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最新 戦争事情 @ ロフトプラスワン

2008年8月6日、新宿歌舞伎町のロフトプラスワンでのトークライブ「<最新 戦争事情>今、戦場で使用されている兵器を知る」に行ってきました。

平日夜の開催だったのですが、出演が岡部いさく氏と松浦晋也氏ということで、一ヶ月前から休みを確保して、楽しみにしてきたイベントでした。そんな訳で、半日だけ仕事をすると新幹線に飛び乗って上京します。

途中、小川町のオリンパスプラザに寄ったり、ホテルにチェックインして荷物だけ降ろしたり、地下鉄に乗り間違えてドタバタしたりしたあげくに、ロフトの前に付いたのは17時半をいくらかまわった時間。

早速、階段を降りていくと、まだ並んでいる人はいない様子。もっとも、今日のイベントは前売り券が事前に販売されているんで、油断は禁物。前売り券は7月から販売されていたのですけど、タイミングが悪くてこの期間の「ロケットまつり」には来られなかったんですよねぇ…。

店内のスタッフに声をかけてみたところ、入場は前売り券を持った人からになるので、とりあえず階段で並んでくれとのこと。しばらくすると、ボチボチと列ができはじめます。

蒸し暑い階段で汗をかきかき並んでいると、店内のスタッフが送風機を出してくれました。有り難く恩恵にあずかります。

ロフトプラスワンの階段の一番下って、今までなら携帯の電波が入らない筈だったのですが、この日はバッチリアンテナが。ついつい、mixiの日記に書き込み(笑)。この後、店内でも電波が入ることを確認したので、どっかに室内用アンテナでも増設されたのかもしれませんね。

しばらくすると列の並び替えがあり、前売り券の番号順に列が。当日券の人はその後ろに続くことに。

聞けば、前売り券を購入した人は三十数人いたようで、私の買った当日券の連番は33番。開場までに来られなかった方もいたようなので、実際には20番目くらいに入場できたのでしょうか? 会場内の比較的良い位置の席につくことができました。

すっかり汗だらけになったので、一杯目のビールが旨い! いつもなら2〜3人で来るロフトですが、この日は友人たちの都合が悪く私一人だったので、ついつい飲み食いしすぎちゃったような気が…。

支払い金額そのものは、普段よりちょっと多いかな、というくらいだったのですが、今回は「ロケットまつり」と違ってテーブルチャージが付かないんですよねぇ…(苦笑)。飲食と言えば、メニューから「苦労ナス」が消えていたのがちょっと悲しかったり。

食事をしたり、冊子「rooftop」を眺めたり(おお、「ルーフトップギャラクシー」の表紙がゆりしーじゃん)している内にスタート時間。

斉藤プロデューサーの挨拶のあと、岡部さんと松浦さん登場。岡部さんが「フリートークで、おまけに僕がしゃべりますんで、話はグダグダになりますんで」と言ったのを受けて松浦さんの「でも、今までグダグダにならなかったことはないので」という答えに会場爆笑。「ロケットまつり」も随分と話があちこちに飛びますからね(笑)。

トークはまずGoogle Earth での「偵察衛星ごっこ」からスタート。昨日からスタートしたばかりのストリートビューが早速話題に。

岡部さんもノーフォークの軍港とか、サンディエゴの軍港とか、ディエゴガルシアとか見ているそうです。カウアイ島の米海軍太平洋ミサイルテストレンジは、最近新しい画像に切り替わって解像度が上がったとか、ロサンゼルス近くのノースロップ社の小さい博物館があって、YF-23が写っているとか、岡部さん色々見てますなぁ。

地球観測衛星と偵察衛星を中心に話が進んでいきます。太陽同期準回帰軌道について松浦氏から解説。

岡部さんとしては、こうした偵察衛星で洋上の艦隊をどの程度捕捉できるかを松浦さんに聞いていました。

少し前に中国軍が対艦弾道ミサイルを開発中という報道がありましたが、どうもこれが射程の長いCSS-5を改造したものらしいのですが、これを使うとなると射程は中国軍の洋上哨戒範囲を大きく超えるものになってしまう。中国軍が米海軍の空母機動部隊を捕捉するために、海洋観測衛星みたいなものを使う可能性はあるのか、と。

これに対する松浦さんの答えは、合成開口レーダーだと艦艇の航跡まで捉えることができる(場合によっては、潜水艦の航跡まで写るらしい)けど、問題は衛星が物理学の法則に従って軌道を周回していることで、衛星の数を増やしたり、衛星を傾けて探知範囲を拡げても、ある地点を観測するのは数時間に一回とかという制限を受ける。戦術目標の観測に使うのは無理なんじゃないか。

