ジブリアニメ編(その1)

風の谷のナウシカ
 この作品はそれまでのアニメの概念を一変させた。
 時代は地球規模の大戦の後、生き残った人々は腐海に怯えながら細々とその営みを続けているが、僅かに残された土地を求めて争いは耐えない。海からの風により腐海から守られている風の谷の姫ナウシカは、密かに独自の発想で腐海の謎を解き明かそうとしていた。トルメキア軍に人質として護送される途中、攻撃してきた少年アスベルと腐海の底に迷い込んだナウシカはそこで清浄化されている砂や水・空気をみて、腐海の出来た意味を知る。
 しかし地上に戻った時、暴走するオウムによって風の谷を襲わせて巨身兵を奪う計画が進んでいることを知り単身風の谷へ急ぐ。怒り狂うオウムの暴走を囮のオウムと共に我が身を投じることによって止めたナウシカは、オウムたちの紡ぎだした金色の触角で出来た草原をテト(キツネリス)と共に歩いて還ってくる。その姿は伝説の青い衣をまとった英雄そのものだった。ナウシカの勇気と愛が風の谷と人々を救った。
 ストーリー自体にも独自性を感じるが、それよりも映像美に心を大きく動かされた。ナウシカが飛ぶ際の独特の浮遊感、オウムの独特の存在感、菌類をアレンジしたと思われる腐海の植物が胞子を飛ばす様は今まで見たどんなアニメより鮮烈で美しく、従来の子供用アニメを芸術作品の域にまで押し上げたと言っても過言ではない。
 主題歌を歌う安田成美の初々しい歌声も、もの悲しさをかもし出していた。

天空の城 ラピュタ
 いつか自分の飛行機でラピュタを見つける夢を抱きながら鉱山で働く少年パズーは、ある夜飛行石と共に空から降ってきた少女シータに出会う。
 海賊と軍隊の両方から追われているシータは、飛行石の正当な継承者・ラピュタのリュシータ王女だった。シータの唱えた呪文で封印の解かれたラピュタがその全貌を表したときラピュタ王家のもう一人の子孫であるムスカがその正体を表し、強大な軍事力を持った天空の要塞としてのラピュタ復活を狙う。
シータとパズーはお互いの命をかけてその陰謀をうち砕くため「滅びの言葉」を唱えると、ラピュタの要塞部分がムスカの陰謀と共に崩れて海に落ちていき、平和を取り戻したラピュタは人間の手の届かない空高く飛び去っていくのだった。
 この作品においても独特の浮遊感が重視されていること言うまでもない。「飛行石」によるふんわりとした飛行と、海賊船やゴリアテのような戦艦の直線的な飛び方に加えて、海賊達が奇襲に使用した戦闘機の昆虫のような飛び方、速さ・動きにそれぞれ特徴がありストーリーの展開にアクセントをつけている。
 ストーリーは「風の谷のナウシカ」にも共通しているが、悪者は昔の人間が残した遺物(風の谷のナウシカの巨神兵・ラピュタの飛行石)を探し出して世界を支配しようとして、それ自体が「失敗の歴史」を創り出した原因(暴走した科学力)だったということに気づかずにいる。物語のラストでシータがムスカに「ラピュタが滅んだのは地面から離れてしまったから」と言うシーンがある。科学だけが進歩しても、それが自然の摂理に背かないものでない限りいつか破滅がやってくるということなのだ。


となりのトトロ
メイと五月が父と共に田舎の空き家に引っ越してくるところから物語は始まる。空き家に住み着いている「まっ黒くろすけ(すすわたり)」を見た2人は父に嬉しそうに知らせにいく。そして、トトロがいるかもしれないという父の言葉に胸をときめかせる。
 庭先で小トトロを見つけたメイはその後を追いかけて中トトロ・大トトロに出会い、五月は雨のバス停で父の帰りを待っている間にずぶぬれのトトロに傘を貸してやったかわりに木の葉に包まれた木の実の詰め合わせをもらう。そしてある夜、植えた木の実の周りで踊るトトロをみつけた2人はトトロと共に夜空の旅を満喫する。
 病気の母の様態が悪化したとの知らせを聞いたメイは一人で母に会いに行こうとして迷子になるが、トトロと猫バスの助けを借りた五月と共に母の病院へこっそりと会いに行くことができた。
 このように、全編にわたってお伽噺のようなエキスが満載の物語となっていて、夢と幻と現実の境目があやふやなストーリー展開である。純粋な童心を持っている者だけがそのお伽噺の世界に入っていけるということなのかもしれない。
 ナウシカ・ラピュタとも共通してこの作品も空を飛ぶことにこだわりがあるようだが、実は他の作品以上にこだわっている点が「質感」ではないか。メイが落下したトトロのお腹、猫バスのドアの開き方や座り心地など、画面の前で想像するだけでも極上の「ふかふか感」を感じることができる。この得も言われぬ「ふかふか感」がほのぼのとしたこの物語を更に優しい雰囲気に仕上げている。  かっち屋親父のトトロ検証頁はこちら

魔女の宅急便
独り立ちの日を迎えた魔女キキは黒猫のジジとともに「自分の街」を求めて旅立つ。
キキが選んだのは魔女の存在を忘れかけたような少し大きな街。そこでキキは空を飛べることを利用して「宅急便屋さん」を始める。様々な出会いの中で魔女としての生きる自信を無くしたキキは魔力を失い、飛ぶこともジジと話すことすら出来なくなってしまうが、飛行船から落ちそうになった友人・トンボを助けるために必死で魔力を取り戻し、空へ舞い上がることが出来る。人々はその姿に喝采し、キキは本当の意味での「自分の街」を見つける事が出来る。ラストでキキが両親に宛てて書いた手紙は「落ち込んだりもしたけど、私は元気です。」という短いものだが様々な思いが込められていて心にジーンときたものである。
 この作品のテーマは「巣立ち」である。人は誰でもいつか巣立ちの時を迎える。辛いことや悔しい思いを繰り返しながらも、優しく温かい出会いが待っていることを知るのだ。キキは純粋な心のまま独り立ちをし、傷つきながらその歩むべき道を探し求めている。「人生は嫌なことばかりじゃないんだ。前向きに生きていれば道は必ず開けていくよ。」というメッセージが込められていると思う。