ワールド・トレード・センター

燐光群の新作は、9.11当日、在米日本人向けのミニコミ誌の編集部の一日を通じて、9.11事件を捉え直そうとするもの。

登場人物たちが語る思いやエピソードが、(1)どこかで聞いたことがあるようなものばかりだったこと、(2)とてもその日に思いついたとは信じられないような未来からの目線になっていること(たとえば、年寄りの日本人アーティストが、この事件のために流れそうになったパフォーマンスに協力する条件として、観客が、9.11の時に被害者が降りた段数だけ会場の階段を上り下りするように求める場面。その日あそこでそんなことを思いつくようなアーティストとは付きあいたくないなぁ)(3)その未来目線の考えが、正しいかどうかは別にして、陳腐にしか見えないこと、(4)リアリズム演技と小劇場風断片とワークショップの結合が無理矢理なこと、(5)落ちが消防夫であること(結構酷い言い方だけれど)など、退屈だった。

当時飛んだ流言飛語で、問題がありそうなものは取りあげていないのも政治的配慮が過ぎるように見える(ユダヤの陰謀説とか)。

9.11ネタでは、黒テントが事件の一年半ほど後にかなり難解な作品(『絶対飛行機』)を上演していたが、アタを登場人物として召喚したそちらの方が面白かったなぁ。