労働のABO型
Since 2001/05/25
Last updated on 2001/05/26 



 先日の天声人語(朝日新聞)に、日本とオーストラリアの労働の型の違いが紹介されていました(原文下欄)。その中に、日本で労働というと、会社に勤めたり商店を経営したりして、収入を得るための労働(A型)を指すが、オーストラリアではそれ以外の労働(B型)の方が重視されているという指摘がありました。それ以外のB型労働とは、家庭菜園や庭木の管理、日曜大工、炊事、洗濯、掃除、家族介護などの家事労働、あるいは自給自足労働のことと思われます。

 私はどちらかというと、A型よりもB型労働の方が好きです。最大の理由は税金(所得税や消費税)を取られないということですが、そのほかにも、自分の裁量で働ける、リストラや定年が無い、危機対応力が身に付く、などのメリットもあります。そうはいっても、B型だけでは現金収入が無く、生活が成り立ちません。必要に応じてA型もこなしながら、生活の基盤はB型に置くというのが私の流儀です。

 B型労働重視は、何もオーストラリアだけの特徴ではありません。私の親の代には、日本の農家の平均的な生活スタイルでした。私は、日本でも、近いうちにB型重視の考え方が復活するのではないかと思っています。以下、その理由を述べます。

 自動車や家電製品は、以前はベルトコンベアを介して多人数の分業で組み立てられていました。しかし近年は、全行程を一人で担当する方式に変わっているそうです。一人作業の方が、責任感や、やり甲斐が出て能率も上がり、幅広い技能も身に付くからだそうです。これと同様の変化が、個人の生活でも起こるのではないかと思うのです。すなわち、自宅の修繕や料理、家族介護などの家事労働を、社会的分業に任せず、自分でやるようになるのではないかと思うのです。

 また現在では、B型(家事)労働のかなりの部分が産業転換(A型化)され、たとえば外食産業や介護ビジネスに置き換わっています。そのことが女性の社会進出を助けたという面はありますが、一方で、お役人(官僚)といわれる人たちの権限も拡大させました。以前は権限の及ばなかった家事労働が、産業転換されることにより、お役人の監督下に入ったからです。税金の対象にもなりました。この点に疑問を感じる庶民が、これから増えてくるのではないかと思うのです。

 一度A型化した家事労働が、私の予測どおりに、B型に回帰すると、税収は当然減ります。そのときお役人はどうするでしょう。律令時代のように、人頭税を復活させるでしょうか? しかしそうすると多分、少子化が一段と進むでしょうね。

 

朝日新聞《天声人語》 2001年521

 ABO型といえば、血液型を思い浮かべる。オーストラリアで大学教授をしている杉本良夫さんは「労働の型のことです」と言った。

 里帰りした氏と雑談していたときのことだ。「オーストラリアは数字の上ではそれほど豊かな国ではない。しかし皆、実に豊かな暮らしをしている。なぜか」を考えた、と。著書『オーストラリア』(岩波新書)にもある杉本説はこうだ。

 会社や商店で働くのとは別の労働がある。収入を得るための前者をA型とすれば、後者をB型と名付けよう。オーストラリアの人たちはB型重視だ。杉本さんは、自宅の向かいにいた夫婦を例にあげる。最初は粗末な住宅に住んでいた。しかし、夫が毎日5時間ほどかけて改装を重ね、数年後には豪邸になった。そんな人がまわりにはたくさんいる、と。

 家に限らない。車や家具など何でも自分で手を入れて改良してしまう人たちだ。このB型人間は危機にも強い。たとえば、ガスの供給が止まったときがあった。B型はさまざまな工夫をして急場をしのいだ。老後に強いのもB型だ。定年になっても、B型労働の時間がふえるだけで、戸惑いはない。

 そう見てくると、いまの日本人はあまりにA型に偏っているのではないかと思えてくる。それは経済指標を押し上げはするだろうが、暮らしの豊かさに必ずしも直結しない。昔はそうでもなかったと思う。いつのまにかB型に弱くなった。

 杉本さんは「私もBが苦手で」と苦笑した。ところでO型とは? AもBもしたくない人のことで、これはどこの国にもいそうだ。

 


「トピックス」に戻る

メールはこちらへ
tonbiiwa@gmail.com

since 2005/05/14 3410

5316386