ポケットにアレキサンドリア図書館

Diogenes

パソコンを最大限に利用してギリシア語を読む方法を何度か書いてきたけれど、ようやく完成形と言って良いものが登場した。それもフリーで。Diogenes(現在version 3.1.6)だ。

兆しは、Perseusがサイト全部をフリーで配布し始めた頃にあったと思う。これをインストールしてしまえば、遅いPerseusのレスポンスに苛立たされることもなく、ウェブブラウザでPerseusに収録された文献(古典期までの全ギリシア語文献)を読むことが出来る。しかし、そのためにはサーバを立てねばならず、どこでも持ち歩いて、という訳には行かないようだ。

で、このPerseus4.0の語形分析とLSJ(大希英辞典)を組み込んだTLG(古典ギリシア語全文献データベース)対応ソフトが新しいDiogenesだ。TLGを持っているなら、そこに含まれた任意のギリシア語テキストを簡単に表示することが出来るのはこれまでと同様だ。例えば←左のスクリーンショットはデモステネスのアンドロイトン論駁1の冒頭部分。画像が汚いのは縮小表示のせいで、クリックするとgifファイルが開く。

驚きはここからで、表示されたテキストの任意の単語をクリックすると、(ネットに接続していないので当たり前だが)即座にその語形分析とLSJの定義が脇に現れる。(下↓は三節六行目のomosashsをクリックした画面)

ネットのPerseusとの連携を売り物にしていた多くのTLG検索・閲覧ソフトウェアは、閲覧ソフトとしての役割はほぼ終えたように思う。また、Logos Softwareから出ている単体のLSJも、あまり使い道がなくなってしまった。あとは、TLGがハードディスクへのコピーないし仮想CD化を認めてくれれば良いのだが。

気軽にギリシア語を読むには充分なソフトだ。検索ソフトとしてはまだまだ未完成のようだが、これは研究者ならもう普通はTLGのサイトでやると思うので、余り気にはならない。

これはラテン語に関しても同様で、PHI (Packard Humanities Instituteからでているラテン語全文データベース。古典ラテンに関しては今のところ最大のもの。TLL(Thesaurus Linguae Latinae)がまだ先が長いプロジェクトなので)を持っていれば、単語のクリックで、変化の分析と辞書の語義欄が現れる。こちらの場合、辞書はLewis-Shortの大型辞典で、これも、やや分かり難いとは言え、20年ほど前にOLD(Oxford Latin Dictionary)が出るまでは最大の権威だった辞書だ。今でもこちらの方が好きな人は多くいるだろう。

TLGを持っていない場合、新しいDiogenesはmorphological analyzerおよびLSJ単体として使うことが出来る。教師としては学生がそういうソフトを利用して変化形を覚えないことへの一抹の危惧はあるが、もうそう言う時代ではなくなったのだろう。「ポケットにアレキサンドリア図書館」というには、ポケットに入るパソコンが必要なのでもう一歩だが、「カバンにアレキサンドリア図書館」にはなった。

Perseus2.0

さて、Perseusの方だが、サイト版のPerseusがあまりにも遅いので、スタンドアローン版のPerseus 2.0 PIP (Mac classic, Win 共用)を活用する人がいる。これも主にmorphological analysisに関してだが、Perseus PIPの場合、そのままだと、ウィンドウズで変化形が入力できないので、Perseusに収録されたテキストしか調べられない。そこで、morphological analysisの入力をベータコードで行うためにファイルを一つ書き換えてやると良い。

書き換えるのはPerseusフォルダ→Guiフォルダ→Morph.tclというファイルで、メモ帳で開き、その中の

set form [$::perseus::greek2beta convert [$w.form get]]
という行を
set form [$w.form get]

$w.form insert end [$::perseus::beta2greek convert $form]

$w.form insert end $form

entry $w.form -font [pfont greek]

entry $w.form -font [pfont large]

それぞれ書き換える。そうすると、morphological toolの入力欄が、ベータコードで示されるはずで、自分で入力することも出来る。これもDiogenesがあればもはや必要がないという言い方も出来るだろうが、Perseusは英訳が付いているので、それはまた便利なことも多い。(ネットのPerseusは古いコメンタリーへのリンクもあったりする)。