こうして考えていくと、中国の対艦弾道ミサイルの実用性(1)には疑問符がつきそうですけど、アメリカ海軍が洋上配備型のターミナル・ミサイルディフェンスを推進しているところから、こうした対艦弾道ミサイルに一定の驚異を感じているらしいというのが岡部さんの見方。

中国による衛星破壊実験と、スペースデブリの話。これは完全に松浦さんの推測だそうですが、ひょっとして中国の航天局あたりに宇宙開発をやりたい人がいて、良くわかっていない軍(特に上の方)をだまくらかしているのではないか、と。

高度800キロという明らかにスペースデブリになる高度で衛星破壊実験(2)をやったり、「神舟」の軌道モジュールにカメラを積んでみたり(3)

こうしたことを考え合わせてみるに、中国の宇宙開発にはフォン・ブラウンタイプの黒幕がいるのではないかと想像しているそうです。

弾道弾迎撃の話。ちなみに、PAC-3の発注のおかげで青色吐息だった三菱の航空宇宙部門は結構潤っているんだそうです。その結果、出てきたのがMRJだとか。

無人機の話も出てきました。アマチュアのGPS誘導のラジコン飛行機が大西洋横断に成功した事例もあるんだとか。ヘタすると自作の巡航ミサイルくらい作れちゃうかもしれない。

タクティカル・トマホークの話。発射後の目標変更とか、移動目標へのGPU誘導の話。

巡航ミサイル防御の話。アメリカは熱心だそうですが、日本も弾道ミサイルだけでなく巡航ミサイルにもっと気を配らなければならないのではないかとは、岡部さんの意見。

ここで前半の質問コーナー。

幾つか質問が出て、岡部さんと松浦さんが答えていたのですが、個人的に特に印象に残ったのが最近のロシアの話。

ちょっと前までの、経済が傾いていたロシアなら情報はだだ漏れだったのですが、最近は地下資源絡みで経済が絶好調になってきて、昔のソヴィエトの雰囲気が戻ってきて情報が出にくくなってきたとのこと。

ただ、15年ほど経済が沈んでいたロシア。男性の平均寿命が60歳を切っているそうですが(アルコール中毒で死んじゃうそうだ)、そんな国で15年も開発を止めていた時期があると開発の第一線から経験のある人がいなくなっているのではないか、と。ロシアの兵器の質が悪いと言われていたり、開発が遅れているプロジェクトが目立つのはそうした背景があるのかもしれないそうです。

最後は、HTV絡みの質問からシャトルの話に繋がって、前半終了。

15分ほどの休憩を挟んで行われた後半は、引き続いてシャトルの話からスタート。

シャトルという機体が、如何に多くの問題を抱えながら運用してきたかという話からスタートして、運用面では、ソヴィエトの方が慎重で、アメリカの方が無茶をやる傾向があるという話へ。

シャトルが何故あんな機体になってしまったか? フォン・ブラウン以下のドイツ人が絡んでいなかったこともあるだろうし、アメリカの航空宇宙産業に合わせる形でシャトルの計画が行われたのが要因のひとつにあるだろう、というのが松浦さんの意見でした。

そして、話はアレスへ。なんか「ロケットまつり」のようだ(笑)。

松浦さんは歴史のifとして、もしもアポロ計画が終わった後に、シャトルに行かずにサターンⅤを安く作る方向に行っていたら。アポロ宇宙船の司令船を転用して、太陽電池付きで、地球周回軌道専用の小型の機械船を作る方向に行っていたらという話が。

話は戻って、兵器分野でもそういう傾向はあるんですか? という質問が岡部さんへ。

「どうなんでしょう? いきなり捨てたり、新しいものをやろうとすると、どんどん高望みをして結局駄目にしてしまうという」ということで、ズムウォルト級駆逐艦や、LCSの話が。どっちも予算超過やら何やらで、中止の瀬戸際にあると言われているプロジェクトです。

「何が拙いんですかね?」という松浦さんの質問に、岡部さんは高望みしすぎるのと、アメリカ海軍が計画管理が下手(4)なんではないかと。

海軍はどこでもそうだけど、伝統を引きずりすぎてる面もあるのではないかという話も。

そして、話題は思想や国民性といった方向へ。

アメリカの戦闘機のリベットがきちんと並んでいるのに、ロシアのそれは曲がっていたり。日本人の目から見ると、ロシアはいい加減だと思いがちだけど、ロシア人とすれば、飛行機ってのはそういうもんだという考えがあるのかも。

同じアメリカでも、F/A-18なんかは結構造りがいい加減なんだそうで、メーカーによってもそうした考え方の違いもあるようです。ロッキードなんかはすごい造りが綺麗なんだそうで、岡部さん曰く「ロッキードはヲタクがやってる」。

