ギリシア国立劇場の『アカルナイの人々』

ギリシア国立劇場は、この夏、二本のギリシア劇とシェイクスピアの『夏の夜の夢』をもってギリシア中をツアーしている。勿論、チームは別だから、それぞれが、ギリシアの様々な都市を巡っているのである。どのツアーも、最後にはアテネに落ち着いて、アテネのいくつかの劇場で公演を行うようだ。去年の朝日新聞だったっけ、国立劇場のツアーの最終目的地がエピダウロスだみたいなことを書いていたが、そうスケジュールがうまく行くわけではない。今年はエピダウロスでの国立劇場の上演は比較的早かった。エピダウロスのトリを飾ったのは、ペーター・シュタインの『メデイア』だった。

さて、国立劇場の『アカルナイの人々』を私はパトラで見た。パトラの古代オデイオン(Lonely Planetには記述もない。なぜだ?)大変美しい客席の傾斜を持つこじんまりとした劇場で、パウサニアスがその美しさをたたえていることはこのサイトのどこかに書いている(『オレステス』だっけ)。私はこの劇場はとても好きなんですけれど、パトラという町には他に本当に遊べるところがなーんにもない。ただ、レフカダへのバス、ザキントスへのバスが出ているので、そこに行くついでにパトラで芝居を見て一泊するだけなら良いかもしれない。

で、自由席だし、喜劇なので今回は比較的後ろに席を取る。それでもエピダウロスで前で見るよりも役者との距離は近い。いやぁ言葉があまり分かんなくても結構楽しめるわ。ディカイオポリスの家は昔流のトレーラーハウスで、隣の家はエウリピデスの家になったりラマコスの家になったり場面によって変化する。「国立劇場のギリシア喜劇」ってスタイルが確立しているんだろうなぁ、って窺わせる衣装や動きで、つまり無駄がなく笑いのつぼが的確に押さえられている。「アイスキュロスを待っていたのに、コロス、テオグニスを入れて」とか現代では無意味な台詞もきちんと語られているので、時差による白けは全くないわけではないが、動きの面白さ、方言ギャグ、いろんなアドリブ(わ、わからん)によって客は大受け。結構下品なファロス崇拝もきちんと、というか下品にやっているし、いやぁ全集訳で読んでいたときにはこんな面白い芝居だとは夢にも思わなかった。狭いオーケストラに最大30人ものアカルナイの爺さんたちのコロスがひしめき、よろよろと走り回るのも面白かった。