スタジオ・オユンジラル(トルコ) 『オイディプスを捜して』

演出・イオカステ: シャーヒカ・テカンド
オイディプス: ジェム・ベンデル
テイレシアス: ウルスハン・ウルスマン
クレオン: ウルガル・マンザンクオール
2003.06.07 静岡舞台芸術公園

オユンジラルはトルコの演出家・女優シャーヒカ・テカンドが90年にイスタンブールにつくった劇団。向こうでは古典を含め常に現代的な上演を行うことで知られているようだ。

『オイディプスを探して』は本来三部構成だという。オイディプスのスフィンクス殺しを扱った第一部、クロスワード・パズル風の舞台(後で説明)を使い、ソフォクレスのオイディプス王を大体正確に描いた第二部、現代の悲劇を扱った第三部である。この構成は、パゾリーニの『オイディプス王(邦題『アポロンの地獄』)』を想起させ、楽しみにしていたが、今回実際に上演されたのは第二部、ソフォクレスのオイディプス王の箇所だ。約五十分。

三部作で見たい、というのが見終わってのまずの感想。舞台に横四列、縦三列のクロスワードを思わせる真っ黒なキューブが置かれ、天井の中心に照明俳優はその中で演じる。コロスは一番下の段の四つのキューブを使い、オイディプスとイオカステは最上段を中心に、他の役(すべてコロスと兼ねる)は中と下の二段を使う。俳優は随時キューブを移動し照明が照らし出したキューブにいる俳優が語る。身体の動きは、キューブ間の移動以外にはほとんどない(俳優に可能なのは隣のキューブに移ることと裏に引っ込むこと。下段右端と中段左端のキューブにははしごがついていて上の段に上がることができる)が、その代わり照明のリズムが動的要素を盛り込み退屈させない。

装置では、縦の空間が十分に活かされている。演劇を見て縦がむやみに広くスペースになっているのに物足りなさを覚えることは多い。シェイクスピアの二重舞台(『ロミオとジュリエット』)、ブルックの『夏の夜の夢』など、縦方向の空間の利用はないわけではないが、演劇は底に動きが集中する。何とか上下の動きを活かしたいと思う人は多いだろう。その意味でも、安上がりだが効果的な装置である。

動きを抑制する分、台詞はスタイリッシュで、リズムよく、とんとんと話が進んでゆく。で、その台詞の美しさ。快感が耳を刺激する。コーランの朗唱の伝統のある国だ。トルコ語はなんて美しい言葉なんだろう。あっという間に50分が過ぎ去る。俳優同士の対話の場面も、キューブに遮られているため、すべて正面向きで、観客に直接語られる。演技よりも語りを重視している。だから、「間」の代わりにスピーディなリズムが出来事の意味の流れを形作ることになる。

ただ、野外劇場はこの上演には合わない。キューブの閉塞感が、オープンなスペースでは効果が殺がれてしまうし、観客は下から上のキューブを見上げるべきだ。キューブと客席との距離も野外劇場の奥行きの分だけ遠すぎる。こういう上演はスタジオで、もっと密着した状態で見たい。