鶴屋南北 郡司正勝台本 『桜姫東文章』

劇団ク・ナウカ
(98年5月 和気井塾 旧細川邸庭園 にて)

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細川邸の裏庭を利用した舞台。建物の構造上、正面より左手にたたきをしつらえている。左手の客の方が有利。舞台の形は、歌舞伎とほぼ同じ。

端役たちは自分で語る。フランス語の語り手が居て、少しだけコミュニケーションギャップを演出する。

台詞は郡司版の歌舞伎台本にほぼ忠実。二時間半の舞台に収めるためにはかなり台詞が早読みになる。これがテンポを与えていてとても良かった。

演じ手たちの衣装は様々。姫(美加利)はインド風。カタカリの模倣の動きも行う。あとは、インド風のから東南アジア風、ハリマオスタイルなど...。清玄の衣装は和風。

全四幕の内第三幕までは小気味よい調子で物語が進行して行く。話し手と演じ手を分けたこの劇団のスタイルは、これまで収縮と緊張に向かい、拡散には向かっていなかったので、やや危惧を感じていたが、むしろこうしたバロックな作品にとても合っていることを発見したのが一番の収穫。

舞台である細川邸が活かされたのは最後、「吉田の家の再興」がなる場面で、家に照明が当てられたとき。

第四幕には不満がある。「風鈴お姫」と名づけられた姫の変容が、それほど明確ではない(つい玉三郎と比較してしまうが...)。また、彼女の子殺しと夫殺しがやや唐突に見える。その直前に子供を認知したのだが、それと分かってなおかつ殺さざるを得ない姫の苦しみが出て然るべき。作品そのものの欠陥ではあるが、ここはもう少し盛り上げて欲しい。夫を殺す場面でのBGMは興醒め。それまでは緊張を盛り上げるために、歌舞伎の太鼓を模した連続音が効いていたのに、ここで音楽に頼ってしまった。

ただし、幽霊になった清玄と姫との掛け合いは、グロテスクでかつ小気味よい。南北の怪談ものが怪談もののパロディと化しているのが良く出ていた。