスコートで いつまでも泣いている女の子を見たわ。 涙が書いたイニシャルは H・O……」

キャプテン
 野球の名門青葉学園から転校してきた谷口君はそのユニフォームだけで名選手だと勘違いされ、次期キャプテンに選ばれてしまう。しかし、チームメイトにそれが勘違いだとわかった時には、期待を裏切らないために夜な夜な自宅で特訓を重ねてチームの誰よりも実力をつけていた。そんな谷口君にチームメイトは黙って着いていく決意をする。弱小チームが努力とチームワークで名門青葉学園に勝つシーンは涙なくしては見られない名作だった。
これまでの野球アニメと異なり、怪しげな魔球も派手なライバルもなく、主人公はただ人一倍まじめに努力する普通の男の子で、チームメイトも名前を思い出せるほど個性的なキャラクターもない珍しいアニメである。
しかし、派手さはないもののその心温まるストーリーは今も私の中に不朽の名作として刻まれている。

タッチ
 このアニメをスポ根アニメと呼んでいいのかという疑問が残るが、敢えて他の野球アニメとの比較をするためにも書こうと思う。
上杉達也と和也は双子の兄弟で、何をやってもいい加減な兄達也に引き替え、弟和也は成績優秀・スポーツ万能の野球部エース。二人が思いを寄せる幼なじみの浅倉南の夢は甲子園に連れていってもらうこと。そのために和也は野球を始め、素晴らしいセンスと地道な努力で高校でもエースとして活躍する。甲子園への切符をかけた地区大会の決勝戦の日、南への思いを兄弟で確認しあい正々堂々と勝負することを約束して出かけた和也は球場に行く途中の道路で子供をかばっての交通事故により帰らぬ人となってしまう。弟の果たせなかった夢と南の幼い頃からの夢を一身に背負い、達也は甲子園への道を歩みはじめる。もともとセンスの良さでは和也を上まわっていた達也は、根性を振り絞り和也の歩んだ道を一歩一歩たどりながら時には悩み、時には傷つきながらついには甲子園優勝を果たし、南への思いを口にするのだった。というのが大まかなストーリーである。
これは、野球漫画でありながらラブストーリーであり、しかもコミック漫画でもある。
ストーリーの前半は達也・和也と南の甘酸っぱい三角関係をコミカルに描き、後半は野球漫画の王道とも言えるライバル(新田、西村など)を登場させた本格的な対決型のストーリーを中心に描いている。しかも、常にベースにはお互いを想うがゆえに口に出せない南と達也の切ないラブストーリーがBGMのように流れている。視聴者は勝負の行方とともに恋の行方も気になって見続けてしまうのだ。
今までの野球漫画が「勝負に勝つ」「自分に勝つ」などが主なテーマであったことに比べ、「切ない想い」を形にするための術がたまたま野球だったという点で通常のスポ根アニメとは大きく異なる点と言えよう。
達也には達也の、和也には和也の、南には南の優しさの形があり、それぞれの想いがしみじみと伝わってくるようなアニメでこれは子供向けと言うよりは中高生の青春まっただ中で見るアニメだったかもしれない。