Perseus 2.0活用法(マックでギリシア語4)

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Perseus2.0とは?

追加00/07/17(Perseus2.0についての以下の記述は、マックのハイパーカードに基づいたエディションのものです。他でも書いたとおり、2000年春になって、PerseusはMAC/WINDOWS両方に対応した新しいヴァージョンで発売されました。インストールなど、基本的には以下の記述は有効だと思いますが、画面のカスタマイズは、ハイパーカードを前提としているために、マルチプラットフォーム版のPerseus2.0では無理です。

Perseus2.0(以下Perseus)はTufts大学のPerseus Projectが推進する、ホメロスから古典期に至る古代ギリシアのテキストと視覚素材の総合データベースです。Perseus2.0にはコンサイス版(150ドル)と完全版(350ドル)がありますが、完全版はCD-ROM4枚組で、そのなかには24000のデジタル化された画像を含んでおり、1420の壺絵、366の彫刻、384の建築、179の遺跡、524のコインついての情報が存在しています。また、アレクサンドロスの死に至るまでの時代のギリシア語の著作の三分の二が英訳つきで収録され、リデル・スコット中辞典、ギリシア世界のカラー地図、かなりの量の二次文献が収録されています。コンサイス版は完全版の画像情報を(地図など一部を除き)thumbnailサイズに縮小したもので、テキストに関するツールは完全版と全く同じです。これらは、thumbnailサイズの画像を含め、完全版PerseusのDisk 1に含まれていますから、コンサイス版とは完全版のディスクの最初の一枚を別売にしたものだと思います。

Perseus2.0の概要を簡単に把握するためには、WEB上にあるPerseusサイトを訪問するのが一番でしょう。ここはほぼPerseus2.0と同じ構成で出来ているサイトですが、Liddell Scot Jones希英辞典の完全版が置かれて検索の便に供されているいる一方、画像や地図はの構成が多少違っているようです。写真の著作権の関係もあり、基本的に画像はCDの方に多く含まれています。

我々のページでは、CD版のPerseusを、まずはギリシア語を読むためのツールとして、紹介することにしましょう。ついで、Perseusに収録されていない作品を読む時のPerseusの活用法を紹介し、単語を選択し、語形分析を行い、辞書を調べるという連続的作業の自動化のためのヒントを述べ、最後に、Perseusの他のツールを簡単に紹介したいと思います。

まずはInstallationです。Perseusを快適に利用し、後に述べるようにTLGなどとの連携を果たすには、 Perseus全体をハードディスクに落としてやるのが便利です。Perseusプロジェクトはハードディスクにパーティションを切って、そこにディスクの内容をコピーし、パーティションの名前をCD-ROMと同じにすることを推奨しています。その場合は660MBほどのパーティションが必要になります。ShrinkwrapやDisk Copyといったシェアウェア・フリーウェアを使って圧縮ディスクイメージを作るならば375MBほどのディスク消費で済みます。Perseusを使うときにはこのイメージを展開しなければなりません。

それとともに、CDからインストーラーを起動して、基本的なスタックをHDにインストールする必要があります。全体をHDに落としている場合、こちらは最小インストールで構いません(約6MB)。するとPerseusフォルダ、その中にLocal Stacksフォルダが出来ます。Perseusを起動するときにはLocal Stacksフォルダの中のPerseus Gatewayスタックをダブルクリックします。


ギリシア語を読むツールとしてのPerseus

ギリシア語を読むために、Perseusには、紀元前四世紀までの作家のテキストとその英訳、語形変化解析ソフト、Intermediate Liddell Scott希英辞典、今読んでいる場所を記録するためのNavigator、テキストへの注釈(ごく簡単)および自分の注釈を作るためのNotebook機能などが備わっています。今、あなたがソフォクレスのオイディプス王を読みたいと思っているとします。そのときにPerseusがどの程度役立つのか、検討してみましょう。

