ハムレット ギリシア国立劇場

演出:ミハリス・カコヤニス 衣装:ヨルゴス・パッツゥ 音楽:ディミトリス・パパディミトリウ
ハムレット:コンスタンディノス・マルクーラキス ガートルード:ヴェラ・クルースカ
ポローニアス:ステリオス・マイナス クローディアス:テミストクリス・パヌー
オフィーリア:

2003年11月7日初演 スキニ・コトプーリ(アテネ)

カコヤニスが国立劇場で『ハムレット』を演出した。スキニ・コトプーリは国立劇場の中の小劇場で、客席は三階席まで入れて500程度じゃないかしら。八時半の開演で八時に行ったらまだ誰もいない。八時十五分位まで客が誰も来ず、結構不安になったが、最終的にも客は100人に満たなかっただろう。だが舞台はきわめて新鮮。

舞台は客席から二段程度の段差があるが上がれるようになっており、真ん中に盛り上がった大きな回り舞台がある。柱が数本と壁の役割をするオブジェが置いてある他はほぼ何もない。但し、亡霊場面は二階舞台を使う必要があるので橋が横に渡してあるが、これも使わないときには跳ね上げるようになっている。きわめて抽象的で未来派風のセット。衣装は大体近代風。19世紀くらいの設定じゃないだろうか。登場人物の動きや表情は近代的。ただし、言葉は韻律があるように聞こえた。アイアンビックは元々ギリシアのものだし...

早口で、いくつかカットはあるものの休憩10分をいれて三時間半に全体をおさめているが、面白かったのはハムレットの成長を描いていること。ハムレットは、小柄だということもあって、最初登場するときはまだ子供っぽく、舞台上で涙ぐみ、それを母親に拭われたりしている。「べそをかく」という風情。この涙はもちろん、「ヘカベが彼にとって何だというのだ」の場面を予期させるもので、その場面ではハムレット自身が老優の涙を拭ってやるのだが、ここでは誰が見てもハムレットは半人前だ。それが亡霊とのやりとりによって重すぎる使命を身に受け、エキセントリックな行動を取りながらも、徐々に思索を深めて行く。マルクーラキスはギリシアでとても人気のある俳優らしい。

それ以外に良かったのは、オフィーリアの絶望と悲しみがきちんと描かれていること。尼寺の場面では、ハムレットは最初からポローニアスが隠れ聞いていることを知っている。オフィーリアも自分がハムレットへの裏切りを行っていることを知っており、彼女の苦悩は単にハムレットがおかしくなったためではない。抑圧された自分の心が狂気の場面で爆発し、この場面のオフィーリアは激しい。

最後、「後は沈黙」の後、フォーティンブラスの登場を使者が告げる(のだと思う)と、フォーティンブラスが甲冑姿のまま登場。何も語らずに(「後は沈黙」)幕。

変だな、と思ったのは亡霊がスクリーンへの白い影で、雲が変形したようにも見えるところ。ポローニアスとハムレットの雲を巡る対話を意識しているのだろうけれど、前から投射しているので、人物や装置に遮られるところではそこに雲の影が映ってしまう。

でも、とってもクールで面白いハムレットだった。どうして人気がないのかしら?