日本人の課題?
Since 2008/01/17


 
 7日前の神戸新聞に、「幼児化ニッポン 夜明けはあるか」と題した対談が載っていました。同じ新聞に今日、西ドイツ生まれの禅僧、ネルケ無方さんが、「日本には大人があまり育たないような気がする。成人式を迎えた若者ばかりではない。むしろ幼稚なままで還暦を迎える大きなコドモが問題である」と書いておられました。ひょっとするとネルケさん、1週間前の「対談」を読んで、この随想を書く気になったのかもしれません。読み比べるのも一興と考え、下に全文を収録しました。

【関連記事】 → 対談「大人学」 「幼児化ニッポン」夜明けはあるか(抄)

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【随想】 日本人の課題 ネルケ 無方   (神戸新聞 2008/01/17)

 日本に来てよく質問される、「日本のいいところ? 悪いところ?」。日本のいいところも悪いところも、大人がまるで子供のように安心して生活できるということだと思う。日本は安全な国であり、日々身の危険を感じて自己防衛しなくてもいい。自立しなくても生活は出来るし自立しない方が生きやすい側面すらある。他国と違い、無理に自己主張する必要も全くない。

 他方、日本には大人があまり育たないような気がする。成人式を迎えた若者ばかりではない。むしろ幼稚なままで還暦を迎える大きな「コドモ」が問題である。自分の行動に責任を感じない甘さ。他者の世界が見えてこない視野の狭さ。「自分さえよければいい」、今の日本にはそのような理屈が蔓延(まんえん)している。

 西洋には昔から個人主義という考え方があるが、その中身は日本のそれと違う。自分と他者をハッキリと分けるが、自己を主張しながら相手の主張も認めるという形である。そこには「私」と「あなた」と第三者が横に並んで、それぞれの世界が平等に存在している。

 日本人は元々横のつながりよりもグループの中の縦のつながりを重んじる。自分と相手を分けることなく、そのつながりを強調したがるし、ときにはそれに甘えることもある。そこには「私の世界」と「あなたの世界」という厳しい線引きよりも「我らの世界」の温(ぬく)もりがあった。

 ところが個人主義をはき違えた今の日本では、それが他者の存在しない、「ワタシだけの世界」に変わってしまった。その狭い世界を突破し、人とのつながりの中で自由に活躍することがこれからの日本人の課題だと思う。

 

 ねるけ・むほう 国内外から年間約150人が座禅に訪れる曹洞(そうとう)宗安泰寺の住職。1968年旧西ドイツ生まれ。ベルリン自由大学修士課程修了。京都大留学中に兵庫県温泉町の安泰寺で禅修行。2002年に恩師の後を継ぎ同寺住職となる。



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