まずPerseusのホームスタック(Perseus Gateway)を開きます。

右のスタックが現われるので、Primary Textsからソフォクレスを選び、さらにOedipus Tyrannusを選ぶと、希英対訳のトップ場面に出ました。

ずっとオイディプス王を読み続けるのなら、このカードをPathとして登録します。すると、GatewayからPathを選択するだけで、直ちに自分の登録したカードにジャンプすることが出来ます。一旦読書を中断するときには、中断した箇所で再びPath登録をすると、次にPerseusを起動したときに一挙にそこに跳ぶことができますし、それまでに参照した他のスタックが記録されていますから、任意のスタックに戻ることもできます。

読んで行くうちに不明な単語が出てきたときには、ギリシア語のその箇所を選択して、右上のAnalyzeをクリックするか、メニューバーのLinks からMorphological Analysisを選択すると、Morphological Analysisスタックが現われ、原形と、その単語がどの様な変化だったかが分かります。さらに原形を選択し、辞書にジャンプして単語を調べることも、その単語がソフォクレスの作品全体でどの様な頻度で用いられているのか、あるいはPerseus2.0の著者たちがどの様に用いているのかを調べることもできます。

また、1行目のCadmusがどんな人物か知りたければ、英訳にあるCadmusを選択してメニューのLinksからEncyclopediaを選べば、アポロドロス、ヘロドトス、パウサニアスでCadmusがどのように記述されているかが分かります。単にEnglish Indexで引くことも可能で、その場合には、Perseus2.0でのCadmusの記述(一次文献、二次文献、画像資料を問わず)がすべて検索できます。

このように、Perseus2.0の最大の利点はそのリンクの豊富さにあります。我々はこれを使って、様々な資料を探索しながら、テキストを読み進めて行くことが出来ます。Perseusに収録された文献については、リンクはほぼ完全と言って良いでしょう。

つまり、Perseusでテキストを読んでいる限り、分からない単語に出会ったらその単語を選択して、Morphological Analysisで原形を調べ、辞書で定義を調べることができます。(このプロセスは原則的に自動化できます。運転の自動化については後に記述します。)


カスタマイズする

さて、このように便利なPerseusですが、デフォルトのままではやや不便なところがあります。単語の活用を調べて辞書を引く、というプロセスが結構面倒だ、という点が最大の不便でしょうが、それ以外にも、Morphological Analysisのカードは少し大きすぎ、Greek English Lexiconのカード自体も定義欄も少し小さすぎます。

インストールしたらまずこれらを使いやすいようにカスタマイズしましょう。(以下のカスタマイズには、HyperCardプレーヤーではなく、HyperCardそのものが必要になります)

まず第一になすべきは、Morphological Analysis カードのanalysesフィールドのテキストロックを外すことです。スタック全体にロックがかかっているかも知れませんので、その場合はそのロックも当然外します。前者は、原形と変化の載っているフィールドをクリックした後に、「オブジェクト」メニューから「フィールド情報」を選ぶことで、後者は、「ファイル」メニューから「スタック保護」を選ぶことで変更できます。Greek English Lexiconスタックにもロックがかかっていたら外しましょう。

次に、スタックのカードの大きさ、フィールドの大きさも使いやすいように変更しましょう。「オブジェクト」メニューの「スタック情報」から「大きさ」を選ぶと、カードサイズを適宜変更できますし、「ツール」メニュー最上段の右端のツールを選択し、各フィールドの大きさを変えたり、不要なフィールドを削除したりできます。

とりあえず私はMorphological AnalysisとGreek English Lexiconのカードを次のように変更しました。上のオリジナルと比べてみて使いやすくなったように見えますでしょうか?


ギリシア語テキストとPerseusの連携

PerseusのPrimary Text Cardも、確かにリンクが簡単で便利なのですが、窓が狭く(カード自身もかなり小さい)、フォントの大きさは変えることが出来るものの、それほど読みやすいとは言えません。インストール時に、TextsスタックもHDに落とすことも出来ますし、その場合には窓のカスタマイズも可能ですが、いずれハイパーカードはテキストを扱うにはそれほど便利ではありません。特に希英対訳を必要としないなら、ギリシア語をテキストファイルに落として、テキストファイルからPerseusを運転した方が便利な側面もあります。

