岩澤 寛氏の公述
○岩澤公述人(農業)
私は、4000m滑走路の北側約5,5H、飛行コースの下、80Wの騒音の下で農業をしております岩澤と申します。成田市中郷地区騒音対策協議会の会長をしております。条件つき賛成の立場で発言さ'ていただきます。成田空港の平行滑走路を北側へずらし、320m短縮された暫定計画による工事実施とその供用に伴うマイナスの影響について、現在のA滑走路、離着陸コース下に生活する住民の立場で意見を述べたいと思っております。
まず最初に、平行滑走路工事実施計画の変更について。現在の成田空港に対する国際的な要請、位置づけを考慮した場合、暫定案で着工することは好ましいことではありませんが、やむを得ない方策と理解するところであります。しかし、暫定供用することによるA滑走路離着陸コースの住民に与る新たなマイナスの影響や、北側での落下物防止対策など残されている問題点の解決が前提条件とります。建設工事も隣接住民に十二分の気配りをしながら、2500mの平行滑走路で完成させ、供用するということを必須の条件にしたいと思います。
第1に、A滑走路離着陸コースの住民に与える新たなマイナスの影響についてですが、平行滑走路が暫定計画で供用された場合には、航空機騒音が、現行A滑走路の騒音地域、殊に離着陸コースでは「共生大綱」で示された現計画、2010年コンターより大幅に拡大することになるからです。昨年12月に発表された「共生大綱」の中では、平行滑走路供用開始時点で、A滑走路の1日当たり発着回数は3OO回に減少し、航空機騒音が緩和されると知らされています。地域の人たちはこの点に注目し、大きな期待感を持っておりました。しかるに、暫定滑走路運用計画によると、空港全体の1日の発着回数は、2500m滑走路計画のまま546回に据え置き、暫定滑走路が短いために不足する70回をA滑走路に上乗せしようというものです。そもそもA滑走路の現状370回という離着陸回数は、平成9年8月に旅客便が需要に応じ切れない状況を放置できないために、運輸省が平行滑走路ができるまでの緊急措置として地域側に協力要請し、地域側も現状存置を上回らないことを条件に増枠を受け入れた臨時対応策であります。暫定とはいえ、1日の発着回数が176回も増加するものであり、これ以上A滑走路の騒音地域に犠牲を要求することは残酷と言わざるを得ません。しかも、A滑走路は、大型で重量が多い長距離便専用となるために騒音の増大も懸念されます。
また、2500m滑走路の供用見通しは厳しいものがあり、暫定運用が長期化する懸念も大きく、A滑走路の370回という離着陸回数が既成事実化するのではないかという不安が強まっています。騒音地域に住む人たちは、空港から受けるマイナス、殊に航空機騒音については、国・空港公団が特に高い関心を持ち改善努力に取り組んでくれるものと理解しており、それが共生への努力のあかしと考えているのです。
成田市の旧中郷村地区は、人口わずか1,900人余りの小さな地域でありますが、中央部がA滑走路の離着陸コースであり、全体が航空機騒音によるマイナスの影響を大きく受けているところであります。9月18日に、中郷地区11区の区長会と中郷地区騒音対策協議会は、暫定滑走路問題について合同協議を行いましたが、その結論として、平行滑走路の暫定着工は理解できるとしながらも、暫定によるA滑走路の運用は1日300回とすべきであるという地域の方針が決定され、空港公団などへ要望活動を展開しています。したがって、暫定の運用計画は見直しの必要があると考えます。つけ加えますが、暫定計画を説明する中で、63コンターを現計画コンターのごとく表現したり、あたかも2010年コンターより暫定コンターが縮小されているかのような錯覚を与えた説明をしたということは残念のきわみであります。
次に、騒音地域の土地利用の問題でありますが、騒音地域の土地利用の指針となるべき騒特法の基本方針すらいまだに決定しないままに、暫定であれ平行滑走路の工事が着工されることは、共生策の充実、空港整備、地域整備を三位一体とする空港づくりの約束がほごにされたも同然であります。基本方針を遠やかに発表し、騒音地域を今後どのように蘇生させていくのか明確にするとともに、滑走路工事にあわせて具体策の実施が必要であります。移転を希望する人たちに対しては、グループ移転を可能とするために、線引きの見直しを一日も早く実施したり、住み続ける人たちに対しては、移転によって過疎化したり、孤立した集落や住民を救済する仕組みづくりなど、滑走路が複数化することによってさらに騒音区域を衰退させないためにも、国・空港公団・県をはじめとする関係自治体が一丸となった取り組みが必要であります。
平行滑走路が供用されるまでに解決を必要とするマイナス問題はほかにもありますが、中でも落下物防止対策と航空機事故対策は放置できない問題であります。今までは北側からの落下物についての報告は事例が少なく軽視されてきたという印象があります。北側は冬期の着陸が少ないことや、氷塊の落下が多発しやすい地点に住宅が少なく発見が難しいことなどから、実態が正確に把握されていなかったものと想定されます。しかし、この秋になってから、南側では余り事例のない、航空機の機体部品のような落下物が相次いで北側で発見されています。実際には、氷塊の落下も届出はされていないが相当発生しているようです。平行滑走路で着陸機が脚出しをすると考えられる地点には相当数の民家が存在しており、今までとは違って、人身や建造物に被害が及ぶ危険が高まると予測されます。落下物については、移転対策や徹底した原因究明による防止策をとるなど、平行滑走路供用までに住民の不安を解消することが不可欠であります。
また、成田では、平行する2本の滑走路が初めて運用されることと、A滑走路が過密運用となることなどから、航空機事故に対する不安が出ています。安全対策についての情報公開や、事故に対する補償制度の充実など、地域住民の立場に立った誠実な対応が今求められています。
最後に、シンポジウム、円卓会議以降、国・空港公団が共生に向けたひた向きな努力は目を見張るものがありました。しかし、平行滑走路2000年度完成断念発表のあたりから、丁寧さに欠ける対応が目につ.き始めました。今、騒音地域からも再び国と公団に対する疑念が頭をもたげつつあることを申しあげて公述を終わらせていただきます。ありがとうございました。