四季 『トロイ戦争は起こらないだろう』

2008年9月 自由劇場
エクトール:阿久津陽一郎、 アンドロマック:坂本里咲、 エレーヌ:野村玲子

1935年に作られたジロドゥの傑作。トロイア戦争を何とか回避しようとするトロイアのヘクトルの努力が、戦争好きの詩人かつ政治家のデモコスによって失敗する話。日本では1957年に四季が初演し、今回は20年以上ぶりの上演。

実も蓋もない紹介だが、作品自体今見ても面白いのかなぁ。良く分からない。翻訳を読んだときにはずいぶん面白かった記憶があるのだが。この話は勿論、トロイア戦争が起こってしまうこと、その後のヘクトルやカッサンドラやアンドロマケの運命を知っていて初めて面白いのではある。また、登場人物の性格も、トロイアに関する文学的伝統を前提にして構築されている(ずらしてはいるのだが)。

相変わらずの四季の新劇、というかこれはかなり四季としても酷い方ではないのかなぁ。『アンチゴーヌ』を観たときは、なるほど50年前のスタイルをそのまま今に伝える伝統演劇としての新劇ならではの上演だと思ったのだが、ミュージカルでの経験がそれに加わって、とにかく言葉だけ分かればいいや、になっているのかもしれない。例によって古めかしい訳。野村玲子の疑問文の固定した語尾上げもアンチゴーヌのときと同様に健在。最後のヘクトルとオデュッセウスの戦争と運命をめぐる対話だけが何とか人の耳を傾けさせる力を持っていた。

トロイア戦争前話としてみるならば、ヘカベと一部の女神を除く女優は全員役に比して年をとりすぎている。特に気になったのはカッサンドラで、姿も喋り方もおばさん的で、ちょっと勘弁して欲しい。カッサンドラの設定年齢は二十歳前だと思うのだけれど、せめて三十歳くらいまでの女優でないと...ヘレネが美の化身で、男が誰もヘレネを観て美しさに目を奪われるという設定は、どの舞台を観ても納得出来などしないので、まあ良いが、それでもこれだと新派だわな。