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ロケット爆発まつり!

2008年3月16日、新宿のロフトプラスワンで行われた「ロケット爆発まつり!」に行ってきました。

今回は「さまざまなロケットの爆発映像を見ながら、ロケット技術を語り明かす」ってことで、いつもの「ロケットまつり」とは少し趣向が違います。んでもって、出演はお馴染みの松浦晋也さん、宇宙機エンジニアの野田司令、水城徹さん、ロケットエンジン・エンジニアの平岩徹夫さん、イラストレータの小林伸光さんといった面々。予告されていた映像作家の樋口真嗣さんは、残念ながらおいでになれなかったようです。

そもそも今回の企画は、とあるDVDを見た野田司令が、ゴダードのロケットの実験映像を見ながら、何度も何度も実験に失敗し、それでも飛び散った部品を楽しそうに拾い集める彼の映像を見て思い立ったとか。

そんな訳で、上映される映像は爆発の連続。会場から聞こえる声も「あ〜」とか、「わ〜」とかの溜息か、笑い声ばかり(笑)。

映像は、ナチスドイツのA4ロケット(V2弾道弾)から始まって、ヴァンガードアトラスタイタンと続きます。続いてロシアのソユーズロケットへ。

ちょっと姿勢を崩しただけで簡単に崩壊、爆発するアメリカ製ロケットに対して、強度的に余裕があるのか、比較的長時間耐久するロシアのロケットに会場からは感嘆の声が。この辺は設計思想の違いでしょうけど、映像的にも機体が爆発に至るまでに明確な違いが判るのは興味深いものでした。

有人宇宙機の打ち上げには「2秒ルール」なるものがあるそうで、エンジンがストールしてから機体が崩壊するまで2秒あれば、有人カプセルを安全距離までエスケープさせられるそうです。射点上で火災を起こしたロケットから、緊急脱出ロケットでエスケープに成功するシーンでは、客席からも拍手が出ていました。

続いては、昨年のシーローンチでの打ち上げ失敗も記憶に新しいゼニットロケット。

プラットフォームそのものを吹き飛ばすような大爆発に見えたけど、実際には扉が幾つかと、ディフレクターがやられた程度だったみたいです。小林さんからは、石油掘削リグをベースにした設計なので耐爆性が高いんじゃないかという指摘。

ターボポンプに金属片が入ってしまったのが、事故の原因だったそうです。ケーシングの中で金属片が暴れて加熱すると、周りが液体酸素なもんだから、燃えだしてしまうそうで…。怖いなぁ。配管には異物の進入を防ぐためのメッシュが入っているんだけど、十分に機能しなかったようだ、とのこと。

この辺で、松浦さんから最近ロシアでロケットの打ち上げ失敗が続いていることから、「ロシアの生産現場が弱体化しているんじゃないか」という指摘が。

ロシアはエネルギアからこっち、ロケットの新規開発を行っていないそうで、平均寿命の短いロシアの場合、開発に関わった人間が現場からいなくなっているのではないか、と。このままでは、ロシアの宇宙開発は自壊していく可能性があるんじゃないかと危惧しておられました。

ここで前半終了。休憩を挟んで後半。

ラムジェット推進のロシアの高速巡航ミサイルの映像を見た後、ロシアの月飛行計画用に設計された巨大ブースターN-1登場。

その偉容に客席からも「カッコイイ!!」という歓声が。

野田司令は「わかったぞ! これはもしかしたら金のかける所間違えたな」。松浦さんも「これ見てるだけで思わず共産主義者になっちゃう」と言っちゃほど。

まぁ、「ロケット爆発まつり」な訳で、この格好良いロケットも爆発しちゃうんですけどね。やはり、30基ものエンジンを同期させて制御するのは大変だったみたいで、N-1はことごとく第1段で失敗したそうです。

ロシアのロケットはエンジンを束ねたクラスターロケットが多いけど、ソユーズを打ち上げているA-2なんかは、ノズルと燃焼器は4つあるけど、ターボポンプは1基だけ。こちらは1基のノズルにそれぞれターボポンプが付いていたそうです。平岩さんはアメリカ航空宇宙学会が出したN-1の事故原因を調べたペーパーを持参されていたのですが、それによるとエンジンそのものに問題はなく、制御系が問題だったとの結論が出されているそうです。

ロシアのロケットエンジンは、1960年代から2段燃焼サイクルで一貫して開発を続けてきたそうで、非常に高度なレベルにあるとのこと。アメリカはそれを知らずSSMEは世界一と豪語してきたのだが、1998年頃になって開けてびっくりだった、とか。

松浦さんは「あの訳のわからない底力は何なんだろうね?」とおっしゃっていましたが、まさにロシア驚異のメカニズムですな。

平岩さん曰く、「日本の開発は作っちゃ捨て、作っちゃ捨て」。「ロシアの場合はヒドラジンは2段燃焼サイクルで1軸、それで上手くいったからケロシンも2段燃焼サイクルで1軸、ケロシンで上手くいけば水素も2段燃焼で1軸、メタンも同じ」で、すごく筋が通っているそうです。水城さんも「情報が断片的に入ってくるうちはロシアの開発は訳わかんなかったんだけど、全部明らかになってみると、筋の通った、段階を踏んだ、論理的なことをやっている。むしろアメリカの方が訳がわからない」とのこと。

続いてドニエプル。打ち上げたサイロに、失速したロケットがそのまま落ちてくる様子はまるで笑い話だけど、こんなのが実際にあるんだから現実は恐ろしいです(笑)。

ここらでロシア系が一段落して中国。

ロケットの打ち上げ失敗ってどこの国でも悲惨だけど、中国の場合、ある意味喜劇的な様相さえあります。

ヒドラジン(この前、制御を失ったアメリカの衛星が、有毒の燃料を大量に搭載して墜落してくるってことで話題になったアレです)の煙を噴き上げる長征に向かって、ガスマスクを手に持って(何で着けないんだ!?)ダッシュする保安員に、会場から「え〜!!」という、悲鳴とも笑いとも疑問の声ともとれる叫びが。

この時は、保安員はみんな病院送りになったそうですが、幸い死者は出なかった(と、中国政府は言ってる)そうですが、その後の95年、96年の事故は悲惨で…。

悲惨続きで、続いてロシアのR-16チャレンジャー

インドのロケットの後、アリアンロケット。松浦さんはアリアンの打ち上げを見に行く度に打ち上げが失敗するので、トラウマになってるようです(笑)。

日経新聞の話になったり、シャトルのサイズに関する話になったりと脱線しながら、核パルスロケットのオリオン(の、予備実験で通常の爆弾でテストをした映像)を経て、野田司令がこの企画をやろうと思い至ったと語るゴダードへ。

ゴダードのロケットは、失敗続き。燃焼が安定しなかったり、燃料を吹いたり、火を吹いたり、まともに飛び上がる映像すらほとんどありません。

でも、楽しそうなんですよねぇ。

実験に成功した後、飲み物(牛乳か何かでしょうか?)を手に談笑するシーンも、すごく嬉しそう。

ゴダードは不遇の人と思われがちですけど、こうしてみるときっとすごく前向きな人柄だったのでしょうね。

イベントはいつもよりも長く、11時前まで続きました。

野田司令や松浦さんはすっかり手慣れたものですし、小林さんのギャグや、妙にアニメやSFのネタに詳しい平岩さん、ロシアの話になると止まらない水城さんといった具合に、時間が過ぎるのを忘れるほどでした。

機会があれば、打ち上げ成功の画像も交えた第二弾を是非とも開催して欲しいですね。