Military

関連リンク

この文書は2006年 9月に書かれたものです。状況の変化その他で、現状と食い違っている部分がある可能性があります。

19DDはイージスを護る

防衛庁のサイトで、平成19年度の防衛予算概算要求の概要が掲載されました。

19年度予算では、かねてからの噂通り、新型汎用護衛艦(DD)の予算が要求されています。専門誌では、19年度計画の護衛艦(19DD)から汎用護衛艦がある程度の広域防空能力を持つ(1)ようになるという記事が掲載されていましたが、防衛庁発表の文書でも、19DDの任務としてミサイル防衛にあたるイージスDDGの防護があげられています。

19DDは、試験艦『あすか』でテストが行われ13500トン型DDHで採用された国産の新型射撃指揮装置、FCS-3の改良タイプを搭載。本格的な多目標同時対応能力を持つと期待されていたのですが、最近になってイージス駆逐艦の装備するSPY-1Dを簡略化させたSPY-1Fを装備する可能性が高いとする記事が専門誌に掲載され、その是非を巡って少なからぬ波紋を生じさせたこともあり、今回の発表が待たれていました。

概算要求の概要、および平成18年度 事前の事業評価に、19DDの概要図と運用概念表、『たかなみ』型護衛艦との性能対比表が掲載されています。ここから19DDに関して読みとってみます。

射撃指揮装置はFCS-3改?

まずは注目されていたレーダーシステムですが、概要図のレーダーアンテナの配置を見る限り、FCS-3改のように思えます。

概要図で明示されているレーダーアンテナは艦橋上部の前方向けのものだけですが、19DDの上部構造物は艦橋後面に後方向けアンテナをレイアウトできる形状(2)ではなく、ヘリ格納庫上の構造物には、あきらかにレーダー配置用と思われる平面が描かれています。

よって、19DDのレーダーアンテナは前後2群に分割されていると考えることができますが、イージス艦用のSPY-1DやSPY-1Fでは送受信装置の関係で、4面あるレーダーアンテナをあまり離れた位置に配置できないと言われています。

対して、FCS-3のレーダーアンテナの配置は制約が少ないようで、13500トン型DDHでは、大型の島型艦橋の前後離れた位置に2面ずつ2群のアンテナを配置しているようです。

また、SPY-1でミサイルを管制する際に使用するパラボラ型のイルミネータ、AN/SPG-62が描かれておらず、FCS-3改で使用されるICWIっぽいのが描かれているのも根拠となり得るでしょう。

搭載ミサイルは何か?

続いて、ミサイルを搭載するVLSですが、概要図から見る限り『たかなみ』型護衛艦と同じ32セルを搭載するようです。

内、16セルをアスロック対潜ロケットが占有するとして、残り16セルをスタンダード中距離対空ミサイルにあてるのでしょうか? しかし、エリア・ディフェンス艦として対空ミサイル16発はいかにも少なく感じます(3)ので、あるいは1セルに4発搭載可能なESSMを搭載するのかもしれません。

専門誌なんかで、19DDがスタンダード搭載可能な防空能力を高めた艦になると書かれているのを読んだときに、48セル搭載になるかと期待していたんですけどねぇ…。

VLSと言えば、『たかなみ』型同様に前部甲板から突出して装備されているのにも注目。

『たかなみ』の場合は、前部のVLSを『むらさめ』型の16セルから32セルに増やしたさいに、区画スペースの関係で突出したという文書があったので、私も『むらさめ』型から船体構造を流用した故の事情と理解していました。

VLS上端を甲板と同レベルにした方がステルス性の点でも有利と思えるのですが、基本的に新設計であろう19DDでスペースの不足は考えにくく、何らかの理由で積極的にこうした構造としたのかもしれません。波浪の影響でミサイル発射に制約が出るとか、ダメージコントロール上の観点(誘爆時の爆風逃がし)とかが考えられますが、実際のところはどうなんでしょう?

