東京国際空港再拡張事業に係る環境影響評価準備書に対する千葉県意見書
環第657号
平成18年2月15日
国土交通省関東地方整備局長 門松武 様
国土交通省東京航空局長 城石幸治様
千葉県知事 堂本暁子
東京国際空港再拡張事業に係る環境影響評価準備書に対する意見(通知)
平成17年8月25日付けで送付のあった標記準備書について、環境影響評価法第20条第1項の規定により、次のとおり意見を述べます。
当該事業は、東京国際空港の年間発着能力を現在の約1.4倍の40.7万回に増加させるため、東京湾の多摩川河口部において約97ヘクタールに及ぶ埋立てを行い、埋立・桟橋組合せ構造による4本目の滑走路の新設及び関連施設の整備を行う計画となっています。
当該事業により、千葉県においては航空機の増便に伴う騒音の影響範囲が拡大することから、騒音の影響が特に強く懸念されます。
また、埋立てに用いる大量の山砂を千葉県内から調達する計画であることから、山砂の採取に伴う自然環境への影響及び土砂等の運搬に伴う生活環境への影響が懸念されます。
さらに、多摩川河口付近の流況が変化し、それに伴う生態系への影響は千葉県まで及ぶことが想定されます。
これらのことから、環境影響の広域性、重大性を考慮し、事業全体を通じ、影響をできる限り回避・低減するため、更なる環境保全措置の検討を含め、下記事項について所要の措置を講ずるようお願いします。
記
1 全般にかかわる事項
(1)新設する滑走路について、埋立て部と桟橋部の比率を検討し、埋立てを極力少なくするなど、環境に配慮した構造とすること。
(2)埋立てに用いる山砂の大部分を千葉県内から調達する計画であることから、残土、建設汚泥処理物及び浚渫土の更なる有効利用を図るなど、山砂の採取に伴う自然環境への影響の低減に配慮すること。また、想定される山砂の搬出時期及び運搬経路を明らかにし、土砂等の運搬に伴う生活環境への影響の低減を図ること。
(3)環境要素の評価について、予測結果を踏まえ環境影響ができる限り回避・低減されているか否かについての評価も行うこと。また、環境保全措置にっいて、最新技術の動向、環境保全効果及び安全性等、幅広い角度から更なる検討を行うこと。
(4)東京港第一航路浚渫について、事業主体、工事工程、工事区域、浚渫土量などを明らかにし、必要に応じて予測・評価を行うこと。
(5)環境保全措置等に示されている東京湾全体の水環境の保全・改善への貢献について、具体的な内容を明らかにした上で、その実現に向けて積極的に取り組むこと。
2 大気質にかかわる事項(航空機の運航、飛行場の施設の供用)
(1)浮遊粒子状物質について、環境濃度の現況再現性を再評価し、予測結果の妥当性を確認すること。
(2)調査地域について、千葉県内の調査地域を拡大して選定し、当該地域の常時監視測定局による現況調査を実施すること。
(3)二酸化窒素及び浮遊粒子状物質の予測において、二酸化窒素への変換式及び98%値等への換算式を明らかにし、地域の状況を踏まえた適切な手法で予測・評価を行うこと。
3 流況にかかわる事項
(1)事業地周辺の局所的な影響について、多摩川の河口に構造物を築造することから、河川の流況を考慮した鉛直方向の運動方程式を含むモデルを用いて、予測・評価を行うこと。
(2)平常時について、季節変動を把握するため四季の予測・評価を行うこと。
(3)洪水時について、一潮汐の平均では、計算上影響が相殺されるため、上げ潮・下げ潮時についても予測・評価を行うこと。
4 水質にかかわる事項
(1)施工時の濁りの予測において、東京港第一航路浚渫による影響を明らかにすること。
(2)供用時の雨水排水について、排水の経路、排水口及び水質を明らかにし、必要に応じて環境保全措置を講ずること。
(3)供用時の水質について、流況の予測に関する所要の措置を講じた上、再度、予測・評価を行うこと。
5 騒音にかかわる事項(航空機の運航)
(1)再拡張後の飛行ルートは風向等により4ケースに分かれるため、それぞれのケースについて、着陸機の飛行ルートのパラツキを考慮し、適切な予測地点を設定し、WECPNLが最大となる条件時における1週間平均値及び1日最大値、並びに航空機の種類ごとに1機当たりの騒音レベルの比較等による予測・評価を行うこと。また、現状と事業実施後の変化を明らかにし、地域の状況に応じて環境保全措置を講ずること。