そのためには

  1. ギリシア語テキストファイルを作る。(Perseusのテキストを抜き出す)
  2. ギリシア語ファイルからPerseusを参照する

の二つのプロセスが必要になります。

1. ギリシア語テキストファイルを作る。(Perseusのテキストを抜き出す)

PerseusのテキストはPerseus Disk1のTextsフォルダの中にある各テキストのスタックに収められていますから、原理的には、吸い上げてテキストファイルにすることが出来ます。

すぐにできるのは、ギリシア語テキストのフィールドを全選択して、その内容をコピー・ペーストでテキストエディタやワープロへ移してやることです。ただし、この場合エディタはマルチスタイルに対応したものでなければなりません。(マックのマルチスタイルエディタについては別項を参照して下さい)

一番便利なのは、NIFTY-ServeのFJAMEA-Lib5-535にある「かきだす象」というハイパーカードスタックです。これは任意のスタックのフィールドの内容を書き出すためのスタックで、テキストファイルにしてくれます。インターネット上に作者のホームページがあり、そこから最新版を落とすこともできたのですが、最近ホームページをたたんでしまわれたようです。

PerseusのテキストはPerseus Disk 1のなかのTextsフォルダに収められていますから、「かきだすぞう」を起動して目当てのスタック(Perseus Disk1のTextsフォルダに収められています)を探し、

例えばbkgnd field "Greek Text"という所を、オプションキーを押しながらクリックすると、スタックの中のすべてのカードの"Greek Text"フィールドがチェックされ、下の「選択されたフィールドだけ書き出す」ボタンをクリックするとギリシア語テキストが外部エディタに吸い出されます。Perseusの本文フォントはSpartaなので、Greekkeys系のフォントに変えてやれば問題なく、作品ごとのテキストファイルを作ることが出来ます。勿論、bkgnd field "Translation"をoption+クリックしてやれば、翻訳文をテキスト書類にすることも出来ます。

ただし、このスタックは、目的のフィールドがあまりに大きい場合には上手く抜き出してくれません。この場合は最初に述べたように少しずつコピーしてやるしかないかも知れません。

2. テキストファイルからPerseusを参照する

さて、こうして出来たギリシア語テキストからPerseusを参照する手続きは、基本的にはPerseus内部でMorphological Analysisを行い、辞書を参照する手続きと同じです。つまり、調べたい単語をコピーして、Morphological AnalysisのForm項目にペーストし、Analyzeボタンを押して、原形を調べ、その辞書項目を調べるということになるでしょう。これはとても面倒に思えます(それほどでもないのですが)が、自動化できそうな気もします。

勿論、Greek English LexiconのカードのEntry欄に直接原形を入力することでも単語の定義の検索が出来ますが、その場合にはアクセント、気息記号を含めて正確に入力しなければなりません。それが面倒な場合にはLinksメニューからGreek Dictionary Entry Searchカードを参照すれば、原形を呼び出し、そこから辞書を調べることが出来ます。

Greek Dictionary Entry Searchカード(右図、大きさなどはカスタマイズしています)に捜したい単語の文字列をアクセントや気息記号なしで入力し、その文字列が語頭なのか語尾なのか、あるいは語の途中でも可なのかを指定して(デフォルトでは語頭指定)ルックアップボタンを押すと、その文字列を含む単語を列挙してくれますので、そこから調べたい単語を選択し、Related ToolsボタンないしメニューのGreek English Lexiconで調べるだけです。

語尾ないし部分指定モードだと、本体部分が共通の合成語を一括して調べたりも出来ます。


PerseusとTLGの連携

Perseusに収録されていない著作を読むときはどうでしょうか?勿論、Morphological Analysis カード、Greek English Lexiconカード、Greek English Entry Searchカードいずれも、直接入力することで参照できます。ただし、古典期までに確証されていない変化形は、Morphological Analysisカードで必ずしもヒットするとは限りません。また、Lexiconカードは、実はIntermediate Liddell Scottよりはやや語数が多いのですが、それでも古典期以外の文献だとヒットしないことも結構あります。

