頑張れ!バンドメン!



 以前私はポスティングの仕事をしていたことがある。

 薄い情報誌を各ご家庭のポストに直接投函していく仕事だ。

 自慢じゃないが私は動くことが嫌い。

 そんな私は、実際に歩き回るのではなく、車で現場を仕切る方の仕事をしていた。

 スタッフ達に配布エリアの指示を出し、雑誌の補充、スタッフの移動で走り回る。

 実際やってることは車の運転だけなので、これで日給1万はおいしかった。



 現場によって、配布スタッフは毎回変わる。

 その日のスタッフは、プロ志望の若きバンドメン。

 先輩のT君と、後輩のS君。金髪の二人組。



 私は昔から、いわゆる「不良」とカテゴライズされる人種が苦手だ。

 この二人も私にしてみれば当然その範疇に入る人達なわけで、私はちょっと引いていた。

 必要最低限の指示を出すだけで、余計な口はきかずに接していた。



 朝から曇っていたが、ついに雨が降り出した。



 情報誌配布だけでは会社の利益が薄いため、別に折り込み広告も挟んで配る。

 通常は配布スタッフが配りながら挟み込んでいくのだが、この雨だ。

 私はあらかじめ車の中で折り込んでしまってから配ることを提案した。



 車通りの少ない道に車を止め、三人の共同作業が始まる。

 先に話したとおり私は彼らが苦手なので、何も話しかけず黙々と作業をしていた。

 しかし彼らはひたすらに二人で話し続けている。



 単純作業の繰り返しなので、当然退屈になってくる。

 自然と私は彼らの話に耳を傾けた。



S君 「昔は良かったよなー。昔は金の減らない財布があったのになー。」


 へ?なんじゃそら?



T君 「ていうかそれ、コンビニの金庫だろ?」



S君 「エヘヘ、バレてました?」



 あー!そーいうことか!

 …ってオイオイ、それじゃ犯罪だろ(笑)



 二人のトークは止まらない。



T君 「なんかさー、ゲームボーイで面白いソフト持ってない?」



S君 「へ? 何でですか?」



T君 「いや、ツアーに持ってこうと思って」
        *地方のライブハウス巡りをツアーというらしい



S君 「そういえば、○○さんがドラクエの新しいの買うって言ってたから、ポケモン貸してくれるんじ

    ゃないっすか?」




T君 「おー、ポケモンかー、いーねー、





    よーし、ツアー中にクリアするぞー!」





 クリアするんかい!(笑)

 ファンの娘との一夜限りの情事とかそういうの想像してたんすけど…(^^;

 こいつらカワイすぎ(笑)





S君 「ツアーって、どこ行くんすか?」



T君 「大阪、広島、福岡だな」



S君 「いいっすねー!

    やっぱり大阪でたこ焼き、広島でお好み焼き、食べたいっすよねー」




 ウンウン、それは同感。



T君 「そうだよなー






    
それぐらいはぜいたくしないとな!」





 ・・・・・・・・・・・・・・

 (T-T)(T-T)(T-T)

 たこ焼き、お好み焼きが「ぜいたく」な君らの普段の食生活って…?(T-T)





 いや、別に私は彼らを笑い物にしたいわけではないんです。

 夢に対する真摯な気持ちに、本気で感動したんです。



S君 「あー、お金欲しーなー!

    ねぇTさん、もし100万円あったら何に使います?」




 たこ焼き、お好み焼きを「ぜいたく」と感じる彼。

 100万円あったら何に使うのか?

 非常に興味をそそられます。



T君 「そーだなー、100万円あったら…







   ツアーに飛行機で行くな!」





 夢ってスゴイ!





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