(2)航空機の多くが千葉県上空を通過する計画であることから、できる限り騒音の影響が小さい飛行ルート及び高度の設定、管制技術による航空機の集中回避など、適切な騒音対策を引き続き検討するとともに、低騒音型の航空機導入など騒音対策を各航空会社に要請すること。
(3)23時から5時台の運航について、飛行ルートは騒音の影響が小さい海上ルートとするとともに、低騒音型の航空機を使用させるなど影響の低減を図ること。
6 自然環境にかかわる事項
(1)水生動物について
ア 現地調査結果にっいて、確認日及び確認地点とともに確認種のリストを示した上で、文献その他の資料調査の結果と現地調査結果とを取りまとめて、各水生動物の生息状況を明らかにすること。
イ 重要種について、確認された個体数・個体サイズ・確認場所等を示すとともに、その生態を踏まえ、環境影響ができる限り回避・低減されているか否かについて評価を行うこと。
(2)陸生動物について
ア 鳥類にっいて、冬季の調査結果においてカモメの個体数が著しく多いなどの誤りがあることから、調査結果を精査した上で、再度、予測・評価を行うこと。
イ 鳥類の夜間調査について、水面を利用するスズガモ等のカモ類の生息状況を把握できるよう冬季に調査を実施した上で、再度、予測・評価を行う二と。
ウ 鳥類と航空機との衝突について、気象・季節・時間帯・航空機の運航等から発生しやすい条件を明らかにするとともに、鳥類の種ごとの飛翔時間帯及び飛翔高度を踏まえ、衝突を回避する手法を検討すること。
工 鳥類と航空機との衝突に係る環境保全措置について、バードパトロールの実施を記載するとともに、その具体的な内容及び効果を明らかにした上で、評価を行うこと
(3)生態系について
ア アサリをはじめとする注目種について、生活史の各ステージにおける分布・食性等の特徴をできる限り明らかにした上で、再度、予測・評価を行うこと。また、アユについては、多摩川と東京湾の間を回遊し、その経路において当該事業が実施されることから、アユの海域における主要生活域を含め、確認日・場所・個体数・個体サイズ等を図示した上で、再度、予測・評価を行うこと。
イ 約97ヘクタールに及ぶ海域の埋立てにより、水生生物の生息環境が失われ、ひいては生態系の諸機能が低下することから、できる限り影響の低減を図るとともに、浅場・藻場の造成等の代償措置を講ずること。
7 電波障害にかかわる事項
(1)フラッター障害について、飛行高度を上げることによって現状より改善される内容を具体的に示すこと。
(2)電波障害にっいて、運航方式及び各飛行ルートごとに、衛星放送、地上デジタル放送も含め、障害の範囲、程度、頻度等を予測・評価し、必要に応じて環境保全措置を講ずること。
8 事後調査及び環境監視にかかわる事項
(1)事後調査及び環境監視について、調査地域・地点、調査期間・季節・頻度、調査手法等の概要を示すこと。
(2)施工時の大気質、騒音及び振動について、埋立てに用いる土砂の運搬経路の沿道で事後調査を行うこと。
(3)施工時の濁水について、汚濁防止枠の除去率が50%であることの根拠に不確実性があることから、事後調査を行うこと。
(4)供用時において、赤潮及び青潮の発生状況に関する事後調査を行うこと。
(5)供用時の航空機騒音について、固定監視局は航空機騒音の把握の面から適正な地点に設置するとともに、飛行ルートのバラツキや運用比率の変動等による不確実性が大きいことから、気象条件を含め事後調査を行うこと。
(6)供用時の航空機騒音について、調査結果の整理・解析に当たっては、航空機の種類ごとの1機当たりの騒音レベルについて確認するとともに、年間変動を把握し、WECPNLの1週間平均値及び1日最大値の結果を取りまとめた上で、必要に応じて更なる環境保全措置を講ずること。
(7)供用時の低周波音について、運用比率の変動等により予測条件と異なった運航方式となった場合は、事後調査を行うこと。
(8)キイロホソゴミムシ、キバナガミズギワゴミムシ、ヒヌマイトトンボについて、これらの種は河口域の水際部に生息し、侵食・堆積等によるわずかな環境の変化でも生息への影響が懸念され、その影響の程度に不確実性があることから、事後調査を行うこと。
(9)供用時の電波障害について、衛星放送及び地上デジタル放送に関する事後調査を行うこと。
9 その他の事項
環境影響評価書の作成に当たっては、項目、手法の選定や予測・評価の結果について、必要かつ十分な内容を、正確にかつ分かりやすく、具体的な表現で記載すること、