ステルス船体

他に概要図を見ていて思った点として、いくつか。

艦首のソナーシステムが、『あすか』や『13500トン型』に搭載されたOQS-XXではないように見えます。OQS-XXはかなり大型のようですから、重量やスペースの点で無理があったのかもしれません。

後部飛行甲板のヘリコプタ用着艦拘束装置の移送レールが2条描いてあります。おそらく、『たかなみ』型同様、2機の運用が可能な設備を持っているのでしょう。

哨戒ヘリのSH-60Kは当然搭載されるとして、新型掃海・輸送ヘリコプタのMCH-101の艦載が可能かどうかは興味深いところ。MCH-101は『13500トン型』に搭載されるようだから、DDGグループに配備になる19DDが同機の運用能力を持てば、輸送ヘリを柔軟に活用できそうに思うのですが。

チャフ/フレア・ランチャは従来型のものが6基、艦橋前のフラット上に描かれています。

試験艦『あすか』に、旋回式のチャフ発射機らしいものが搭載されて試験されていたようですけど、あれは搭載されないんでしょうか? ちょっと気になります。

9.11以降、増大したテロの危険に備える為、海上自衛隊の護衛艦の多くが防弾板付きのマウントに12.7mm機銃を搭載可能なように改装されましたが、19DDの概要図にはそれらしきものが描かれていません。

単に省略されただけかもしれませんが、『13500トン型』の概要図にはキャットウォーク上にしっかりと描いてありましたし。あるいは対水上射撃モードをもつファランクスBlock1Bで十分と判断されたのでしょうか?。

船体のステルス構造はさらに徹底したものになっているようで、煙突から排気筒が突出しなくなったり、艦首から艦橋構造物までつながるブルワークが設置されたり、搭載艇や対艦ミサイルランチャがエンクローズドされたり。

で、対艦ミサイルランチャ付近の舷側に、ロケットモータのブラスト抜きと思わしき4個の矩形ハッチ(?)が描かれています。これ、軽合金か複合材のフタで、発射時にブラストで吹き飛ばされるような構造だったら絵的に格好良いんだけどなぁ(笑)。いや、おそらく開閉式のハッチだろうとは思いますけど。

あと船体中央部、前後の上部構造物を繋ぐように舷側に設置されているスクリーン。この陰にVLS置くのか?とか、一瞬変な勘ぐりをしてしまいましたが、よく考えたら洋上補給時にドライカーゴを受け渡す時のスペースになるんでしょうね。必要時だけ、ステルス・スクリーンが外側に倒れたり、スライドしたりするんでしょう。

こうして見ると、ステルス艦ってのは、体験航海とかで一般市民として乗艦させてもらったときに、見物場所の確保が大変そうですね。

さてさて、思いつくまま書き連ねてみましたが、さすがは新世代護衛艦、なかなか興味深い艦です。

対空重視の護衛隊に配備されるということで、当面は4隻程度が建造されるのでしょうか? おそらく、今月末に発売される軍事系専門誌には同艦の記事が載るでしょう。今から楽しみです。

海上自衛隊がイージス護衛艦を配備すると発表された頃、高価値目標である空母を持たない自衛隊のイージス艦は何を守るのか? 護衛艦がイージスを守ることになるのではないか? という意見が出たころがありましたけど、実際にイージス艦の護衛を重視した艦が建造されることになってしまいました。あの頃とは、イージス艦の任務や運用目的が大きく変化してきたということでしょうけど、ある意味皮肉な状況と言えるかもしれません。

1:汎用護衛艦がある程度の広域防空能力を持つ

従来型の汎用護衛艦が搭載していた対空ミサイルは、自艦防空用の短射程対空ミサイルのみ。艦隊に防空の傘をかぶせるための中距離対空ミサイルは、ミサイル護衛艦(DDG)のみが搭載していた。

2:艦橋後面に後方向けアンテナをレイアウトできる形状

艦橋後面にSPY-1のレーダーアンテナを搭載したイージス艦は、アンテナの視界を確保する為に、その後ろの上部構造物をナイフで切り落としたようにレイアウトしています。

3:対空ミサイル16発はいかにも少なく感じます

Mk13ミサイル発射機を持つ『かぜ』型ミサイル護衛艦は40発を搭載可能。『こんごう』型ミサイル護衛艦は、90セルのVLSのうち、おそらく75セル程度を対空ミサイルに割り当てているものと思われます。

もちろん、弾庫に定数一杯のミサイルを搭載している訳ではないでしょうけど…。