エンジェル・ウォーズ (ザック・スナイダー監督)

300のザック・スナイダーが監督し、エミリー・ブラウニングが主演の戦闘美少女モノ映画。2011公開。ビデオで鑑賞。

発想が「マトリクス」、枠が「カッコーの巣の上で」(本当にあちこちアプロプリエーションしてる)、妄想の二重構造は「インセプション」、女の子たちがノンストップ・アクションなのは「チャーリーズ・エンジェル」、音楽が妄想のきっかけになるのは「シカゴ」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」で、インセプションは時期的に偶然の一致かも知れないけれど、まあ私の大好きな映画ばっかり(除く「ダンサー」)を取り上げているのに、肝心要が二つ台無しなので、つまらない映画になってしまった。

粗筋はググってもらうことにして、主人公のベビードールが精神病院に放り込まれるまでのこれ以上は切り詰められない編集はとても格好良い。おかげで「ベビードールが妹を間違って殺してしまった」って観ちゃう人がいるみたいだけれど、そうは描かれていない。

その現実フェイズのセビア色調も良いし、第二段妄想フェイズの黄色もゲームっぽくて良い。第一段妄想フェイズは、現実世界では「シアター」と呼ばれる療法と関わるのだろう。ググったところ「プレイバック・シアター」という療法があって、テラー(語り手=患者)の語った話を舞台で演じることによる治療らしい。だから女の子の誰かに(多分スイートピーとロケット)娼館でのトラウマ的過去があり、その話を実際に役割分担して演じる治療を受けたのかもしれない。この娼館の物語も何かパクリもとがあるのかも知れないが、ちょっと思い出せない。「ファニー・ヒル」あたりを何か思わせるなぁと思って調べてみると、2007年にテレビドラマになっている。これかなぁ。

台無しにされた肝心要の一つ目は、ベビードールはダンスを通じて第二段階妄想フェイズになるのに彼女のダンスが全く出てこないところ。『シカゴ』のリチャード・ギアより踊らない、というか全く踊らない。戦闘シーンの動きとシンクロするダンスシーンを観客は当然期待するし、それがないのでそれだけで失望してしまうし、俳優が踊れないせいでシーンが作れなかったのかと邪推してしまう。

二つ目は、第二段階妄想フェイズでベビードールが何をされてもダメージを受けないところ。何メートルも吹っ飛ばされて血を流そうが、次の瞬間はノーダメージで闘っている。そうするとサスペンスが生まれてこない。ゲームではダメージによって動きが鈍くなったりはしないのかも知れないが、ゲームの場合その代わりにライフポイントが減るので、その点数ではらはらどきどきするのだろう、多分(インヴェーダゲームくらいしかしたことがない)。それにゲームだとたとえオーバーしてもセーブしたところからやり直しが出来たりもするから、能動的にキャラを動かす楽しみがはらはら感に取って代わることもあるのだけれど、それもないしなぁ。ミッション失敗の時も、失敗の仕方があっけなさ過ぎ。もう少しドラマを期待。

最後に、妄想を生み出す現実フェイズが一瞬で声だけで説明され(報告を読む形で)、なるほどと思うし、その処理も好きなのだけれど、現実フェイズでスイートピーの妹ロケットがどうなったのかは分からない、というか整合性がとれてないのもこまった。