先日三菱で「心神」のモックアップを取材してきた岡部さんですが、これもまた造りが綺麗な機体だったそうで。

モックアップだから、ということではなく、実際に機体を量産した時に出来うる精度で作っている(そうしないと、レーダー反射の解析とかのデータがキチンととれないらしい)そうです。これだけやっておいて、F-2のジャイロはどうして、みたいな笑い話も出ていましたが(苦笑)。

松浦さんの見方では、三菱という会社は良くも悪くも「何でもかんでも最適化してしまう」。

H-ⅡAなんかは種子島からしか上げられないそうで。もちろん、射点設備の関係もあって、現実的に種子島以外から上げることなんかないんだろうけど、種子島からの条件を満たした打ち上げ軌道を取らないと、あの能力は出せないらしいです。

逆に言うと、種子島から静止軌道に2トンの衛星を上げるという目的に、全てが収束するように作られている、とのこと。岡部さんは零戦一式陸攻の設計を連想してしまったらしい(笑)。

この辺で、22時を過ぎて後半の質問に。

ここでも幾つか質問が出ていましたが、岡部さんが冗談めかして言っていたSu-35MKJって、私も見てみたいなぁ(笑)。せめて、アグレッサーだけでも駄目ですかねぇ。

ネットからスタートしたトークは、やっぱり最後もネットの話題。

ネットの普及で、物事を秘密にするより、みんなに知らせることが簡単になってしまった。これが戦争をどう変えていくのか?

ひとつ確実に言えることが、情報技術の発展で戦闘、戦略、政治の距離がものすごく短くなってしまったこと。松浦さんはYouTubeが最終兵器になるかも?と発言していました。

これが世界を不安定にしていくのか、それとも武力行使に対する重しになっていくのかという問いかけでトークは締め。

全体を通してみると、兵器という括りが大きすぎて、少々トーク全体が散漫になった感があったのが残念でした。あとビジュアルが少し寂しかった感じ。ちょっとネタ振りに使えるような画像があれば良かった気がします。

ちょっと否定的なことも書きましたが、概ね満足のできる内容でした。ブラッシュアップしていくとまだまだ面白くなりそうな話題ですし、是非ともシリーズ化してほしいものです。最新兵器だけじゃなくって、60年代航空機とか、アニメの架空兵器とかのネタでも、イケると思うんだけどなぁ(笑)。

1:中国の対艦弾道ミサイルの実用性

イベント後、ホテルに帰る道すがらつらつらと考えてみたのですけど、例えば潜水艦による追尾なんかはどうだろう?

少し前に、中国海軍の潜水艦が米機動部隊に隠密裏に接近することに成功していた、みたいなニュースがあったと思うけど、潜水艦で米艦隊を追尾して、いよいよ開戦というタイミングで位置通報というのは?

もちろん、潜水艦が撃破される可能性は高いし、追尾が失敗する可能性もあるし、常識的に考えればあまり肯定的にとらえられる戦術ではないでしょうけど、台湾海峡でのミサイル実験を恫喝されて以来、米海軍の空母機動部隊がトラウマになっているらしい中国軍なら、あるいは潜水艦一隻と空母一隻を引き替えるのを、それなりに割の良い取引と思うかもしれない。

これで1隻でも米空母を撃破できれば、それ以降の機動部隊の活動を多少なりとも制約することができるだろうし。

2:スペースデブリになる高度で衛星破壊実験

衛星が空気抵抗によって速度を失うのは、200kmくらいがボーダーラインになるそうで、高度800km前後で破壊された風雲1号の破片は、ほとんど落下しないで軌道を周回することになります。

ある程度、宇宙開発の知識を持つものならやりそうにない暴挙ですが、例えばそういった知識を持たない軍の上層部が、「せっかく開発したのだから」と暴走した可能性はあるのではないか。宇宙開発を目指す一派との間で、何らかの意思の疎通の齟齬があったことがこうした暴挙に繋がったのではないかと。

3:「神舟」の軌道モジュールにカメラを積んでみたり

有人宇宙船に地上観測用のカメラを積んでみても、実用性がないそうです。

これは、人間という質量が船内を動き回る訳ですから、その反作用で船体がブレるため。長焦点距離のカメラにとって、ブレは致命的です。

宇宙飛行士が衛星軌道上でシャッターボタンを押すより、地上からのリモートコントロールでシャッターを切った方が解像度が高くなる訳です。

4:計画管理が下手

岡部さん曰く「色んな人間が口を出す。色んな所の要求を容れなくちゃいけない。色んなメーカーの言うことを割と鵜呑みにしちゃう」