民力再興の道
Since 2002/01/13


 
 日本経済新聞は、2002年の元旦から1月12日まで、「民力再興」と題した特集記事を連載していました。その最終回だけを読んだのですが、
民力再興への答えは1つではない。そしてそれは自力で見つけだすものである」というのが同連載の結論のようでした。 (注)最終回の記事全文を下欄に添付しています。

 その結論は、ニーチェの次の言葉に似ているな、と思いました。

 私に「道」を尋ねた者に私はこう答えた。
「これが――私の道だ、――きみたちの道はどこか?」と。
万人向きの道など、存在しないからだ。

                         (永井 均 著 「これがニーチェだ」 より)

 残念ながら、日本人の多くは、未だに、誰かが「あるべき姿」を決めてくれて、それに向かって進むための「万人向きの道」を指示してくれるのを待っているように思えます。民力が再興するのは、いつの日のことでしょうか?。

 

民力再興(11)再び輝き出すために
日本経済新聞(2002/01/12)より

突破口探る

 復活の扉、自ら開く――。連載は日本経済の再生に向け、自力で活路を切り開こうとする企業や個人の姿を追ってきた。不振を景気のせいにしたり、政府に頼り切ることなく、自立を目指す民力再興の動きだ。

 現実を追うと、身近な突破口から再生の芽を探る動きが予想以上に広がっている。流れは年明け以降、一段と加速する。

 松下電器産業社長の中村邦夫(62)は10日、系列5社を完全子会社化し、本社主導で事業再編を進めると発表した。重複する事業の整理は10年来の課題。だが、大きな裁量権を持つ子会社の反発で実現できずにいた。「しがらみを断ち切らないと前には進めない」。中村は社員の反発という痛みを覚悟で、創業者の松下幸之助の時代から続く経営の形に終止符を打つ。

 新日本製鉄社長の千速晃(66)も4日、おとそ気分の社員にこう言い渡した。「選別と淘汰(とうた)が進み、勝者と敗者がはっきりする。自らを積極的に改革しうる企業だけが勝者となる」

 ユニクロとワールド。勝ち組企業にこんな対比がある。カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは人件費の安い中国で大量生産し低価格を実現、減益とはいえ高収益を続ける。同じアパレル企業のワールドは国内生産にこだわる。昨夏には取引先の紡績工場内に自社工場を開設。作った糸をその場で加工し、注文から商品が届くまでの期間は従来の3分の1の1週間で済む。流行の波頭を逃さず、売れ筋の高級婦人服に集中し、3期連続の増益を果たす。

前例を疑う

 マブチモーターとキヤノンも「海外移転」を巡り好対照をなす。海外生産を徹底するマブチ、国内で製品の付加価値を極限まで高めるキヤノン。それは勝者への答えが1つではなく、自力で見つけだすものであることを教える。

 動き出した企業や個人には共通点がある。「本当にそうだろうか」と前例や常識を疑う姿勢だ。それには過去の成功体験を捨てなければならない場合もある。日産自動車は社長のカルロス・ゴーン(47)の下で採算性を重視、系列取引を崩し復活を遂げた。

 こんな例もある。三菱化学は2月から先端素材「フラーレン」を本格生産する。炭素から成り、医薬品や太陽電池など幅広く使える夢の材料だが、問題は値段。1キロ500万円と金より高く、「実用化は無理」とあきらめていた。それを覆したのが常務執行役員のジョージ・ステファノポーラス(54)。米マサチューセッツ工科大教授から招かれ、「三菱化学の技術でできないはずはない。5年で値段を100分の1にする」と主張、世界初の大量生産に踏み切る。

潜在力発掘

 終身雇用は揺らぎ、働く側も企業にもたれず、自立する。女性や高齢者など働く意欲を持つ労働者と、即戦力を求める企業をつなぐ民力も台頭する。

 人材派遣大手のテンプスタッフ(東京・渋谷)は派遣社員に専門技能を教育しながら派遣する事業に乗り出した。慢性的な人手不足に悩む製薬各社に人材を供給、新薬開発に弾みを付けるバネになる。

 企業も社員の潜在力を引き出そうと懸命だ。「待っていれば自然とリーダーが出てくる時代ではない」。ソニー会長の出井伸之(64)は次代の経営幹部を育てる「ソニー大学」を社内に作った。

 政府にも役割がある。民力の自由な活動を阻む規制を撤廃したり、やる気を生む税制に作り直す作業が急務だ。競争の中で生まれる失業者に救いの手を差し伸べるのも必要。ただ、それは政府への依存心を持つ層を生むばらまき政策ではなく、実力を身につけ自立し、「敗者復活」につながるような緊張感のある対策でなければならない。

 1980年代に日本の追撃に苦しんだ米国は、情報技術や高度の金融サービスをテコに90年代に復活した。企業が人件費を抑えて体力を回復、リストラで縮んだ経済はサービス業など新産業が吸収した。政府は規制緩和や税制改正で民力を後押しした。

 変革を恐れない。常識にとらわれない。人頼みにしない――。自立した企業や個人が行動を起こし、政府も後押しする。民力再興へそれぞれが一歩を踏み出す時にきている。=敬称略(おわり)

 

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