TLG(ギリシア語テキストデータベース)と、そのためのハイパーカードスタックPandoraが利用できるのなら、Pandoraのフォント設定をSMK Greekkeys系にすることで、TLGのテキストをPerseusのPrimary Textsのように扱い、単語の分析、辞書の検索が可能です。PandoraとPerseusを両方立ち上げておくとPandoraからPerseusのLinksメニューを使うことが出来ますので、Morphological Analysisカードと自然に連携させられます。また、PandoraのExport機能を使ってギリシア語のテキストを作ることも出来るでしょう。


Perseusの運転の自動化

ギリシア語を読むツールとしてPerseusをどのように使うことが出来るのか検討してきましたが、大体三つの可能性が考えられます。

  1. Perseusに収められているテキストカードから利用する場合。
    単語選択→Analyzeボタンを押すかLinks メニューのMorphological Analysisを選択→Morphological Analysisカードに表示された原形を選択→Greek English LexiconをLinksメニューないしRelated Toolsボタンから選ぶ。
  2. テキストファイルから利用する場合。
    単語選択→コピー→PerseusのMorphological AnalysisカードのEntry欄にペースト→Analyzeボタンで分析→結果欄の原形をコピー→Greek English LexiconををLinksメニューないしRelated Toolsボタンから選ぶ
  3. Pandoraから利用する場合。
    単語選択→LinksメニューのMorphological Analysisを選択(後は1と同様)。

この手続きはAppleScriptとHyperTalkを使えば何とか自動化できそうです(ただし、テキストエディタがAppleScript対応でなければなりませんが...)。ただ、そうするためにはマックでのスクリプティングについてある程度知識がなければいけません。ここではそういった知識がなくても可能な、CE QuicKeysという市販ソフトウェアを使った方法を紹介することにします。CE Quickeysは任意の決まった作業を自動化することができるソフトで、アプリケーションの起動、メニューの選択、マウスの操作など、あらかじめ手続きが決まった操作なら何でも登録し、ショートカットキーを設定することが出来ます。ショートカットキーはUniversalな設定としても、あるいはアプリケーション毎の設定も可能です。30日間の試用ヴァージョンがこのサイトからダウンロード出来るのでお試し下さい。登録は、Quickeysを立ち上げて、Sequenceの登録を選び、Recordを設定し、Perseusで上記操作を行うだけです。あとで細かい調整は必要になりますが、これはソフトを実際に使ってみればすぐこつが呑み込めると思います。たとえば、PerseusやPandoraのギリシア語テキストから選択単語の活用と原形、意味を調べるプロセスを、私は次のように自動化しています。(画質がやや落ちていますので、文字が読みにくいかも知れませんが雰囲気は伝わるでしょう)。まずMorphological Analysisを選択し、そのカードが全面に出て、時計マークが消えたところ(ここで原形がカードに表示されています)で、原形を選択(Clickと書かれたプロセスです。ここは編集が必要)、Greek English Lexicon カードをメニューから選んでいます。

Perseusの自動運転のための注意としては、Perseus起動時に現れる下のツールパレットを消去しておくことです。ドラッグ動作の記録・再生の時にこのパレットがあるとうまく行かないようです。なるべくパレットからではなく、メニューおよびショートカットキーによって操作する癖をつけた方が良いでしょう。


Perseusの他のツール

あと、やや進んだ研究のために有益な道具が三つあります。第一はGreek Words in Proximityで、ここではまず辞書の見出し語のリストを二種類作ります。そして第一のリストの単語のすべての変化形が、第二のリストの単語の定義に登場していないかどうかをチェックできます。これで電子辞書の複合検索に近いことが可能になります。

第二はEnglish-Greek Word Searchで、任意の英単語について、その単語が定義中で用いられている辞書の見出し語を表示するもので、英希辞典の代わりにも使えますし、もう少し高度な使い方も出来るでしょう。

第三はGreek Word Frequency Searchで、任意の著者、あるいはPerseusの著作全体に対して、特定の単語がどの様な頻度で現われるかを計算してくれるもので、作者によってある単語の使用頻度がどの様に変わって行くのかが一目瞭然になっています。


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